歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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少女の願いに応える者達

 

 

 

 プラントへと戻ったヴェサリウスからコロニーに向かうためのシャトルに乗ったアスラン、そこには国防委員長である父親、パトリック・ザラが待っていた。

 そこで、これまでの経緯とストライクのパイロットが月の幼年学校時代の友人である事を報告する。

 

「パイロットのことなど、どうでもいい」

 

「しかし、キラは・・」

 

「アスラン、君も友人を地球軍に寝返った裏切り者として報告するのは辛かろう」

 

「地球軍は、ナチュラルが乗ってもあれ程の性能を発揮するモビルスーツを開発した。そう言う事だ、分かるなアスラン」

 

「はい」

 

 アスランは、国防委員長としての判断だろうと思い、父親の言葉に納得した。

 その後の査問会で、パトリックはそのモビルスーツの性能から地球軍の脅威を煽り、血のバレンタインの悲劇から最低限の要求で戦争を早期終結させようとしてきた努力を裏切ったのだと非難していく。

 査問会は、パトリックの思惑が全面的に受け入れられる形で終了した。

 彼らの中では、エイプリルフールクライシスも最低限の要求の中に入るものでしかないのだろう。

 

 査問会終了後、アスランはクライン議長に声をかけられた。

 婚約者の父親でもあるため、そう堅くなるなと気遣ってくれる。

 

「ようやく君が戻ったと思ったら、ラクスが病気で体調を崩してしまってね」

 

「ラクスが!大丈夫なのですか?」

 

「いや、そう大したものではない。だが今は療養のためにここを離れていてね。療養先から戻ってきたら、会いに来てくれたまえ」

 

「はい、必ず伺います」

 

 プラントでの僅かな休暇の後、再び足付き捜索のためヴェサリウスは出撃していく。

 ガモフと合流するために航行していた所に、地球軍の小規模な艦隊を発見した。

 アルテミスから脱出したと言う、足付きの予想航路から考えて迎えの艦隊かもしれない。

 そう判断し、攻撃を仕掛ける事にした。

 その予想は、戦闘中に足付きが救援に来たことで正しかったと証明された。

 

 

 先遣隊がザフトに襲撃されていると聞き、フレイがカガリに歌うように頼んでいる。

 

「お願いカガリ、ザフトを止めて!あなたが歌えば、連合とザフトは戦いを止めるんでしょ?」

 

「フレイ、それはザフト地上軍との話だよ」

 

「宇宙軍は違うんだよ、この前の戦闘だって止まらなかった。あいつらには、カガリの歌が届かないんだ」

 

「前は出来なかったのかもしれないけど、今回は通じるかもしれないじゃない!このままじゃ、パパが」

 

 ザフトに父親を殺されるかもしれない。

 そんな不安から、一縷の望みをかけてカガリに縋る。

 周りから無理だと言われても、諦めることなんてできない。

 

「サイ、みんな、ブリッジに連れて行ってくれ」

 

「カガリさん、無理よ。この前だって届かなかったじゃない」

 

「そうだよ、ここは地上じゃないんだよ?」

 

「確かに私の歌は届かなかった、なら、届くまで歌うだけさ。何度でも、私の命が続く限り」

 

「カガリ・・・」

 

 フレイも自分が無茶なお願いをしているのは分かっている。

 

「そこに歌ってほしいと願ってくれる人がいる。なら、私は歌わずにはいられない」

 

 そんな願いに応えようとしてくれるカガリに涙が溢れてくる。

 みんなの背中が遠くなるはずだ。

 こんな娘が目の前にいるのに、弱いままでなんていられるはずがない。

 そんな姿を見て、踏み出す少女がまた一人。

 

「私の歌でザフトを止めます。ラクス・クラインの歌ならザフトも止まってくれるかも」

 

 ミーアが歌うと名乗りを上げる。

 

「そう言えば、ミーアさんの歌声ラクスにそっくりって話だったわね」

 

「でも大丈夫かな、バレたら余計に悪い事にならない?」

 

「そんな事したら、ミーアがどう扱われるかも分からないじゃないか!」

 

 学生組は、ミーアの立場も考えて無茶は止めるように言う。

 

「大丈夫です。今、歌わなかったら後悔する。友達のために出来ることをしたいんです」

 

「友達・・・」

 

