歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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地中海を目指せ!

 

 

 

 レセップスでアークエンジェル討伐の準備をしているバルトフェルドは、戦力の補充を頼んだジブラルタルからの回答に不満を漏らしていた。

 

「なんだってザウートなんて寄越すかねぇ。

 ジブラルタルの連中は。

 バクゥは、品切れか?」

 

「なんでも、各戦線の連合軍の動きが活発化しているようで、不用意に戦力を引き抜く事は出来ないとの事です」

 

「アークエンジェルを逃すための陽動だろう」

 

「それでも、下手をすれば戦線を押し返されかねないと判断したんでしょう」

 

「やれやれ、相手にレジスタンスの協力がある以上、前回の様に地形を利用して有利を得るのは難しい」

 

 手持ちの十分とは言えない戦力でアークエンジェルを落とさなければいけない。

 バルトフェルドにとっても、難しい戦いになりそうだ。

 

「その埋め合わせのつもりですかねぇ?この二人は」

 

 副官が、ジブラルタルから送られた資料を見ながら呟く。

 その資料には、援軍として送られる2機のGとその概要が記載されていた。

 

「厄介払いの間違いじゃないか?

 彼らだろう?歌姫のシャトルを撃ったのは」

 

「その辺りの詳しい情報は、回ってきてません。

 エリート部隊ですからね、クルーゼ隊は」

 

「僕は、クルーゼ隊に限らず、宇宙のエリート部隊は嫌いでね」

 

 そう言って、ジブラルタルから送られてきた援軍の出迎えに行く。

 

 

 

 明けの砂漠のアジトでは、アークエンジェルとレジスタンスたちが作戦開始の準備に追われていた。

 レジスタンスのメンバー達は、家族に別れを告げている。

 普段の作戦とは違い、今回は多数の犠牲が出ると予想される。

 それでも戦う。

 町を焼かれた恨みもある。

 それ以上に、砂漠の虎は自分達の敵なのだ。

 よそ者のアークエンジェルだけに戦わせるのは、砂漠の民の誇りを汚すことになる。

 アークエンジェルは、レジスタンスの先導で身を隠す事が出来ない、奇襲を受けづらい地形のルートで北上、地中海を目指す。

 

 

 

 アークエンジェルが出発の準備を始めた事で、偽装は解かれザフトに再び監視されていた。

 そのアークエンジェルが動き出したと、バルトフェルドに報告が行く。

 直ぐに、レセップスのCICに入り、監視映像からアークエンジェルの進路を確認する。

 真っ直ぐ北上している事から、目的地は地中海沿岸。

 そのまま海に出て、トルコ辺りに入るつもりだろう。

 ルート上の地形は開けていて、奇襲は出来そうにない。

 やはり、正面からやり合うしかないようだ。

 

「動き出してしまったか。

 もう少し待って欲しかったが、仕方ない」

 

「出撃ですか?」

 

 CICに付いて来たイザークが、問いかけてくる。

 その声は、戦闘が始まる事への期待がこもっていた。

 やれやれ、この戦争は、そんなに楽しいものではないんだがねぇ。

 しかし、やる事は決まっている。

 これは戦争なのだから。

 

「ああ、レセップス発進する!

 ピートリーとヘンリーカーターにも打電しろ!」

 

 アークエンジェルを討つために、虎もまた動き出した。

 

 

 アークエンジェルの前方にレセップスとピートリーが展開、左右から挟み込むように進む。

 ヘンリーカーターは、所定の位置に進んでいる。

 今のところ、察知された様子はない。

 戦闘ヘリとバクゥに出撃を命じて、自分もアイシャと共に専用機ラゴゥに乗り込もうとしていたバルトフェルドの下にイザーク達がやって来た。

 

「バルトフェルド隊長!

