歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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トゥルーザフトとの戦い4

 

 

 

 統合軍中央本陣、無人機『ゴースト』の圧力をもっとも受けている戦場は、キラ達、アークエンジェル機動部隊の活躍によりなんとか持ち堪えていた。

 その戦場にリベリオンが加わる。

 アークエンジェルに並び立つようにパラスアテナが進み出て、護衛のミネルバからシン達が出撃していく。

 

 キラは、シン達が参戦して無人機からの圧力がグッと下がったことを感じていた。

 敵として戦ったことがあるからこそ、その実力を理解している。

 味方となればこれほど心強い部隊もそうはいない。

 

 そこに、闇ラクスの歌に釣られるようにカガリ達の歌が聞こえてきた。

 3人の歌姫達による共演。

 それにより、彼らは確信する。

 この戦場に限り、相手が裏切ることはない。

 信頼して背中を預けることが出来る仲間なのだと。

 

 不思議な感覚だった。

 分かり合いながらも立場の違いから戦わなければならなかった者達がこの戦場限定であっても協力し合えている。

 交わるはずのなかった道が交差したのだ。

 

 シンのインパルスとキラのホワイトセイバーが互いをフォローしている。

 カガリの歌がいつも以上に近くに感じる。

 自分がカガリに支えられ、背中を押してもらえているから分かる。

 シンも闇ラクスと想い合い、支えられているのだと。

 

 やっぱり、君も主人公だよ。

 いや、違うかな。

 命は、誰にだって一つだ。

 きっと、誰もが自分の人生と言う物語の主人公なんだ。

 

 誰もが特別であり、オンリーワンである。

 そんな考えが出来るようになったキラにとって、闇ラクスもシンも敵とは思えなくなっていた。

 立場の違いから矛を交えることがあっても、相手の正義を否定してはいけないのだと学んでいた。

 

 

 

 アレックスと偽アスランが激しくぶつかっている戦域にも歌は届いていた。

 

「これは、ラクス?」

 

 この場には3人の歌声が響いている。

 なのに、アレックスにはラクスの歌声がより明瞭に、より近くに聞こえていた。

 それは、ラクスの想いをより強く感じていると言うこと。

 どこまでも自分を気遣う、想いの深さ。

 アレックスの支えになれない自分の不甲斐なさへの嘆き。

 それでも、少しでも助けになればと懸命に歌う健気さ。

 そんな歌に背を押されながらアレックスは戦う。

 これ程までに自分を想ってくれる人がいる。

 だが、感動で涙する時ではない。

 

「ありがとう、ラクス」

 

 彼女の想いに応えるためにも負けるわけにはいかない!

 アレックスがブラックセイバーをさらに加速させていく。

 

「くっ、ここに来てさらに動きが良くなるだと!」

 

 偽アスランが押され始める。

 勝負の天秤が僅かながら傾き始めたのだ。

 

 その変化を敏感に感じ取ったニコルが焦りを浮かべる。

 このままではアスランが負けてしまうと何度も援護に駆けつけようとするが、その度にイザークに阻まれてしまう。

 

「邪魔をしないでください!

 このままではアスランが!」

 

「勝負の邪魔はさせん!

 この因縁の決着は、あいつら自身につけさせるべきものだ」

 

「何も知らないくせに!

 アスランがどれほど悩み、苦しんできたか!」

 

「知らないさ、何も!

 俺は、奴の知り合いでも、仲間でもないんだからな。

 だから、俺はアレックスを信じる」

 

「それでも僕は、アスランに全てを背負わせたくないんです!」

 

 ニコルがイザークのブルーライダーを振り切るためにブラックライダーを加速させていく。

 

 

 

 闇ラクスの歌がシンを更なる高みへと押し上げていく。

 共に歌う二人の歌姫達に大切な者のために歌うとはこうするのだと教えるかのように。

 いや、実際に教えているのだ。

 ローレライ・システムの正しい使い方を。

 

 闇ラクスは、SEEDホルダーではない。

 歌姫としての才能も特別優れているわけではなかった。

 探せば、彼女以上の才能の持ち主などいくらでも見つかるだろう。

 それでも、今、闇ラクスは二人の前にいる。

 凡人が命すら犠牲にするほどの覚悟だけを武器に天才達の前に立ち、導いているのだ。

 

 そんな闇ラクスの歌を受けて、シンは再びあの領域に至ろうとしていた。

 やっぱり、闇ラクスがいれば俺は何処までも登っていける!

 でも、いつまでも闇ラクスに頼るわけにはいかないんだ!

 

 シンが自らの意思でその領域に踏み込む。

 シンの中で何かが弾ける!

 世界の全てを置き去りに自分だけが加速していく感覚。

 それは、キラと完全に並び立つことが出来たということを意味していた。

 

 キラもインパルスがギアを1段階以上上げた事を感じていた。

 確かにここが勝負どころだ。

 キラもリミッターを解除して潜在能力を解放していく。

 ここでいつもと違う感覚がした。

 キラの中で何かが弾ける感覚がいつもより滑らかでスムーズなのだ。

 カガリが闇ラクスの歌から学び、キラをサポートしていることで身体に掛かる負担が大幅に軽減されていた。

 ありがとう、カガリ。

 これなら、もっと戦える!

