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この時、会長の待ちは{147}。妄が掴んだ{4}はロン牌だった。
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どうする?打つか?この{4}……
………………
……待て。何故豆生田は{⑤}を鳴く?
それは、南一局の終局間際の時の事。
「ポン」
{⑤赤⑤横⑤}
「ポン」
{五五横五}
「ポン」
{5赤5横5}
「ポン」
{11横1}
{裏} {11横1} {5赤5横5} {五五横五} {⑤赤⑤横⑤}
豆生田、裸単騎。直前に{②と④}を切っているから、待ちは{③}単騎と思われる。そうだ、今にして考えれば、{③}には赤が入っている事が明らかだから、{赤③}単騎だった可能性もあるだろう。
……しかし?本当にそうか?本当に豆生田は{③}待ちだったのか?
(あっ……!)
豆生田は、{②と、④と、22}という対子を落としている。つまりそれは、鳴き始める前、豆生田の手牌は、{115赤5五五⑤赤⑤22裏裏裏}。対子五つと残りの何か。七対子のイーシャンテンだったと言える。
あの時、場はもう十六巡目。山が尽きて流局の間際だった。つまり、残りのツモの可能性が僅かな為、面前で七対子を目指す事をやめ、一か八か、形式テンパイの為に鳴きに行くのも選択としてあるだろう。
しかし。
豆生田は、{②と、④と、2と、2}を、持っていた。持っていたのだ。つまりその四枚と、鳴く前の牌を合わせて手牌を見ると。
{②④⑤赤⑤五五5赤51122裏}
{裏}の牌が、最後まで残って裸単騎になった何かであるという訳だ。
え――――?
この形から、{⑤}を鳴くのは、変、じゃあ、ないか?
他の部分を鳴くのは納得できる。しかし、{②④⑤赤⑤}の形を持っていたなら、{②}を払った上での{④⑤赤⑤}の複合形で、{⑤}は元より、{③⑥}の受けを持っている事ができた。
それが、おかしい。
そこが…………
裸単騎の余り牌が、{11223}。一盃口受けの{3}であったなら。
「…………」
赤…………!
あの時のあの牌は、{③}ではなく{3}!そしてそれは、赤牌の{赤3}!そして、会長は結局、両方の麻雀牌のセットに、赤の三の牌を仕込んだ。ならば、今、南四局で使われているこのセットにも、{赤3}は、入っている……!
妄は、{4}を河に放った。妄は{1}を暗槓で四枚抱えている。だから{14}を会長が待っている可能性は高いと考えた。当たってもいい。倍満振ってもいい。倍満まで届いても逆転には至らない。そして、最後の最後に気付いた事実、{赤3}の存在。ならば尚更……!
打、{4}…………!
「ロ――」
「あっ!!」
気付いた。駄目だ。間違っている。そんな訳は無い。会長の待ちは{147}。それが、{2赤3456}の、赤牌含みの可能性は確かにあった。しかし、倍満狙いの会長が、満貫に縛られてしまう赤牌を使っている訳が無い。無論、他に手変わりが効かず、どうしようも無かった。避けられなかったという事ならあり得る。しかし……
会長の、捨て牌。
{九④横⑤}
そうだ。両面のターツを落としているのだから。両面を一つ外しておいて、手に残した両面が赤牌入りなんていう事はあり得ない。
{23456④⑤⑥四五六二二}
ドラ表示牌
{九白赤三白}
{⑤一南②}
「メンタンピン一発三色に、ドラと裏三。十役は倍満よ。16000」
「くっ……」
……あと一本、指が折れていれば、三倍満に届いていた。24000の打ち込みは、詰まる点差が48000。有していたリード33000を超過して、逆転されていた。
こんな事も、あるのだ。ギリギリの、一か八かの、危うい、危うい展開。これが麻雀。
「……あー」
妄はぼやく。
「だぁめだ。冴えてねえ。負けたようなもんだぜ。すげえよ。会長」
「ふふ、そうかしらね?すごいのかしらね。そんな事無いと思うけど」
「ええ~?」
「だって……」
「だって、私の、力じゃないもの」
「え……?」
横を、見る。右側、下家を。
「……ロン」
{南南南白白56} {4} {88横8} {横赤546}
「ダブロンだ。南ホンイツドラ一、8000」
「あっ…………」
豆生田は、拮抗相手の清華と3000点差だった。ゆえに、清華を逆転する為には三役必要。それを、やられた。最終局で。
「ふふふ。お話はまあ後でするとして、楽しかったわねえ?いいわねえ、麻雀って。妄。この勝負は私の勝ちよ。いえ、私と楓の勝ちかしら。ねえ?楓?」
「……どんな現実からも目を背けずに」
「苦境を抱えつつも、前へ。場を拓く。ね?ふふふっ……」