妄の配牌
{横6}
{①②③④⑤⑥五八26北北北}
妄、この配牌から打{6}とする。
イーシャンテンからリャンシャンテンへ。雀頭無しの形に手を崩した。しかし、勿論その後の手牌進行の為の準備は万全である。
手牌は、{6}を切ってこの形だ。
{①②③④⑤⑥五八26北北北}
ここに例えば、
{横赤5}
{①②③④⑤⑥五八26北北北}
このように引いてきたり。この場合は、崩した{6}の対子が赤牌含みで両面になり、ここから打{2}。そしてその後に、{六}か{七}あたりを引いてきてもう一つ両面。すると。
{①②③④⑤⑥五六八赤56北北北}
この形のイーシャンテンだ。そこから打{八}。そして目指すべきは、平和は勿論の事、四五六の三色だ。つまり、
最終形はこのように想定できる。
{①②③④⑤⑥五六4赤56北北打北}
あるいは例えば、同じ配牌からでも。
{横赤五}
{①②③④⑤⑥五八26北北北}
このように引いてきたり。
{横4}
{①②③④⑤⑥五八26北北北}
あるいはこう。これならリャンカンができる。
あとは、ドラの{中}を引いてくれば、{北}暗刻で一メンツ、残りの三メンツは、揃いやすい横の手。つまり順子で構成し、{中}単騎リーチというのもアリだろう。
ゆえに、妄は第一打を{6}切りとした。
しかし。
「カン」
会長……
{裏5赤5裏}
{5}の暗槓。これにより、妄の三色は消え、そして第一打の{6}という選択は完全に無意味となった。
しかも、事態はそれだけで終わらずに。
「え」
新ドラが、{5}。つまり会長、赤含めてドラ5!跳満確定の暗槓!
そして次巡、妄。
{横6}
{①②③④⑤⑥五八26北北北}
奇跡の重なり。ゴミ同然だった{6}が再び対子に。
ここは、一刻も早くテンパイし、リーチを打つ事が肝要だ。どうする、何を切れば良い?
……{八}か?ここはむしろ、{2}ではなく{八}か?スジで持っている{五と八}は、確かに両面を作る為に確実ではあるが、その確実を追うが為に、一番効率が良い持ち方ではないのだ。
{八}か?{八}を切って、両面ができればベストだが、例えば四枚目の{6}を引いてきて暗刻にできれば、マンズを払って{2}単騎はかなり強い。暗槓されている{5}の外なのだから。
……いや、違う。仮にリーチに至った時の、自分の河を想像するんだ。
今の手牌から進めれば、このような捨て牌になる事が想像できる。
{62横八} この場合、手牌に残るのは{五}とその周辺の何か。待ちはマンズだ。
{6八横五}この場合、手牌に残るのは{2}とその周辺。待ちはソーズだ。
でも、例えば前者の場合、その捨て牌で他家から想定されるのは、好配牌からの出来過ぎた七対子。勿論待ちを一点に絞って見抜かれるなんて事はあり得ないが、敢えて想像するなら、赤受けの{五⑤}は本命だ。出ないだろう。
あるいは後者の場合、想像されるのは、チャンタやメンホン。リーチをするのは槓ドラの裏があるからだと思われるだろう。ならば、現物以外の牌なんて出る訳が無い。
まあ、どちらにせよ、ただのノミ手を、虚構の満貫手に見せかける事ができる。多くの場合ならそれはメリット。しかし、今に限って言えば、会長の見えている跳満に対してリーチを打てば、清華と豆生田は降りてしまう。二人はたったの千点差だ。勝負に乗って来る訳が無い。
安手に、見せかけないと駄目なんだ。安手に見せかけて、あわよくば差し込んでもらう。豆生田はそれをするかも知れない。いかにも王道をゆく打ち筋だ。
