歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
七大罪の襲来により、戦場は地獄と化した。
味方が次々に落とされていき、軍全体の士気が低下してしまい完全に足を止められてしまった。
状況を好転させるために打つべき手は明らかだ。
隔絶した個の力を持つ相手には、隔絶した個の力を持つ者を当てるしかない。
一般兵では、ただ蹂躙されるだけで自軍の士気を下げるだけにしかならないのだから。
「くそ!あいつら好き勝手しやがって・・」
魔王達の蹂躙に仲間を人一倍大切にするシンが苛立ちを募らせる。
「シン、ルナマリアとステラ達を連れて奴らの所に行け!」
「えっ」
「わかっているだろう?
奴らを止められるような戦力は限られている」
「隊長、でも、それじゃあここは・・・」
「あまり大人を見くびるなよ。
お前らが抜けた穴くらい俺たちで埋めてやる。
お前のお姫様も帰ってくる場所も守って見せるさ」
「たっ、隊長!
なんでそれを!」
「まあ、あれだけ派手に騒いで告白しておいて隠せるわけないでしょう」
「艦長まで」
「とにかく、ここは任せて行きなさい。
留守を守るくらいはしないと大人である私達の立つ背がないでしょ」
「・・・わかりました。
ここは任せます。
ルナ、皆んな、行くぞ!」
「「「「了解」」」」
「頼んだぞ」
オズマは、この戦場で最も脅威となっている敵へと向かう見送った後、こちらに向かってくる敵戦力へと視線を戻す。
「若いあいつらに一番しんどい仕事を任せたんだ。
守るぞ!
大人の意地を見せてやれ!」
「「「「了解!」」」」
ミネルバを中心にリベリオンが前に出て、歌姫達を守る防衛線を構築していく。
一方、ファントムペインも決断を下そうとしていた。
「アレックス、我々も新手の迎撃に向かうぞ」
「隊長、しかし、それでは戦線に穴を開けることになります」
自分達の戦力が防衛線の要になっている自覚がある。
そんな自分達がいきなり抜けてしまえば戦線に混乱をもたらす恐れさえある。
ネオにその事が分からないはずもないのになぜ?
その疑問に別の声が答えた。
「心配するな。
君達が抜けた穴は、僕らで塞ぐ」
旧ザフト部隊を取りまとめ、指揮を取っているバルトフェルドがここは任せて先に行けと言う。
「すでに防衛線を組み直すために動いている。
流石は砂漠の虎と言ったところか」
隊長として広い視野を持つネオがバルトフェルドの動きの意図を察したからこそ、持ち場を離れると言う決断を下したのだ。
「リベリオンも戦力を抽出して向かわせるために動いている。
なら、ここは僕らの出番でしょ。
最も負担の大きい役を君達に任せなければいけないのは忸怩たる思いだがね」
「バルトフェルド隊長・・・わかりました。
ここは頼みます。
ラクスを守ってください」
「頼まれた。
君達は安心して世界の未来を切り拓いて来たまえ」
ファントムペインの面々も七大罪の下へと向かう。
ミネルバとガーディー・ルーの動きにアークエンジェルも呼応しようとしていた。
「マリュー、俺達も前線に向かう」
「ムウ!」
「分かっているだろ?
奴らをどうにかしないと前に進めない。
それどころか負ける可能性すらある」
マリューも戦況が見えていないわけではない。
むしろ、相手の戦力が異常に大きいことを理解しているからこそ、そんな危険な場所に愛する男を向かわせることを躊躇っているのだ。
「俺は不可能を可能にする男だぜ。
帰ってくるよ、君の所に。
だから、信じてくれないか?マリュー」
そんなマリューの不安を理解しているムウが優しく諭す。
そして覚悟を決める。
死ぬ覚悟ではない。
足掻いて、足掻いて、無様でもいい、この先の未来を愛する女と共に過ごすために最後まで生き抜く覚悟を決めたのだ。
生き抜いて見せる。
ムウの目から、そんな覚悟を感じたマリューが折れる。
まったく、狡い人ね。
「わかりました。
必ず帰って来てね。
私の所に」
「ああ、待っててくれ。
皆んな、行くぞ!」
「「「「了解!」」」」
ムウ達も行動を開始した。
前線で暴れている魔王の下へと近付くにつれて、ムウは何処か覚えのある気配を感じていた。
なんだ、このザラつく悪意。
昔のクルーゼとも違う、だが、何処かで感じたことのある不快な気配。
「イレブン、キラ、この先にいる奴は任せる」
「えっ、ムウさんは?」
「俺は少し確かめなきゃいけない事がある」