 

 キラとシンが誰にも追いつけない速度で宇宙に二重螺旋を描いて、無人機達を切り裂いていく。

 その姿に周りの兵士達も鼓舞され、トゥルーザフトを押し返さんと攻勢を強めていった。

 

 

 

 アレックスと偽アスランの戦いでも動きが出る。

 ラクスの歌によってアレックスの中の最後の扉が開かれようとしていた。

 ニコルを殺してしまったトラウマから、自らの力を否定し、封じてしまっていた。

 その封印が綻び、解かれようとしている。

 

 アレックスの中で逡巡が生まれる。

 本当にいいのか?

 この力を使ってしまって。

 また、大切な誰かを殺めてしまうかもしれない。

 

 そんなアレックスの背中をラクスが優しく支える。

 

 大丈夫、貴方は強い人だから。

 力は、ただ力。

 想いだけでも、力だけでもダメなのです。

 大切なものを守るのは、いつだって貴方の意思なのですから。

 私が貴方を信じて支えます。

 

 ああ、ラクス。

 君は、こんなにも俺の心を勇気付けてくれる。

 俺は君に何かを返せるだろうか?

 

 見返りを求めているわけではありません。

 それでも何かを返そうと思うのでしたら、貴方に私が信じるアレックスを信じてほしい。

 

 ここまで言われたなら覚悟を決めなきゃ男じゃない!

 

 アレックスの中で何かが弾ける。

 

 潜在能力を解放したアレックスの前に圧倒されてしまう偽アスラン。

 

「これは、今までの動きとは違う。

 これがSEED、俺たちのマスターピースたる由縁の力か!

 だが、お前がSEEDホルダーなら、俺だってSEEDホルダーだ!」

 

 偽アスランの中でも何かが弾ける。

 勝負は再び拮抗し、天秤の傾きは戻ったかに見えた。

 しかし、実情はそうではない。

 そのことを理解してしまっているニコルの心の乱れは収まらない。

 

「駄目ですよ、アスラン。

 貴方のSEEDは不完全、先に限界が来てしまう!」

 

 SEEDとは、文字通り進化の種のようなもの。

 次の世界を生きるために新たな性質、新たな機能を獲得するための要素である。

 カガリやラクスが特別な歌声という形でその種を芽吹かせたように。

 では、キラやアレックス、シンが発現したSEEDとは何か?

 潜在能力を引き出すためのリミッター解除なのか?

 それは違う。

 火事場の馬鹿力といった言葉があるように条件さえそろえば誰にでも可能な全ての人類が備える既存の機能に過ぎない。

 彼らのSEEDの本質、それは脳の構造にある。

 戦闘と言う大容量の情報を高速で処理し続けても耐えられる、情報処理に特化した神経ネットワーク。

 それが彼らのSEED。

 

 偽アスランの脳は、アレックス達ほど情報処理の高速化に適応していない。

 常人よりは長く高速処理を持続できるものの、アレックスよりも先に限界に達するだろう。

 限界を超えてなお高速処理を続ければ脳の神経が焼き切れてしまう。

 偽アスランは、それで満足なのかもしれない。

 マスターピースであるアレックスを越えられなかったことは心残りではあるだろうが、戦いの末に死んで、死後もコーディネーターを否定する汚点として歴史に刻まれ続ける。

 それは、偽アスラン自身が望んだこと。

 

 だが、ニコルはそれで納得できない。

 そんな終わりでは、アスランに救いが無さすぎる!

 

「ぐうっ、やはり、届かないか」

 

 ついに偽アスランが競り負け、ビームサーベルがコックピットに迫る。

 

「こんな終わりは認めない!」

 

 ニコルが捨て身の加速で二人の間に割り込む。

 盾になったことでビームサーベルは、ニコルが乗るブラックライダーのコックピットを切り裂くコースに乗っている。

 目の前に迫るビームの刃を見つめながら、ニコルは独りごちる。

 

「どれほど否定しても、僕もニコルだったってことですか。

 オリジナルと同じような死を迎えるなんて。

 でも、不思議と悪い気分じゃない。

 オリジナル、君も同じ気持ちだったのかな?」

 

 偽アスランを庇うニコル・レプリカの姿がかつてのトラウマを蘇らせる。

 俺は、またニコルを殺してしまうのか!

 

 諦めないで!

 

 ラクスがアレックスを信じて支え続ける。

 

 貴方が諦めなければ、きっと運命だって変えられる!

 

 ラクスの歌に導かれ、アレックスは潜在能力の最後の一欠片まで絞り出す。

 

「うおォォォォォォ!!!

 俺は、もう二度とニコルを殺したりしない!」

 

 ビームサーベルの軌道を強引に変える。

 コックピットに向かっていたビームの刃は、ブラックライダーの両足を切り落とす結果となった。

 

「どう言うつもりです?

