歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

16 / 126
無知と傲慢の襲撃

 

 

 第8艦隊との合流を目前にしたアークエンジェルをガモフが補足していた。

 アルテミスで足付きを見失って以降、捜索を続けていたのだ。

 アルテミスの必死の抵抗は、足付きを逃すためだったのだと理解した事で、やはり足付きとストライクは連合にとってそれだけの価値があるのだと確信した。

 ヴェサリウスは、ラクスの保護と言うイレギュラーによりプラントに引き返したため合流が遅れている。

 連合の本隊との合流前に攻撃出来るのはガモフしかいない。

 ブリッジでは、パイロット達が攻撃するかどうか話し合っている。

 

「お前は、帰ってきた隊長に何も出来ずに指を咥えて見ていたと報告する気か?」

 

「しかし、本隊が足付きとの戦闘宙域まで来るのに1時間しかありませんよ」

 

「逆に言うなら1時間はあるって事さ、足の遅い艦を伴っていることが裏目に出てるんだ」

 

「足付き単独ならもっと早く合流してただろう。戦闘するのに十分な時間はある」

 

「足付きの戦力は侮れません。僕らの戦力では・・・」

 

「ふん、足付きで厄介なのはストライクだけだ。アルテミスでは頭に血が昇っていたが、あのジンは俺たちのGにとって脅威じゃない」

 

「モビルアーマーもいるみたいだが、相手にもならないだろ」

 

 彼等が直接刃を交えたのはイレブンのジンのみ、そのため彼等は知らなかった。

 エンデュミオンの鷹の実力も、ストライクのパイロットの成長も。

 ニコルすら足付きを落とすのは難しいかもしれないが、ストライクを落とす事なら可能だと考えてしまっていた。

 ガモフは、攻撃を仕掛けると決め最大戦速で距離を詰める。

 本隊と合流してしまえば、おいそれと手を出せなくなってしまう。

 その前に必ずストライクを落とすと、パイロット達の意志は統一されている。

 前のような無様は晒さない。

 ガモフのパイロット達は、勝利を確信していた。

 それが相手の実力を知りもせずに侮った事による幻想だと理解せずに。

 

 アークエンジェルも接近してくるローラシア級に気付き、戦闘準備をしている。

 

「アルテミスで振り切ったローラシア級か?」

 

「そのようです、デュエル、バスター、ブリッツを確認」

 

「各パイロットに出撃を急がせて、モントゴメリのメビウス隊には直衛を任せます」

 

 イレブンは、自分の機体に装着されている巨大な剣を見てマリューに説明を求めた。

 

「ソードストライクの対艦刀シュベルトゲベールをジンでも使えるようにしたわ。

 マードック軍曹がスラスターの邪魔にならない様に取り付けて、キラ君がOSを調整してくれたのよ」

 

「二人には後で礼を言っておきます」

 

「ただ、ストライクのようにパックからエネルギー供給が出来ないから、ビームを発生させられるのは1回のみ。

 それ以降は実体剣としてしか使えないわ。

 使い所は考えてね」

 

「充分です、一度でもGに有効な武器があるのは有り難い」

 

「ストライクには、ランチャーを装備。

 アークエンジェルの甲板上でエネルギー供給を受けつつ砲撃支援を、特にバスターを牽制してちょうだい」

 

「了解です」

 

「フラガ大尉は、ブリッツの対処をお願いします。

 ミラージュコロイドで消えたら、その感であぶり出してください」

 

「無茶言ってくれるね、まぁ、やるだけやってみるよ」

 

 アークエンジェルからも3機の艦載機が出撃する。

 モントゴメリのメビウスは、自艦の直衛以外の戦力にはならない。

 戦場は、3対3の展開となる。

 

 戦いが始まって直ぐにイザーク達の思惑は頓挫する事になる。

 ストライクが足付きに陣取り、砲撃支援に徹しているのだ。

 これでは、ストライクを落とすには敵陣に深く斬り込まねばならない。

 狙いを外された形だが引く訳には行かないと機体を加速させ敵陣に飛び込もうとするが、その前に立ちはだかる者達がいる。

 ムウとイレブンが彼等に襲いかかった。

 

