歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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ユーラシアの意地

 

 

 

 アルテミスに入港した事でアークエンジェルのブリッジは安堵に包まれていた。

 ムウの奇襲が不完全に終わった時には、艦を沈められる事も覚悟した。

 実際、ナスカ級を突破する事に全力を注ぎながらも、キラにミーアを回収するよう指示を出すタイミングを見計らってもいたのだ。

 

「何とかなったわね、アルテミスの援護に感謝しなきゃ」

 

「そうですね、しかしザフトは・・・」

 

「そうね、カガリさんの存在を知っても攻撃してくるなんて」

 

「それどころか、より攻撃が苛烈になったように感じました」

 

「まさか、交渉材料としてすら受け入れないなんて」

 

 中立国の国家元首の娘という政治的に重要な意味を持つ存在を無視してアークエンジェルを沈めようとした、ザフトは外交を何だと思っているのだろう。

 ザフトやプラントへの不信を募らせている中、アルテミスから通信が繋がる。

 

「士官全員で司令の所に出頭ですか?」

 

「そうだ、貴艦には船籍登録もなく識別コードもない。状況から判断し入港は許可したが、保安上、無警戒に受け入れる事は出来ない。軍事施設です、それくらいの事は理解していただきたい」

 

「アークエンジェルには、オーブの避難民も乗っています」

 

「それも把握していますよ。身分照会の後で司令と協議してもらう事になるかと」

 

「了解しました。そちらに伺います」

 

「艦長、よろしいのですか?」

 

「向こうもかなり紳士的に対応してくれているわ。ここでごねても状況は悪化するだけよ」

 

 アルテミスでもカガリの歌を聴いていたようで、避難民の事に関しても対応してもらえそうな事もありアルテミスからの指示に従う事にする。

 格納庫のムウとイレブンにも機密上の処置としてストライクのOSをロックしてから出頭するよう伝えた。

 キラがストライクのOSをロックし、コックピットから出た所にミーアが泣きながら飛び込んで来る。

 ザフトの攻撃を振り切り、アルテミスに入港した事で自分だけが助かるという最悪の事態を避けられたと思い、感情が爆発してしまったようだ。

 キラは、なんだか最近よく女の子に抱きつかれてるなとくだらない事を考えながらミーアを抱きしめて、慰めている。

 ムウとイレブンは、そんなキラにカガリや学生達の所に連れて行ってやれと指示する。その方がミーアも安心できるだろうと。

 ミーアは、学生組と無事に再会出来た事に喜んだが、彼らが地球軍の制服を着てキラの負担を少しでも減らしたいと志願した事を知り、守られているだけの自分の情けなさでまた泣いてしまった。

 

 アルテミス・司令室

 

「なるほど、確かに君たちのIDは大西洋連邦の物のようだ」

 

「お手間を取らせて、申し訳ありません」

 

「いや何、輝かしき君の名は私も耳にしているよ、エンデュミオンの鷹殿。グリマルディ戦線には私も参加していた」

 

「おや、それではビラード准将の部隊に?」

 

「そうだ、戦局では敗退したがジンを5機落とした君の戦果には、我々も随分励まされたものだ」

 

「ありがとうございます」

 

「そして、イレブン・ソキウス少尉、最良の戦友か。君にも我々ユーラシアの兵士達が随分と助けられたようだな」

 

「いえ、当然の事をしたまでです」

 

「しかし、そんな君達がまさかあんな艦と共に現れるとはな」

 

「特務ゆえ、仔細を申し上げることは出来ませんが」

 

「先程の戦闘での我々への援護、感謝しております」

 

「全周波数でカガリ・ユラの歌が流されていた。彼女が乗っている艦にユーラシアは協力を惜しまんよ」

 

「カガリさんを始めとしたオーブの避難民達をここで降ろしてもらい、オーブへの引き渡しをお願いしたいのですが」

 

「それは難しいな」

 

