歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
どうしてこうなった
どうしてこうなった
世界平和監視機構『コンパス』所属、旗艦ミレニアムの副長ナタル・バジルールは、自室のベッドの上で頭を抱えていた。
彼女の隣には、
「ううん、ナタルお姉様♡」
自分と同じミレニアム所属、ネームレスとの決戦で奮闘したことで『月光のワルキューレ』の二つ名を得たエースパイロットであるアグネス・ギーベンラートが一糸纏わぬ姿で眠っている。
そんなつもりはなかったんだ。
私はただクルーのメンタルケアをしようとしただけだったのに。
アグネスはプラント市民である。
それ故に彼女は不満を募らせていた。
なんで、私みたいな可愛い子がプラント市民ってだけであんな目で見られなきゃいけないのよ!
世の中、間違っているわ!
戦争に敗北したプラントに向けられる世界の目は厳しいものだった。
彼女はそれに不満を持っていた。
彼女の主張も正しいと言えば正しいのだ。
当時の彼女は引き下げられた徴兵年齢にすら届かない未成年。
当然、選挙権もまだ与えられていない。
ザフトにもプラントの政治にも関わっていないのに不当に扱われるのは納得がいかない。
彼女はプラント市民だが、プラントを悪く言われて憤慨するような性格ではない。
自分に実害があるから憤っているのだ。
「ザフトも解体されるみたいだし、プラントに未来はないわね」
プラントに愛着を持たない彼女がプラントを捨てる選択をするのは余りに当然の流れだった。
とは言え地球連合軍に入ることも出来ない。
コーディネーター至上主義の思想教育を受けていたであろうプラント出身者であることも理由の一つだが、なによりも年齢の問題があった。
戦時中なら緊急避難的に徴用することもあったが、平時に未成年の志願を受理するなどあり得ないことだ。
そのため、アグネスは民間軍事会社の門を叩き、傭兵となった。
再び始まった戦争では、リベリオンの一員として参加。
部隊のエースとして活躍を見せるが男女トラブルを引き起こす問題児でもあった。
私の隣に立つ男は、最高の男であるべきだ。
私にはその価値がある。
本気でそう信じているアグネスは、よく女性兵士とトラブルを起こした。
部隊に優秀な男がいると、その男に恋人がいても構わずアプローチを掛け、掻っ攫っていくのだ。
それだけではなく、更に優秀だと思う男が現れたら掻っ攫っていった男をあっさりと捨てて乗り換える始末。
目の前でそんな行動を見せられては、女性陣からの評価は最悪だ。
逆に男性からの評価は悪くない。
最初こそ、捨てられた男が憤っていたが被害者が増えるほど気にならなくなっていった。
もう、そういう性格なんだと納得することにして、短期間でも美人と付き合えて美味しい思いが出来るならいいじゃないかと言う結論に落ち着いた。
部隊の上層部もトラブルの報告を聞いて、当初は焦った。
非難されている人物がプラント出身者と言うことでコーディネーター至上主義主義者か?と疑ったのだ。
しかし、詳しく話を聞いていくとコーディネーター至上主義者ではなく、ただのビ⚪︎チでしかないと分かった。
アグネスのパイロットとしての腕は確かなのだ。
上層部は、こんなつまらない事で切り捨てるのは惜しいと判断した。
そのため、特に処分は下されず配置転換となった。
行く先々で同じようなトラブルを起こしたが、その頃には上層部もアグネスをそういう存在だと受け入れていた。
トラブルが起きない環境の部隊に入れればいいのだ。
女性兵士のいない部隊に所属させればいい。
そうすれば部隊の中の優秀そうな奴とくっつくだけだ。
こうして、自分以外に女のいない部隊でお姫様のようにチヤホヤされて満足しながら月で戦い、終戦を迎えた。
彼女がいかにビッ◯であっても、パイロットとして上げた戦果は本物だった。
データだけ見たリベリオンの上層部がコンパスに推薦しようと思うほどに。
彼女の直接の上司がそれを知っていたら必死に止めようとしていたであろうが。
こうして、アグネスはコンパス所属となった訳だが、やはり悪癖を出してしまう。
まず、世界的な歌姫の恋人を奪ってやれば優越感が凄いだろうとキラやアレックスに近付いた。
戦争を通して確かな絆を育んできた彼らに迷いなんてあるわけがなく、あっさりと拒絶されてしまう。
ちなみにシンには近付かなかった。
闇ラクスが引退した後、髪色や顔を元に戻していることを知らないアグネスのシンの評価は何処にでもいる一般人と付き合っているモビルスーツの腕だけは良い山ザルだった。
次いでイレブンやイザークと言った優秀で自分好みの男に言い寄るがイレブンがフレイ以外に目を向けるはずもなく、イザークに至っては硬派で潔癖な性格から男に次々と言い寄るアグネスに汚物を見るかのような目を向けていた。
