歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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魔王の力

 

 

 

 ムウとネオがプライドと戦闘を開始した頃、時を同じくして選ばれたトップエース達も魔王に挑む勇者の如く七大罪との戦闘を開始していた。

 

 

 シン達、ミネルバ組には魔王の方から向かって来ていた。

 

「エクステンデッドの人形共か。

 ちょうどいい、使えなくなったゴミを掃除しておくか」

 

 ステラ達と因縁を持つラースの駆るサタンが凄まじいスピードで真っ直ぐ向かってくる。

 

「この気配はラースか?

 いくらあんたでも無謀すぎるぜ。

 そんなスピードで真っ直ぐ向かって来るなんて」

 

 向かって来る相手の正体に最初に気付いたスティングが仲間達と共に銃口を向ける。

 

 これ程のスピードを出して、ただ真っ直ぐ向かって来るなんてシンですらしない。と言うより出来ない。

 速ければ速いほど軌道を急激に変えることが出来なくなる。

 正面から弾幕を張れば、避けることも出来ずに自分から攻撃に突っ込むカモにしかならないからだ。

 

 スティング達の放ったビームが逃げ道を塞ぐようにしてラースに迫る。

 普通ならこれでチェックメイトだ。

 だが、ラースが普通でない事を知るスティング達はこれで終わるとは思っていない。

 それでも、相手の手札くらいは見れるはずだ。

 あのラースがこんな無謀な突撃を選んだ以上、他の機体のようにこの攻撃を如何にかする何かがあるんだろ?

 さあ、その機体の秘密を見せてみろ。

 

 

 スティング達の目論見は、半分しか当たらなかった。

 サタンは、この攻撃でダメージを負わなかったが、それは特殊な装備で防いだからではなかった。

 

 サタンの軌道が僅かに逸れることで肩に当たるはずだったビームが空を切る。

 その先で胴体に当たる軌道のビームには、細かいスラスター制御と手足の動きによる姿勢制御で機体を回転させる事で回避する。

 次々に撃たれるビームを速度を緩めることなく、最小限のスラスターと機体制御ですり抜けるように避けて進んでいく。

 

「当たらない、なんで!?」

 

「あのスピードで急激な機動は身体が耐えられない。

 だからって、こんなの予測できるか!」

 

 ラースの超絶技巧とサタンの機体性能が可能とした機動。

 戦場を最高速度で真っ直ぐに突き進むための動き。

 人間が耐えられるGには限界がある。

 その限界を超えないために極限まで小さくした回避のための軌道変更がこの奇跡を産んだ。

 無人機のGを無視した機動は確かに脅威だが、機体を強引に動かしている分、ロスも大きい。

 最高速度を追求するならば、必然として機体に掛かるGは最小限になる。

 そして、ラースの技術は回避だけに留まらない。

 あっという間に距離を詰め、すれ違い様の一瞬でスティング達3機に攻撃を当てて行った。

 

「くっ、マジかよ。

 あの速度で攻撃まで当ててくるか」

 

「皆、無事?」

 

「大丈夫、追加パーツで強化された装甲のお陰で損傷は軽微だ。

 けど、どうする?

 このままじゃ、一方的に攻撃を受けて、やられるだけだ」

 

「すまないが対抗策が思い浮かばない。

 出来ることをいろいろ試してみるしかないな」

 

「シン達の方も大変そう。

 こっちは私達でどうにかしないと」

 

「そうだな」

 

 

 

 シンとルナマリア達も別の七大罪と対峙していた為、ステラ達の援護に向かえずにいる。

 

「あのエクステンデッド達と行動を共にしていると言うことは、君がシン・アスカ君だね?

 ミネルバで首元を締め上げられた借りを返させてもらおうかな」

 

 スロースのベルフェゴールが操る多数のウィンダム、ヅダがデスティニーとレジェンドに襲いかかっていた。

 

「くそっ、味方なのにどうして!」

 

「通信も繋がらない。機体の制御が完全に乗っ取られているわね」

 

「元凶があの機体だってのは分かるけど、乗っ取った機体を盾にして前に出てこない」

 

「他の機体は、相手を攻撃する武器でもあり、自分を守るための盾でもあるってことね」

 

「性格、悪すぎるだろ」

 

「あいつを撃つためには、味方も撃つ覚悟がいるわ」

 

「お姉ちゃん!」

 

「私だって嫌よ!