「いけなかったですか?私は、もう友達だって思ってたけど」

 

「そんなことないさ、俺たちは友達だ」

 

「そうだよ、立場がなくなって辛くなるようならオーブに来ればいい。ミーアみたいな娘なら歓迎だって」

 

 そんなミーアにカガリが真剣な顔で声をかける。

 

「いいのか?そんな事すれば、もう後戻りは出来ないぞ」

 

「カガリさん、私も自分の歌と向き合うって決めたんです」

 

「そうか、なら私が連合を止めるよ」

 

 カガリは、再びブリッジへ上がる、今度はミーアを伴って。

 

 一方、戦場ではパイロット達がそれぞれの戦いをしていた。

 

 ムウは、先遣隊のモビルアーマー隊を指揮している。

 先遣隊との合流を目前に、その先遣隊がザフトの、それもクルーゼ隊の襲撃を受けた。

 確認された艦は、ナスカ級一隻のみ、Gもイージスしか出ていない。

 他は隊長機のシグーとジンのみ。

 アークエンジェルの戦力なら救援出来る。

 そう判断して戦闘に介入する事にした。

 ムウ個人の感情としては、クルーゼと相対したいが先遣隊には娘を迎えるために乗り込んできた大西洋連邦事務次官ジョージ・アルスターがいる。

 彼が乗る艦を守り、無事に合流することが最優先だと理解している彼は、隊長として最適な布陣で臨む。

 イレブンと話し合い、対ザフト、対モビルスーツの戦術を練り上げてきたのだ。

 味方の数が少ない時は、どうしても個人の技量頼みになってしまうが、今回は先遣隊のモビルアーマー隊がいる。練度の低い、ひよっこ達の様だがそれなりの数が存在していた。

 普段は敗北を誤魔化すためのプロパガンダとして付けられた、エンデュミオンの鷹と言う二つ名で呼ばれる事を嫌がるが、ひよっこ達を指揮するには有効だと名乗りを上げ、指揮権を委譲してもらう。

 ムウは、モビルアーマー隊のパイロット達に一撃離脱に徹しろと命令する。

 モビルアーマーのメビウスは、形状から戦闘機と同様に前への加速に特化している。

 普通なら一撃離脱が正しい戦術なのは明らかだが、一度離れれば戻ってくるのに時間がかかる。

 その間、運動性に優れたモビルスーツが自由に艦隊を攻撃出来てしまう。

 その隙は、ムウの技量で埋める。

 直衞の妨害がある中で対艦攻撃を成功させられるのは、余程の腕を持つエースか、妨害をものともしない高性能機くらいだ。

 この戦場には両方いるが、仲間達が抑えてくれる。

 ムウが指揮を取ってから、味方の損害は目に見えて減り、隙を見てガンバレルでじわじわとジンを損傷させ撤退させている。

 

 

 キラは、アスランのイージスを抑える事を任されていた。

 この戦場の最大の戦力は高性能機であるイージスだが、パイロットのアスランは、とにかくキラを説得しようとする為、未熟なキラでも対処できるのだ。

 アスランがキラをザフトに連れて行こうとしているため、戦闘で命の危険を感じる事はほとんど無かった。

 赤服を許される程の腕を持ち、自分を殺そうとはしない相手、それは最高の実戦訓練の相手と言えた。

 イレブンの教えを受けているキラは、その技術を実戦で確かめていく。

 キラの実力が急速に高まっていた。

 

「くっ、キラ・・こんなに腕を上げてるなんて」

 

 アスランは気付いていない、自分の行動がキラを成長させている事に。

 

「キラ!何故地球軍にいる。お前は何のために戦っている」

 

「あの艦には友達が、オーブの民間人だって乗ってるんだ!それを知っているのに、何で君達こそ攻撃してくるんだ」

 

「お前はコーディネーターだ、なら、プラントにいる方が正しい!なんでナチュラルの肩なんか持つんだ」

 

 相変わらず、アスランの中にはナチュラル=敵と言う認識で中立国の民間人というものは存在しないようだった。

 月にいた頃からナチュラルの同級生とは交流を一切持ってなかったけど、アスランはこんなにも話が通じない人だったか?

