麻雀狂 ミダリ   作:かさばる

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第十三話 合戦

三回戦。起家はユメミ。南家、妄、西家、豆生田、北家、芽亜里。

 

東一局、ドラは{七}となった。

 

 

(……この麻雀、そしてこの四人)

 

 

妄の配牌。

 

          {横②}

{三赤五七999白白發①⑤⑨⑨}

 

 

(あたしの手は、翻牌が鳴ける赤入り手。ならこの{發}はいらないんだが)

 

打、{發}

 

(よし通った。これでとりあえず滑り出しは順調)

 

 

「チー」

 

{横867}

 

芽亜里が豆生田から{8}をチー。そして打{八}。

 

 

二巡目、妄、{白}を持ってきて、面前を維持したまま役を手に入れる。

 

 

{三赤五七999白白白①②⑤⑨⑨}

 

 

そしてこの手牌から打{②}とする。

 

 

(確かにイーシャンテン。{⑤}を切っていればイーシャンテン。しかし、そうした場合、受けとして残るのは{三赤五七}のリャンカンと{①②}のペンチャン。本音を言えば、前者のようなリャンカンの三枚は、{②③}のような両面とセットで持っていて、リャンカンを先に鳴いて両面テンパイしたい形。しかも今回は、リャンカンにドラの{七}が絡んでいて、受け牌の{六}も、ドラ表示で一枚消えている。ならば余計にこのリャンカンは、最終的な待ちにはしたくない。だから{①②}のペンチャンを落とすべく{②}を切ったんだが、じゃあ何故ここで{①}から切らないのか。正直これについては、何が正解なのかはっきり分かって打った訳じゃない、でも、ここは{②}切りにする。何故なら、まあ、ここが結構難しい話)

 

 

次巡、妄のツモ。

 

 

 

           {横③}

{三赤五七999白白白①⑤⑨⑨}

 

 

(んん……ほらほらこういう難しい状態。思ってた牌がまさに来たよ。このようなリャンカンふたつのイーシャンテン。{六}と{②}はそれぞれあと三枚。そして{②}受けはフリテンだ。ならば赤も使いたい事だし、迷わず{①}切りか、と、思う所だがそうでもない。ここは悩み、よく考えるんだ。そうだ、上家を見ればいい)

 

 

場は三巡目まで進行。この時、親、ユメミの捨て牌。

 

{二一發}

 

 

(第一打が{二}。これ自体に大した意味は無い。しかし第二打が{一}。これはペンチャン落としの{一}じゃない。何故かって、ユメミの癖、ユメミは基本的に守備型の打ち手。致し方無い事もあるとは言え、基本的には放銃を避ける。ユメミは他の三人より長考も若干多い。そんなユメミは、全員の河をよく見て、何が通っていて、どれのスジがどれで、という、膨大な情報を把握して、そこから安全な牌を導き出して打牌している。と、いう事は、自分の手の牌効率なんて二の次。いや、勿論手作りも上手だろう。アイドルなんだから。舞台で打つ以上は訓練されているものだろう。アイドルとして公の対局を打つ時は、降りる時の長考は別として、いや、そのタイムロスがあるからこそ尚更、通常の手作りの段階ではテンポ良く、牌効率など考えなくても分かる、作業としてぱっぱとできるくらいではあるだろう。しかし、それを実行し維持する為には。滑らかな局の進行と、徹底した守備を併せて成立させる為には。その為には、何が何でも頭の混乱を防ぐ為、《正直な理牌》が必要になる。それが、ユメミの、癖)

 

 

ユメミは、全ての手牌を、数の順番通りに、また、東南西北の順番通りに理牌している。

 

 

ユメミは第一打を{二}とした。これはまあいい。この第一打にある意味は色々な可能性があって予想し切れない。

そして、第二打を、まるでペンチャン落としを装うかのように{一}とした。これはつまりどういう意味か。

ユメミは、{一}を、手牌の左端から抜いて打った。そして、その時ツモった牌を同じ場所に入れた。

その後数秒経って妄がツモ番を実行している最中も、ユメミは一切手牌をいじっていなかった。

つまり、ツモったあの牌は{一}。切った{一}は空切りの{一}。

と、いうかまあ、それの一段階前の話として。

 

 

{二}の後に、二巡目で{一}が出てきたという事は、ユメミは一巡目時点で{一二}を少なくとも持っていたという事だ。そして、一打目が{二}。そしてニ打目が{一}。ただしこれは空切り。

配牌で持っていた{一二}を落としておきながら、ツモった{一}を手に残した訳は何か。それは、配牌の形が{一二二三}だったからだ。{一二二三}は、分解して見れば両面とペンチャン。しかし、これはかなり形として悪い為、メンツの三枚を固定、確定させる為に{二}を切った。そして手牌には{一二三}のメンツが残り、次巡で引いてきたのが、{一}。{一二三}に{一}。つまり{一一二三}の亜両面形ができたのだ。つまりこの時点でもう、

