歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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欧州反攻作戦2

 

 

 

 戦場は混沌とした様相を呈していた。

 上空ではディンと戦闘機が入り乱れ、制空権を獲得しようと鎬を削っている。

 地上でも、ジンやバクゥ、ザウート等の混成部隊が連合の戦車隊や自走砲等と一進一退の攻防を続けている。

 モビルスーツは無敵の超兵器ではない。

 地上では、重力で機動力が落ちてしまう。

 宇宙ほどのアドバンテージはないのだ。

 ある程度の火力があれば撃墜されてしまうため、物量で押されてしまえば、避ける事も出来ずに落とされてしまう。

 

 そんな戦場で、最も激しく戦っている部隊がアークエンジェルのモビルスーツ隊とバルトフェルド隊だった。

 連合もザフトも、そんな自軍のエース部隊を援護しようと戦い続けている。

 

 アスランも、その戦場で戦いながら焦りを覚えていた。

 ニコルと共にハンス達と戦っているが、グゥルで上空を取っているのに手間取ってしまっている。

 

「くっ!落とせない」

 

「アスラン!焦って前に出過ぎないでください!

 グゥルが狙われているんですよ!」

 

「それでも、敵を落とさなければ!

 それが任務なんだ!」

 

 ハンス達はアスラン達に上空を抑えられているため、まずはグゥルを撃って地上に叩き落とそうとしていた。

 ハンス達を落とそうと距離を詰めればグゥルが狙われる。

 しかし、距離を取って撃ち合っていても埒が明かない。

 どこかで状況を動かさなければいけない。

 周りの戦況は拮抗しているが長くは持たないだろう。

 戦闘機が剣を振り回してディンを次々と落としている。

 見たままを報告しても司令部は夢でも見ているのかと返すだろう。

 それほど現実離れした光景が目の前で展開されている。

 その戦闘機を後ろから援護している機体も厄介だ。

 

「腕は大した事ないのに、何故あんなに的確に援護が出来るんだ?」

 

 仲間の危機に対する反応が早すぎる。

 危機に陥った仲間を誰よりも早く見つける。

 そのトールの特徴は、ムウも信頼するほどである。

 フレイの感の良さとは違うが、これも1つの才能と言っていいものだった。

 

 

 先に状況を動かそうとしたのはアークエンジェルだった。

 

「スレッジハマー、目標をイージスに設定。

 時限信管を目標到達の2秒前にセットしろ!」

 

「それではイージスに当たる前に爆発しますよ?」

 

「それでいい、ハンス少佐にも伝えておくんだ!」

 

「了解!」

 

 アークエンジェルから支援攻撃の詳細の連絡を受けたハンスは、その狙いを察した。

 

「なるほど、優秀なのはパイロットだけではないか」

 

 アークエンジェルからスレッジハマーが発射される。

 ハンス達と戦っているイージスに向かって飛んでいく。

 

 アスラン達も向かって来るミサイルには気づいている。

 グゥルに乗っていて機動力が低いとは言え、これだけの距離があるなら回避は容易い。

 ミサイルの弾道を見て、回避するために機体を移動させる。

 ミサイルは外れ、そのまま地面に着弾するかに思われた。

 だが、そのミサイルはアスラン達の手前で爆発した。

 アスラン達の視線がその爆発に引き寄せられる。

 

 視線を戻した時には、ハンス達の攻撃がグゥルを捉えていた。

 ミサイルを空中で爆発させる事でアスラン達の視線と意識を引きつけたのだ。

 アークエンジェルの意図を教えられていたハンス達は、その一瞬の隙を見逃さずに攻撃を仕掛けていた。

 

 ナタルには、アークエンジェルをバレルロールさせるなどの奇抜な発想はない。

 しかし教科書に載っているような、今まで人類が練り上げてきた戦術を実戦で使いこなす能力は、誰もが認めるほど高いのだ。

 

 アスラン達のグゥルは破壊され、地上での戦いに引き込まれてしまった。

 

「爆発を囮にしたのか!」

 

「アスラン!集中してください!」

 

 ハンス達のモビルスーツがすぐそこまで迫っている。

 策に引っかかった事による精神的な動揺が収まる前に畳み掛けようとしていた。

 

「ジョバンニ!ブリッツを頼む。

 私は、イージスを叩く!」

 

「了解!」

 

 ハンスのバルキリーは、モビルアーマーになれば空を飛べる。

 そのため、モビルアーマーに変形して空を飛べるイージスに向かっていく。

 アスランもビームサーベルやビームライフルを用いて迎え撃つが、地上では使える兵器の選択肢が限られてしまう。

 

「どうやら地上での戦いは初めてのようだな!」

 

「ぐぅ!地上ではイージスの力を出しきれない」

 

