歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
ユーラシア連邦軍による欧州反攻作戦が開始された。
この作戦にはアークエンジェルだけではなく、イギリスからも大西洋連邦軍が参戦し、側面攻撃を仕掛けていた。
この側面攻撃には、開戦当初から高い戦果を上げているコーディネーター部隊も投入されている。
それは、大西洋連邦軍がこの作戦に本腰を入れている事を示していた。
ザフトは、数で勝る連合に対して部隊を分けて対応する事を強いられていた。
クライシスによって引き起こしたエネルギー危機を克服され、物量によって押し返される局面に入ろうとしているのだ。
まだ、モビルスーツは量産されていないため、戦場には鹵獲されたジンと少数のバルキリーしか投入されていない。
それでも、ザフトには苦しい戦いになる。
侵攻してくるユーラシアの部隊の中にアークエンジェルの姿が確認された。
ザフトは、投入出来る最高戦力であるバルトフェルド隊をあて、出来る限りの支援を行う事を決定した。
彼らも分かっているのだ。
もう連合がモビルスーツを配備することは止められない。
ストライクを落としても、僅かな時間を稼ぐことしかできないという事を。
それでも、ザフトにとって、その僅かな時間が貴重なものなのだ。
戦局を打開するための大規模な作戦、スピットブレイクが間近に迫っている。
その作戦が成功すれば、有利な条件で講和が出来るかもしれない。
未来に希望を繋ぐため、アークエンジェルの撃沈とストライクの撃破を最重要目標に据えて、ザフトは連合と対峙する。
バルトフェルド隊がユーラシアの部隊を蹂躙している。
地上では、ラゴゥとバクゥ達が互いにフォローし合いながら動き回り、狙いを付けさせない。
上空には、サブ・フライト・システム『グゥル』に乗ったデュエルとバスターがポジションを取り、地上のバクゥ達を援護している。
イザーク達は、目まぐるしく位置を変えるバクゥ達を的確に援護している。
それはアフリカでの戦いでは出来なかった、3次元の立体的な空間を支配する、新たな連携の形であった。
「凄い、イザーク達にこんな連携が出来たなんて!」
「そうだな、地上でこれほど成長しているとは」
目の前で凄まじい連携を見せるバルトフェルド隊とイザーク達に、アスランとニコルが感嘆の声を洩らす。
そんなバルトフェルド隊を脅威と認識したのか、連合の戦闘機部隊が援護に駆けつける。
ザフトも多数のディンで迎撃に当たる。
バルトフェルド隊を万全な状態でアークエンジェルの前まで届けるために、前に出て、つゆ払いを行う。
他の部隊も苛烈に攻撃を仕掛ける。
バルトフェルド隊がアークエンジェルとの戦いに集中出来る様に、他の部隊に邪魔はさせない!
そんな意思が伝わってくる。
初めて目にする地上軍の戦いに、その部隊の連帯感に戸惑うアスラン達。
それでも呆けてはいられない。
自分達では、バルトフェルド隊の連携に入ることは出来ない。
あまりに見事な連携に、邪魔になってしまう事が分かるからだ。
自分達がイザーク達との間に築けなかった信頼関係を、この僅かな時間で構築したバルトフェルドの手腕には尊敬するしかない。
「ニコル、俺たちは遊撃隊としてイザーク達を援護するぞ!」
「了解!」
アスラン達もグゥルに乗り、上空でバルトフェルド隊の突撃を援護し始める。
アークエンジェル・ブリッジ
「前線でバルトフェルド隊を確認!
友軍を撃破しながら本艦に向かって来ています!」
「ザフトの狙いは、あくまでアークエンジェルとストライクと言うことね」
「イージスとブリッツも確認されています!」
「周辺のザフト軍も、バルトフェルド隊の突撃を支援しているようです!」
「アークエンジェルに最大戦力を当てに来ていると言う事ですね」
「逆に言えば、バルトフェルド隊を撃破すれば、戦局は一気に連合有利へと変わると言う事よ!」
アークエンジェルも、バルトフェルド隊を迎え撃つ。
モビルスーツ部隊が出撃していく。
「ソキウス中尉、君はヤマト少尉とエレメントを組め。
我々と相互に連携しながら敵を迎撃する!」
「「了解!」」
ハンスとジョバンニ、イレブンとキラでエレメントを構成し、1小隊4機編成の部隊として行動する。
「スカイグラスパー1号機、2号機、発進してください!」
「ムウ・ラ・フラガ、1号機、出るぞ!」
「トール・ケーニヒ、2号機、出ます!」
続いて、スカイグラスパー隊も出撃する。
「トール、お前は距離を取ってアグニで援護射撃に徹しろ!
絶対に近づくなよ」
「了解です!」
「まずは、周辺にいるディンを排除する」
そう言って、ムウはソードパックを装備したスカイグラスパーでディンに向かっていく。
周りのユーラシア軍を足止めし、アークエンジェルへの援護を阻止しているディン部隊を排除して、バルトフェルド隊に対して、数の優位を得ようとしているのだ。
戦力が増強されたアークエンジェルが、再びバルトフェルド隊と相まみえる。
「アークエンジェルのモビルスーツが増えている。
あの白い機体、バルキリーに乗っているユーラシアの部隊と言う事は、銀狼ハンスか!」
バルトフェルドも、ヨーロッパ戦線で脅威となっているエースパイロットがアークエンジェルと行動を共にしている事に気付いた。
だが、こちらもアフリカの時とは違う。
イザーク達を仲間に加え、更に連携を磨いてきた。
その上、アスラン達もいるのだ。
ザフトが奪ったGが4機全て投入されている。
決して勝てない戦力ではない。
味方部隊が、周りのユーラシア軍を抑えている内にアークエンジェルとストライクを落とす。
「怯むな!