あるいは、そうだ。清華と豆生田は千点差。そして清華は親。北家の会長が3000.6000をツモれば、清華は貴重な親番を失って四着に転落。ならばいっそ、妄のリーチが、安手どころか、もうどうにもならない状態であると見せつければ良いのか。そうすれば清華は意を決して勝負に乗って来るかも。つまり……
「会長」
「……何?」
「オープンリーチを認めてくれ」
「オープンリーチ?」
妄は、ルールとして明言されていない、オープンリーチを提案する。
「別にいいだろ?それくらい」
「駄目よ」
即答された。
「……へっ」
いいんだ。
「じゃあオープンはしない。だけど勝手に言わせてもらうぜ?あたしの待ちは{五}単騎。もしそれが嘘じゃなかったら、あがった時に二翻扱いにしてもらう」
「……勝手に言ってなさい。私は認めないわ」
「うるせえ!元々そっちがハンデ戦を強要してるんだ!こっちも勝手さ!リーチだっ!」
妄の、捨て牌。
{6五2横八}
そうだ。フリテンだ。
妄は、このフリテンリーチ宣言により、降り気味だった清華と豆生田を誘った。
そして、妄はその局の進行を観察する。
まず、清華が打{赤五}。これで{五}は残り二枚。そして。
妄、{五}をツモ。
「……ちっ」
そして、妄あがらず、その{五}をツモ切りとした。
「あら……妄?待ちは{五}単騎じゃないの?」
「へへ。悪いな、やっぱり違った」
苦しい言い訳だ。もう清華も豆生田も気付いただろう。そう、妄のリーチはノーテンリーチ。ブラフだったのである。
しかし、しかし?それをやる意図とは?
……この局はきっと流局するだろう。そうすれば、妄はノーテンリーチでチョンボ。8000点の払いになる。その時、リーチをかけていない会長は、きっとノーテンと言うだろう。そして、清華なんかはむしろテンパイと言うかも知れない。
そんな妄の思惑を内包した、東四局の最終盤。
「ロン!」
「えっ?」
妄が、清華に放銃した。
{一一一二三四五六七裏裏裏裏}
「……あっ」
清華が、手牌を倒す時、半分程倒して、慌てて手を止めた。
「ごっ、ごめんなさい……フリテンでした……」
半分以上手牌は倒されている。ならばこれはもう、誤和了扱いでチョンボじゃないのか。
妄は浮かれた。自分が罰符を払う予定が、逆に入って来るのだから。
「お?誤ロンか?なら、一応手牌を見せてくれよ」
「はい……」
清華は、もう諦めた態度で手牌を公開する。
{一一一二三四五六七八九九九}
「なるほど。純正九連か。そりゃあフリテンだな。よし。チョンボで4000オール、払ってくれ」
危なかった。もしこのダブル役満がフリテンじゃなかったら、妄は96000の打ち込み。当然トビ終了。即死だった。
「……待ちなさい」
……?
会長が待ったをかける。
「今の打牌、妄、あなた王牌引いちゃってるわよ。私からカンが一回入ってるでしょ?だから海底がずれて、ひとつ前の清華のラスヅモが海底。そこで流局。妄は本来起こり得ない事をうっかりやっただけ。よって、この誤ロンのチョンボは不成立。成立するのは流局よ」
あ…………
「さあ、妄、手牌を見せて」
「……」
妄の手は、ノーテンだった。ノーテンリーチの発覚により、妄がチョンボ。2000.4000の満貫払いだ。
何故……?
何故会長は、自分への収入を拒否した?海底を間違えた事について、黙っていれば誰も気付かなかったのに。
そうまでして、妄のノーテンを確認したかった?
まあ、それはそれとして。
妄は、ぼんやりと気が付いた。
「おかしい」
自分以外、会長達の打牌、麻雀の挙動がおかしい。そしてそれは。
赤牌が絡んでいる。
間違い無い。今回埋め込まれている特殊ルールは、赤牌が関連している。
……次、攻める時は、赤牌を手牌に入れてリーチを打ってみよう。