歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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次の作戦に向けて

 

 

 

 アークエンジェルの修理が終わって、クルー達は久しぶりに艦内に集まっていた。

 大西洋連邦の司令部から新たな命令が届いたのだ。

 艦長のマリューが、クルー達を前にその命令を伝える。

 

「大西洋連邦司令部から、アークエンジェルに対してユーラシア連邦軍と協同して欧州反攻作戦への参加。

 ヨーロッパ戦線を押し上げるよう命令が下されました」

 

「それに伴い、本作戦におけるスカイグラスパー2号機のパイロットを指名する。

 パイロットは、トール・ケーニヒ2等兵とする」

 

「えっ、俺ですか?」

 

「ケーニヒ!返事をしないか!」

 

「は、はい!了解しました!」

 

「アークエンジェルは、明朝0900から作戦参加のため移動を開始します。

 なお、本作戦ではユーラシアの部隊が本艦に臨時に編入されます」

 

 マリューの言葉に続き、ハンスとジョバンニが前に出る。

 

「本作戦で一時的にとは言えアークエンジェルに所属する事になった。

 ハンス・ヴォルフシュタイン少佐だ。

 短い間だろうがよろしく頼む」

 

「ジョバンニ・フェッリ少尉です。

 よろしくお願いします」

 

 新たな仲間となる二人の挨拶も終わり、解散となった。

 

 

 

「フラガ少佐!」

 

 解散後、トールがムウを追いかけてきた。

 

「トールか、どうしたんだ?」

 

「教えてください。

 なんで俺なんですか?」

 

「何の事だ?」

 

「誤魔化さないでください!

 パイロットの事です。

 悔しいけど、フレイの方が腕が上なのは分かってます。

 フレイが選ばれなかったのは、フレイのお父さんが何か言ってきたからじゃないですか?」

 

 トールは、自分なりに状況を推理したのだろう。

 自分がパイロットに選ばれた事に納得していないようだ。

 ムウも、その様子からしっかり話しておかないと誤解してしまうと思い、正面から向き合う。

 

「たしかに、アルスター事務次官からそう言った要請はあった」

 

「やっぱり」

 

 トールの顔が曇る。

 自分が実力で選ばれた訳じゃないと思っているのだ。

 

「だが、そんな事がなくてもお前を選んでいた」

 

「でも、訓練ではフレイの方が成績が良いじゃないですか!」

 

「1対1の対戦ならフレイが上だろうな。

 だけどな、今の実力じゃ、どっちにしろモビルスーツには勝てないんだよ。

 お前には支援の才能がある。

 だから、お前を選んだんだ」

 

「支援の才能ですか?」

 

「ああ、お前は学生達の中でムードメーカーをやっていたからか困ってる奴を見つけるのが上手い。

 そして、そんな奴に自然と手を差し伸べる事が出来る」

 

 トールは、ムウの話を聞いて自分が恥ずかしかった。

 ムウは、きちんと自分達を見て選んでくれていたのだ。

 フレイのお父さんが何を言っても、そんな事で戦場に連れて行く仲間を決めるようなことをする人じゃない。

 少し考えれば分かることだった。

 

「少佐、すみませんでした。

 この作戦で俺、頑張ります!」

 

「あまり気負いすぎるなよ。

 お前はルーキーなんだ。

 俺たちを信じて頼ればいい」

 

「はい!よろしくお願いします」

 

 そう言ってトールは帰っていった。

 ムウもあの様子なら大丈夫だろうと安心してその場を離れる。

 

 

 物陰からそんな二人のやり取りを見ていた者がいた。

 トールの様子に気付いて後を追ってきたフレイであった。

 

 フレイは展望室に来ていた。

 その顔には苦悩が浮かんでいる。

 

「私はパイロットになれないのかな。

 せっかく出来る事を見つけたのに」

 

 そんなフレイに近づく影が一つ。

 

「フレイ、どうしたんだ?