 どうして、我々の配置がレセップス艦上なんです?」

 

「おやおや、クルーゼ隊では、上官の命令に兵がそうやって異議を唱えてもいいのかね?」

 

「いいえ、しかし、奴らとの戦闘経験では俺達の方が!」

 

「負けの経験でしょ」

 

「ん・・・なに?」

 

「アイシャ」

 

「失礼」

 

「君達の機体は砲戦仕様だ。

 高速戦闘を行うバクゥには付いて来れんだろ?」

 

「し、しかし」

 

「イザーク!もうよせ、命令なんだ!」

 

 ディアッカが仲裁に入り、二人は引き下がった。

 納得はしていないだろうが、とりあえず持ち場には戻るようだ。

 

「ストライクのパイロットのような真似、誰にでも出来る事じゃないだろうしなぁ」

 

 僅かな時間で砂漠の接地圧に対応してみせたストライクの戦い振りを思い出しながら呟く。

 歌姫の騎士も回復していたのは、確認できた。

 アークエンジェルの戦力は、万全の状態と判断してもいいだろう。

 パートナーのアイシャと共に出撃する。

 戦い、勝って未来を手にする為に。

 

「バルトフェルド、ラゴゥ出る!」

 

 

 

 アークエンジェルでも、ザフトの接近に気付く。

 

「レーダーに敵機とおぼしき影、撹乱ひどく、数、捕捉不能!1時半の方向です」

 

「さらに後方に大型の熱源2、敵空母及び駆逐艦と思われます!」

 

 戦闘ヘリ部隊が先行し、ミサイルを撃ってくる。

 その後ろには、バクゥの部隊が続いている。

 

「対空、対艦、対モビルスーツ戦闘、迎撃開始!」

 

「ストライク、バルキリー、スカイグラスパー発進!」

 

 イーゲルシュテルンでミサイルや戦闘ヘリの迎撃をしつつ、艦載機を発進させる。

 レジスタンス達も戦闘ヘリの迎撃に加わる。

 彼らの装備では、戦闘ヘリを落とす事しか出来ないからだ。

 他はバクゥに対する牽制くらいにしかならない。

 それでもレジスタンス達は戦う。

 この戦いを他人任せにしない為に、自分達に出来る事をしていく。

 

 ランチャーパックを装備したスカイグラスパーと戦闘機形態のバルキリーが発進する。

 その後に続いて、エールを装備したストライクが発進した。

 

 外では既に戦闘ヘリとの戦いが始まっていた。

 アークエンジェルやレジスタンスと共に、ヘリをある程度落とすと、ムウ達はそれぞれの目標に向かう。

 

 キラの前には向かってくるバクゥ達の姿がある。

 

「バクゥの数は8、いや、10か!」

 

 かなりの数だが、自分は一人じゃない。

 そう思って、向かってくるバクゥに向けてライフルを構え、ビームを放つ。

 しっかりと狙ったはずなのにビームは外れた。

 

「ビームが逸れる?

 そうか、砂漠の熱対流で!」

 

 キラは、ビームが外れた理由に思い当たり、すぐにプログラムを修正していく。

 敵がその隙を見逃してくれる筈もない。

 動きが止まったストライクにバクゥが飛びかかる。

 プログラムの修正は、まだ終わっていない。

 それでもキラに焦りはない。

 

 上空からストライクに襲いかかるバクゥにバルキリーが突っ込んで来る。

 モビルスーツへと変形して、そのままバクゥを蹴り飛ばす。

 

「キラ、プログラムの修正は?」

 

「もうすぐ終わります!」

 

「そうか、ならそれまで俺が引きつける」

 

 そう言って、イレブンはバクゥの群れに飛び込んで行く。

 キラがプログラムを調整した事で、バルキリーも砂漠の接地圧に順応している。

 ストライクと同じように、バルキリーのビームも熱対流の影響で逸れているが、イレブンは経験から手動でズレを修正していく。

 アークエンジェルからもミサイルで援護が入る。

 レジスタンスさえも、自走砲やロケットランチャーでバクゥを牽制している。

 バクゥ10機を相手に時間を稼いだおかげでプログラムの修正が終わる。

 キラのストライクが戦闘に復帰したのだ。

 

 イレブンを背後から襲おうとしていたバクゥをビームが貫く。

 バクゥが背後で爆発したことで、イレブンはストライクが戻ってきた事を知り、反撃に転じた。

 ストライクがウイングを切り裂いた事でバランスを崩したバクゥを撃ち抜く。

 バクゥから放たれるレールガンやミサイルを回避しながら、ストライクの前に誘導する。

 そのバクゥをストライクは、ビームサーベルで真っ二つに両断する。

 

 数で優勢であり、砂漠での高機動戦闘に高い適性があるはずのバクゥを人型のモビルスーツが圧倒している。

 その事実にバクゥのパイロット達は動揺する。

 そこに隊長機のラゴゥが到着し、バルトフェルドが指揮をとる事で動揺を抑える。

 

「勝たねば未来は無いのだ!

