歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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名も無きもの達の蠢動

 

 

 

 ホーク姉妹によってライトマンが討たれたことによりネオ・デスティニープランは阻止された。

 また、戦力の中核であった偽アスランやハイネなど名だたるエース達を失い、残っていた兵士達もラースによってほぼ全滅したためトゥルーザフトは完全に消滅したと言える。

 最後に残っていた脅威であるラース達が操るゴーストライダーも歌姫達によって発動したローレライ・システムの特殊機能の力で消滅しようとしていた。

 

「なんだ?私が消えかけている?

 いや、これは、私とは異なるゴーストライダー本来の人格とでも言うべきものが生まれかけているのか?」

 

 ゴーストライダーもゴーストと同じく外部からプログラムを変更することは出来ないように作られている。

 なのに、電子の領域でインストールされたラースの人格を押し退けて別の存在がその領域を広げつつあった。

 生まれたばかりの幼い人格がそれでも自分を主張しラースを押し退けようとしている。

 外部からインストールされたラースとゴーストライダーのプログラムの中から生まれた人格では、後者の方が機体に対する親和性が高い。

 歌に導かれ自己を確立しようとしているゴーストライダーの前にラースはその存在を掻き消されようとしていた。

 

「ちっ、組織も想定していなかった事態だな。

 これでは、ゴーストライダーも使い物にならん。

 これ以上は私の存在も保てないか。

 まあいい。

 この戦場を見ていた別の私がこの情報を持ち帰り、次の私に活かすだろう」

 

 自分と言う存在が消去(デリート)されようとしている中でもラースに恐怖はない。

 自分が積み上げた経験を次の自分に託せなかったことを惜しいと思うが、この程度の失敗は何度も経験してきた。

 次の私が、この失敗を乗り越えて先に進んでくれる。

 

「ならば、次の私のために手を打つのみ」

 

 次の瞬間、ゴーストライダーは自爆していった。

 それなりの数のゴーストが寝返ってしまっている。

 この上、ゴーストライダーまで統合軍の戦力に加わっては今後の組織にとって障害となるかもしれない。

 それを避けるために自分と言う存在が消えてしまう前に自分ごと機体を破壊したのだ

 組織への忠誠故の覚悟から来る行動ではない。

 自分自身を道具としか見ていないが故にその命はどこまでも軽いのだ。

 ラースが組織に従っているのも、それが最も自分の性能を引き出すことが出来ると判断しているからだった。

 

 

 

 戦闘が終局へと入った時、リベリオン旗艦パラスアテナの片隅にハロルド・スロースはいた。

 その顔は喜色に満ちている。

 

「ふふふっ、ふはははははっ!

 素晴らしい!

 これ程の数値を叩き出すなんて。

 カガリやラクスのデータも申し分ない。

 これならシャロン・アップルは、確実に最強の歌姫になれる!」

 

 七大罪の一人、怠惰のスロースである彼が闇ラクスの付き人を長く続けてきた理由は歌を利用して反統合政府勢力をまとめ、リベリオンを組織し、世界の流れをコントロールすることだけではない。

 シャロン・アップル計画に必要なデータを集めることも彼の任務の一つだった。

 闇ラクスは当初の予想を超えた成長を見せたがその力は頭打ちとなり、必要なデータを得るためには本物のSEEDホルダーを使うしかないと判断された。

 だから、ロドニアのラボを襲撃したファントムペインにローレライ・システムの情報を流したのだ。

 不自然にならないように他の情報と共に。

 

 この戦いで起きたことは、ネームレスにとっても、ハロルドにとっても想定外のものであった。

 彼らの予測では、ローレライ・システムを得たカガリとラクスが闇ラクスを踏み台にして遥かな高みに到達すると言うものだった。

 しかし、現実は闇ラクスが二人のSEEDホルダーを導き、3人ともが想定を超える領域にまで成長してみせた。

 

「闇ラクス、貴女は私の予想を超える成長を見せてきた。

 それでも、これ程とは思っていませんでした。

 貴女は確かにラクス達の前を歩いていましたよ。

 今、このステージで最高の歌姫は貴女です」

 

 ハロルドが3人の歌のデータを何処かへと送信した。

 

「これでここでの仕事も終わり。

 闇ラクス、貴女との付き合いもここまでですね。

 ラクスを超えられたのです。

 貴女も満足でしょう?」

 

 後は任せてください。

 貴女達のデータによって世界は完全になる。

 

 ハロルドは、戦闘後のどさくさに紛れてシャトルに乗りリベリオンから離脱していく。

 彼はスロースの名を持つ一流のエージェント。

 そんな彼でも監視カメラ越しの視線には気付けなかった。

 彼の行動の一部始終を監視している者達がいたのだ。

 彼らの存在がネームレスの計画を躓かせる小石になることをハロルドは知る由もなかった。

 

 

 

 戦場を離脱した偽アスランとニコル・レプリカは、ネームレスの輸送船に回収されていた。

 そして、ネームレスからニコルに新たな指令が下る。

 

「ニコル・レプリカ、次の任務です。

 速やかに指定のポイントに向かいなさい」

 

「待ってください!

