歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
イレブン達がマモンとアスモデウスを牽制している中、ついにキラのプログラム変更が終わった。
「皆、準備は終わったよ。
まずは黒い3機から落とす!」
「「「了解!」」」
ケーニヒ・モンスターを先頭にすぐ後ろにアカツキ、さらに後方にデュランダルとレーヴァテインが続く陣形でアスモデウスを迎え撃つ。
「ふん、何度やっても同じさ。
ジェットストリーム・アタックは破れないよ!」
キラたちが陣形を組み向かってくるが自身の防御に絶対の自信を持つヒルダに動揺はない。
確かに自分には他の七大罪のような絶対的な才能はない。
それでも、ラクスを手に入れるために諦めることなく死に物狂いで努力してきた。
例えどんな攻撃であっても受け流してみせる。
そんな自負を持つまでに至っていた。
両者が交錯する直前、アカツキからドラグーンが射出され、ケーニヒ・モンスターの前に展開する。
「ドラグーン?そんなものでこのアスモデウスは止められないよ!
このまま、奴らを跳ね飛ばしてやる」
変幻自在の動きが可能なドラグーンならバリアの中心を捉えることも不可能ではない。
だが、ドラグーンの火力では運動エネルギーを減殺することは出来ない。
また、バリアを展開した状態で行われる体当たりはアスモデウスの推力も相まって非常に強力な破壊力を持つ。
故にヒルダは確信していた。
キラたちがアスモデウスの進路から退避することになると。
今まで戦ってきた他の者たちと同じように・・・
「スクエア・バリア展開!」
4基のドラグーンは砲撃ではなくバリアを展開していた。
通常、自機を中心に囲むよう展開することしか出来なかったそれを別の形で展開できるようにプログラムを変更していたのだ。
四角い板のようなバリアがアスモデウスの前に壁となって立ち塞がる。
「小賢しい!
そんなもの、機体もろともに吹き飛ばしてやる!」
確かに平面の壁に突っ込めば、いかにアスモデウスでも受け流すことは出来ない。
だが、スピードが落ちてしまうため多用は出来ないがアスモデウスの突進は戦艦すら貫通することが出来る。
ドラグーンによるバリアの壁は軽い。
そんなもの押し切ってやる。
ドラグーンのバリアとアスモデウスのバリアが接触したタイミングで、
「トール、今だ!」
「よっしゃあぁぁぁ!」
ケーニヒ・モンスターの大型レールガンをキラが展開したバリアに叩き込む。
中心部を捉えなければ受け流されてしまうアスモデウスのバリアではなく、平面状に展開したドラグーンのバリアはレールガンの運動エネルギーを受け流さない。
結果、アスモデウスの運動エネルギーを大きく減損させ、その突進を一時的に止めることに成功した。
そして、その僅かな足止めで十分だった。
「「後は任せろ(任せて)」」
今度はイレブンとフレイが前に出る。
掲げられたケーニヒ・モンスターの両腕を蹴って、バリアの外側を左右から後方に回り込んでいく。
「なっ、味方を踏み台にした!?」
足を止められ、力場が消失して無防備となったドムを撃ち抜いていく。
機体中枢を撃ち抜かれたドムが爆発し、宇宙を彩る火球となる。
「マーズ、ヘルベルト!
よくもあいつらを!」
チームの仲間を討たれた怒りでイレブンたちに意識が引き寄せられる。
それは正面にいるキラたちから注意が逸れたと言うこと。
「ここだ!」
バリアを展開していたドラグーンが散開しオールレンジ攻撃を開始。
アスモデウスは次々と被弾していく。
「くっ!まずい。
一度離脱して体勢を立て直さなければ」
アスモデウスを敵機のいない方向に向けて加速させようとするが、
「逃がさない」
その動きを読んで、アカツキはアスモデウスの後方にポジションを取り、ビームライフルを突き付けていた。
「そんな、離脱方向を誘導されていたのか!?」
アスモデウスの機体特性ならば、例え敵機がいる方向に突っ込むことになっても後方を取られないように立ち回るべきだった。
アカツキから放たれたビームが機体の中心を貫く。
「ああ、あたしがラクス様を手に入れるはずだったのに・・・」
コックピットが爆発の炎で包まれる中、ヒルダは最後まで自身が望むラクスの姿を思い描いていた。
「後はあのデカ物だけね」
「だが、どうする?
