麻雀狂 ミダリ   作:かさばる

3 / 23
第三話 赤

妄の配牌

 

         {横6}

{①②③④⑤⑥五八26北北北}

 

 

妄、この配牌から打{6}とする。

イーシャンテンからリャンシャンテンへ。雀頭無しの形に手を崩した。しかし、勿論その後の手牌進行の為の準備は万全である。

 

手牌は、{6}を切ってこの形だ。

 

{①②③④⑤⑥五八26北北北}

 

ここに例えば、

 

         {横赤5}

{①②③④⑤⑥五八26北北北}

 

このように引いてきたり。この場合は、崩した{6}の対子が赤牌含みで両面になり、ここから打{2}。そしてその後に、{六}か{七}あたりを引いてきてもう一つ両面。すると。

 

{①②③④⑤⑥五六八赤56北北北}

 

この形のイーシャンテンだ。そこから打{八}。そして目指すべきは、平和は勿論の事、四五六の三色だ。つまり、

最終形はこのように想定できる。

 

{①②③④⑤⑥五六4赤56北北打北}

 

 

 

あるいは例えば、同じ配牌からでも。

 

         {横赤五}

{①②③④⑤⑥五八26北北北}

 

このように引いてきたり。

 

         {横4}

{①②③④⑤⑥五八26北北北}

 

あるいはこう。これならリャンカンができる。

 

 

あとは、ドラの{中}を引いてくれば、{北}暗刻で一メンツ、残りの三メンツは、揃いやすい横の手。つまり順子で構成し、{中}単騎リーチというのもアリだろう。

ゆえに、妄は第一打を{6}切りとした。

 

 

しかし。

 

「カン」

 

会長……

 

{裏5赤5裏}

 

{5}の暗槓。これにより、妄の三色は消え、そして第一打の{6}という選択は完全に無意味となった。

しかも、事態はそれだけで終わらずに。

 

「え」

 

新ドラが、{5}。つまり会長、赤含めてドラ5!跳満確定の暗槓!

 

そして次巡、妄。

 

         {横6}

{①②③④⑤⑥五八26北北北}

 

奇跡の重なり。ゴミ同然だった{6}が再び対子に。

ここは、一刻も早くテンパイし、リーチを打つ事が肝要だ。どうする、何を切れば良い?

 

……{八}か?ここはむしろ、{2}ではなく{八}か?スジで持っている{五と八}は、確かに両面を作る為に確実ではあるが、その確実を追うが為に、一番効率が良い持ち方ではないのだ。

{八}か?{八}を切って、両面ができればベストだが、例えば四枚目の{6}を引いてきて暗刻にできれば、マンズを払って{2}単騎はかなり強い。暗槓されている{5}の外なのだから。

 

……いや、違う。仮にリーチに至った時の、自分の河を想像するんだ。

今の手牌から進めれば、このような捨て牌になる事が想像できる。

 

{62横八} この場合、手牌に残るのは{五}とその周辺の何か。待ちはマンズだ。

 

{6八横五}この場合、手牌に残るのは{2}とその周辺。待ちはソーズだ。

 

でも、例えば前者の場合、その捨て牌で他家から想定されるのは、好配牌からの出来過ぎた七対子。勿論待ちを一点に絞って見抜かれるなんて事はあり得ないが、敢えて想像するなら、赤受けの{五⑤}は本命だ。出ないだろう。

 

あるいは後者の場合、想像されるのは、チャンタやメンホン。リーチをするのは槓ドラの裏があるからだと思われるだろう。ならば、現物以外の牌なんて出る訳が無い。

 

 

まあ、どちらにせよ、ただのノミ手を、虚構の満貫手に見せかける事ができる。多くの場合ならそれはメリット。しかし、今に限って言えば、会長の見えている跳満に対してリーチを打てば、清華と豆生田は降りてしまう。二人はたったの千点差だ。勝負に乗って来る訳が無い。

安手に、見せかけないと駄目なんだ。安手に見せかけて、あわよくば差し込んでもらう。豆生田はそれをするかも知れない。いかにも王道をゆく打ち筋だ。

あるいは、そうだ。清華と豆生田は千点差。そして清華は親。北家の会長が3000.6000をツモれば、清華は貴重な親番を失って四着に転落。ならばいっそ、妄のリーチが、安手どころか、もうどうにもならない状態であると見せつければ良いのか。そうすれば清華は意を決して勝負に乗って来るかも。つまり……