 なら、前に進むしかないだろう。

 我々が生きる事を認めさせるまで」

 

 バルトフェルドの言葉で自分達が戦う理由を思い出し、互いに連携しながらストライクとバルキリーに向かっていく。

 

 ザフトは、階級制度を持っていない。

 自分達は優秀だから、命令がなくとも自分の判断で正しい行動が取れる。

 そんな傲慢な思想を前提とした組織であるため、その連携は稚拙なものであった。

 だが、地上のバクゥ達は違った。

 仲間のフォローに入る事を躊躇わず、フォローされる事を恥とも思わない。

 そこには、同じ絶望を共有している絆があった。

 

 

 ムウは、前方のレセップスへと向かった。

 前回の戦いからレセップスの艦砲射撃は脅威だと認識しているからだ。

 敵艦の主砲を破壊して、その攻撃力を奪う。

 だが、接近した事でレセップスの甲板上に2機のGがいる事に気付いた。

 

「レセップス甲板上にデュエルとバスターを確認!」

 

 ムウからの報告に、アークエンジェルのブリッジもレセップスの脅威を1段階上げる。

 相手のGは、レセップスに陣取りアークエンジェルからのミサイルの迎撃に徹しているようだが、前線に出てくれば苦戦は免れない。

 

 アークエンジェルのクルー達は誤解していた。

 キラのような真似が誰にでも出来るはずがない。

 デュエルもバスターも砂漠の戦いに対応できないと思われた故に甲板上に配置されたのだ。

 

 ムウのスカイグラスパーに装備されたアグニが火を吹く。

 デュエルはその攻撃を回避する事が出来たが、ムウの狙いは最初からデュエルでは無かった。

 その先にあるレセップスの主砲である。

 ビームは、レセップスの主砲を貫き爆発させる。

 残る主砲は、あと一つ。

 ムウは、再びレセップスに攻撃をしかける。

 

 それを易々と許すほど、Gのパイロット達も無能では無い。

 これまでの戦闘で、ビームの減衰率が高く、宇宙ほど有効では無いことは分かっている。

 ならばと、バスターはミサイルをムウの機体に放つ。

 デュエルも追加装備のアサルトシュラウドからミサイルを撃つ。

 レーダーによる精密誘導は出来なくなったが、赤外線による大雑把な誘導は出来るのだ。

 そして、戦闘機のような装甲の薄い機体は、一発でも当たれば落ちる。

 これだけの数なら当たるはずだ。

 ディアッカ達は、そう確信していた。

 宇宙での戦いで化け物だと思ったことを忘れて。

 

 スカイグラスパーに向かってくる多数のミサイル。

 今から旋回しても、赤外線誘導で振り切る事は出来ないだろう。

 ムウは、あえて正面からミサイルに向かう。

 回避行動を取らない戦闘機を疑問に思うディアッカ達。

 翼のフラップを操作し損なったのか、機体が斜めに傾く。

 そのまま横滑りしたかと思えば、機体が浮き上がる。

 ゆらゆらと揺れるような軌道を描く。

 その動きで、無数のミサイルをすり抜けてきた。

 

 ディアッカ達は目の前の光景が信じられなかった。

 こんな真似、普通の人間に出来るのか?

 ミサイルの位置と機体の形状を完璧に把握して、風に揺れる木の葉のような動きですり抜けるなんて。

 あれがバルトフェルド隊長が言っていたエンデュミオン・ダンスか。

 目の前で神業を見せつけられた事で生じた意識の空白、それはムウが攻撃するには十分な隙だった。

 アグニの火が再び放たれる。

 デュエルとバスターは、アグニのビームを避けるために艦から飛び降りた。

 レセップスの残る主砲を捕らえ、爆発させる。

 

 

 アークエンジェル・ブリッジ

 

「レセップスの主砲破壊を確認!」

 