隊長として信頼しているムウが何の理由もなくこんな事を言うはずがない。
きっと説明することが出来なくても必要な事なんだろう。
「了解です。
こちらは任せてください」
「僕もムウさんを信じます」
「すまん。
頼んだぞ」
ムウのエクスカリバーが部隊を離れて別の場所へと向かう。
そして、そんなムウに合流する機体が一つ。
ネオのプロヴィデンスだった。
「ムウ、やはり、お前もこの気配を感じたのだな」
「ネオか。
お前が来たって事は、この先にいる奴は俺達と因縁があるってことか」
ムウとネオ、二人が進む先にはドラグーンで猛威を振るっているルシファーがいた。
プライドも近付いてくる二人の気配を感じ取っていた。
「ほう、これは懐かしい気配だな。
まさか、お前達が仲良く並んで私の前に現れるとは思わなかった」
まずは小手調べと行くか。
プライドがドラグーンをムウ達へと差し向ける。
圧倒的な数のドラグーンを精密に操作し、連携させる。
圧倒的な暴威を前にムウとネオもドラグーンを射出して対抗するが、全てにおいて上を行かれてしまう。
「くっ、私とムウが協力してもなお届かないだと。
何者なのだ?」
相手を知らないはずなのに感じる、如何しても受け入れることの出来ない生理的嫌悪。
不快感がネオの心をささくれ立たせる。
苛立ちから僅かな隙が出来てしまう。
その隙を見逃すことなく突いてくるドラグーンのビームがプロヴィデンスに迫る。
「迂闊だぞ!ネオ」
ムウのドラグーンがプロヴィデンスの周囲に展開し、バリアを張ったことで窮地を脱することが出来た。
「すまない、助かったよ、ムウ」
数の多いプロヴィデンスのドラグーンとバリアを張ることが出来るエクスカリバーのドラグーンを駆使して連携して対応していく。
因縁のある二人が自分の前で手を取り合い協力している。
プライドにとっては、運命の悪戯のように感じていた。
「面白い。
こんなかたちで再会するとはな」
通信機越しに聞こえてきた声に聞き覚えはない。
だが、その言葉からやはり何処かで出会っているのは間違いない。
「お前は誰だ?
俺達はあんたに会ったことはないはずなんだかね」
「私は、かつてアル・ダ・フラガであった者だ」
「なっ、親父だと!」
「いや、アル・ダ・フラガの肉体を使っていた者と言った方が正確か」
「どういう事だ!?」
「お前達が私の前に立つのも運命か。
いいだろう、冥土の土産に教えてやる。
人格を上書きし、私が奴の身体を乗っ取っていたのだ」
「!!
なるほど、そういう事かよ」
普通なら与太話としか思えないプライドの言葉にムウの心はなぜか納得していた。
覚えがあるはずだ。
この人を人とも思わない傲慢さ。
かつて親父に感じていたものだ。
同時に昔の記憶も思い出していた。
幼い自分が父親に肩車をしてもらって笑っている。
優しかった頃を知っているからこそ、別人のように変わってしまった父親が許せなかった。
だが、そうか、本当に別人になっていたのか。
「お前がアル・ダ・フラガの肉体を乗っ取っていたのなら、なぜ私を作った?
後継者など必要ないはず」
「ふっ、ラウ。
お前は、我々の悲願を実現するために行われていた実験の一環でしかない」
ネオの心が怒りに染まるが、激情のままに隙を晒せば先程の焼き写になる。
心は熱く煮えたぎっているが頭は冷静に。
歴戦のエースとして己を律してみせた。
「やはり、私の選択は正しかった。
お前達ネームレスこそ、私が討つべき存在だ」
「ネオ、俺を忘れるなよ。
俺にとってもアイツは親父の仇だ」
プライドとの因縁を知った二人は、自らが討つべき者と定めた。
過去の因縁が自らに敵意を向けている状況にもプライドは余裕の笑みを絶やさない。
「来たまえ。
子は親には勝てないと教えてやろう」
ムウとネオが果敢に攻める。
ドラグーンを駆使するだけでなく、ビームライフルによる銃撃戦、ビームサーベルを用いた格闘戦も仕掛けるが悉く対応されてしまう。
銃撃戦や格闘戦に意識を割いているはずなのにドラグーンの動きは些かも鈍りはしなかった。
「くそ!
奴の頭はどうなっているんだ」
「焦るな、ムウ。
今は耐えるしかない」
プライドの実力は常軌を逸している。
特殊な空間認識能力だけでは説明が付かない。
完全なる
射撃、格闘、ドラグーンの制御。
一体どれほど思考を分割すればこんな事が可能になるのか想像も付かない。
それだけに身体に掛かる負担も大きいはず。
いずれ動きが鈍ると信じるしかない。
それほどに苦戦を強いられていた。