「何故ですか?我々は一刻も早く月の地球軍本部へ行かねばなりません。ザフトにも追われていますし、民間人を乗せたままでは」

 

「まぁ、待て。ここでも民間人の安全を保証出来ないのだよ」

 

「えっ」

 

「先程の戦闘は、こちらでもモニターしていた」

 

 そう言ってモニターにアルテミスの周りを航行しているローラシア級を映す。

 

「このローラシア級から出撃した機体が戦闘中にレーダー、光学映像のどちらからもロストした」

 

「ブリッツのミラージュコロイド・・・」

 

「ラミアス大尉、そのミラージュコロイドとはどれくらい持続するのかね」

 

「おおよそ80分程が限界ですが」

 

「やはり、それでは索敵範囲外から傘の内側に入り込まれてしまう可能性が有るな」

 

「彼らが追っているのは我々です。我々が出れば!」

 

「奴らがアルテミスに何も残ってないと判断してくれるかね?」

 

 マリュー達は、反論出来なかった。

 ザフトは民間人が居ようが容赦なく攻撃を仕掛けて来た。

 自分達が開発したミラージュコロイドのせいで、アルテミスの安全も確実では無くなってしまっている。

 避難民達を任せるには、危険な場所になってしまっているのだ。

 

「奴らはいずれ去る、何時も通りにな」

 

 そう言うガルシア司令の顔も、ザフトがこのまま引き下がるとは考えていないものだった。

 

「アークエンジェルには、現状のまま待機してもらう。避難民達の事を踏まえて補給もさせておく」

 

「補給は有難いのですが」

 

「奴らが仕掛けてくれば、派手な戦闘になるだろう。その戦闘に紛れてアルテミスから離脱したまえ」

 

「なっ、それではアルテミスが!」

 

「何、アルテミスはそう簡単には落ちんよ。たとえ、傘が破られてもな」

 

「何故、我々にそこまでしてくれるのですか?」

 

「カガリ・ユラとオーブにはさんざん救ってもらった。ここで手を差し出せない程、ユーラシアは恥知らずではない」

 

 ガルシアの顔は、軍人としての誇りを持つ漢の顔だった。

 アークエンジェルの士官達は、自然と敬礼を行なっていた。

 地位や階級に対する礼儀としての敬礼ではない、尊敬すべき相手を敬うための礼であった。

 

 艦長達が戻ったアークエンジェルでは、ここで降ろしてもらえると思っていた避難民達が不満を漏らしていたが、アルテミスが完全に安全な場所ではない事を説明されて大人しくなった。

 ザフトの襲撃を受ければここも危険だと聞けば、ヘリオポリスを思い出して恐怖と不安に襲われる。

 彼らは、何処にでもいる一般市民である。

 そんな彼らが、ヘリオポリスから常に命の危険に晒され続けているのだ。限界が近づいてきていた。

 

 程なくザフトのローラシア級ガモフは離脱していく。

 しかし、アルテミスに油断はない。

 彼らには、アルテミスを攻略する手段がある事を知っているからだ。

 彼らが本当に離脱したのか、それとも虎視眈々と傘が閉じるのを待っているのか。

 アルテミスは、彼らの襲撃に備えて準備を進めていく。

 

 ガモフのブリッジでは、クルーゼ不在の中アルテミス攻略に話が進んでいた。

 彼らのプライドがアルテミスから足付きが出て来るまで、あるいは隊長であるクルーゼが戻るまで監視しているだけという事を許さないようだ。

 まして、足付きがアルテミスにモビルスーツの情報を残してないとは断言出来ない。

 足付きだけをどうにかすれば良いと言う状況ではなくなっている。詳細なデータを持ち帰らせない為にも、アルテミスを破壊する必要があるのだ。

 こうしてブリッツのミラージュコロイドで接近し、光波防御シールドの発生デバイスを破壊、無防備になった所をガモフと残りのGで強襲をかける事が決定された。

 

