歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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燃える砂塵

 

 

 

 マリューがブリッジに上がった時、既に戦闘は開始されていた。

 

「状況は?」

 

「第一派、ミサイル攻撃6!イーゲルシュテルンにて迎撃」

 

「砂丘の陰からの攻撃で、発射位置、特定出来ません!」

 

 敵は、こちらに捕捉されないように立ち回っている。

 ここはザフトの勢力圏、地の利は向こうにある。

 敵に発見されないよう、排熱を抑えるため機関を落としていたことが仇になっていた。

 機関の出力が上昇するまで、アークエンジェルは動けない。

 

「総員、第一戦闘配備発令!機関始動!

 パイロットは、搭乗機にてスタンバイ」

 

「第二波、来ます!」

 

 再び、ミサイルがアークエンジェルに向かってくる。

 イーゲルシュテルンやチャフ、フレアなどの今の状態でも使える兵装で防御に徹する。

 とにかく時間を稼がなければならない。

 

「5時の方向に機影、ザフトの戦闘ヘリと確認!」

 

 ヘリ部隊も攻撃後、すぐに砂丘の稜線の下に姿を隠してしまう。

 動けないアークエンジェルでは、相手を捕捉できず一方的に攻撃されてしまう。

 

「フラガ少佐のスカイグラスパーは出られないの?」

 

 マードック曹長からの返答は否だった。

 

「無理でさぁ、まだ飛行テストもしてないんですよ!

 弾薬もバルカンの弾くらいしか積んでないってのに」

 

「僕が出ます、敵は何処なんですか!」

 

 その状況にキラが出撃を志願する。

 

「まだ、敵の位置も規模も判ってないんだぞ!」

 

「そんな呑気なこと言ってられる状況ですか!

 このままだとアークエンジェルが!」

 

 マリューは、今までにないキラの様子に、イレブンが倒れた事で自分が守らなければと重圧を感じていた事を悟った。

 自分は、やはり未熟だ。

 艦長として、キラの変化に気が付かなかった。

 しかし、今は反省している暇はない。

 

「この状況では、出てもらうしかないわね。

 ナタル、ストライクの援護は任せるわ」

 

「了解」

 

 まだ確認されてないが、モビルスーツによる攻撃もあると想定しなければならない。

 地上戦は初めてのキラが、距離を取って戦えるようランチャーを装備させる。

 

「キラ・ヤマト、ストライク行きます!」

 

 ストライクがアークエンジェルを飛び出して、砂漠へと降り立つ。

 しかし、粒子の細かい砂地に足を取られバランスを崩し倒れ込んでしまう。

 そこに、ザフトの戦闘ヘリからのミサイルが襲う。

 キラも反撃しようとアグニを構えるが、砂地に足が流されて体勢を崩してしまう。

 その隙に、ヘリ部隊は砂丘の影に隠れてしまう。

 

 ストライクの出撃を確認したバルトフェルドは、作戦を次の段階に移す。

 モビルスーツを投入するのだ。

 

「あれがストライクか。

 バクゥを出せ!反応が見たい」

 

 バルトフェルドの命令に従い、バクゥ部隊が動き出す。

 現れたモビルスーツに対応しようとストライクを動かすが、砂漠での高機動戦闘を可能とするバクゥに翻弄されてしまう。

 足を取られながらも、アグニを撃つがバクゥを捉えることが出来ない。

 

「仕方ない、スレッジハマーを撃て!」

 

「ストライクに当たりますよ?」

 

「PS装甲がある。

 まずは、バクゥに距離を取らせなければどうにも出来ない。

 ハウ二等兵、ヤマト少尉にタイミングを合わせて上空に退避するよう伝えるんだ!」

 

「了解!キラ、ミサイルが行くからジャンプして避けて!」

 

 アークエンジェルからミサイルがストライク周辺に撃たれる。

 それに合わせて、空へと跳ぶストライク。

 バクゥ達はミサイルが迫っていた為、ストライクへの攻撃を諦め、やむ得ず距離を取る。

 

