歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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それぞれの理由

 

 

 

 キラは、展望室で宇宙を見つめていた。

 自分の心の中で形作られていく、望む未来への道。

 艦長達は、僕達が平和な世界で生きることを望んでいる。

 ヘリオポリスにいた頃なら、それを当然だと思っていた。

 でも、今はそれを受け入れるのに抵抗を感じている自分がいる。

 何も知らなかったあの頃には戻れない。

 

「君がキラ・ヤマト君だね」

 

 声をかけられ、振り向くとハルバートン提督がいた。

 艦長達との話し合いが終わり、メネラオスに戻る所のようだ。

 思いもしなかった相手に驚き、艦長達の様に敬礼するべきか迷っていた。

 

「そう驚かないでくれ、報告は受けているよ」

 

 提督は、キラの隣に立ち、宇宙を見上げる。

 

「G兵器は、ザフトのモビルスーツにせめて対抗せんと作ったものだ。1機だけでも守り抜いたことは、きっと明日に繋がるだろう。君の協力には感謝しているよ」

 

「そんな、大した事は出来ませんでした」

 

 キラは、その穏やかな言葉と表情に、やっぱり艦長と似てるなと思っていた。

 

「思い悩んでいる様子だったが、この艦に残るつもりかな?」

 

「提督・・・」

 

「君がいれば勝てるというものではない、戦争はな」

 

「でも、僕は」

 

「自惚れるな、君以外にも連合で戦うコーディネーターは多くいる。ソキウス少尉のように事情があってブルーコスモスに所属している者、プラントのコーディネーターとは違うと証明するために志願した者、そして・・・・クライシスで大切な誰かを失い、復讐のために志願した者もな」

 

「!」

 

 提督の言葉に衝撃を受ける。

 オーブに居ては、知ることのなかったことだ。

 

「君の御両親は、ナチュラルだそうだが?」

 

「はい、そうですが」

 

「どんな夢を託して、君をコーディネーターにしたのだろうな」

 

 それは、キラも聞いたことがないことだった。

 両親は、僕にこうなってほしいという希望を押しつけてくる事はなかった。

 コーディネートしたはずなのに、普通の子供と同じように、なりたい自分になればいいと自由にさせてくれた。

 

「立派な御両親だな、君のような優しい青年を育てたのだから」

 

 自分がどれほど両親に愛されて育てられたのかを理解した。

 

「君がどんな決断をしようと、止めはしない。だが、君を心配している者達の事を忘れるな」

 

 そう言い残し、提督はメネラオスに戻っていった。

 

 

 アークエンジェルの格納庫では、メネラオスに移動する為の小型船にオーブの民間人が乗り込んでいる。

 ジョージは、その過激思想からモントゴメリに留められていたため、そちらから別の便でメネラオスに向かっている。

 小型船を前に、ナタルが学生達に除隊許可証を渡している。

 

「俺たち、本当に軍人やってたんですね」

 

「民間人の戦闘行為は犯罪になってしまうからな。日付けを遡って志願した事になっている。分かっていると思うが、軍務中に知り得た情報は除隊後も漏らすなよ。誓約書にサインした事を忘れるな」

 

「分かってます、艦長達の配慮をもう無駄にはしません」

 

「よし、ヤマトにもお前達から渡してくれ」

 

 そう言って、ナタルはキラの分の除隊許可証をサイ達に預けた。

 用件は終わったと帰ろうとするナタルにフレイが声をかける。

 

「あの、私、地球軍に志願したいんです!」

 

 突然フレイが志願した事に学生達は驚き戸惑う。

 

「私なんかが志願しても、何の役にも立てないかもしれません。

 雑用くらいしか出来ないかもしれない」

 

 サイ達は、フレイを説得しようとする。

 父親への反発で軍に志願するのは止めるように言い聞かせようとする。

 

「確かにパパへの反発もあると思う。

 でも、ザフトにパパが襲われた時、サイ達も、キラや他のパイロットの人達も必死に戦ってくれた。

 カガリも、私の無茶なお願いに応えてくれた。

 ミーア・・・ラクスも自分の秘密をバラしてまで助けようとしてくれたわ」

 

 反対されても声を荒げる事なく、フレイは自分の想いを語る。

 

「あの時、私だけが何も出来なかった。

 助けてと願うことしか出来ない自分が悔しくて、情けなくて」

 