被弾せずに近づくことは不可能だが、1発でも被弾すればあの火力に絡め取られて撃墜される」
「バリアを張っても火力で足を止められてしまう。バリアだっていつまでも張れるわけじゃないから落とされるのも時間の問題だろ?」
「それについても考えがあるんだ。
アカツキの装甲『ヤタノカガミ』はビームを吸収、反射することが出来るみたい」
「マジか!そんな機能まであったんだな」
「うん、正直、僕の戦い方とは相性が悪くて使うことはないかなと思ってたんだけど・・・」
「あ〜、確かにキラは高速機動による回避が基本だものね」
「後、アカツキはアズラエルさんと共同開発で完成した機体だから情報の秘匿にもかなり気を遣ったみたい。
だからヤタノカガミの情報はネームレスにも流れてないと思う」
「とっておきの隠し球になるってわけか」
「よし、まずは散開して相手の火力を分散させて出来る限り近づく。そこからキラがバリアを展開しつつ突貫。無理矢理距離を詰めようとしていると思わせる。
キラを仕留めようとする敵主砲に合わせてバリアを解除、反射する」
「その時に生まれる隙を突いて距離を詰めて接近戦を仕掛けるってわけね」
「作戦は決まりだ。
行くぞ!」
「「「了解」」」
キラたちのチームは、再びマモンへと向かった。
その動きは当然グリードにも見えている。
「ラストをああも手早く落とすとはやるじゃないか。
だが、あいつらは3人掛かりでようやくラストの名に手が届いた程度の雑魚。
俺を同じだと思うなよ」
マモンが圧倒的な火力による迎撃を開始する。
まだ、かなり距離があるが高密度の攻撃を回避しながらの前進は神経をすり減らしていく難行だ。
それでも、ヤタノカガミを早々に使うわけにはいかない。
相手は、あの異常な砲撃センスを持つパイロットだ。
ビームの反射で出来る隙は長くはないだろう。
確実に接近戦に持ち込むためには、ギリギリまで距離を詰めておく必要がある。
ジリジリと距離を詰め、ついにどう足掻いてもこれ以上は進めないラインに到達した。
「行きます!」
キラがドラグーンによるバリアを展開し、スラスターを全開にして前進を試みる。
当然、突出したアカツキに重点的に火力が割り振られる。
後は主砲に合わせてバリアを解除するだけだが、それも難しい判断を強いられる。
撃たれているのはビームだけではない。
レールガンのような反射できない実弾も含まれているからだ。
グリードがバランスよく火力を割り振っているので偏ることもなかった。
「くっ、バリアを解除するタイミングがない。皆だっていつまでもこの距離を維持できない。なら、自分で隙を作ればいい!」
アカツキのバリアがついに限界を迎えたかのように消失した次の瞬間、左腕の肘の部分をレールガンが貫き千切れ飛ぶ。
バランスを崩したアカツキに止めの一撃として主砲である胸部スキュラが放たれた。
キラはあえてレールガンに被弾していた。
イレブンとフレイへの対処、彼らを支援するトールとの砲撃戦も続いている。
他への火力を維持しつつアカツキに致命的なダメージを与えるために撃たれるトドメの一撃は高確率で主砲になる。
「いけぇぇぇぇ!」
スキュラの直撃を受けたアカツキは、爆散することなく、不思議な光を纏ったのち反射ビームが放たれた。
「なに!ビームが跳ね返された!?」
いかにグリードでも、想定外の事態に驚きを隠せなかった。
それでも、跳ね返されたビームを回避したのは流石と言うべきか。
だが、ほんの僅か時間、意識の空白が生まれた。
そして、この戦場にいるエースたちはその隙を見逃すほど甘い存在ではない。
「今だ!」
「近づきさえすればアンタなんて!」
デュランダルとレーヴァテインがビームサーベルを構え、別々の方向から接近戦を仕掛ける。
その刃がマモンを捉える・・・
・・・かに思われた。
「なに?」
「えっ?」
ビームサーベルが装甲を切り裂く手応えが伝わってこない。
イレブンとフレイには何が起きているのか理解できていなかった。
少し離れた位置にいたキラだけは見ることができた。
ビームサーベルが振り下ろされた瞬間、マモンはスラスターを噴かし、機体を回転させることで攻撃を受け流していた。
「躱されたんだ!