「随分とパイロットを信頼しているようだ。

 ストライクのパイロットもそれに応えている」

 

 仲間のいる場所にミサイルを撃つ指揮官。

 追撃を受けないようにギリギリのタイミングで退避するストライク。

 宇宙でクルーゼ隊が、圧倒的な戦力で襲いかかりながら取り逃した訳だ。

 報告を聞いた時は信じ難かったが。

 なる程、手強い相手だ。

 砂地に足を取られないように、ジャンプして滞空中に砲撃する事でバクゥに接近されないように立ち回っている。

 

「いい機体だ、それにパイロットの腕も悪くない」

 

 だが、それでも宇宙用の機体でバクゥには勝てない。

 いずれエネルギーが尽きるだろう。

 

 

 アークエンジェルの格納庫では、ムウがマードックにスカイグラスパーを飛べるようにしてくれと頼んでいた。

 

「無理ですよ!弾薬だってまともに積んでないんですよ!」

 

「それでも、囮くらいは出来るさ!

 キラがイレブンの分まで抱え込んじまってんだ!

 頼っていいんだって事を教えなきゃいけないんだよ!」

 

 ムウも、隊長としてキラに抱え込ませた事を不甲斐なく思っていた。

 ナチュラルの俺が、パイロットの中で一番弱いのかもしれない。

 それでも俺が隊長なんだ。

 部下に背負わせるなんて、情けない真似できるかよ。

 

 そんなムウの気持ちを理解し、マードックは発進の準備に取り掛かる。

 

「飛行テストもしてない機体で、少佐もシミュレーターでしか動かしてない。

 ぶっつけ本番ですぜ?」

 

「キラだって、初めての機体を実戦で動かした。

 なら、俺もこの位の事は、して見せなきゃな」

 

 そう言って笑うムウのために、スカイグラスパーの発進準備が進んでいく。

 キラが外で、バクゥと戦っている間に準備は進められ、出撃の時が来た。

 

「ムウ・ラ・フラガ、スカイグラスパー出るぞ!」

 

 アークエンジェルからスカイグラスパーが飛び出す。

 

「む、報告にない機体だな」

 

 バルトフェルドは、新たな機体が戦闘機であることから、エンデュミオンの鷹がパイロットだろうと当たりを付ける。

 

 スカイグラスパーは、出撃直後、バクゥを援護するためにストライクを攻撃している戦闘ヘリ部隊に攻撃を仕掛けた。

 スカイグラスパーには、バルカンの弾しか積まれていない。

 ビームは、出力調整が終わっていないため撃てない。

 バクゥは、キラに任せるしかない。

 なら、戦闘ヘリは俺が落とす。

 そのために機体を動かす。

 機体を揺らしながら旋回して、バルカンで戦闘ヘリを撃墜していく。

 その動きを見て、バルトフェルドは驚愕していた。

 

「なるほど、エンデュミオンの鷹も想像以上の強敵だな」

 

 そんな上官の呟きに、ダコスタが問いかける。

 

「戦闘ヘリが落とされただけですよ。

 戦闘機なんて、それほど戦力にはならないのでは?」

 

「ダコスタ君、戦闘機でヘリを撃ち落とすのは、それほど簡単ではないんだよ。

 誘導兵器が使えない今、速度域が違いすぎる相手を捉えるのは難しい」

 

「はぁ」

 

 いまいち分かってない部下に説明を続ける。

 

「母艦から発進した直後、加速して機体を安定させなきゃいけない状況で、機体を揺らしながら旋回させる事で全てのヘリを射線に捉えたのだ」

 

 そこで一息入れて、相手に対する賞賛を口にする。

 

「まさに神業だよ。

 コーディネーターでも同じ事が出来る者がどれほどいるか。

 まるで機体が踊っているようだった。

 さしずめエンデュミオン・ダンスと言ったところか」

 

