歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
再開しました。リアルの都合でなかなか落ち着いて執筆することが難しいですが少しずつでも完結に向けて更新して行きます。
「メイリン、頼んだわよ!」
機体の制御を乗っ取られたデスティニーを迎え撃つためにレジェンドが両手に改ビームジャベリンを構える。
レジェンドは中遠距離型の機体である。
近接戦闘が出来ないわけではないが接近戦に特化したデスティニーを相手取るのは厳しいと言わざるを得ない。
そんなことはルナマリアだって百も承知だ。
それでも、ここで引くわけにはいかない。
「舐めないでよね。
シンが操縦しているデスティニーならともかく、操り人形でしかない今のデスティニーなら私にだって!」
デスティニーとレジェンドがぶつかる。
デスティニーのアロンタイドを改ビームジャベリンを交差させることでかろうじて受け止めるがデスティニーの推進力によって押し込まれていく。
「くぅうぅぅ、今よ!」
「うん、お願い、みんな!」
周囲を飛び交い、タイミングを伺っていたドラグーンが狙いを定めてデスティニーを撃ち抜く。
その砲撃はデスティニーの右脚に食い込んでいた異物を正確に撃ち抜いていた。
「制御端末を破壊しましたか。
見事なものですね。
ですが、この瞬間を待っていたんですよ!」
その瞬間、距離を詰めていたベルフェゴールがライフルを乱射する。
1発でも当たれば終わってしまうハッキング弾頭がスロースにとっては最高の、ルナマリア達にとっては最悪のタイミングで放たれた。
機体制御を乗っ取っていた端末を破壊するために動きを止めていた2機に無数の銃弾が襲いかかる。
「・・・機体の制御が戻った!
うおおおぉぉぉぉ!」
デスティニーがベルフェゴールの支配から脱した瞬間からシンは行動していた。
機体を更に加速させ、手にしたアロンタイドでレジェンドを押し込んでいく。
動きだけを見ればレジェンドを攻撃しているように見えるにも関わらず、ルナマリアは迷いなくスラスターを切った。
抵抗がなくなったことでデスティニーとレジェンドは迫り来る弾の軌道から機体を押し出すことに成功していた。
「馬鹿な!
タイミングは完璧だった。
なぜ避けられる?」
タイムラグなしでシンが動き出し、ルナマリアも最初から分かっていたかの様にその動きに合わせたから起きた奇跡のような回避行動。
操縦どころか通信さえも遮断され、外部の状況を一切感知できなかったはずのシンが的確に行動できたこともおかしい。
「外の状況は分からなかったけど、闇ラクスの歌がルナの想いを伝えてくれた。
だから、俺は俺のやるべきことをするために備えることが出来たんだ」
確実を期すためにベルフェゴールは距離を詰めていた。
その状況でハッキングに失敗してしまったのだ。
盾に出来る機体もない。
デスティニーがアロンタイドを構えて突き進んでくる。
ベルフェゴールがライフルを構えて抵抗しようとするがレジェンドの援護射撃によってライフルを撃ち抜かれて爆発してしまう。
唯一の武装を失ったベルフェゴールにデスティニーが迫る。
「これで終わりだーーーー!」
「くっ、しまった!
・・・・なんてね♪」
ベルフェゴールの背中から4本の蜘蛛の足のような隠し腕が展開され、デスティニーに突き出される。
「機体に突き立てて直接ハッキングしてやる。特殊弾頭やトラップとは違う。プログラム全体を改変してやればもう元に戻す術はない!」
デスティニーは、すでに隠し腕の間合いに入ってしまっている。
回避は不可能。
切り札を隠していたベルフェゴールの勝利かと思われた。
宇宙をビームが奔り、ベルフェゴールが展開した隠し腕を貫いていく。
「なっ!」
シンを救うために射出していたドラグーンが再びシンを守るために迫る隠し腕を攻撃したのだった。
「そんなゴツい機体で武装がライフルだけ?不自然すぎるわ。何よりアンタみたいな奴はいざという時の手を用意してるって思ってたのよ」
「読まれていただと!?