集中を途切れさせないで!」
キラの声に二人は状況を理解し、機体を動かす。
正直、何故あのタイミングで攻撃を当てられなかったのか理解できないが、今はそれを考えている時ではない。
「ここで押し切れなければ負ける。
畳み掛けるんだ!」
キラも含めた3機による接近戦。
小回りの効かない大型モビルスーツではなす術なく落とされるしかない・・・はずなのだが。
「舐めるなよ!
俺の本来の戦い方は、機動砲撃戦だ!」
躱す、躱す、躱す
キラたちの攻撃をことごとく回避し、ハリネズミのような火力で弾幕を張り始める。
「嘘でしょ!?」
「離れるな、この距離なら射角が制限されて迎撃に使える火器は限定される」
確かに距離が近いため、射線の通る武器は限定されるが同時に着弾までの時間も短い。
攻撃の兆候を読み取り、回避動作に入るのが少しでも遅れれば被弾してしまう。
いかにエースパイロットでも、いつまでも凌ぎ切れるものではない。
それでも纏わりつき、攻撃を仕掛け続ける。
このパイロットに同じ手は通じない。
距離を取られれば、もう二度と近づくことも出来ずに一方的に撃たれることになるだろう。
一見すれば絶望的な状況だが、誰も諦めていない。
キラたちには、まだ希望が残されているからだ。
トールがケーニヒ・モンスターに砲撃体勢を取らせて狙いを定めている。
トールの機体は機動性が低く、近接戦闘には参加できないがそれを嘆くことはない。
支援砲撃しか出来ないのなら、支援砲撃をすれば良いのだ。
ずっと仲間達の後ろを守ってきた。
自分に出来ることを愚直に積み重ねてきたことがトールの中に特殊能力とすら言える特別な感覚を芽生えさせていた。
・・・わかる。
俺が居るべき場所。
狙うべきポイント。
撃つべきタイミング。
いつだってトールの砲撃は味方のピンチを救ってきた。
何時しか感覚で理解できるようになっていた。
仲間がどんな支援を求めているのか。
何をすれば仲間を救うことが出来るのか。
ケーニヒ・モンスターが背負う4門の大型レールガンが火を吹いた。
「皆、砲撃が行った!
使ってくれ!」
撃ち出された弾丸は、全てが直撃コースだった訳ではない。
直撃する弾丸を避けようとすれば別の弾丸に当たってしまう。
回避先をもカバーする見事な偏差射撃。
キラたちが纏わりついているため、その場から大きく離脱することも出来ない。
普通ならこれで終わりだ。
「この俺が、こんな攻撃に当たるか!」
「ナイスよ、トール!」
「良し、合わせるぞ!」
「ありがとう、トール」
敵も味方も、撃ったトールすらもこれで終わるとは思っていない。
マモンは神掛かった回避を行った。
スラスターによって機体を回転させることで砲撃をすり抜ける。
だが、それは想定内。
デュランダルが背後を取り、致命的な一撃を与えようと迫る。
「甘い、それで背後を取ったつもりか!」
マモンはさらに半回転する事でデュランダルを正面に捉える。
胸部スキュラはすでに発射寸前の状態だった。
大型モビルスーツでありながら、機体を回転させることで圧倒的な回避力を見せるマモン。
その激しい回転の中にありながら、一瞬で主砲の照準を合わせてしまうグリードの砲撃センス。
まさに神業と言うべき一撃がデュランダルに放たれた。
「まずは一匹」
「うおおぉぉぉぉおぉぉ!」
デュランダルに迫るビームの射線に割り込む機体が一つ。
キラがアカツキをモビルアーマー形態のオオワシへと変形させて突っ込んできたことでデュランダルの盾になった。
「何!」