 こんなところで一人でいるなんて」

 

 フレイの思い悩む様子に、イレブンが声を掛けてきた。

 

「さっき、トールとフラガ少佐の話を聞いてしまって。

 パパが手を回して、私をパイロットにしないようにしているんでしょ?」

 

「なるほど、そんな事で悩んでいたのか」

 

「そんな事ってなによ!

 私は真剣に悩んでいるのに!」

 

「フラガ少佐の判断は間違ってない。

 お前は高機動戦闘に向いているが、今の技量でそんな戦いをすれば死ぬだけだ。

 スカイグラスパーじゃ、お前の持ち味を活かせない。

 支援任務ではトールの方が向いてるのは確かだ」

 

「でも、パパから圧力が掛かってるんでしょ?」

 

「見損なうな!

 俺たちは、そんな事で共に戦う相手を選んだりしない」

 

 珍しく怒りを感じさせる強い口調で話すイレブンに、フレイは自分の悩みが見当違いなものだった事に気付かされた。

 

「ごめんなさい、イレブンさん。

 フラガ少佐が、パパの圧力なんかに負けて仲間を危険にさらす様な決断をする訳がないよね。

 選ばれなかったのは、私の力不足だった」

 

 私の力が本当に必要なら、パパの圧力に負けるような人じゃない。

 私が憧れた人達は、そんなに弱くないって分かってたはずなのに。

 私は、トールよりも強いと思っていた。

 訓練での成績も、模擬戦でも勝っていたから。

 でも、その程度の差で思い上がっていたようだ。

 トールの方が人をサポートするのが上手い。

 そんな事にも気付けない私が、頼りにされる訳がなかった。

 

 自分が成長できていないと落ち込むフレイ。

 そんなフレイの様子を見て、イレブンはフレイの頭に手を乗せる。

 

「大丈夫だ。

 お前はちゃんと成長しているよ。

 いずれナチュラル用のOSも完成するだろう。

 そうなれば、相応しい機体も出来るさ」

 

 頭を撫でられて、慰められた事に顔を赤くするフレイ。

 そんな恥ずかしさを誤魔化すために早口になってしまう。

 

「そ、そうね!

 でも、パパが邪魔しているのに、そんな機体が回って来るかしら?」

 

「心配するな。

 いざとなったら、アズラエル理事に頼んで用意してもらうよ」

 

 そう言って、優しい表情を見せるイレブンに、フレイは胸を高鳴らせてしまう。

 

(ダメダメ!私にはサイがいるじゃない。

 それに、イレブンさんの1番はカガリだもの。

 歌で心を救われただけじゃない。

 アークエンジェルで、直接その強さを見たんだから)

 

「あんな娘に敵う訳ないじゃない」

 

 フレイは、イレブンにも聞こえないように小さく呟いた。

 

 

 翌日、アークエンジェルはヨーロッパ戦線に参戦するためオデーサを出発した。

 その道中、次の作戦に向けてパイロット達がブリーフィングを行っている。

 

「ハンス、あんたにモビルスーツ隊の指揮を任せたい」

 

「良いのか?

 お前がアークエンジェルの機動兵器部隊の隊長だろう?」

 

「俺は全体の戦況把握とトールのフォローに集中したい。

 それに、戦闘機から前線で戦うモビルスーツを指揮するのは難しいからな」

 

「そうか、他の者に不満が無いなら受けよう」

 

 他のパイロット達も、ムウの判断を信じているので反対する事はなかった。

 

(互いに信頼し合っている、良い部隊だな)

 

「アフリカでデュエルとバスターが確認された。

 ヨーロッパにも出張ってくるかもしれないな」

 

「俺のジンにもビームサーベルが支給された。

 ビームライフルは、機体の改修が必要なジンには用意してくれなかったけどな」

 

「エネルギーパックの技術は、まだ完成していないから仕方ないさ」

 

「まぁ、Gが出てきても対応できる武器があるんだ。

 アフリカでは戦えなかったが、次に会ったら落としてやる」

 