「これで後からの火力を気にする必要は無くなったわ。

 敵駆逐艦に突撃、駆逐艦を撃破しつつ、そのまま突破します!」

 

「ゴットフリート照準、敵駆逐艦、てーーー!」

 

 アークエンジェルの主砲を始め、全ての火器が駆逐艦に向けられる。

 駆逐艦の装甲は薄い、戦艦クラスのアークエンジェルとまともに撃ち合えば勝負にならない。

 すぐに被弾し、炎上し始める。

 

 その時、ヘンリーカーターが救援に現れた。

 背後を突くはずだったが、配置に着く前に包囲を突破されそうになった為、ルートを変更してきたのだ。

 

「もう一隻、伏せていたのか」

 

「でも、突破口は開けたわ。

 このまま離脱します!

 バルキリーは、ストライクを乗せて帰還するように」

 

 

 キラとイレブンは、連携して襲いかかってくるバルトフェルド達に苦戦していた。

 なかなかバクゥを落とす事が出来なくなっていたのだ。

 バクゥ達は、互いにフォローし合っている。

 その僅かな隙を突こうとすると、ラゴゥからの射撃で邪魔をされる。

 ガンナーのアイシャが常にイレブン達の動きを警戒して、味方を守るように撃ち続ける。

 バルトフェルドも指揮をしながら、アイシャが射撃し易いポジションを取り続ける。

 時には、Gを奪取した事で得た技術を用いてバクゥやラゴゥの頭部に取り付けたビームサーベルで斬りかかりもしていた。

 それでも、ストライクは盾を使って受け流し、バルキリーを守る。

 

「なるほど、いい腕ね」

 

「だろう、歌姫の騎士もとんでもない腕だ。

 どうやら、彼らは同胞の中でも特に優秀らしい」

 

「どうして嬉しそうなの?」

 

 命のやり取りをしているのに、バルトフェルドの顔には笑みが浮かんでいた。

 

「辛いわね、好きでしょ、ああ言う子たち」

 

 アイシャの言葉を聞いて、自分の想いを自覚した。

 そうか、僕は彼らを気に入っているのか。

 

「それでも戦うしかないだろう。

 互いが敵である限り、望む未来を勝ち取るために!」

 

 そう言ってラゴゥで駆け続ける。

 もう仲間を落とさせはしないと言う意志を示す。

 

 自分達と同じように信頼し合い連携する事で対抗してきたバルトフェルド達に、状況は膠着していた。

 そこにアークエンジェルから帰還命令が来る。

 イレブンは、バルキリーを跳躍させ、戦闘機になって距離を取る。

 突然の行動にバクゥ達は警戒する。

 

 旋回し、加速して戻って来るバルキリー。

 それに合わせてストライクも跳躍する。

 空中でバルキリーに着地するストライク。

 練習したって難しいだろう、大道芸のような真似を目の前でされて、対応出来なかった。

 そのまま、バルキリーはアークエンジェルに向かっていった。

 

「やれやれ、挟み撃ちにしようなんて欲を出したのが失敗だったな」

 

「隊長、どうしますか?

 アークエンジェルもレジスタンスも離脱して行きますよ」

 

 レジスタンスの車両は、アークエンジェルとは逆方向に撤退している。

 

「明けの砂漠も律儀だねぇ。

 アークエンジェルを追撃する。

 ピートリーは、総員退艦。

 残存部隊は、レセップスとヘンリーカーターに帰投」

 

「クルーゼ隊の二人が砂漠で立ち往生してますよ」

 

 副官の言葉にため息を吐く。

 

「ヘンリーカーターに回収を指示しておいてくれ」

 

 こうして、アークエンジェルの追撃が始まった。

 彼我の速度差を考慮すると、地中海沿岸に到着する直前に追いつく。

 攻撃のチャンスは一度切り。

 海に出られると、それ以上は追えない。

 

 だか、砂漠地帯を抜けた先での戦闘になる。

 クルーゼ隊の二人も戦力として期待できるだろう。

 まだ、諦めるのは早すぎる。

 諦めた奴には出来ない、それだけは確かなのだから。







原作では、ボス戦としてバクゥが全滅してから戦場に到着してましたが、戦力の逐次投入は下策だと思い、きっちり連携してもらいました。
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