歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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騎士の誓い

 

 

 

 ファントムペイン母艦ガーディー・ルーにアズラエルから補給が届いていた。

 

「プロヴィデンスを使うのですか?」

 

「ああ、もはや手札を隠す段階ではないからな。

 もっとも、それはネームレスも同様だろうがね」

 

 ハンガーに運び込まれた機体を見上げながらアレックスの問いに答えるネオは、柄にもなく精神を高揚させていた。

 

 前大戦で自らが撃つと定めたもの達の尻尾をようやく掴んだのだ。

 アズラエルには感謝しなければな。

 奴らの計画の発動は止められないと自身の感が伝えているがあの男がいなければ気が付けば手遅れだったということになっていたかもしれない。

 

「理事が切った手札があれですか」

 

 アレックスの視線の先にはプロヴィデンスと共に搬入された機体があった。

 それは懐かしさと共に忌まわしい記憶をも呼び覚ます姿をしていた。

 

「ああ、プラントから接収したデータを元に開発されたジャスティスとフリーダムの後継機。

 インフィニットジャスティスとストライクフリーダムだ。

 君にはインフィニットジャスティスに乗ってもらう」

 

 アレックスの顔が曇る。

 洗脳されていた時に乗っていた機体の系譜だ。

 精神的な抵抗を感じるのも仕方のないことだ。

 それでも乗らないという選択はない。

 ネームレスとの決戦で最善を尽くさずラクスを守りきれないなんてことになれば今度こそ自分を許せなくなる。

 

 ラクスを守ると誓ったんだ!

 

 

 

 トゥルーザフトとの戦いが終結した後、アレックスはラクスに会いに行った。

 アレックスが初めてラクスと向き合うために自分から行動を起こしたのだ。

 

 見つめ合う二人。

 最初に口を開いたのはラクスだった。

 

「おかえりなさい、アレックス。

 無事で良かった」

 

 そう言って安堵の表情を浮かべるラクス。

 

 情けない。

 いざ、ラクスを前にしたら言葉が出ないなんて。

 

「ありがとう、ラクス。

 君の歌が、想いが俺を支えてくれたから後悔しない選択をすることが出来た」

 

 ニコル・レプリカを殺さずに済んだ。

 あいつとニコルが別の存在だということは分かっている。

 それでも、自分以外の誰かを優先してしまう優しさがニコルと重なった。

 

「嬉しい・・・ようやく、私はあなたに寄り添えたのですね」

 

「ラクス、君はずっと寄り添ってくれていた。

 俺が気付かなかっただけだ」

 

「いいえ、私はクライン家の令嬢としてしか接することが出来なかった。

 もっと早く自分自身をさらけ出す覚悟が出来ていれば、あなたの異変に気付けていたかもしれないのに」

 

 どうして、そんなに自分を責めるんだ。

 あの戦争で君も大変な思いをしていたじゃないか。

 それを乗り越えてカガリ・ユラ・アスハと共に平和の歌を歌った。

 もっと誇ってもいいはずなのに、自分の無力さを嘆き肩を振るわせる姿はとても小さく見えた。

 

 そうか、彼女も俺と同じように悩み、失敗し、後悔もする普通の人間なんだ。

 戦争を終わらせる流れを作った特別な存在だと思っていたけど、そうじゃなかった。

 

 守りたい。

 そう思った。

 

「ラクス、君の歌は、君が思うよりずっと俺の力になってくれていた」

 

「アレックス・・・」

 

「俺なんかが君に相応しいなんて思えないけど、それでも君を守らせてくれ」

 

「いけません!

 私に縛り付けるために歌ったわけじゃない。

 貴方には自由に生きてほしい」

 

「君がクイーンだからか?」

 

 ラクスの肩が跳ねる。

 どうやら図星のようだ。

 俺は女王を守る騎士として作られた。

 自分を守るために戦えば、大人達の勝手な思惑に従うことになると考えているのか。

 

「俺が守りたいのは女王(クイーン)じゃない。

 頑張り屋で意志が強くて、でもちょっぴり頑固な普通の女の子。

 そんなラクスだから守りたいんだ。

 俺を君の騎士にしてくれないか?」

 

「アレックス・・・私も、貴方が騎士(エース)だからじゃない。

 優しくて真面目だけど少し融通が効かない。

 そんな貴方に側にいてほしい」

 

 ラクスが俺の想いを理解して、受け入れてくれた。

 俺達を作った者達は、計画通りだと喜んでいるかもしれない。

 だけど、俺達は運命に従ったんじゃない。

 自分達で選んだんだ。

 女王だとか騎士だとかなんて関係ない。

 この世界に生きる一人の人間として生きていく。

 大人達の思惑なんて知ったことか!