 ここに来て不殺でも気取るつもりですか?」

 

 寸でのところで死を免れたニコルが毒付くが自分達が負けたことは理解していた。

 偽アスランの脳はもう限界で、自分のブラックライダーも両足を失い、戦闘力は激減している。

 向こうには万全な状態のアレックスとイザークがいるのだ。

 

「お前達を殺す必要は、もう無いだろ。

 この戦いが終わればアスラン・ザラの名は汚点として歴史に刻まれる。

 なら、これ以上戦う必要なんてない。

 二人とも、名前と顔を変えて静かに生きていけばいい」

 

「おめでたいですね。

 貴方達がネームレスと呼ぶ組織がもうすぐ動き出す。

 世界は彼らが望む色に塗り潰されることになる。

 だから、僕は戦ってきたんだ。

 その世界で塗り潰されずにアスランと生きるために!」

 

「それが、ネームレスが行おうとしているコード・ローレライか。

 そして、お前は例外として扱ってもらうために組織に従っているんだな?」

 

「ええ、そうですよ!

 組織の力は底知れない。

 だから、せめて次の世界で自由を求めることのなにがいけない!」

 

「俺達はネームレスに勝つ!」

 

「そんなもの、組織をよく知らないから言えるんです!」

 

「関係ない!

 どれほどの力を誇ろうと、奴らに抵抗する者達がいる。

 そして、その力を一つに束ねようとしている者も」

 

「ムルタ・アズラエルですか?」

 

「彼もその一人だ」

 

「分かりました。

 ここは引きます。

 そこまで言うのなら、この戦場を生き残って見せてください」

 

「何?

 どう言う意味だ!

 すでに戦場の趨勢は俺たちに傾いているんだぞ!」

 

 アレックスの問いに答えることなく偽アスランとニコルは離脱していく。

 

 右翼の中核となっていた偽アスラン達が脱落した。

 そして、時を同じくして左翼でも動きがあった。

 

 

 

「ほう、これが歌の力とやらか。

 だが、俺には必要ないな。

 歌に助けてもらわずとも、俺こそが最強であると証明してくれる!」

 

 カナードのスーパーハイペリオンがハイネのグフ・イグナイテッドに攻勢を掛ける。

 すでにハイネの実力は見切っている。

 後は追い詰めていくだけの狩だ。

 

「くそっ!

 何故だ!

 俺は特務隊にいた事もあるエリートだぞ!

 こんな所で死んでいい人間じゃない!

 無人機ども、さっさと俺を守れ!」

 

 ハイネは、必死に無人機を利用することで生き延びていた。

 彼は腐ってもトップエースだった男。

 このままでは、無駄に時間が掛かっていただろう。

 だが、彼は目の前のカナードに対処することに集中してしまっていた。

 そして、戦場にいるのは彼だけではない。

 

「後ろがお留守ですよ!」

 

 プレアのドレッドノートが背後から切り掛かってきた。

 コックピットを斬り裂いて迫るビームサーベルに焼かれながらハイネは世界への呪詛を吐く。

 

「こんな馬鹿な!

 優秀な者が上に立ち、世界を支配することの何が間違っている!

 俺達は・・・正しい・・はず」

 

 コーディネーター至上主義に染まり、最後まで己を顧みれなかった男の最後だった。

 

 

「おい、プレア。

 余計なことをするな。

 奴は俺の獲物だったんだぞ!」

 

「はいはい、あんな奴よりよっぽど強そうな味方が活躍してますよ。

 時間を無駄にするより、無人機を掃討して味方を救う方がよっぽど最強の証明になるでしょう」

 

「ふん、まあ確かに他の奴らが目立っているのは気に食わない。

 この戦場にいる奴らに俺の力を見せつけてやるとしよう」

 

 プレアは、カナードの操縦方法を心得ているらしく、見事に残敵掃討に誘導していた。

 

 両翼の指揮官が失われたことで戦場は一気に統合軍、リベリオン連合有利の情勢となる。

 トゥルーザフトの有人機の士気は崩壊し、右往左往し始める。

 まともに戦っているのは無人機のみと言う有様だ。

 

 

 そんな中でもライトマンは落ち着いていた。

 

「やりますね。

 敵の闘争心を奪う歌ではなく、味方のSEEDの力を引き出す歌ですか。

 闇ラクスをすぐに壊れて使い物にならなくなる偽物と判断したのは誤りでした。

 最初に確保すべきは彼女だったのかもしれません」

 

 ライトマンは、鎮痛な面持ちでコンソールのボタンを操作する。

 

「ようやく出番か?」

 

 抑揚のない機械音声が通信機から流れる。

 

「ええ、彼らの力を侮っていました。

 出来れば君達に頼りたくはなかったのですが、仕方ありません」

 

「組織を出し抜こうなど無駄なことだ。

 お前も組織の掌の上で踊っていたに過ぎん」

 

「それでも、少しでも理想に近づくために足掻かせてもらいますよ」

 

「好きにしろ。

 我らは出るぞ」

 

 トゥルーザフト旗艦の後方にミラージュコロイドで姿を隠していた2隻の輸送艦が姿を現す。

 そこから60機ほどの新手が出撃してきた。

 これこそがライトマンの切り札。

 ネームレスの戦力が歴史の表舞台に姿を現した瞬間であった。

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