「フレイ・・・」

 

 サイは、情けないのは自分だと思った。

 フレイがこんな思いを抱えていたなんて気づかなかった。

 

「キラは、ソキウスさんに色々教えてもらってた。

 サイ達もブリッジの人達に聞いたり、マニュアルを貰ってきて部屋で必死に読んで、出来る事を増やそうとしてた」

 

 学生達は、フレイがこんなに自分達を見ていたのかと、侮っていた事を反省した。

 フレイも強くなりたいと思っていたんだ。

 

「サイ達の背中がどんどん遠くなっていくように感じてたんです。

 もう、これ以上置いて行かれたくない。

 大切なものに危険が迫った時、何も出来ない自分でいたくないんです」

 

 ナタルはフレイの言葉に確かな覚悟を感じ、志願を受け入れた。

 

「サイ、ごめんね、婚約の話は忘れて。

 今の私じゃ、サイの隣に立てないから。

 みんなも、オーブに戻っても元気でね」

 

 そう言って、ナタルに連れられて格納庫から出て行く。

 ナタルとフレイが去った後、サイは俯き震えている。

 トール達は、心配そうに見つめている。

 

「うおおぉぉぉぉおおぉ!」

 

 サイが突然叫びを上げた。

 自分の中から湧き出る感情を解き放つように。

 

「サイ・・・」

 

「ごめん、みんな」

 

 心配してくれている仲間達に謝る。

 叫んでスッキリしたのか、サイの顔から苦悩は消えていた。

 サイは、トール達の前で自分の除隊許可証を破る。

 

「俺は、フレイの気持ちに全然気付いてやれなかった。

 ホント情けないよな。

 でも、ここでフレイを追いかけないほど情けなくは、なりたくないんだ」

 

 トールとミリアリアは、互いに見つめ合い頷く。

 サイに続くように2人は許可証を破り捨てる。

 そんな2人の行動にサイは驚き、目の前で許可証を破った事を後悔した。

 フレイとの事は、自分の個人的感情だ。

 トール達を巻き込むつもりはなかったのに。

 

「サイ、勘違いしないでよね」

 

「許可証を破ったのは、もともと残ろうと思ってたからなんだ」

 

「トール、ミリィ、なんで」

 

「俺たちだって、この戦争が何かおかしいって感じてたんだ」

 

「この艦に乗って、戦って、漠然とだけど進みたい道が見えて来た気がしたわ」

 

「この艦でなら、世界の本当の姿を知ることが出来る。そう思ったんだ」

 

「この戦争を戦い抜いた先に、私たちが望む世界との向き合い方が見つかると思うの」

 

「「だから、サイは気にするな(しないで)」」

 

 サイは、軽いノリでムードメーカーをしていたトールと明るい普通の女の子だと思っていたミリィが、こんなにも真剣に戦争や世界について考えているなんて思っていなかった。

 このグループのリーダーを気取っていたけど、やっぱり俺はまだまだ未熟だなと思い知らされた。

 そんなやりとりを見て、カズイも許可証を破り捨てた。

 

「ちょっとカズイ、話聞いてたの?私たちに付き合う事ないのよ」

 

「そうだよ、お前は優しいから向いてないだろ、戦争なんて」

 

「そうじゃないんだ。

 みんなは優しからって言ってくれるけど、自分でも分かってるんだ。

 俺は臆病で、何をするにも勇気が持てなかった」

 

 カズイは、そう自分を卑下する。

 

「そんな俺でも強くなりたいんだ。

 さっきのフレイじゃないけど、みんなの友達だって胸を張って言えるようになりたい」

 

「カズイ、そう言うの、もういいだろ。

 戦争で戦うことだけが強さじゃない。

 カガリは歌で世界を変えようとしてる。

 お前も、お前のやり方で世界と向き合えばいいじゃないか」

 

「分かってるよ、サイ。

 でも、そのやり方をまだ見つけてないんだ。

 ミリィも言ってただろ、戦い抜いた先に見つかるかもって。

 ここで降りたら、この先も決断しなきゃいけない時に言い訳して逃げてしまうようになる。

 そんな気がするんだ」

 

 カズイもまた、自分の望む道を探すためにアークエンジェルに残る意志を固めた。

 自分の道を探そうとするカズイの勇気を否定することは出来なかった。

 