 アルテミスでは、アークエンジェルへの補給が終わり何時でも出港出来る状態で傘を閉じた。

 ザフトの襲撃があるまで、もしくは完全に撤退したと判断されるまで警戒を続ける。

 何時来るか分からない敵の襲来に備えるのは、訓練された兵士にも辛いことである。

 それでもアルテミスの兵士たちは油断せず警戒を続ける。

 

 そして、再び戦闘が始まる。

 

「アルテミス表層にモビルスーツ確認、傘の展開装置破壊されていきます」

 

「予想通りだな。対空防御開始、ザフト艦の接近に備えろ!」

 

「アークエンジェルは指示があるまで待機、奴らの目を釘付けにするぞ」

 

 思った以上に早く奇襲に対応してくるアルテミスに、ニコルは焦っていた。

 しかし、自分の任務は傘を展開させない事、後は仲間と合流してから対処すれば良い。

 そう思い、シールド発生デバイスへの攻撃を続ける。

 傘の展開が不可能になる程デバイスを破壊した頃にガモフが到着、デュエルとバスターも合流してアルテミス内部に攻撃を仕掛ける。

 ガモフは外で要塞砲と撃ち合いをしているため、それ程接近は出来ない。

 モビルスーツは3機しかなく、全ての迎撃兵器を破壊して回る余裕はない。

 内部に侵入し、アルテミスに大きなダメージを与えなければ反撃を受ける危険もある。

 しかし、内部でも激しい迎撃を受ける。

 フェイズシフト装甲によってほとんどダメージは無いが、エネルギーは確実に削られてしまう。

 とにかく要塞にダメージを与えようと、持てる火力を振り絞り戦っていく。

 彼らにアークエンジェルやモビルスーツが出て来ない事を疑問に思う余裕は無かった。

 

「ローラシア級との砲戦開始、敵艦を現宙域に拘束します」

 

「敵モビルスーツ、要塞内部に侵入!」

 

「守備隊に迎撃命令を出せ」

 

「派手に奴らの目を引きつけるのだ」

 

「司令、奴らの目的は我々です。アークエンジェルに出港許可を!」

 

 アルテミスの被害が拡大していく中、これ以上迷惑はかけられないと出港要請を出す。

 

「まだだ!今出れば奴らに見つかってしまう。戦闘で発生する熱源やデブリに紛れて脱出出来るようになるまで待機だ!」

 

「しかし、それではアルテミスが」

 

「舐めるな!たった数機のモビルスーツとローラシア級一隻にやられる程アルテミスは脆くはない」

 

 ガルシア司令が吼えるように叫んだ後、表情を和らげる

 

「これは、我々の意地だよ。君達を逃した後、我々も脱出する。心配は要らん」

 

 司令の言葉を聞き、アークエンジェルも最後までアルテミスを信じて任せることにした。

 

「守備隊に告げる、全火力を投入して派手に爆発させろ!」

 

「これは歌姫カガリ・ユラが乗る艦を守る為の戦いだ、辺境の基地で燻っていた我々に訪れた晴れ舞台だぞ、ユーラシアの誇りを示せ!」

 

 ガルシア司令の声にアルテミスの全ての兵士達が咆哮を上げる。

 迎撃用のミサイルを内部に侵入したモビルスーツに向けて使う。

 ともすれば自爆の様にも見えるその攻撃にザフトも対応を余儀なくされる。

 表層部で次々と爆発が起こり、熱源がザフトのセンサーを埋め尽くす勢いで広がる。

 

「よし今だ、アークエンジェルを発進させろ!」

 

 ガルシア司令の指示を受け、アークエンジェルは全速力で発進する。

 大きな爆発に包まれるアルテミスを背に戦場を離脱していく。





エイプリルフールクライシス以降の行動でカガリやオーブに対する地球側の好感度は高いです。
反対にプラント側は、邪魔になっているので理由があれば攻撃しちゃうくらいに好感度が低くなってます。(ただし、地上軍は除く)
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