麻雀狂 ミダリ   作:かさばる

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第十八話 蛇喰夢子衰弱

点数状況

 

 

 

夢子:23000

 

妄:27000

 

豆生田:24500

 

芽亜里:24500

 

供託:1000点

 

 

 

東二局一本場、妄は親、ドラは{⑦}

 

 

 

妄の配牌。

 

 

          {横赤③}

{九19⑨⑨東西發中二赤三四五}

 

 

 

(くそっ)

 

 

なんかそれっぽいなとは思った。しかし、何度数えても八種しか無い。八種九牌。これでは流せない。九枚から国士が成る確立は僅か3パーセント程度。しかも、だ。

 

 

(まるで意味の無い国士)

 

 

相対的な話、赤などのドラが増えると、役ひとつの意味、価値が下がる。国士無双は役満十三翻。親なら48000点。しかし、この配牌でそれが成る確立、仮にきっかり3パーセントだとしたら、この配牌からの国士無双の期待値は、48000の3パーセントで1440。親の一翻にも届いていない。

では例えば?国士無双よりずっと簡単な、現実的に出そうな牌姿、役、ドラ。メンタンピンツモ、これで四。それに、表ドラ、裏ドラ、赤ひとつ。これで七。ここまでなら跳満止まりだ。跳満は六役と七役。麻雀とはよくできたゲームだ。得点の節目、倍満は八役、三倍満は十一役だが、その節目に、なかなか何故かあと一本届かない事も多いのだ。つまり、七役の跳満、十役の倍満。そういう事も起こるもの。

しかし?ドラの数が増えたらどうだ?赤の枚数が三から六に増えたとして、握れる確立も倍増するから、今数えた仮定にもう一本足してみる。メンタンピンツモ、表、裏、赤、赤。これで八本。倍満だ。親の倍満は24000。国士無双の半分だが、成る率は半分よりずっと高いだろう。

 

 

(役満には、ドラは関係無いからな)

 

 

 

面前で普通の手作りをし、倍満を目指すのが、簡単に言えば今回の麻雀の定石だ。だから、国士には全くまるで意味が無い。

 

目指す意味が、無い。

 

 

          {横赤③}

{九19⑨⑨東西發中二赤三四五}

 

 

じゃあこの配牌をどうしたらいいか。赤は二枚ある。三の赤を二枚握れたのはまあ嬉しい。

 

赤が二枚あるのなら、あがりの形にさえなれば得点は高い。しかし、この配牌は5シャンテン。とてもあがりに持って行けそうには無い。

 

 

(ならまあ、仕方ない)

 

 

妄、第一打を{五}とする。

 

 

そして、下家の豆生田が{二}を切った。それを。

 

 

「チー」

 

{横二三四}

 

 

芽亜里が鳴く。

 

 

「えっ」

 

ん?夢子?

 

 

 

夢子。北家。戸惑っている?夢子。ツモる動作をせずに手が止まる。

 

 

「えっ、あ、ごめんなさい、失礼します……」

 

 

夢子は硬直する。まるで頭が回っていないように、手が全然動かない。手牌も、理牌の途中で放置されてしまった。

 

 

……理牌の途中?

 

 

(あっ!)

 

 

 

妄は大急ぎで夢子の手牌を見る。

 

 

九枚、ある。手元に九枚寄せてあって、残りの牌がバラバラになっている。

 

 

九種、九牌?

 

 

 

夢子は配牌でそれを握り、流そうとした……?