 イザークは、上手く行かない戦況に苛立っていた。

 目の前のジンは凄まじい動きで自分を翻弄している。

 スラスターを狙ってくる余裕すらあるのだ。

 屈辱だった。

 

「くそ、この俺が裏切り者なんかに」

 

 赤服を纏いアスラン以外に負ける事はなかった。

 そんな自分を地球軍の裏切り者が上まわっていく。

 撃破されていないのは機体性能によるものだ。

 

 イレブンはジンを操りながら感じていた。

 今まで以上に機体をスムーズに動かせている。

 デュエルの動きが雑に感じる、クルーゼの操縦はこんなものではなかった。

 クルーゼとの死闘の中で、自分が肉体の性能に任せた雑な操縦をしていると自覚させられた。

 少しでも長く戦い抜くために、無駄な動きを削っていく必要に迫られた。

 その戦いが、イレブンにパイロットとしての成長をもたらしていた。

 

 ニコルも信じがたい思いを抱えて戦っていた。

 大した戦力にならない筈のモビルアーマーに苦戦している。

 ジン以上に性能の低いはずのモビルアーマーに追い回され、ストライクに向かう事が出来ない。

 それどころか、ミラージュコロイドで姿を消しても動きを読まれているのか的確に狙われてステルスを解除せざるを得なくなる。

 それならと変則的な軌道を取りながら消えても、自分の位置がバレているかのように撃たれる。

 

「そんな、どうして僕の位置が分かるんだ」

 

 相手の超能力じみた感の良さに恐怖すら感じている。

 最早、ストライクを狙うどころではない。

 

「足付きに近づくと他のモビルアーマーと連携すらしてくるなんて」

 

 直衛のモビルアーマー達の動きも厄介だ。

 決してドッグファイトを仕掛けず、最高速度のまま遠くからミサイルやレールガンを撃って直ぐに離脱してしまう。

 彼等だけなら、時間は掛かるだろうが撃墜は可能だろう。

 しかし、凄腕のパイロットを相手にしているとなると、途端に彼等の動きが無視できない大きな障害になる。

 

 ムウもまた、メビウス隊の動きに合わせてブリッツにプレッシャーを掛けている。

 これまでのムウは、特殊な空間認識能力でガンバレルを操りモビルスーツに対抗してきた。

 イレブンと対ザフト戦術を練り、先遣隊との合流時に集団戦を指揮した事で戦闘に対する考え方が変化していた。

 敵に対抗出来る自分が前に出て、落とさなければ。

 かつては、そう考えていた。

 階級は一番高いが、他の二人は自分より性能が高い機体に乗っているんだ。

 なら自分が前に出て、全てを抱え込もうとする必要はない。

 隊長として、一人でも多くの部下を生き残らせるために出来る事をする。

 敵とガンバレルの位置を把握するために使っていた空間認識能力を敵と味方の位置を把握するために使う。

 ある意味、ガンバレルに頼っていた事で届かなかった高みに至ったのだ。

 

「認めたくないが、これがクルーゼが見ていた景色か」

 

 ムウもまた、クルーゼと同じステージに上がったのだと理解した。

 

 

 ディアッカも苦戦する二人を援護しようとするが、ストライクの遠距離射撃によって上手くいかない。

 背後から襲っているためアークエンジェルの主砲こそ撃たれる心配はないが、ミサイルやレールガンによる援護も行われている。

 近接防御用機関砲イーゲルシュテルンの弾幕も激しく、砲戦用のバスターで近づくのは難しい。

 手詰まりを感じていた。

 ストライク以外は敵じゃない、そんなものは幻想に過ぎなかったと思い知らされる。

 

「ストライクの砲撃、どんどん正確になっている。

 成長してると言うのか、この戦闘中に?そんな馬鹿な!」

 