 バルトフェルドは、ムウが新たに会得した機体バランスを意図的に崩す事で行う、予測不可能な変則機動をエンデュミオン・ダンスと名付けた。

 

 新たな機体の出現とヘリ部隊が全滅した事でバクゥ達も距離を取り警戒する。

 アークエンジェルも可能な限り、ミサイルで援護している。

 こうして出来た、僅かな時間でキラはプログラムを書き換えて、ストライクを砂漠の接地圧に順応させる。

 

 戦闘機からの脅威が無いと判断し、再びバクゥが襲いかかって来た時、ストライクの動きが明らかに変わっていた。

 砂漠の大地をしっかりと踏み締め、砲戦用の装備で格闘戦すらこなして見せたのだ。

 不用意に飛び込んだバクゥが、弾き飛ばされ仰向けになった所にアグニが向けられる。

 引き金が引かれ、この日、初めてビームがバクゥを捕らえる。

 砂漠の夜が、大きな爆発によって照らされる。

 

 それを見たバルトフェルドは、本国に不信を持つ。

 ストライクのパイロットはナチュラルであり、それ故に必ず撃破して開発を遅らせなければならない。

 それが本国から齎された情報であったからだ。

 だが、ストライクのパイロットは、短時間で砂地に機体の運動プログラムを適応させた。

 

「あれが本当にナチュラルか?」

 

 どちらにせよ、今、我々にとって脅威なのは変わらない。

 

「レセップスに打電だ!敵艦に主砲で攻撃させろ!」

 

 可能ならば、ここで大天使を落とす。

 そう決めたバルトフェルドの指示により、アークエンジェルの位置座標に向けて艦の主砲が撃たれる。

 

「南西より熱源接近!砲撃です!」

 

「離礁!緊急回避!」

 

 なんとか動けるまでに機関の出力が上がっていたため、アークエンジェルは回避機動を取る事が出来た。

 初撃は、ほとんどが外れるか迎撃に成功したが、一発だけ艦を掠めるように当たってしまった。

 被弾の衝撃が、アークエンジェルを襲う。

 その衝撃から戦艦クラスの主砲だろう。

 直撃すれば、アークエンジェルも無事では済まない。

 即座にムウが進路を攻撃が来た方向に向ける。

 碌な武器が無いが、敵艦をレーザー照射すればアークエンジェルからミサイルで攻撃出来る。

 一方的に撃たれる状態から脱することが出来るのだ。

 ブリッジから、間に合わないとの声も上がるが、やるしか無いと叫んで敵艦に向かう。

 そして、2射目が襲う。

 

「第二波接近!直撃来ます!」

 

 アークエンジェルに直撃する軌道を取る砲弾を見て、キラの中で何かが弾ける。

 世界が灰色になり、砲弾だけが色を持つ。

 はっきりと弾道が見える。

 その軌道の先にアグニを構えて、発射する。

 それは、砲弾を撃ち落としたと言うより、アグニのビームに向かって砲弾の方が飛び込んでいったように見えた。

 

 その余りに神業めいた射撃に、ブリッジのクルー達も息を呑む。

 それは、バルトフェルドも同じだった。

 同時に、やはりストライクのパイロットはナチュラルではないと確信した。

 

「確かにとんでもない奴のようだな。

 だが、もうそろそろパワーダウンする筈だ」

 

 そうなれば、勝機はある。

 実際、ストライクのエネルギーは危険域に入っていた。

 強力な分、アグニは多くのエネルギーを消費してしまうのだ。

 

 向かってくるバクゥを見ながら、キラの中に焦りが浮かぶ。

 その時、何処からかミサイルが飛んできてバクゥを襲う。

 いや、よく見ると戦場に向かってくる自走砲から撃たれている。

 

「これは、レジスタンス?」

 