 でも、ここであいつを野放しにしたら被害はさらに拡大してしまうわ。

 私達で止めなきゃ」

 

 

 1機のウィンダムがデスティニーに破壊された。

 

「シン?」

 

「ルナだけに背負わせるかよ。

 手を汚さなきゃいけないなら、俺が最初に汚す!」

 

 シンの叫びを受けて、レジェンドのドラグーンが射出される。

 

「メイリン!?」

 

「私だって、お姉ちゃんだけに背負わせたりしない。

 私もレジェンドのパイロットなんだから!」

 

 メイリンが操るドラグーンもベルフェゴールへの道を切り拓くために攻撃を開始する。

 

「結局、私が一番最後か。

 でも、これは私が言い出したこと。

 二人の覚悟に負けるわけにはいかないわ!」

 

 ルナマリアもレジェンドを前へと進ませる。

 

 デスティニーとレジェンドを相手に如何に多数でもウィンダムやヅダでは止められない。

 何重もの盾に守られていたベルフェゴールまでもう少しと言う所まで迫っていた。

 多大な犠牲を払った前線部隊からの報告で、機体の制御を奪うためにはあのライフルの銃弾を打ち込む必要があると判明している。

 更なる犠牲を出さないために一般部隊は下がらせた。

 後は自分達が被弾しなければいい。

 

 ベルフェゴールは、後方から何度も射撃してきているがパイロットの腕はそこまででもないようで回避は難しくない。

 おそらくハッキングの腕でパイロットに選ばれたのだろう。

 もうすぐ射程距離に捉えることが出来る。

 

 お前みたいな奴は、絶対に許さない!

 

 デスティニーをさらに加速させようとした時、機体に衝撃が疾った。

 

「えっ?」

 

 次の瞬間、計器の表示が乱れ、警報が鳴り響く。

 その警報が鳴り止んだ時、デスティニーはその動きを止めていた。

 

 

 

 ハロルド・スロースは、ただ手駒としたモビルスーツが撃破されるのを見ていたわけではなかった。

 手駒の数が減っていき、補充も不可能。

 攻め立てて来る相手の技量は高く、自分の腕では射撃を当てることも出来そうにない。

 それでもスロースの顔に焦りはない。

 全てはデスティニーをこのポイントに誘い込むための布石だったからだ。

 

「このライフルの弾にさえ気を付ければいい。

 そう思っていたでしょう?

 でも、奥の手は隠しておくもの。

 本命はトラップですよ。

 手の付けられないトップエースにまで成長した君の機体なら申し分ない」

 

 実に上手く行った。

 最も脅威となる機体を手中に収めることに成功した。

 さあ、お仲間は君を撃てるかな?

 顔も知らない友軍ではないのだ。

 ずっと共に戦ってきた仲間の命を切り捨てる決断は比較にならないほど重い。

 そして、その覚悟を固める時間など与えはしない。

 

 デスティニーが動き出し、レジェンドへと斬りかかっていく。

 

 決断できず、仲間への対処で動きが鈍った時、今度こそ弾を当ててあなたも傀儡にしてあげますよ。

 

 

 

 デスティニーが動きを止めた。

 なんで?

 奴の弾丸は当たってないのに!

 

 そして、嫌な予感は現実のものとなる。

 デスティニーがこちらを攻撃し始めたのだ。

 レジェンドの性能はデスティニーと同等だが、中遠距離型のレジェンドでは近距離型のデスティニーに接近を許せば対処できない。

 ドラグーンで牽制し、なんとか距離を取る。

 

 まずい状況だ。

 デスティニーの制御が奪われた。

 デスティニーの対処に追われて、敵への集中を切らせばレジェンドの制御も奪われる。

 ステラ達も別の相手に苦戦していて此方には来れそうにない。

 

「メイリン、私達だけでやるしかないみたいね」

 

「お姉ちゃん、私、シンを撃つなんて出来ないよ」

 

「私も出来そうにないわ。

 最低よね。

 友軍は撃ったのに、シンは撃てないなんて」

 

 どうにかしなければ。

 でも、どうしたらいい?

 

 

 

 ムウが抜けた事でアークエンジェル機動兵器部隊の指揮はイレブンが取っていた。

 彼らが接敵したのは、絶大な火力を見せる大型モビルスーツ『マモン』だった。

 

「キラ、フレイ。

 散開して奴の火力を分散させる。

 トールは、遠距離からの砲撃。

 奴が回避のために動けば、あの火力も維持できないはず。

 そのタイミングで俺たちが接近して落とす」

 

「「「了解」」」

 

 イレブンの判断は間違いではない。

 馬鹿げた火力ではあるがプログラムさえ組んでいれば可能だ。

 しかし、それは棒立ちであればと言う条件が付く。

 砲撃以外の動作を強要すれば、エネルギー分配比率が変化して最大火力の維持など出来なくなる。

 フリーダムでもハイマット・フルバーストをしながら高機動戦闘など出来ない。

 だが、マモンとグリードの組み合わせの凶悪さは、そんな常識的な判断を愚行へと変えてしまう。

 

 

 アカツキ、デュランダル、レーヴァテインがモビルスーツ形態となり、散開する。

 3機に標的が分散されているにも関わらず、攻撃が激しく、近づくこともままならない。

 

「くっ、やはりこのままでは厳しいか」

 

「これを突破するのは無理よ!

