歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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勇者達の戦い2

 

 

 

 キラ達は、グリードの圧倒的な火力とその神掛かった運用の前に近付くことさえも難しい状況であったがそこに更なる敵が乱入してきた。

 ヒルダのアスモデウスが率いる3機であった。

 

「あれが歌姫の騎士団って奴らか。

 この戦いが終われば、ラクス様が手に入るんだ。

 ジャマなお前達は排除させてもらうよ!」

 

 ヒルダ・ハーケンは、かつてクライン派に所属していた。

 しかし、それはクライン派の政治思想に共感していたからではなかった。

 彼女の性的嗜好がレズビアンであり、その理想を体現していたのがラクス・クラインだった。

 クライン派にいたのは、派閥のトップがラクスの父親だったからに過ぎない。

 もし、ラクスが戦後、新たな政治勢力を立ち上げていれば、真っ先に馳せ参じていただろう。

 だが、ラクスは一歌手である事を貫き、ザフトも解体されたことでラクスとの接点を失ってしまった。

 

 どうにかラクスとお近づきになれないかと模索している時に組織から声が掛けられた。

 報酬はラクス・クライン。

 それもヒルダを愛するようにされたラクスだ。

 

 ヒルダは凶嬉して、その誘いに乗った。

 愛する人を洗脳することを卑劣だと思うような倫理観などヒルダにはなかった。

 ラクスの身も心も手に入るなら躊躇う理由などない。

 組織に入り、裏で忠実に働いてきた。

 ザフトでは珍しく連携で名を馳せていたことも評価されて色欲(ラスト)の名を継承するまでに至る。

 

 そんな彼女にとって、歌姫の騎士団は自分が望んでいた場所を奪った憎い相手でもあった。

 パトリック・ザラとシーゲル・クラインが決裂した事でアスランとラクスの婚約は解消された。

 後は、近くにいる目障りな騎士団さえ滅ぼせばラクスを独占できる。

 欲望と殺意に染まった目でキラ達を捉えていた。

 

 

「新手が来たわ!

 3機一組の奴ら・・・何よ、この気色悪い感じ」

 

 持ち前の感で新たに接近してきた悪意を感じ取り、警告を発したフレイだが、欲望が入り混じった殺意に嫌悪感を掻き立てられる。

 

「フレイ?」

 

「何でもないわ、とにかく敵よ!」

 

「あの火力お化けだけでも手を焼いているのに!

 どうします?」

 

「新手の3機は正面の防御力と突進力さえ注意していればそれほど脅威じゃない。

 俺とフレイで大型を牽制する。

 その間にキラとトールで新手を落としてくれ」

 

「「了解!」」

 

 アカツキとケーニヒ・モンスターがその場を離れて新手の迎撃に向かう。

 

「キラ、どうする?」

 

 トールの問い掛けにキラが答える。

 

「トールが正面からレールガンを撃って。

 どれほどバリアが強力でも運動エネルギーは無効化できないはず。

 足を止めたところを僕が後ろに回り込んで撃破するよ」

 

「なるほど、それなら行けそうだな」

 

 短い作戦会議を終え、キラ達はヒルダ達を迎え撃つ。

 

 

 

 正面から向かってくるアスモデウスに照準を合わせ、圧倒的な破壊力を持つ大型レールガンを撃つ。

 その威力は、戦艦を一撃で轟沈せしめる。

 たとえバリアを貫通できなくても、モビルスーツ程度の質量なら跳ね飛ばせるはず。

 唯一の懸念は回避されてしまう事だが、アスモデウスの動きにそんな気配はない。

 アスモデウスの後方に形成された力場を維持するために急激な軌道変更は出来ないためだった。

 それをすれば2機のドムが弾き出されて、三位一体の連携が崩れてしまう。

 正面からの質量兵器が鬼門であることは正解だった。

 ただ、ヒルダもそれは理解していることだった。

 

「へぇ、さすが騎士団、優秀だね。

 だけど、そんな単純な手じゃアタシらのジェット・ストリーム・アタックは崩せないよ!」

 

 4発の砲弾がアスモデウスのバリアに着弾、バリアの曲面に沿って弾道が変化し、後方に受け流されてしまった。

 

「いいっ!

 大型レールガンでも受け流しちまうのかよ!」

 

 トールは、ケーニヒ・モンスターのレールガンの威力に自信を持っていただけに驚きを隠せないがヒルダ達は多くの戦艦を血祭りにしてきた。

 当然、戦艦クラスが撃つレールガンやミサイルを乗り越えて来たと言うことだ。

 如何にヴァリアント並みの威力であろうと単純に当てるだけでは通用しない。

 

「半球状のバリアで受け流されてしまうなら、受け流せない場所を狙えばいいだろ!」

 

 次弾を装填している時間がないため、大型ミサイルを撃つ。

 Nジャマーの影響でまともに誘導出来ないとは言え、照準した場所に当てるくらいの事は出来る。

 狙った場所は半球状のバリアの中心。

 そこは、確かに絶対防御とすら言えるアスモデウスのバリアの急所だった。

 機体正面にあるバリア発生デバイスが前方の一点に発生させたバリアが外側に広がっていく。

 その状態で機体を突進させることでバリアが半球状になり、後方へと流れていく。

 そのバリアの流れが前方からの攻撃を全て受け流してしまうのだ。

 バリアが発生させている一点、そこだけがバリアの流れがない場所であり、唯一受け流すことの出来ない場所だった。

 

「狙いはバリア中心かい?