おのれ、小娘が!」
「言っただろ?終わりだって。
お前が何をしようとルナ達が防いでくれる。
そう信じているから、俺は突っ込めるんだ」
「!」
そう、デスティニーはすでに間合いに入っている。
デスティニーのアロンタイドがベルフェゴールに突き立てられ、コックピットを破壊していく。
「ぐあぁぁぁぁぁあぁぁぁ!」
次の瞬間、ベルフェゴールは爆発し、スロースは宇宙の塵となった。
勇者によって魔王の一角が落とされた。
「俺には安心して背中を任せられる仲間がいて、アンタにはいなかった。
だからアンタは負けたんだ」
シンが小さく呟く。
如何に強大な力を持とうと、一人で出来ることは知れている。
支えてくれる仲間がいたからここまで来れた。成長することができた。
仲間達がいなければ、俺も奴らのような立場になっていたのかもしれない。
仲間に恵まれた幸運を改めて感じていた。
一方、スティング達とラースとの戦闘も佳境に入っていた。
スティング達の機体はすでに限界に近いダメージを受けている。対してラースの機体、サタンは被弾ゼロ。
この絶望的状況下でもスティング達は勝利をあきらめてはいなかった。
勝利を手繰り寄せるために最後の賭けに出ようとしていた。
向かってくるサタンに対して正面からディープ・アビスが進んでいく。
そのディープ・アビスの陰に隠れるようにルナティック・カオスが続く、その更に後ろにガイア・グランドが続く。
サタンからはディープ・アビスの姿しか見えなくなるが、彼らがフォーメーションを組んでいるところは見ていた。
「先頭の機体で後続の姿を隠す。ジェット・ストリーム・アタックを真似たか?
無駄な足掻きを・・・そんな付け焼き刃で俺を捉えられるものか」
ラースは、スティング達の動きに構うことなく距離を詰める。
両者が交錯する直前にディープ・アビスが横にズレる。
後ろからビームライフルを構えたルナティック・カオスが姿を見せた。
「射線を隠していたか。
だが、退避が早すぎる」
せめて、自分の背中をビームがかするくらいのタイミングで行わなければ意味がない。
「まあ、それでも当たりはしないがな」
撃つタイミングを逃したことは向こうも自覚しているのだろう。
だが、そう何度もチャレンジさせてもらえるとは思わぬことだ。
先頭のアビスに銃撃を当て、カオスに照準を合わせた時、違和感を覚える。
ライフルを構えた姿勢のまま動いていない。
「まさか・・・」
その違和感の正体に辿り着く前に目の前のカオスが爆発した。
ラースはまだ攻撃していないにも関わらずだ。
その爆発によってカオスは無数の破片へと砕けた。
圧倒的な速度を出しているサタンの進路上で突如として大量のデブリが発生したのだ。
如何にラースが超人的技量を持っていようとこれは避けられない。
カオスが爆発した。
ガイアが撃ったのか?
自分を仕留めるために味方を撃つなどと言う合理的な行動が奴らに出来るとは思わなかった。
それは、確かにラースの心理的死角と言えた。
迫り来るデブリを前に仲間を撃ったガイアに視線を向けて見れば、そこにはライフルを構えたカオスがいた。
おかしい、それではこのデブリは何なのだ?
そこで気付く。
今、ライフルを構えているカオスは、自分がよく知るフォルムをしている。
先程まで装備していた追加装甲がなくなっていた。
そうか、アビスは射線を隠していたのではなかった。カオスが追加装甲を前方にパージする姿を隠していたのか。
そこまで思考したところでサタンがデブリに激突した。
サタンは七大罪の機体の中で唯一の量産機であり、ラースの技量を前提としているため被弾することなど想定していない故に継戦能力を重視し、その装甲はフェイズシフトではなく低コストの発泡金属であった。
そのため、サタンはデブリによって大きなダメージを受けてしまった。
まともに動くことも出来なくなったサタンに最後尾のガイアが斬りかかる。
「してやられたな。
だが、次の私には通じない」
なす術なく斬られ、爆発するサタン。
また一柱、魔王が落とされた。