 

(ユメミが{四}を持っている可能性は極めて低い)

 

例えばば、ユメミが配牌で{四}を持っていたら、手牌の形は{一二二三四}だったという事になる。もしこの通りであれば、{二}を切る選択も無くはないが、それよりも、{一}を切って{二二三四}の亜両面形、それも、鳴いてタンヤオに行ける亜両面形を作っておいた方が良いだろう。ユメミがそれをしなかったのは何故か。当然、{四}を持っていなかったからだ。つまり。

 

 

妄の手牌。

 

 

           

{三赤五七999白白白①③⑤⑨⑨}

 

 

(ドラは{七}。{六}と{②}は一枚ずつ消えている。そして{②}はフリテン。だが、マンズの方の{三赤五七}のリャンカン。{四}で待てばここは引ける。そしてピンズのリャンカンは鳴ける事に期待。何しろ赤。この手は赤が大事であって、役の数自体は、白赤一に、{七}のドラが付くかどうか。ニ役と三役の違いだ。だから)

 

 

妄、打、{七}。この手番を打{七}とした。

 

 

手牌はこの形となる。

 

{三赤五999白白白①③⑤⑨⑨}

 

 

渾身のカン{四}受け。あわよくばピンズ、先に埋まってくれと言いたい。

しかし。

 

 

次の巡目、妄から見た上家のユメミ、つまりチーができる対象者のユメミが。

打、{一}……

 

…………

 

(くそっ、握り潰されたか)

 

 

ユメミは{四}を持っていなかった。ゆえに妄は引けると考えた。しかし、ユメミは{一二三}を持っているのだから、そこに{四}を引いてくれば、その{四}ではなくて、反対側の{一}が吐き出される。

 

 

(ん……しかし)

 

 

しかし、だ。{四}を引いてきて{一二三四}ができたにも関わらず、その四連形を破棄したのは。

 

 

(手牌が、悪いのか)

 

 

ユメミの捨て牌は、{二}と{一}の処理を終えた後に、三巡目に{發}を切っている。これは、一巡目に妄が切って鳴かれなかった牌だ。その安全を確認して、ユメミは、配牌から持っていた{發}を処理するのを、三巡目まで保留した。一巡目には、切れなかった……

 

 

「ポン」

 

 

{西西横西}

 

 

北家の芽亜里が{西}を鳴いた。これで芽亜里の鳴きは、{横867} {西西横西}の二つである。

 

 

(ふむ)

 

 

妄は思った。芽亜里が、チーの後にポンをするのは珍しい。ポンの後にチーをするのは分かる。翻牌の鳴きであったりして、それによって役が確定したり、複数対子があってメンツの進行の難易度が高かったところにポンができた。それなら、それに乗じてどんどん進む、つまり、その後チーをするのは分かる。

しかし、いつでもできるチーを急いでまで、ポンをせずに巡目が経ち、結局は後でポンをしてしまうのはなんだかおかしい。それを敢えて芽亜里がやった理由は一つ。

 

 

(芽亜里の手には、{西西中中66}のように、対子が三つあったんだ。そして、その対子の中の一つは翻牌。芽亜里は、最終的に、どこをポンしてどこでシャボになっても、役が付くテンパイに取れるように、対子を三つ抱えたんだ)

 

 

そんなこんなしているうちに。

 

ユメミが、{②}を切ってきた。

 

「っ!チー!」

 

 

{横②①③}

 

 

妄、フリテンだった{②}のチーに成功。これでテンパイだ。妄、打{⑤}。

 

 

{三赤五999白白白⑨⑨} {横②①③}

 

 

 

カン{四}待ちのテンパイ。役は白赤一の2600点。しかし、赤の祝儀でそこに5000プラスされる。

 

 

 

そして次巡、妄は{四}を引く事はできず、持ってきたのは{九}。

 

 

(芽亜里は、一巡目に{八}を切っている。つまり、{七八九九}の形ができる事を嫌って、配牌にあった{八九九}から{八}を切った。つまり対子を三つ用意した。ならば、今芽亜里は、{九九中中}などの、翻牌とのシャボ待ちテンパイ。つまり{九}は、そのシャボの、役が付かない方だ……!)

 

 

妄、打、{九}。

 

 

「ロン」

 

 

 

{789中中中九} {九} {西西横西} {横867}

 

 

「1300」

 

 

「……」

 

 

 

 

これだ。このようなせめぎ合い、これがギャンブル、赤牌の合戦。渾身のカン{四}。赤入りの手を、赤も入っていないのみ手で流された。

 

 

そこがいいんだよ……

 

 

 

さあ、東二局。

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