 予定通り、トールの攻撃を待ちましょう」

 

「そうだな」

 

 

 トールのケーニヒ・モンスターがモビルスーツ形態となり付近のデブリに着地。砲撃態勢を取る。

 照準をマモンに向けるが距離があるため回避は容易いだろう。

 それでいい。

 とにかく向こうの砲撃態勢を崩すことが目的なのだから。

 

「よし、撃つぞ。

 デカブツ、いつまでも好きに撃てると思うな!」

 

 ケーニヒ・モンスターが背負う4門のレールガンが咆哮を上げる。

 その凄まじい威力は、戦艦すら一撃で轟沈せしめる。

 一発の重さならマモンにすら勝っている。

 規格外の支援機は伊達ではない。

 

 そんな砲撃を正面から受け止めようなどと考える者はいない。

 マモンも当然のように回避行動を取った。

 

「良し、今だ!」

 

 イレブン達、3人が接近を試みる。

 しかし、

 

「ちょっと、全然変わってないわよ!」

 

「火力が落ちない!?

 いや、でも無理をしてるなら直ぐにパワーダウンするはず」

 

「キラ、フレイ。

 ここからでもいい。

 俺達も攻撃するんだ。

 プレッシャーを掛け続けて、パワーダウンを誘発させる!」

 

「「了解」」

 

 距離があるためイレブン達の攻撃は効果的ではないが、防御するにしろ、回避するにしろ、砲撃態勢を解除させる目的なら問題はない。

 エネルギー配分を考えずに砲撃を続けるなら、より致命的な隙を晒すことになる。

 

 

 ・・・はずなのだが。

 

「イレブンさん、これは・・・」

 

「分かっている。

 明らかにおかしい」

 

「なんで、あんなに回避してるのに砲撃の密度が落ちないのよ!」

 

 

 マモンは隙を晒すことなく、圧倒的な火力を見せ付け続けている。

 距離を詰めることが出来ず、遠距離からの攻撃ゆえに回避は容易いとは言え、確実にエネルギーは使わせている。

 さらに言うなら、動き続けながら的確な砲撃を続けていることも異常なことだ。

 攻撃を回避しながら最大火力を維持し、その火力を適切に運用している。

 どれほど撹乱する動きを見せても、惑わされることなく正確に狙われてしまう。

 火力に任せて出鱈目に撃っているわけではないのだ。

 

 イレブン達は、早くも手詰まりになりつつあった。

 

 

 

 ネオと別れたアレックス達も戦闘を開始していた。

 対するは巨大モビルアーマー。

 ニコルが搭乗しているベルゼブブであった。

 

「あれは、ジャスティスとフリーダムの後継機?

 なら、あれに乗っているのは本物のアスラン、いや、アレックスか。

 やっぱり、あなたが僕の前に立ち塞がるんですね」

 

 アレックスがベルゼブブの下へ来たのは偶然ではない。その戦い方や動きの癖からニコルが乗っていると判断していたからだ。

 

「ニコル・レプリカ!

 俺達はここまで来た。

 ネームレスの力を、この絶望的な戦局を覆すことが出来ると示すために!」

 

「僕の名は、もうレプリカじゃない!

 今の僕は七大罪の一人、暴食の名を継承したニコル・グラトニーです!

 ここで力を示せば、僕の望みは叶う。

 ジャマはさせません!」

 

 ベルゼブブから膨大な量のミサイルが撃たれる。

 Nジャマーの影響で誘導精度が落ちているが、これだけの量があれば問題にならない。

 回避する隙間など与えないと言わんばかりにミサイルの壁が迫ってくる。

 

「ちっ、アレックス、まずはこれをどうにかしなければ話にならん!」

 

「ああ、援護してくれ、イザーク」

 

 ストライクフリーダムからドラグーンが射出される。

 特殊な空間認識能力がなくとも使用できる新型であるが、それでも使用者に高い能力がないと効果的に使えない兵器だ。

 しかし、イザークなら使いこなせる。

 アレックスも信じてインフィニットジャスティスを加速させて前に出る。

 

 迫り来るミサイルの壁に対し、ドラグーンを用いて先行するアレックスに当たるコースのミサイルだけを狙って迎撃していく。

 迎撃されたミサイルの爆発の中にアレックスが飛び込む。

 

「相変わらず無茶をする。

 いや、俺なら一発も撃ち漏らさないと信じているのか?