アカツキの装甲、ヤタノカガミによってスキュラは再度跳ね返された。
マモンは、陽電子リフレクターで致命傷には至らなかったが手傷を負ってしまう。
「私を忘れてんじゃないわよ!」
間髪入れずにレーヴァテインが切り掛かり、傷口を広げる。
そこに連動してデュランダルも続く。
さらにアカツキも加わって畳み掛けていく。
「ここまでしても押し切れないなんて」
「なんて奴だ」
機体を損傷し、圧倒的に不利な状況に追い込まれながらマモンは持ち堪えていた。
「やるじゃないか。
プライドが世界最高戦力の一つだと言うだけのことはある。
だが、俺には届かなかったな!」
もうすぐ体勢を立て直せる。
そうなれば、もう二度とチャンスなど与えない。
奴らも分かっているからなりふり構わず攻勢を仕掛けている。
だが、無理をした付けが回ってきているぞ。
この位置関係なら3機全てを照準に捉えることが可能だ。
「これで終わりだ。
振り払ってくれる」
全ての火砲をキラたちに向ける。
この状況なら撃墜できなくても確実に距離を取ることは出来る。
これで勝利が確定する。
「そうね、これで終わりよ」
「何?」
「お前は俺たちを侮った。
一番警戒すべき相手は俺たちじゃない」
「僕らが・・・囮だ」
グリードが前方の3機に注意を集中している隙に密かに近づいていたケーニヒ・モンスターが砲撃の照準を定める。
「キラたちが全力で作ってくれたチャンスだ。絶対に決める!」
「なんだと、何時の間に!?」
グリードは、まさか自分以外に大型モビルスーツで至近距離と言っていいほど接近を試みる者がいるとは思っていなかった。
マモンはすでに射程内だ。
いかにグリードの脅威的な回避能力でも完全には回避できない。
通常のモビルスーツの攻撃ならサイズ差から耐えて体勢を立て直すことも可能だが、ケーニヒ・モンスターの大型レールガンには一撃で全てを決める威力がある。
トール以外の3人は、近接戦闘に持ち込みながらグリードの回避能力と砲撃センスを前に押し切れないと判断した時からこの一撃に繋げるために動いていた。
自分達の攻撃では1、2発当てたところで大したダメージにはならない。
だからこそ、決定的な一撃を持つトールに託した。
チャンスは一度きり。
これを逃せば機動性の低いケーニヒ・モンスターは落とされる。
そうなれば決定打を無くした自分達もいずれ押し返されてしまう。
そんなギリギリの状況でもキラたちはトールを信じていた。
トールなら必ず決めてくれる。
そんな信頼にトールも応える。
ミスをすれば仲間が死ぬ。
そんな戦場を駆け抜けてきたトールはもうお調子者の学生ではない。
仲間の命を背負って戦う、歴戦の戦士に成長していた。
「いけぇぇぇええぇぇ!!」
必殺の砲撃が放たれた。
4つの砲弾は確実にマモンを捉えている。
「おのれぇぇ!!」
どう足掻いても全ては避けきれない。
そして、1発でも当たれば勝負の決定付ける威力を持っている。
状況を理解していてもどうにも出来ないグリードが怨嗟の声を上げる。
マモンの手足を砲弾が貫き、破壊する。
コックピットがある胴体部への直撃こそ避けたものの僅かな延命にしかならないことは理解してしまっている。
トドメを刺そうとキラたちの追撃が迫っている。
「俺の野望が終わるだと?
馬鹿な!
いずれプライドすら越えて、全てを手に入れるはずだった。
こんなところで!こんな奴らに!」
攻撃がコックピットを捉え、グリードの体を焼いていく。
全てを欲し、自分はそれに相応しい力があると自負していた男は、最後の瞬間まで欲望に身を焦がし続けていた。