 確かにそこだけは運動エネルギーを受け流せない。

 でもね、あたし達もそんなに甘くないんだよ!」

 

 バリア中心を狙ったミサイルも受け流されてしまう。

 

「うえぇ!なんでだよ!?」

 

 アスモデウスは、後方の力場を維持するために大きな回避動作は出来ない。

 だが、ほんの少し機体をズラすくらいなら問題はない。

 正面に展開され、バリアの中心を狙われた時に棒立ちでやられるような機体が七大罪専用機となるわけがないのだ。

 ヒルダ達は、そのままケーニヒ・モンスターの横をすり抜けていき、すれ違い様にドム達が攻撃していく。

 巨人機ゆえの重装甲でダメージはそれ程でもないが当てが外れてしまったことで攻め手を欠いてしまっている。

 

「くそっ!中心を狙ってもちょっとでも動かれたら無効化されちまう。

 動きを阻害しようにもバリアがある限りどうにも出来ないし」

 

 突進を止めるためにバリアの中心を狙わなければならないが、そこを撃つためには回避動作をさせないように動きを拘束しなければならない。

 

「皆、ちょっと集まって!」

 

 キラが仲間達を呼び集める。

 その声にマモンを相手に手を焼いていたイレブン達も一旦引いて合流する。

 

「キラ、状況を打開する策が何かあるのか?」

 

「はい、そのために少し時間が掛かります。

 その間、敵から僕の機体を守ってください」

 

 そう言って、キラはキーボードを取り出し機体のプログラムを書き換える作業に入った。

 

「戦闘中に機体のプログラムを書き換えるなんて無茶をするのはお前くらいだぞ。

 だが、それに助けられてきたのも事実。

 今回も期待させてもらう。

 フレイ、トール、聞いていたな?

 キラが作業に集中できるように奴らを近づけさせるな!」

 

「「了解!」」

 

 イレブンとフレイが引き続きマモンを牽制し、トールがアスモデウスの正面からの砲撃を加えることでキラから注意を逸らす。

 こうして作った時間でキラがプログラムを書き換えていく。

 これが反撃の狼煙となるのか?

 仲間達は疑わない。

 キラが、今まで自分達の期待に応え続けてきたからだ。

 キラが必要だと言うのなら防御に徹して時間を稼ぐ。

 ジリジリと機体にダメージが蓄積していくが焦らず、じっと我慢する。

 隊長はムウだが、自分達の精神的な支柱はキラだった。

 そんなキラへの信頼が焦りを抑える。

 

 

 

 一方、アレックス達は、ベルゼブブから吐き出され続けるミサイルに対処しながら焦りを覚えていた。

 やはり、一向に弾切れの気配がない。

 どうやって補給しているのかをつきとめて対処しなければジリ貧となり、こちらが補給に戻らなければいけなくなる。

 そうなればニコルが再び艦隊を攻撃して多大な被害をもたらしてしまうだろう。

 

 手詰まりの状態でニコルを追いかけている中でレーダーが僅かな反応を拾った事にアレックスが気付いた。

 戦場には破壊された艦船の破片やモビルスーツの残骸が無数に漂っている。

 Nジャマー影響下でも近付けば、レーダーが反応するのは良くあることだ。

 だが、アレックスの中の何かがこの反応を見逃すべきではないと訴えかけている。

 アレックスは自分の直感を信じることにして、ニコルの追跡を一時中断して反応があった宙域に戻る。

 

「おい、アレックス、何処に行く!?」

 

「少し気になる反応があったんだ。

 どうせこのままじゃジリ貧だ。

 調べさせてくれ」

 

 仲間達も突然のアレックスの行動に驚くが何か意味があると察してアレックスの好きにさせた。

 

 

 反応があった宙域に戻り、慎重に辺りを捜索しているとそれがあった。

 

「おい、皆、来てくれ!」

 

 アレックスの声にイザーク達が駆けつけるとそこには、空になったミサイルコンテナがあった。

 それもただのコンテナではない。

 ツヤ消しされた真っ黒な外装のコンテナだった。

 この外見では宇宙空間での視認はほぼ不可能。

 Nジャマー影響下では、レーダーでも捕捉できない。

 

「無限に撃ち出されるミサイルの謎はこれだったか」

 

「しかし、まだ謎が残っている。

 ニコルは、どうやってこれの位置を掌握してるんだ?」

 

 コンテナには推進装置が搭載されていた。

 つまり、このコンテナは移動しているのだ。

 全てのコンテナの移動ルートを記憶し、刻一刻と変化する戦場の状況に合わせて最適な位置のコンテナを拾いに行く。

 如何にニコルが優秀でも現実的ではない。

 

「発信装置のような物も付いている。

 ニコルの機体にしか拾えない特殊な信号が何かじゃないか?」

 