「結局、みんな残る事になったわね」

 

「キラはどうするのかな?」

 

 最後に残った除隊許可証を見ながら、自分達のために戦ってくれたキラを思う。

 

「あいつは降りる、いや、降りなきゃ駄目だ」

 

「そうだよな、イージスのパイロット、昔の友達なんだよな」

 

「そんな相手と殺し合いなんかさせられないわ」

 

「そうだな」

 

 これから先は、自分達の意志で歩いていく。

 これ以上キラを巻き込んではいけない。

 サイ達がそう思っている所に、キラが格納庫に入ってきた。

 

「あれ、どうしたの?みんな船に乗らないと」

 

「俺たち、みんなアークエンジェルに残る事にしたんだ。

 フレイが志願してさ」

 

「えっ」

 

「ああ、勘違いするなよ。

 フレイが志願した理由を聞いて、俺たちは止められなかった。

 でも、俺たちが残るのはフレイのためじゃない」

 

「みんな、それぞれの理由で残ることを決めたの」

 

「だから、もう俺たちは守られる立場じゃない」

 

 そう言って、キラに除隊許可証を手渡した。

 キラは、手の中の紙と周りにあるサイ達が破ったのだろう紙切れを見て、友人達の決めた道を知った。

 

「ちょっと待って、みんな、僕は・・」

 

 キラが自分の意志を伝えようとしたが

 

「おおい、君たち、もう出発の時間だ。乗らないのか?」

 

 小型船で民間人の案内をしていた係員が声をかけてきた。

 

「あっ、ちょっと待ってください。こいつが乗ります」

 

 トールが係員に応えて、キラを船の方に押し出す。

 

「キラ、元気でな」

 

「何があっても、ザフトにだけは入らないでくれよ」

 

 そう言って、格納庫を出て行く友人達を見ながら、小型船まで流されてしまう。

 船の入り口に続く階段の手すりに捕まり、ようやく止まる。

 友人達が出て行った扉を見つめる。

 

「どうしたんだい?もう出発だ。乗るのなら早くしなさい」

 

「すみません、行ってください」

 

 係員に断り、キラは友人達の後を追おうとする。

 

「行くのか?」

 

 最後まで小型船の入り口で待っていたカガリが声をかけた。

 

「うん、心配しないで。君が乗るシャトルは、僕たちが守るから」

 

 そこには、いつもと変わらない真っ直ぐにカガリを見つめる瞳があった。

 

「まったく、ラクスが惹かれる訳だ」

 

「えっ、何か言った?」

 

 何も分かっていない顔をするキラ

 

「私をアスハの娘でも歌姫でもない、カガリという名のただの女の子として扱うような奴なんて、今までいなかったってだけさ」

 

 キラのあるがままを受け入れる性質。

 それは、立場や身分と言ったものを取り払った自分自身を見てくれるということ。

 そんなキラの得難い資質が、戦争と言う過酷な環境で変わってしまわないでほしいと願った。

 カガリがキラに身体を寄せる。

 

「キラ、お前が私を守ると言うなら、私の心がお前を守る」

 

 そう言って、キラの頬に優しく口付ける。

 ゆっくりと離れるカガリ。

 突然の出来事に動揺する。

 頬の感触を思い出し、顔を赤くしてしまう。

 

「な、え・・・カ、カガリ?」

 

 そんなキラの様子を見て、いたずらが成功したような表情をみせる。

 

「感謝しろよ。こんなサービス、滅多にしないんだからな!」

 

 そう言って、カガリは小型船に乗り込んで行った。

 そんなカガリを見て、また気遣ってくれたんだなと思った。

 初めて会った時から、カガリは他の誰かを気遣っていた。

 僕にも、戦わなくていい、自分を守るために死なないでくれと言ってくれた。

 そんなカガリだから守りたいと思ったんだ。

 除隊許可証を破り捨て、ストライクへと向かう。

 やっと見つけた心の形、それが目指す未来へ向かうための新たな戦いを始めるために。





なかなか戦闘まで辿り着かない。
この辺りは、書きたいシーンが山盛りです。
次回は戦闘です。
原作に比べて、ナスカ級が3倍、ローラシア級が2倍の大戦力で襲いかかるザフト。
この戦闘をどう切り抜けたらいいのか!
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