 

 

しかし、だ。

 

 

(ふむ)

 

 

流せない。第一ツモの前にチーが入ったからだ。

 

 

 

暫く硬直した後、夢子は牌をツモり、そして打{⑦}。これはドラだ。

 

 

 

(なるほどなあ)

 

 

 

流す事を阻まれた、ガラクタ国士。妄と夢子。

 

 

 

(よし、勝負しようぜ)

 

 

 

二人とも、中張牌をバシバシ切って、あからさまに国士を強調した。

忍耐の勝負。成就する訳も無い二人の国士無双。そしてそれに対して、他の二人はまるで警戒していない。そりゃあそうだって。国士なんてまず成らないし、万が一成るとしたら、妄と夢子の国士の、先に張った方が、後手を踏んだ方の余り牌をロン。そういう展開が目に見える。

よって。

 

「ポン」

 

{22横2}

 

芽亜里が夢子から鳴く。なりふり構わず攻めてくる。

 

 

{九19⑨⑨東南西發中二赤三⑦}

 

 

終盤で妄の手牌、この状態。あとツモは四回。無理だ。絶対に無理だ。

 

 

しかし、その巡目に、北家の夢子。

 

 

打、{中}!

 

 

「え……?」

 

 

溢れた……?字牌が?まさか?

 

 

(いやいや、そんな訳)

 

 

次巡、妄、運良く夢子の現物を引いたのでツモ切り。

 

 

そして、妄の最後のツモ。その時の手牌。

 

           {横發}

{一九19①⑨⑨東南西發中赤⑤}

 

 

(……ふっざけんなよ)

 

 

芽亜里に対して切れる訳が無い赤牌と、最後のツモで手を埋め尽くした国士牌。しかしノーテン。ここで意を決して{赤⑤}を切ったところで、テンパイには至らず、連荘は不可。

 

 

(ぐう、まあ、まあここは)

 

 

{⑨}あたりにしておくか……

 

 

 

その時、夢子が手牌に触れた気がした。

 

 

 

(……!)

 

 

 

怖かった。その恐怖が、国士の恐怖が、最後の打牌を拒否し、そして、結局妄が打ったのは。

 

{赤⑤}……

 

 

「カンッ!」

 

 

「うわあっ!?」

 

 

 

 

 

{⑤⑤横赤⑤⑤}

 

 

芽亜里、大明槓。

 

 

「これで、この嶺上が実質海底ね」

 

 

 

芽亜里は勿論降りるつもりだった。単に海底をずらしたかっただけ。しかし、ここに至って。

 

 

「ツモ!」

 

 

 

{4445} {赤5} {⑤⑤横赤⑤⑤} {22横2} {横二三四}

 

 

「高目、引いちゃった。2000.4000は2500.4500(ニーゴーヨンゴー)

 

 

 

最悪……

 

 

 

と、そこで、ディーラー清華が割って入ってきた。

 

 

「大明槓は責任払いですよ。8000は9500の直撃です」

 

 

え……?

 

 

ま、まあ?これって順位戦だし?そういう事もある、か?

 

 

そうだっけ。説明の時に明言が無かったような。

 

 

 

しかし妄、何故だか反論できなかった。

 

9500点を、払ってしまう。点棒の受け渡しが完了した事によって、もうその裁定は後戻りの余地を失った。

 

 

「テンパイです」

 

 

「え?」

 

 

夢子が手牌を倒す。

 

 

それに対して芽亜里が言う。

 

 

「夢子?私ツモったよ?流局じゃない。公開しなくていいのよ」

 

 

夢子はやっぱり、どこかぼんやりしている。

 

 

 

(……!)

 

 

 

{一一九九11東東西西白白北}

 

 

 

混老頭、七対子……!

 

 

 

(……馬鹿な)

 

 

じゃあ、何故リーチをかけないんだ。

 

 

 

ちぐはぐだ。やっている事がめちゃくちゃ。前局は意味無くリーチ。今局はチャンスを見逃してリーチ無し。

 

 

 

夢子は、どれだけ弱っているんだ?

 

 

……思えば、今の最終打も。

 

 

赤牌を切るという暴挙。暴牌。妄にそれをさせたのは、夢子への恐怖心。

まだ、微かに残っていた恐怖心。

 

それは、今までの、夢子というギャンブラーが与えてきた印象。

 

 

それの残りクズみたいなもので、ギリギリ今妄は負けたけど。

 

 

もう。

 

 

もはや、そういったものに頼らないと押し負けるくらい、夢子は弱っているという事か?

 

 

 

……次は、東三局。

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