 いいだろう、ニコルまでの道は作ってやる!」

 

 イザークがさらに集中してベルゼブブとの間にあるミサイルを撃ち落としていく。

 そうして出来た爆炎の中からインフィニットジャスティスの姿が飛び出してくる。

 イザークは、アレックスの進路上の全てのミサイルを落とし切った。

 ミサイル群を抜けた先にニコルは・・・居なかった。

 

 ニコルは、ミサイルを撃ち切った後、すぐにベルゼブブを後退させていた。

 ベルゼブブはその仕様上、対多数を想定した機体。

 相手が少数の突出した戦力であれば突破されることも有り得る。

 あまりにも高い投射能力故にすぐに弾切れになる事もあり、ベルゼブブの基本戦術は一撃離脱となる。

 

「待て、ニコル!」

 

「冗談じゃない。

 小回りの効かないベルゼブブで近接戦闘なんて出来ませんよ!」

 

 ベルゼブブを加速させてアレックス達を引き離そうとするニコルの進路を妨害するように側面から強力な砲撃が襲う。

 迂回していたディアッカのケーニヒ・モンスターが砲撃態勢で待ち受けていた。

 

「グレイトォォォ!

 完璧だぜ。

 お前は、一度攻撃すると次の攻撃までインターバルがある。

 何らかの方法で補給しているんだろうが、そんな暇は与えないぜ」

 

 強力な砲撃が進路を塞いでいる。

 進路を維持しようとすれば、たとえ防がれても速度が大幅に下がり、アレックス達に追いつかれる。

 回避して進路を変えれば、補給ポイントにたどり着けなくなる。

 どちらにせよ、アレックス達が追い詰めていくだけだ。

 

 

「これは、シールドで受けるとスピードを殺されてしまう。これを狙って、ミサイルを強引に抜けてきたんですね」

 

 ミサイルの補給を阻止して、その間に距離を詰める。

 ジャスティスとフリーダムの姿に意識が向いてしまい、他の戦力を想定できていなかった。

 

「でも、これくらいで七大罪の魔王を攻略は出来ませんよ!」

 

 ベルゼブブが砲撃を回避してコースを変える。

 

「よし、これで補給は受けられない」

 

「アレックスは、そのまま追え。

 俺は回り込んで退路を断つ」

 

 ミサイル攻撃が出来ない今がチャンスだ。

 当初の補給ポイントには向かえない。

 別のポイントに向かうにしても、イレギュラーなコースを取らせた以上、修正には時間が掛かるはず。

 囲い込んで撃破するのは今しかない。

 

 

「ジャスティスとフリーダムが別れた。

 回り込んで退路を断つつもりですか?

 甘いですね。

 戦場に流れる、僕だけに聞こえる音楽が導いてくれる。

 この楽曲の結末(フィナーレ)は、あなた達の全滅であると既に決まっているんです!」

 

 ベルゼブブから再びミサイル攻撃が始まった。

 

「馬鹿な!補給ポイントへのコースは妨害したはず。

 なんで、こんなに早く攻撃が再開されるんだ!?」

 

 攻撃の質も変化していた。

 一瞬で全弾撃ち切るような一斉射から、時間差で発射し、相手を追い詰めていく、少数のエースに対する攻撃へと。

 間断なく襲ってくるミサイルを回避し、あるいは迎撃して追い縋るも、ベルゼブブは弾切れすら起こさなくなってしまった。

 一斉射と比べればミサイルの消耗は抑えられているとはいえ、それでもこれだけ撃っていればそう間を置かずに弾切れになるはずなのに。

 

「アレックス、奴がどうやって補給しているのかを突き止めてどうにかしないと此方が先に消耗してしまうぞ!」

 

 距離を詰めれなくなったイザークが警告を発する。

 無尽蔵に吐き出されるミサイルの謎を解明しなければ、此方の弾薬や推進剤が先に枯渇してしまう。

 無限に戦い続けられる兵器も人間も居ない。

 だが、目の前の敵は弾切れを気にすることなく戦えるようだ。

 このままでは、先に継戦能力を失うのは此方だ。

 

 くっ、俺はニコル・レプリカを侮っていたのか?

 パイロットとしての腕は一流と言っていいが偽アスランには一歩劣ると評価していた。

 だが、考えてみればあいつは偽アスランの監視役として派遣されていた。

 いざという時に偽アスランを殺すためにだ。

 なら、偽アスランを殺せるだけの何かを持っていると考えれば分かることだった。

 ニコル・レプリカ、いや、ニコル・グラトニーは七大罪の一人に相応しい力を持っていた。

 

 

 魔王の強大な力の前に勇者達は苦戦を強いられる。

 各々の戦いは混迷を極めていった。

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