 キラがストライクの狙撃用プログラムを組み、撃ちながら調整している。

 前線で敵を足止めしてくれる仲間がいるからこそ出来る芸当だが、それを知らないディアッカにはストライクのパイロットが得体の知れない化け物の様に感じた。

 それだけじゃない、砲撃戦をしていて周りを見る余裕があるからこそ分かる。

 イザークが相手をしているジンの動きの異常さと、完全に消える事ができる筈のニコルのブリッツの動きを先読みして当ててくるモビルアーマー。

 

「足付きのパイロット達は化け物か。なんなんだ、あの艦は」

 

 このままでは、足付きどころかストライクを落とすことも出来ない。

 そんな事はプライドが許さないと行動を起こしたのはイザークだった。

 

「ディアッカ、ニコル、足付きに突っ込んで3機がかりでストライクを狙うんだ。他は俺たちの装甲を抜けない」

 

「無茶ですよ、そんな事すればエネルギーが」

 

「ストライクさえ落とせば戦いは終わりだ、それまで持てばいい」

 

「OK、現状を打破するためにはそれくらい必要だ。

 ニコルも分かってるだろ」

 

「しかし、危険ですよ!」

 

「うるさい!なら臆病者は黙って見ていろ」

 

 イザークは、目の前のジンを突破し、足付きに向かうために機体を強引に動かす。

 

 イレブンは、戦闘開始からずっとシュベルトゲベールを使う機会を伺っていた。

 対艦刀の特性上、威力は大きいが隙も大きくなってしまう。

 一度しかビーム刃を使えない以上、確実に当てられる隙を待っていたのだ。

 デュエルが強引に突破を仕掛けてきた。

 アークエンジェルに向かうために被弾覚悟で突っ込んできたのだろう。

 それは、待ちに待った隙だった。

 2つの機体が交錯した後、イザークの前にジンは居なかった。

 無事に突破したのだ、後は足付きまで突き進みストライクを落とす。

 そのために加速をしようとするデュエルの後方からシュベルトゲベールを構えたジンが襲いかかる。

 イレブンは、機体が交錯する瞬間に旋回しデュエルの後方右斜め上という絶好のポジションに移動していた。

 

「うおおぉぉぉおぉぉ!」

 

 そのまま構えた対艦刀をデュエルに向けて振り下ろす。

 イザークも背後から斬りかかるジンに気付く。

 

「何、だが無駄だ!剣でデュエルの装甲は・・!」

 

 イザークは見てしまった、ジンが持つ対艦刀の刃にビームが発生している。

 迫り来る死を感じて、必死に機体を動かそうとするが致命的な隙を見せてしまった現実は変えられない。

 ビーム刃がデュエルを肩口から切り裂き、胸の半ばまで到達する。

 そこでビーム刃が消えてしまい、デュエルを両断する事は出来なかった。

 しかし、この戦闘において致命的損傷を受けた事に変わりはない。

 コックピット近くまで切り裂かれたため、計器の一部が破裂し、イザークは顔に損傷を受けて痛みに呻いている。

 イレブンは、デュエルを仕留めるために更に追撃を仕掛けようとするが、バスターとブリッツが救援に駆けつけたためその場を離脱する。

 

 損傷したデュエルを庇いながら後退して行くバスター達を追撃する事はなかった。

 ストライクは後方のアークエンジェルにいる。

 切り札を使ってしまったジンと有効打のないゼロでは追撃の効果も薄いだろう。

 母艦のローラシア級からも、撤退支援の為の攻撃が続いている。

 何より、第8艦隊の本隊との合流が目前であり、ここで危険を冒す必要はなかった。

 

 こうして、敵戦力を希望的観測で見積り、自分達が負けるはずがないという驕りによって行われた襲撃を退け、アークエンジェルは本隊との合流を果たした。






やっとソードストライカーを活躍させる事が出来ました。
実は、ヘリオポリス内での戦闘でも原作通りソードストライカーで出撃してましたが、アスランとの会話イベントしかなく、作者も描写を忘れていましたw
お気に入りが100に到達しました!
感想や評価もありがとうございます!
今後も頑張って書いていきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。