当初はアグネスの行動(自分が好きだったシンを山ザル扱いしたことも含めて)に腹を立てていたルナマリアも次々と玉砕していくアグネスに憐れみの目を向けるようになった。
そんな状況にもめげず、今度はゲシュペンスト隊のカナードに狙いを定めるが、最強になる事にしか興味のないカナードにとっては煩わしいだけの存在だった。
誰とは言わないがカナードを狙っている二人の女性からは馬鹿な女と見下されていた。
カナードの性格を知っている彼女達は、決してカナードの邪魔はしない。
逆にサポートをする事で自分が必要な存在だと刷り込んでいく。
外堀を埋められ、よく分からないがいつの間にか恋人になっていたと首を傾げるカナードの未来が見えた気がする。
まあ、両手に花で世間的には勝ち組なのだから問題ないだろう。
その後も連戦連敗を続け、ついにアグネスの精神が限界に達しつつある頃、ナタルが動いた。
この時点でナタルに下心などなかった。
ナタルからすれば、アグネスは相手に恋人がいようが構わず口説きにいって玉砕を繰り返す問題児だった。
最近、様子がおかしいことに気付いて、さすがに鋼のメンタルでも傷付いてないわけではなかったのだなと、副長として部下のメンタルケアのために相談に乗ろうと優しく声を掛けたのだ。
アグネスにとって、それは救いの言葉だった。
男性に一切相手にされない。
それは、彼女にとって初めての経験だった。
かつてないほどに自信を失っていた。
元から女性の友人が出来るような性格でもないため誰にも頼れない。
そんな時に優しく声を掛けられてアグネスの心は決壊し、泣き出してしまう。
「すまない、配慮が足りなかったな。
ここでは落ち着いて話も出来ない。
私の部屋でゆっくり話を聞こう」
人は、弱っている姿を他人に見られるのを嫌がるものだ。
アグネスの性格も考慮して、自室に招き、二人きりで話をした方が良いだろうとの判断だった。
この時点でアグネスの中で、ナタルの好感度は女性の中でぶっちぎりの一位だった。
だからこそ、心の中に溜まっていたものを全て吐き出していた。
「どうして、みんな私を見てくれないの?
わたし、そんなに可愛くない?
魅力ない?」
自信をなくし、普段の強気の態度と言う虚勢が剥がれた弱々しい姿にナタルはキュンとしてしまった。
これは、彼女を慰めるため。
副長としての仕事だ。
「そんな事はない。
君はとても魅力的な女性だと思う」
そう言って優しくアグネスを抱きしめる。
「ありがとうございます。
嘘でも、嬉しい」
「いや、嘘では・・・」
アグネスがゆっくり身体を離す。
「ナタルさんが副長として私を心配してくれていることは分かってます。
私みたいな女を気に掛けてくれて本当に感謝しているんです」
目に涙を溜めて、儚げに微笑むアグネスは、ゾクゾクするほど魅力的だった。
「嘘ではないと言っても信じられないみたいだな」
そう言ってアグネスを強く抱きしめ、そのまま唇を自分の唇で塞ぐ。
長くも短くもない時間で唇を離す。
「えっ?・・・・え?」
呆然とした顔で状況を理解してないようだ。
「言っても信じてもらえないようだったから、行動で示した。
言っただろう?
君は魅力的だと」
「そんな・・・ウソ!?」
「まだ信じられないか」
再び唇を塞ぐ。
「んっ・・・・ん!!」
今度は手加減せずに唇をこじ開けて、より深くまで塞いでいく。
口内の隅々まで蹂躙した後、ようやく離れる。
「はあ、はあ、ナタルさん?」
顔を上気させて、潤んだ瞳で見上げてくるアグネスの色気にナタルは魅了されていた。
アグネスをゆっくりとベッドの上に押し倒す。
アグネスの抵抗は・・・・・なかった。
「随分と自信を失っているようだな。
この際だ、私がお前をどれほど魅力的に思っているのか、たっぷりと教えてやる」
そう言って再び唇を奪う。
安心しろ。
女性の身体の事は、女性が一番分かっている。
私に任せておけば良い。
お前は可愛い、魅力的だと囁きながら、ベッドの中で明け方までアグネスを啼かせ続けたのだった。
そして今、ナタルは自己嫌悪に陥っていた。
精神的に弱ってる女性に優しくして、手篭めにするなんて卑劣な真似をしてしまった。
なんて事をしてしまったんだ。
アグネスにどう謝れば良い?
苦悩するナタルの横でアグネスが目を覚ます。
「おはようございます。
ナタルお姉様♡
これからもずっと可愛がってくださいね♪」
ナタルに極上の笑顔を向けていた。
「ああ、そうだな。
これからもよろしくたのむ」
この笑顔が見れただけで良しとしよう。
うっかり彼女を落としてしまったけど、どうやら私もハマってしまったらしい。
後日、ミレニアム内でラブラブな二人を見たクルーが驚愕の叫びを上げるのだった。
アグネスがナタルの毒牙に掛かりました。
でも、本人も幸せそうだし良いよね(笑)