「ジョバンニ、あまり相手を侮るなよ」

 

「分かってます、堕とせる時に確実に仕留めますよ」

 

 もう、エレーナの時の様な後悔はしない。

 そんなジョバンニの様子を、ハンスは心配そうに見ていた。

 

 

 

 

 ザフト軍:ジブラルタル基地

 

 東欧のユーラシア軍に動きがあり、ヨーロッパで大規模な作戦があると判断したザフトは、その対応のため忙しく動いていた。

 イタリアとの間にはアルプス山脈があり、大部隊が侵攻してくる可能性は低い。

 主戦場はドイツになるだろう。

 ジブラルタルでは、ドイツに展開している部隊に対する援軍の準備をしていた。

 

 そんなジブラルタルに宇宙から降りてきたアスランとニコルが到着した。

 地上のイザーク達と合流するために降りてきたのだ。

 隊長のクルーゼは、スピットブレイクの準備で忙しいらしく降りてきてはいない。

 そんなアスラン達をイザークとディアッカが出迎える。

 

「イザーク、その傷・・」

 

 出迎えたイザークの顔を見て、アスランが驚きの声を上げる。

 その顔には、宇宙で負った大きな傷が残っていたからだ。

 今の医療技術ならキレイに消せるはずの傷を残している。

 そこにイザークの強い覚悟を感じる。

 二人に案内され、アスラン達は司令部に顔を出す。

 

 

「君達には、しばらくバルトフェルド隊に同行してもらう」

 

「バルトフェルド隊にですか?」

 

 アスラン達は、司令部からの指示に戸惑っている。

 自分達はクルーゼ隊だ。

 地上には繋がりの深い部隊も居ないので遊撃隊のようなポジションになると思っていた。

 特定の隊に付いても、連携も出来ない我々は返って邪魔になるのではないかと考えていたのだ。

 

「イザークとディアッカの二人が転属願いを出した為、地上にいる間はバルトフェルド隊に所属する事になっている。

 彼らとなら連携も問題ないだろう」

 

「なっ!イザーク達がですか?」

 

 アスラン達は、驚愕して二人を見る。

 イザーク達がそんな事までしていたとは思っていなかった。

 

「バルトフェルド隊長には、まだまだ教えてもらう事があるからな」

 

「俺たちも、地上で色々見て、考える事があったって訳だ」

 

 見つめ返す二人の表情は、宇宙にいた時とは別人と思えるほど変わっていた。

 

「ユーラシアの部隊が大きく動いている。

 おそらく、ドイツに侵攻してくるだろう」

 

 ドイツは、ユーラシア連邦成立前から高い技術と工業力を持っていた地域だ。

 連合がクライシスによるエネルギー危機を克服しつつある今、ドイツを奪還される事はザフトにとって何としても避けたい事態である。

 

「バルトフェルド隊にもドイツへの援軍に参加してもらう。

 君達の部隊としての力は、ジブラルタルでも最高峰だからな」

 

 そう言って、イザーク達を見る司令の顔には信頼があった。

 バルトフェルド隊に転属して連携を磨く中で、次第に地上軍の仲間として受け入れられていったのだ。

 イザーク達がカガリが乗るシャトルを撃った事で隔意を抱いていたジブラルタルの兵士達も、イザーク達の姿に考えを改めていった。

 若い奴らが、過ちを認めて前に進もうとしているのだ。

 彼らにやり直す機会を与えるために、大人の自分達が身体を張らなければ。

 

 イザーク達も、ジブラルタルの者達の自分達に向ける視線が変わってきた事を感じていた。

 自分達が宇宙のエリートだと誇ることは無くなった。

 イザーク達にとって彼らはプラントの未来のために地上で絶望に抗う、尊敬すべき先達であった。

 

 バルトフェルド隊はイザーク達と言う新たな仲間を加えて、更に連携に磨きを掛けていた。

 彼らは、ドイツの地で再びアークエンジェルと対峙する事になる。

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