友軍が周辺の敵軍を抑えてくれている。
ストライクが最優先目標だ!」
「バルトフェルド隊長、我々は銀狼とその僚機に対処します」
アスラン達が、狙いをハンス達に定める。
自分達と同じように、編入されたばかりで細かい連携が取れないのだろう。
少し距離を開けて、相互に援護出来る位置取りで戦おうとしているハンス達と戦闘を開始する。
モビルスーツ同士の戦闘が始まる。
バルトフェルド達が磨き上げてきた、3次元の立体的連携が牙を剥く。
「くっ!デュエル達に上空を抑えられているのが、こんなに厄介だなんて」
「キラ、集中しろ!
気を抜けば、直ぐに落とされるぞ!」
上空からイザーク達が的確な援護を行っているため、地上のバクゥ達に対処する事が、アフリカでの戦いよりも格段に難しくなっている。
攻略の糸口を見つけるまでは、動き回って時間を稼ぐしかない。
キラ達は、互いの背中を守りながら、攻略法を模索していく。
連携を磨いてきたのは、バルトフェルド達だけではない。
キラ達も訓練を繰り返し、腕と連携を磨いてきた。
たとえバルトフェルド隊でも、そう簡単に落とせる相手ではないのだ。
「分かっていた事だが、容易な相手ではないな」
「それでも、俺たちならやれるさ!
バルトフェルド隊の一員として、全力を尽くすだけだろ?」
「そうだな、行くぞ!ディアッカ」
以前より更に動きが良くなったストライク達を見て、強くなっているのは自分達だけではないと理解した。
それでも負ける気はない。
自分達にも信頼できる仲間がいるのだから。
周りでは、他のユーラシア軍に横槍を入れさせないように友軍が必死に戦ってくれている。
アスラン達も、ユーラシアのエースパイロットを引き受けてくれた。
ならば、その想いに応えなければ。
ストライク達を落とす、味方も死なせない。
そんな想いで、地上のバクゥ達を援護していく。
ハンス達と戦っているアスラン達も、地上のエースパイロットの腕に舌を巻いていた。
ハンスのバルキリーは、Gと同等の性能がある。
地上で脅威になっている事は理解できる。
だが、機体性能だけではなかった。
地上軍にもビーム兵器は配備されている。
Gの技術を流用したビームサーベルだけではない。
試作ビーム兵器を運用する追加兵装ディープアームズも試験的に配備されていた。
フェイズシフト装甲に対抗できる武器が無い訳ではなかったのだ。
そんな中でも二つ名を轟かせているパイロットが、弱いはずもなかった。
僚機のジンのパイロットもいい腕をしている。
ビームサーベルを装備しているため、Gに対しても無力ではない。
バルキリーとの連携も見事だった。
「敵のモビルスーツがこんなに厄介だとは。
地上軍は、こんな戦いをしてきたのか」
宇宙では、一部を除きコーディネーターが操るモビルスーツと戦う事は無かった。
アスラン達は、キラ達がイレギュラーだと思っていた。
だが、現実は違った。
地球軍には多数のコーディネーターがいる。
地上が主戦場になっているため、宇宙で地球軍のコーディネーターと対峙することが少なかっただけなのだ。
ムウのスカイグラスパーも、ザフトのディンに襲い掛かっていた。
ユーラシアの戦闘機部隊と連携して、ビームで撃ち抜いていく。
ディンも機銃を構えて迎撃する。
ムウのスカイグラスパーが機体を捻るような変則機動を行い、銃弾を躱しながら接近してくる。
戦闘機が向かってくる、想定していなかった相手の動きにディンのパイロット達が戸惑う。
それでも対応しようとするが、その変則的な機動を予測できずにクロスレンジに入られてしまう。
スカイグラスパーに装備されたソードパックから対艦刀シュベルトゲベールを展開する。
すれ違いざまにディンの胴体を両断していく。
ディンを次々に撃破しながら通り抜けていくスカイグラスパー。
その様子は、アークエンジェルと砲撃戦をしているレセップスでも観測されていた。
「戦闘機が剣を振り回してクロスレンジにも対応するだなんて!
ますます動きがダンスじみてきたな」
ムウが他の戦闘機部隊と共にディンの数を減らしている。
その後方から遠距離攻撃で撃墜されそうな味方を援護している戦闘機も厄介だった。
パイロットの腕そのものは大した事ないようだが、フォローのタイミングが上手い。
ムウが戦闘機でクロスレンジに飛び込んで行けるのも、トールの援護があるからだった。
トールも自分に対する信頼を感じて、更に援護に集中していく。
バルトフェルド隊がキラ達に対して優位でいられる時間は長くはなさそうだった。
今回、時間はザフトの味方ではないのだ。
アークエンジェルは、もう孤立していない。
物量で勝る地球軍を周りの部隊が足止めし、局地的な数的優位を得ているだけなのだから。
バルトフェルド達は、ストライクを落とすために攻め続ける。
ザフトは、この戦闘での戦略的勝利は望めない。
いずれ物量差に押されて戦線を後退せざるを得なくなるだろう。
それでもストライクを落とし、僅かな時間的猶予を手に入れるために命を懸けて戦っているのだ。
戦いは、更に激しさを増していく。