 

 

 この日、アレックスはラクスに騎士の誓いを捧げた。

 二人の姿を月が優しく照らしていた。

 

 

 

「ストライクフリーダムには俺が乗る」

 

 ラクスを守るという誓いを思い出していたアレックスが背後からの声で我に帰る。

 

「・・・イザーク」

 

 イザークの発言はおかしな事ではない。

 むしろ、妥当と言えた。

 記憶を失い、スカーフェイスとして傭兵をしていた時ですらアレックスと互角に戦える実力を備えていたが自分がイザークであることを受け入れ、アレックス達を仲間だと認めてからはさらに神懸かった動きを見せるようになった。

 仲間を人一倍大切にする彼の気質が表に出たことで、それまで傭兵として必要だから行っていた連携とは別次元の領域に昇華されていた。

 仲間を守るために居るべき場所や部隊の中で最も求められている役割を瞬時に察知して、的確にこなしていく。

 今のイザークにならストライクフリーダムを十全に使いこなせるだろう。

 

 だが、アレックスの心に不安が過ぎる。

 フリーダムを彷彿とさせる姿にどうしてもニコルを殺してしまった時のことを思い出してしまう。

 過去に一度洗脳されてしまったのだ。

 自分が暴走して、再び仲間を殺してしまうんじゃないかと考えてしまう。

 

「ふん、俺はニコルほど優しくはない。

 大人しく殺されてやるような真似などせん。

 お前が正気を失ったなら俺が撃ってやる。

 心しておけよ」

 

 イザークの言葉の真意を感じ取れないほど今の俺は鈍くない。

 俺が暴走してしまった時は撃ってでも止めてやるから安心しろと言ってくれているんだ。

 お前も十分優しいじゃないか。

 

「ああ、分かった。

 頼りにしている」

 

「それでいい。

 お前も一人でラクス・クラインを守るつもりじゃないだろう」

 

「えっ、なんでそれを!」

 

「あんな人目に付く所で騎士の誓いなんて立てるからだ。

 アークエンジェルで話題になっていたぞ」

 

「そうそう、やるなぁアレックス。

 女の子に俺が守る!とか言うなんて、昔のお前じゃ考えられないぜ」

 

「ディアッカまで、からかうなよ」

 

「褒めてるんだよ。

 それに、一人で背負うなよ。

 俺たちは仲間だろ」

 

「ラクス・クラインを守りたいのはお前だけじゃない。

 俺も彼女の歌が好きだからな」

 

「イザークは、昔から彼女のファンだったからな」

 

「五月蝿いぞ!ディアッカ」

 

「そんな照れるなよ。

 悪かったって」

 

「とにかく、俺達は仲間だ。

 お前がラクスを守るなら、俺達にも守らせろ」

 

「歌姫の騎士団結成だな」

 

「ああ、カガリにも闇ラクスにも歌姫を守る騎士団がいる。

 なら、ラクスにもいないと格好が付かないだろ」

 

「イザーク、ディアッカ・・・ありがとう」

 

 俺みたいな奴にラクスを守り切れるのか?