「どんな手段で位置を把握しているかは分からないが補給手段は判明した。

 なら、それに対処すればいい」

 

「そうだな。

 俺達がすべきは、奴の補給の阻止だ」

 

 アレックス達の推測はほぼ正解だった。

 ベルゼブブにしか拾えない特殊な信号と言う部分以外は。

 コンテナが発する信号は、アレックス達も拾っていたのだ。

 ただ、それを認識できていなかっただけだ。

 

 人間には可聴域と言うものが存在している。

 音の高低は周波数の違いによるが人間が聞き取ることの出来る範囲は決まっている。

 だが、まれに本来聞き取れないはずの領域の周波数を聞き取れる者が存在する。

 ニコルもまた、そんなギフトを持って生まれたのだった。

 ニコルの両親が、彼を音楽家にしようと音楽に関する才能をコーディネートした際に偶発的に発現した才能が可能とした戦術。

 常人には聞き取れないコンテナの位置情報を示す高周波信号。

 コンテナの移動と共に変化するその信号は絶対音感を併せ持つニコルにはメロディーのように聞こえる。

 そのメロディーに導かれてコンテナへと向かっていた。

 

 ベルゼブブの前面ハッチが開く。

 まるで口を開けて、前方にあるコンテナを飲み込もうとしているような姿だ。

 いや、事実、飲み込もうとしている。

 使い終わり、空になったコンテナを後方に排出し、新たなコンテナをその腹に収めようとしていた。

 

 その時、ベルゼブブ前方の空間を無数のビームが疾る。

 ビームの1つがコンテナを捉えたことで中のミサイルが誘爆し、大爆発を起こした。

 

「なっ!」

 

 ニコルが後方に意識を向けるとミサイルに対処しながらベルゼブブの前方に向けてビームを撃ってくるアレックス達の姿があった。

 

「見えないコンテナの存在に気付いたみたいですね」

 

 まずい。

 このまま補給を妨害され続ければ、すぐにミサイルが尽きてしまう。

 接近を許せば小回りの効かないベルゼブブに勝ち目はない。

 ここで、追い詰められつつあるニコルに救いの手が入った。

 エレーナ・エンヴィーのレヴィアタンが乱入してきた。

 レヴィアタンが特殊なフィールドを展開し、それに囚われたアレックス達の機体が動きを止める。

 いや、機体の操作に致命的な遅延が発生しているのだ。

 入力された操作に機体が反応するまでの数秒間は、完全に無防備になってしまう。

 

 

「無様を晒しているようね」

 

「エレーナさん!」

 

「名前で呼ぶな!

 お前に名を呼ばれると何故か不快に感じる」

 

「すみません、エンヴィーさん。

 助かりました」

 

「お前を助けに来たわけじゃない。

 コイツらは元ザフトなんだろう?

 なら、アレクセイの仇だ!

 私が殺す」

 

 レヴィアタンが無防備なアレックス達に銃口を向ける。

 防御であれ、回避であれ、操作が反映されるのは数秒後。

 フィールドに囚われた時点で撃墜される未来は避けようがない。

 

「くそ、機体が動かない!」

 

「何だ、これは?

 機体の反応が遅れている」

 

「先読みすればどうにかなるような遅れじゃないぞ!」

 

「まずい!今、攻撃されたら何も出来ない」

 

 アレックス達に死神の鎌が、いや、復讐者の刃が振り下ろされようとしていた。

 その刃が振るわれる直前に、宇宙の虚空から一筋のビームが飛来する。

 そのビームはレヴィアタンを捉えていた。

 

「ちっ!」

 

 エレーナは、やむ無く機体を回避させる。

 

 

「おお!機体の制御が戻った」

 

「グレイト!危なかったぜ。

 何処の誰かは知らないが助かった」

 

「だが、あの機体はいったい?」

 

 絶対絶命のピンチを救ってくれた機体に視線を向ける。

 そこには青い一つ目のモビルスーツがいた。

 

「アレックス、お前を助けたつもりはない」

 

「その声は偽アスラン!

 何故ここに?

 それに、その機体は?」

 

「この機体はケンプファー。

 トゥルーザフト最後の機体だ。

 お前達との決戦には間に合わなかったがな。

 そして、ここに来た理由は、ニコルを取り戻すためだ!」

 

「なるほど、目的は同じか」

 

「なに?」

 

「俺は、もう一度ニコルを殺すなんてゴメンだ。

 だから、アイツはお前が連れていけ」

 

「共闘と言うことか、まさかお前と共に戦うことになるとは思わなかった。

 だが、俺はお前の仲間じゃない。

 協力するのは、今回限りだ」

 

「それでいい。

 ニコルを取り戻すためだ。

 行くぞ!」

 

「ふん、お前こそ遅れるなよ!」

 

 インフィニットジャスティスとケンプファーが宇宙を駆ける。

 エース計画で作られた兄弟のような存在である二人が同じ目的のために肩を並べて戦おうとしている。

 本来、交わることのないはずだった二人の道がこの場限りの短い時間ではあるが一つに重なっていた。

 

 

 戦いは次のステージに移っていく。

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