 正体不明の一団は、バクゥに攻撃して牽制しながらストライクに通信ケーブルを繋いで来た。

 そこから、若い男の声でバクゥをトラップに誘導するよう指示が来る。

 エネルギーが危険域の今、その言葉を信じて賭けるしかない。

 ストライクを餌にトラップが有ると言うポイントまでバクゥを誘導する。

 バクゥがそのポイントに入った瞬間、大きな爆発がバクゥを包み込み、破壊する。

 地下の坑道を利用したトラップであった。

 トラップでバクゥを撃破した直後、ストライクがフェイズシフトダウンで装甲が灰色に変わる。

 

 それを見たバルトフェルドは、レセップスの位置がバレた事もあり、撤退を決めた。

 

「フラガ少佐から入電です」

 

「敵艦を発見、敵母艦はレセップス」

 

「レセップス!?」

 

「アンドリュー・バルトフェルドの母艦だわ。

 敵は、砂漠の虎ということね」

 

 敵が、ザフト屈指の名将と言われる男だと判明した。

 地上での戦いも、困難なものになると覚悟を決める。

 

 

 アークエンジェル・医務室

 

 戦闘が始まったが、それでもフレイはイレブンに付いて看病を続けていた。

 戦闘中に自分が出来ることはない。

 なら、みんなを信じて自分に出来ることをする。

 そう思って、イレブンの身体を冷やす。

 

 その時、アークエンジェルに敵艦の主砲が掠めた事で大きな衝撃が走る。

 その衝撃で、フレイはイレブンの上に倒れ込んでしまった。

 

「うっ、な、何が・・」

 

 どうやら、今の衝撃でイレブンの意識が戻ったようだ。

 

「あ、ソキウスさん、意識が戻ったのね」

 

 イレブンは周りを見渡し、自分が医務室のベッドで寝ていた事を知る。

 聞こえてくる戦闘音から、ザフトの襲撃を受けているのだろう。

 状況を理解したイレブンは、身体を起こしベッドから出ようとする。

 

「まだ動いちゃ駄目よ!目覚めたばかりで、熱も下がってないのに!」

 

「戦闘中なんだろう?なら、戦わなくては」

 

「何言ってるのよ!そんな身体で戦えるわけないじゃない!」

 

「俺は戦闘用コーディネーターだ。

 戦えない俺に価値なんてない」

 

 そんなイレブンの言葉を、フレイは涙を流しながら否定する。

 

「そんな事ない!みんな、あなたを認めているのに価値がないなんて言わないで!みんなが信じられないの?」

 

「だが、俺は・・・」

 

「お願い・・そんな事言わないで。

 あなたは兵器じゃない、人間よ。

 じゃないと私は、パパを許せなくなる」

 

 イレブンは、泣き崩れるフレイに何も言えなくなる。

 何も言わずにベッドに横になる。

 そんなイレブンの行動に、不思議そうな表情を見せるフレイ。

 

「すまなかった、俺も仲間を信じるよ。

 フラガ大尉やキラに任せる」

 

 そんなイレブンの様子を見て、フレイは微笑みを浮かべる。

 

「今はフラガ少佐よ。

 提督の計らいでアークエンジェルのみんな昇進したんだって。

 キラも少尉になったわ。

 私たちは、まとめて二等兵だけどね」

 

「そうか、なら戦いが終わったら、おめでとうの一言でも送るよ」

 

 そう言ってイレブンは、眠りに落ちた。

 やはり、身体はまだ相当辛かったのだろう。

 そんなイレブンの顔を見ながらフレイは呟く。

 

「ソキウスさん、あなたもアークエンジェルの一員なんだから昇進してるのよ」






原作では、種割れアスランとの戦い以外で1番追い詰められた戦闘ですね。
明けの砂漠が来なければ、確実に負けてたと思います。
エンデュミオン・ダンスは、元ネタのマクロスΔのインメルマン・ダンスとは少し違いますが、語呂が良いのでムウの機動に採用しました。
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