 アスランはどうなるんです!」

 

「招集されているのは貴方一人です。

 部外者である彼の同行は認められません」

 

「そんな!

 それじゃあ、計画が実行されたらアスランはどうなるんですか!?」

 

「それは、貴方の働きしだいですね。

 完全なる世界の一部として人格を書き換えられるのか、僅かな例外として認められるか。

 全ては貴方しだい」

 

「・・・分かりました。

 指定のポイントに向かいます」

 

「待て、ニコル。

 俺のためだと言うのならこれ以上戦う必要はない。

 俺の願いはもう叶った。

 お前は十分に助けてくれたよ」

 

 偽アスランがニコルを止めようとする。

 ニコル・レプリカは、ネームレスが送り込んできた監視者だ。

 だが、いつの間にか自分のために戦ってくれる大切な仲間になっていた。

 目的を達成した自分には、もう何もしたい事がない。

 そんな抜け殻のような存在のために危険を冒してほしくなかった。

 

「ありがとうございます、アスラン。

 でも、僕は今のアスランを失いたくないんです。

 どっちにしろ、僕は組織には逆らえない。

 なら、欲しい未来のために戦います」

 

「待ってくれ、ニコル!

 なら、俺も共に戦う!」

 

 そんな偽アスランにニコルは首を振って応える。

 

「組織は貴方を信用していません。

 もし計画に参加させるなら頭の中をイジるでしょう。

 そんな事は認められない。

 だから、ここでさよならです」

 

 偽アスランがニコルの手でシャトルに押し込められる。

 

「待て!待ってくれ、ニコル!」

 

 脳への負荷でいつ意識を失ってもおかしくないほど消耗している偽アスランは碌な抵抗も出来なかった。

 ニコルを乗せ、離れていく輸送船に向かって手を伸ばしながら偽アスランの意識は闇に呑まれていった。

 

 

 

 ネームレス中枢

 

「スロースから送られてきたデータは想定以上だった」

 

「計画は予想以上に上手くいったと言うことですか?」

 

「うむ、これでシャロン・アップル計画の準備は完全に整ったことになる」

 

「では、シャロンが完成しだい計画を発動させるのね?」

 

「そうだ。

 これで完全な世界が訪れる。

 不完全な人間による世界の終焉を告げるレクイエムを奏でてやろう」

 

「ふふっ、楽しみだなぁ。

 世界が塗り潰されていく様子を早く見たいものだ」

 

「ああ、これで美しい世界を取り戻せるわ!

 地球を汚し続ける人間は、私達の手で管理運営されなければいつか世界を巻き込んで滅びてしまう。

 蒼き清浄なる世界のために、この計画は成功させなければね」

 

「くだらない感傷はよせ。

 ブルーコスモスなど我々が作った舞台装置の一つに過ぎん」

 

「そうだ、ようやく我々は人間以上の存在となる」

 

「あら、感傷くらいいいじゃない。

 ようやく計画が前に進む時が来たのよ。

 もう、誰にも止められないわ」

 

「だが、計画に不確定要素がある事も事実。

 端末の一つがアズラエルの手に落ちた」

 

「それこそ気にする必要はないでしょう。

 本来の人格はすでに消えている。

 端末から情報を抜き取ることなど不可能ですよ」

 

「だと良いが、何事にも想定外はあり得る。

 シャロンの守りを万全なものにするためにも七大罪を集結させよう」

 

「ですが、空席もありますよ?」

 

「適任者を選抜させる。

 この計画が発動すれば人類同士の戦争はなくなるのだ。

 万が一にもシャロンを破壊されるわけにはいかん」

 

「警戒し過ぎだと思うけどね」

 

「この決定に不服か?」

 

「いや、異存はないよ。

 七大罪を集めて派手にやるのも楽しそうだし」

 

「よろしい、ではシャロン・アップルの完成を持って計画は最終フェーズに入る」

 

「「「「「「「「了解」」」」」」」」

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