点数状況
夢子:23000
妄:27000
豆生田:24500
芽亜里:24500
供託:1000点
東二局一本場、妄は親、ドラは{⑦}
妄の配牌。
{横赤③}
{九19⑨⑨東西發中二赤三四五}
(くそっ)
なんかそれっぽいなとは思った。しかし、何度数えても八種しか無い。八種九牌。これでは流せない。九枚から国士が成る確立は僅か3パーセント程度。しかも、だ。
(まるで意味の無い国士)
相対的な話、赤などのドラが増えると、役ひとつの意味、価値が下がる。国士無双は役満十三翻。親なら48000点。しかし、この配牌でそれが成る確立、仮にきっかり3パーセントだとしたら、この配牌からの国士無双の期待値は、48000の3パーセントで1440。親の一翻にも届いていない。
では例えば?国士無双よりずっと簡単な、現実的に出そうな牌姿、役、ドラ。メンタンピンツモ、これで四。それに、表ドラ、裏ドラ、赤ひとつ。これで七。ここまでなら跳満止まりだ。跳満は六役と七役。麻雀とはよくできたゲームだ。得点の節目、倍満は八役、三倍満は十一役だが、その節目に、なかなか何故かあと一本届かない事も多いのだ。つまり、七役の跳満、十役の倍満。そういう事も起こるもの。
しかし?ドラの数が増えたらどうだ?赤の枚数が三から六に増えたとして、握れる確立も倍増するから、今数えた仮定にもう一本足してみる。メンタンピンツモ、表、裏、赤、赤。これで八本。倍満だ。親の倍満は24000。国士無双の半分だが、成る率は半分よりずっと高いだろう。
(役満には、ドラは関係無いからな)
面前で普通の手作りをし、倍満を目指すのが、簡単に言えば今回の麻雀の定石だ。だから、国士には全くまるで意味が無い。
目指す意味が、無い。
{横赤③}
{九19⑨⑨東西發中二赤三四五}
じゃあこの配牌をどうしたらいいか。赤は二枚ある。三の赤を二枚握れたのはまあ嬉しい。
赤が二枚あるのなら、あがりの形にさえなれば得点は高い。しかし、この配牌は5シャンテン。とてもあがりに持って行けそうには無い。
(ならまあ、仕方ない)
妄、第一打を{五}とする。
そして、下家の豆生田が{二}を切った。それを。
「チー」
{横二三四}
芽亜里が鳴く。
「えっ」
ん?夢子?
夢子。北家。戸惑っている?夢子。ツモる動作をせずに手が止まる。
「えっ、あ、ごめんなさい、失礼します……」
夢子は硬直する。まるで頭が回っていないように、手が全然動かない。手牌も、理牌の途中で放置されてしまった。
……理牌の途中?
(あっ!)
妄は大急ぎで夢子の手牌を見る。
九枚、ある。手元に九枚寄せてあって、残りの牌がバラバラになっている。
九種、九牌?
夢子は配牌でそれを握り、流そうとした……?
しかし、だ。
(ふむ)
流せない。第一ツモの前にチーが入ったからだ。
暫く硬直した後、夢子は牌をツモり、そして打{⑦}。これはドラだ。
(なるほどなあ)
流す事を阻まれた、ガラクタ国士。妄と夢子。
(よし、勝負しようぜ)
二人とも、中張牌をバシバシ切って、あからさまに国士を強調した。
忍耐の勝負。成就する訳も無い二人の国士無双。そしてそれに対して、他の二人はまるで警戒していない。そりゃあそうだって。国士なんてまず成らないし、万が一成るとしたら、妄と夢子の国士の、先に張った方が、後手を踏んだ方の余り牌をロン。そういう展開が目に見える。
よって。
「ポン」
{22横2}
芽亜里が夢子から鳴く。なりふり構わず攻めてくる。
{九19⑨⑨東南西發中二赤三⑦}
終盤で妄の手牌、この状態。あとツモは四回。無理だ。絶対に無理だ。
しかし、その巡目に、北家の夢子。
打、{中}!
「え……?」
溢れた……?字牌が?まさか?
(いやいや、そんな訳)
次巡、妄、運良く夢子の現物を引いたのでツモ切り。
そして、妄の最後のツモ。その時の手牌。
{横發}
{一九19①⑨⑨東南西發中赤⑤}
(……ふっざけんなよ)
芽亜里に対して切れる訳が無い赤牌と、最後のツモで手を埋め尽くした国士牌。しかしノーテン。ここで意を決して{赤⑤}を切ったところで、テンパイには至らず、連荘は不可。
(ぐう、まあ、まあここは)
{⑨}あたりにしておくか……
その時、夢子が手牌に触れた気がした。
(……!)
怖かった。その恐怖が、国士の恐怖が、最後の打牌を拒否し、そして、結局妄が打ったのは。
{赤⑤}……
「カンッ!」
「うわあっ!?」
{⑤⑤横赤⑤⑤}
芽亜里、大明槓。
「これで、この嶺上が実質海底ね」
芽亜里は勿論降りるつもりだった。単に海底をずらしたかっただけ。しかし、ここに至って。
「ツモ!」
{4445} {赤5} {⑤⑤横赤⑤⑤} {22横2} {横二三四}
「高目、引いちゃった。2000.4000は
最悪……
と、そこで、ディーラー清華が割って入ってきた。
「大明槓は責任払いですよ。8000は9500の直撃です」
え……?
ま、まあ?これって順位戦だし?そういう事もある、か?
そうだっけ。説明の時に明言が無かったような。
しかし妄、何故だか反論できなかった。
9500点を、払ってしまう。点棒の受け渡しが完了した事によって、もうその裁定は後戻りの余地を失った。
「テンパイです」
「え?」
夢子が手牌を倒す。
それに対して芽亜里が言う。
「夢子?私ツモったよ?流局じゃない。公開しなくていいのよ」
夢子はやっぱり、どこかぼんやりしている。
(……!)
{一一九九11東東西西白白北}
混老頭、七対子……!
(……馬鹿な)
じゃあ、何故リーチをかけないんだ。
ちぐはぐだ。やっている事がめちゃくちゃ。前局は意味無くリーチ。今局はチャンスを見逃してリーチ無し。
夢子は、どれだけ弱っているんだ?
……思えば、今の最終打も。
赤牌を切るという暴挙。暴牌。妄にそれをさせたのは、夢子への恐怖心。
まだ、微かに残っていた恐怖心。
それは、今までの、夢子というギャンブラーが与えてきた印象。
それの残りクズみたいなもので、ギリギリ今妄は負けたけど。
もう。
もはや、そういったものに頼らないと押し負けるくらい、夢子は弱っているという事か?
……次は、東三局。