 キラの両親はナチュラルで、アスランも普通に話していたのに。

 キラも勘違いしていた、アスランが普通に話していたのは、彼らがキラの両親だと認識していた事と母と仲が良かったからだ。

 今のアスランは、キラの両親の顔を覚えてもいないだろう。

 彼らの追いかけっこは続いていく。

 

 

 イレブンは、クルーゼのシグーと対峙していた。

 カスタムされたジンだが、クルーゼ用に調整されたシグーの方が性能は高い。

 さらにパイロットとしての技量も、クルーゼが上回っているため、イレブンは終始押されている。

 強化されたブースターの推力にものを言わせて、イレブンのジンは高速で複雑な軌道を描く。

 戦闘に特化したイレブンでも、身体への負荷に顔を歪める。

 しかし、並のコーディネーターならすぐに見失ない、背後を取られるであろうジンの軌道にもクルーゼは容易く着いてくる。

 常に自分が描く軌道の内側へ、最短距離で効率良くシグーを動かしていく。

 その相手の動きが前もって解っているかのような感の良さに、イレブンの背筋に冷たいものが走る。

 これは確かにフラガ大尉以上だ。

 ムウの感の良さを知っているイレブンは、ムウからクルーゼの事も聞いていたが、予想以上の能力に畏怖を感じていた。

 限界以上の負荷に耐えて機体を振り回していくが、クルーゼは確実に追い詰めてくる。

 このままでは、いずれ捕まり撃墜される。

 そうなれば、今の拮抗した状況が崩されてしまう。

 イレブンの中で焦りが広がっていく。

 自分が撃墜され、クルーゼが自由になれば先遣隊の艦は次々と沈められるだろう。

 ムウがこちらに来れば、今度は他のジンを抑えられなくなる。

 連携しながら一撃離脱戦術を行えばジンを相手に艦隊を守る事も出来るだろうが、モビルアーマー隊の練度でそれを求めるのは酷だ。

 必死に焦りを抑え、少しでも長く生き残り、クルーゼを拘束するために機体を動かす。

 

「この動き、どうやら普通のコーディネーターではないようだな。私の知らない人類の闇か?何故連合に組みするのかは分からんが、邪魔になる前に落とさせてもらう」

 

 クルーゼもジンが描く軌道の異常さに思う所があるようだが、自分が望む未来のために追い詰めていく。

 彼には既に結末が見えていた。

 そこに至るために一つ一つ手を打っていく。

 それは、さながら詰め将棋の様であった。

 

 

 カガリ達がブリッジに上がった時、見届けようと付いてきたフレイは、初めて戦闘の様子をその目で見た。

 イレブンが乗るジンの動きが、明らかに他の機体と違うことは理解できた。

 それでも、相手のザフトから逃げきれていない。

 他の味方は、それぞれ別の相手と闘っていて、なんとか守っている様に見えた。

 このままイレブンが倒されてしまえば、父親が乗る艦が危ない。

 だが今は、カガリとミーアの歌が上手くいく事を祈ることしか出来ない。

 フレイは、自分の無力さに唇を噛み締めていた。

 

 突然入ってきたカガリ達に艦長が戸惑っているが、詳しく説明している時間はない。

 ミーアの協力があれば、今度こそザフトを止められるかもしれないと言い、歌う許可を求める。

 ミリアリアが通信装置を操作してマイクを二人に渡す。

 マリューも想定より苦戦しているため、現状を打破するために許可を出した。

 そしてアークエンジェルから再び歌が流れる。

 前回と違うのは、その歌がプラントの歌姫ラクス・クラインの歌だということだ。

 

「これは、ラクス様の声?」

 

 敵艦から突然流れてきた、自分達が敬愛するラクスの歌声に戸惑い動揺するザフト達。

 それはアスランも同様だった。

 

「なぜ、地球軍の艦からラクスの声が?いや、ラクスがこんな所にいるはずがない。だがこの声は確かにラクスの」

 

 ザフトが一旦攻撃を止めて距離を取る。

 そこで、ラクスの歌にカガリの歌声が加わる。

 カガリの歌声とザフトの動きで地球軍は、この歌が一時的休戦を求める為のものだと理解する。

 二人の歌姫が、宇宙の戦場に歌を響かせる。

 戦場での戦いは、止まっていた。

 





モビルアーマーは、一撃離脱が正義だと思っています。
モビルスーツ相手にドッグファイトは無謀ですよね。
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