{横赤③}
{二三四四五六③③③8} {裏一一裏}
「は…………?」
え?何?{赤③}?赤の{③}?
「え、あ…………」
会長だ。会長が牌を仕込んだんだ。
対局が始まる前、妄は卓の上の牌と、椅子に置かれた牌をチェックしていた。椅子には二セット分のマンズの牌があり、そして、卓の中には、三麻設定で、残りの牌が積まれていた。
上に出ていた牌をチェックして、異常は無かった。赤の三の牌なんて無かった。でも、卓の中に入っていた牌までは、時間が足りなくてチェックしていない。そして、上に出ていた牌をチェックしたとしても、対局を始める時にその牌のセットは一旦中に流す。つまり、東一局で使った牌は、チェックしていない方のセットの牌。
会長は、どんな条件を以ってしても、今回の麻雀は連荘が一切起こらない、と言った。つまり、東一局と東二局で使う牌のセットは、一本場二本場が存在しない以上、確実に違うセットのものという事になる。
そして、東一局で使った牌は、東三局で戻って来る。即ち、このシステムで牌が循環し、東場を終えて南場を迎えたら、東一局で使った牌と、南三局、つまり今使っている牌は同じセットという事。
つまりそれは、チェックしていない方の牌。
(くそがっ!)
{横赤③}
{二三四四五六③③③8} {裏一一裏}
この{赤③}を、カンにより手牌に取り込んでしまったら、あがった時の得点が一律満貫になってしまう。今カンをして{8}をツモったとして、ダブリー、ツモ、リンシャンで満貫。それに裏が二つ乗れば跳満だ。手牌には重なっている牌が多いし、カンもあるからドラ自体増えている。跳満や、あるいは倍満まで手が伸びる可能性は十分にあった。
しかし、しかしだ。{赤③}を入れてしまうと得点は満貫止まり。だからと言って、そもそもカンをしなければツモ切り以外に選択肢が無い。この{赤③}。放銃しない保障は全く無い。
「あ……」
そうだ。一回目の{一}カンで海底がずれている。もう場は十六巡目。あと残っているのは、親の会長のツモが二回。その他の者のツモはあと一回ずつだ。
と、いう事は?この{③③③赤③}を暗槓すれば、会長に回る予定の海底をずらす事ができる。会長は、海底でツモれば満貫確定、それに裏が付けば……
――ムカつくんですよ……あなた……
「ひっ!」
気持ちが悪かった。この半荘では既に二回、海底牌絡みのアクシデントが起こっている。
三回目?まさか三回目もあるって?でも。
夢子に、何度も、同じような事をして、そして、嫌われて。
{横赤③}
{二三四四五六③③③8} {裏一一裏}
どうせ死ぬなら……
強く打って……
死ね……!
打、{赤③}……!暗槓拒否の打{赤③}……!
その時、会長の手牌、待ちは。
「…………」
{④④⑤⑤⑥⑥⑦⑦⑧⑧⑨22}
図らずも、妄が配牌時、最後に想定した、選択可能なドラ{北}単騎を放棄した形であった。
ダブリー、平和、二盃口、ドラドラの倍満。{③⑥⑨}待ちの三面張。
そう、妄が放った{赤③}はロン牌。会長のロン牌であった。
しかし。
会長、倒さない。そうだ、今妄が打った{赤③}は赤牌。これで倒せば満貫止まり。もちろん満貫というのは十分高い。しかし、会長には、高目の{⑨}をツモって裏々と付けば、十一役の三倍満。もし{⑨}は引けずの場合でも、{⑥}を引いても、二盃口の代わりに一盃口が付いて、{⑥}はドラであるから合計八役。倍満は確定。裏三つ以上で三倍満だ。
その大きな可能性を捨てて、一番の安目である{赤③}の出あがり。しかも赤牌である為、裏ドラの乗る乗らないに関係無く満貫止まり。そんな、馬鹿な事が、あるか。
会長、倒さない。ロン牌である{赤③}を見送って、そして、次巡。
「ツモッ!」
{二三四四五六③③③8ツモ8} {裏一一裏}
「ダブリーツモ、そして裏っ!」
見えたのは、{②九}……!
「よし乗ったっ!ダブリーツモそして七!倍満4000.8000だ!」
点数状況
妄:54000
豆生田:11000
会長:21000
清華:14000
勝負はオーラス!最終局に入る!圧倒的リードの妄、その差33000。倍満を直撃されてもまだ届かない。リーチ棒さえ出さなければ。
「逃げるっ……!」