 そんな不安が消えていく。

 おれが守りたいものを共に守ると言ってくれる頼もしい仲間達がいる。

 俺の中のニコルが安心したように微笑んでいる。

 今まで不安そうな顔をしていたのが嘘のようだ。

 ずっと心配ばかりかけて済まなかった。

 でも、もう大丈夫だ。

 過去を忘れることは出来ない。

 背負っていくのも変わらない。

 それでも、こいつらとなら前に進んでいける。

 安心して見守っていてくれ。

 

 

 

「アレックスもイザークも最新鋭機か。

 まあ、俺はずっと親父の手伝いをしててブランクがあるからな。

 悔しいが、俺じゃ扱いきれない」

 

 ディアッカが顔を顰めさせる。

 最新鋭機を与えられないことが悔しいのではない。

 肩を並べて戦える実力が自分にないことが悔しいのだ。

 

「ディアッカ、君にも新たな機体が届いている」

 

 ネオがディアッカにも機体があると言う。

 

「えっ、でも今の俺の実力じゃ、新型機をもらっても前線に出たら足手纏いになりますよ。

 俺に出来るのは後方からの支援砲撃くらいです」

 

「そう自分を卑下するな。

 確かに高速戦闘には着いていけないかもしれないがバスターに乗っていたからか君の支援能力はかなりのものだ。

 アレックス達が信頼して背中を任せられるのは君だけだ」

 

「隊長、それじゃあ新しい機体ってのは!」

 

「うむ、支援用の機体だ。

 その名も『ケーニヒ・モンスター』」

 

「ケーニヒ・モンスターですか」

 

「ああ、この機体のプロトタイプに乗っていたパイロットの名をもらったそうだ」

 

「へえ、きっと凄いパイロットなんですね」

 

 最後に搬入された機体は、トールに与えられたモンスターの後継機となる巨人機だった。

 

 

 

 その頃、アークエンジェルでも新型機を受領していた。

 

「ちょっと、アズラエルさん!

 ケーニヒ・モンスターって何ですか!

 その名前は遠慮するって言ったじゃないですか。

 自分のネーミングが拒否されたのがそんなに悔しかったんですか!?」

 

「誤解しないでください、トール君。

 この名前は僕が付けたわけじゃありません」

 

「えっ、じゃあどうして」

 

「開発者達が自発的に付けたんですよ。

 トール君に敬意を払って」

 

「敬意って、なんでですか!?」

 

「モンスターは、あまりのコストに量産も研究開発も凍結されてました。

 ですが、君の活躍によって後継機の開発計画がスタートしたんですよ

 この機体が出来たのは、君のお陰なんです」

 

「俺のお陰?」

 

「忘れたんですか?

 ジャッジメントを始め、君はモンスターで多大な戦果を上げたじゃないですか。

 前線に強いモビルスーツを並べればいいなんて考える人もいたんですが、そんな人に支援機の必要性を叩きつけたのが君です」

 

 それだけの実績を上げてきたんですよと言うアズラエル。

 

「じゃあ、ケーニヒ・モンスターって名前は・・・」

 

「軍に正式名称として登録されています。

 変更は不可ですね」

 

「そんなぁ」

 

「これも有名税ってやつです。

 それだけ評価されているってことでもありますよ」

 

 

 項垂れるトールを置いて、他の機体の説明が続けられる。

 

「キラ君には、我が社とモルゲンレーテが共同開発した機体『アカツキ』

 カガリさんを守る君にオーブからの贈り物ですよ。

 この機体の基本設計は前代表のウズミさんが指揮したそうです」

 

「お父様が・・・」

 

 キラとカガリがアカツキを見上げる。

 ウズミの意志を受け継いだオーブがその想いを形にして届けてくれた。

 その機体の黄金の輝きがウズミの気高い志を表しているようだ。

 

「カガリ、この機体で僕が君を守るよ」

 

「なら、私の想いがキラを守る」

 

 見つめ合い、思わず笑みが溢れる。

 僕が初めて戦う決意をした時みたいだ。

 あの頃から想いは変わってない。

 カガリが何も背負わずに歌える世界にするためにネームレスの野望を阻止しなきゃ。

 

 

 もちろん、他のパイロットにも機体が届いている。

 

 隊長であるフラガにはVMS-09『エクスカリバー』

 イレブンにはVMS-10A『デュランダル』

 フレイにはデュランダルの同型機で赤を基調としたVMS-10B『レーヴァテイン』

 

 それぞれが望む未来へと続く空に飛び立つための翼を得た。

 未来を閉ざそうとするネームレスとの戦いはすぐそこまで迫っていた。






ガンダム恒例の乗り換えイベントが終わりました。
後は最終決戦を残すのみ。
しかし、フリーダム、ストフリに乗らないキラ君は、他にいるのだろうか?
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