 

 

「会長」

「……何?」

「オープンリーチを認めてくれ」

「オープンリーチ?」

 

妄は、ルールとして明言されていない、オープンリーチを提案する。

 

「別にいいだろ?それくらい」

「駄目よ」

 

即答された。

 

「……へっ」

 

いいんだ。

 

「じゃあオープンはしない。だけど勝手に言わせてもらうぜ?あたしの待ちは{五}単騎。もしそれが嘘じゃなかったら、あがった時に二翻扱いにしてもらう」

「……勝手に言ってなさい。私は認めないわ」

「うるせえ!元々そっちがハンデ戦を強要してるんだ!こっちも勝手さ!リーチだっ!」

 

妄の、捨て牌。

 

{6五2横八}

 

 

そうだ。フリテンだ。

妄は、このフリテンリーチ宣言により、降り気味だった清華と豆生田を誘った。

そして、妄はその局の進行を観察する。

 

 

まず、清華が打{赤五}。これで{五}は残り二枚。そして。

 

妄、{五}をツモ。

 

「……ちっ」

 

そして、妄あがらず、その{五}をツモ切りとした。

 

「あら……妄?待ちは{五}単騎じゃないの?」

「へへ。悪いな、やっぱり違った」

 

苦しい言い訳だ。もう清華も豆生田も気付いただろう。そう、妄のリーチはノーテンリーチ。ブラフだったのである。

しかし、しかし?それをやる意図とは?

……この局はきっと流局するだろう。そうすれば、妄はノーテンリーチでチョンボ。8000点の払いになる。その時、リーチをかけていない会長は、きっとノーテンと言うだろう。そして、清華なんかはむしろテンパイと言うかも知れない。

そんな妄の思惑を内包した、東四局の最終盤。

 

「ロン!」

「えっ?」

 

妄が、清華に放銃した。

 

{一一一二三四五六七裏裏裏裏}

 

「……あっ」

 

清華が、手牌を倒す時、半分程倒して、慌てて手を止めた。

 

「ごっ、ごめんなさい……フリテンでした……」

 

半分以上手牌は倒されている。ならばこれはもう、誤和了扱いでチョンボじゃないのか。

 

妄は浮かれた。自分が罰符を払う予定が、逆に入って来るのだから。

 

「お?誤ロンか?なら、一応手牌を見せてくれよ」

「はい……」

 

清華は、もう諦めた態度で手牌を公開する。

 

{一一一二三四五六七八九九九}

 

「なるほど。純正九連か。そりゃあフリテンだな。よし。チョンボで4000オール、払ってくれ」

 

危なかった。もしこのダブル役満がフリテンじゃなかったら、妄は96000の打ち込み。当然トビ終了。即死だった。

 

「……待ちなさい」

 

……?

会長が待ったをかける。

 

「今の打牌、妄、あなた王牌引いちゃってるわよ。私からカンが一回入ってるでしょ?だから海底がずれて、ひとつ前の清華のラスヅモが海底。そこで流局。妄は本来起こり得ない事をうっかりやっただけ。よって、この誤ロンのチョンボは不成立。成立するのは流局よ」

 

あ…………

 

 

 

「さあ、妄、手牌を見せて」

「……」

 

妄の手は、ノーテンだった。ノーテンリーチの発覚により、妄がチョンボ。2000.4000の満貫払いだ。

 

 

 

 

何故……?

何故会長は、自分への収入を拒否した?海底を間違えた事について、黙っていれば誰も気付かなかったのに。

そうまでして、妄のノーテンを確認したかった?

 

まあ、それはそれとして。

妄は、ぼんやりと気が付いた。

 

「おかしい」

 

自分以外、会長達の打牌、麻雀の挙動がおかしい。そしてそれは。

赤牌が絡んでいる。

間違い無い。今回埋め込まれている特殊ルールは、赤牌が関連している。

 

 

……次、攻める時は、赤牌を手牌に入れてリーチを打ってみよう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。