 両足のビームサーベルを使ってのトリッキーな攻撃は出来ない。

 蹴り上げるような使い方は出来るが、機体のバランスが崩れるためリスクが大きい。

 主砲のスキュラもモビルアーマーにならなければ撃てない。

 1度、モビルアーマーになって空中戦でスキュラを撃とうとしたが、イージスのモビルアーマー形態は大気圏内での使用を考慮していない特殊な形状をしている。

 空を短時間だけ飛ぶ事が出来る程度の飛行能力なのだ。

 空を飛ぶための機能を追求した戦闘機の形状を持つバルキリーに空戦で勝てるはずがない。

 スキュラの照準にバルキリーを捉える事が出来ない。

 モビルスーツに戻り、地上で戦うしかなかった。

 

 

 ジョバンニもビームサーベルを構えてブリッツに接近戦を仕掛ける。

 もともとブリッツは特殊兵装を用いた奇襲、潜入を得意とする機体である。

 それゆえ装備も特徴的な物が多く、通常の戦闘での対応力が他の機体より劣ってしまう。

 接近戦ではミラージュコロイドで姿を消すタイミングも利点もない。

 

「地上での機動力はジンと大差ないか。

 距離を取るのは無理、接近戦で対応するしかない!」

 

「こっちにだってビームサーベルがあるんだ!

 いくらGとは言え、特殊作戦機にならジンでも戦える!」

 

 ニコルとジョバンニも地上で激しく斬り結び始めた。

 

 ハンス達はイージス達との戦いを地上戦に持ち込み、五分の状況にする事が出来た。

 自分達は地上で戦い続けてきたのだ。

 そんな自負からアスラン達に攻勢をかけ、抑え込んでいく。

 

 

 バルトフェルド隊もキラ達を相手に苦戦していた。

 磨き上げてきた3次元連携でも相手に有効打を与える事が出来ていない。

 今回は時間を掛ければ連合の物量で戦況が不利になっていく。

 エネルギー切れを狙う猶予はないのだ。

 

「なんて奴らだ!

 この高度からの攻撃じゃ、牽制にしかならない」

 

「だが、距離を詰めればグゥルを落とされる。

 正直、手詰まりだな」

 

「時間がない!

 こうしてる間にも、あの戦闘機が味方を落とし続けているんだぞ!」

 

「エンデュミオンの鷹か。

 アフリカの時から普通じゃないと思ってたけど、まさか戦闘機でチャンバラまでするなんて」

 

 キラ達も決して楽にバルトフェルド隊の攻撃を凌いでいる訳ではないのだが、制限時間が存在するザフトから見ると落とせないのではないかと思わせる程、彼らの動きは見事なものだった。

 

 バルトフェルドも部隊の指揮をしながら相手の練度に舌を巻いていた。

 

「今回の連携には自信があったんだがねぇ。

 こうまで対応してくるとは。

 アークエンジェルの指揮官もやり手だな」

 

 アフリカでの戦いで戦艦を大気圏内でバレルロールさせると言う、とんでもない作戦を行ってきた。

 今回はミサイルを空中で爆発させ意識を引きつけて味方が攻撃する隙を作るなど、的確な援護を行っている。

 奇抜な作戦を思いついたのはマリューで、支援攻撃などの戦術指揮はナタルが取っているのだが、バルトフェルドには分からない。

 どちらにせよ、アークエンジェルの指揮官が優秀と言っていい活躍を見せている事に変わりはないのだ。

 アークエンジェルからの支援がなければ、キラ達との戦いも違うものになっていただろう。

 

「アークエンジェルの指揮官と言い、ソードダンスまで始めたエンデュミオンの鷹と言い、この戦場を見てるとコーディネーターは自分達が言っているほど優秀とは思えなくなるな」

 

 だが、諦める訳にはいかない。

 少しでもマシな未来を手にするために最後まで足掻くと誓ったのだ。

 スピットブレイクを成功させるために、連合のモビルスーツ配備を少しでも遅らせるために、ここでストライクを落とす。

 そのためには撃墜されるリスクも覚悟で攻める必要があると認めた。

 肉を切らせて骨を断つと言う言葉があるが、出来ればそんな戦いは避けたかった。

 肉を切らせる事すら、ザフトには致命傷になるかもしれない。

 それほど、連合とは国力と言う体力に差があるのだ。

 クライシスで当初の想定ほど連合の国力を削れなかった。

 プラントの戦略は狂い、世界の増悪を受ける立場になったため、引く事も出来ない。

 

「クライシスと言う過ちが、ここまで祟るとは。

 それでも一般市民の命を救うために行動しているカガリ・ユラやオーブに恨み言を言うほど堕ちたくはないしな」

 

 バルトフェルドはリスクを背負い、更に踏み込む覚悟を決めた。

 

「イザーク!ディアッカ!

 高度を下げてストライクとバルキリーを攻撃しろ!」

 

「しかし、これ以上高度を下げるとグゥルが破壊されてしまいます!」

 

「バクゥ達の攻撃速度を上げる!

 空に狙いを付ける暇など与えないよ」

 

「そんな事をしたら!」

 

「少しでもタイミングを間違えば、大きな隙を晒すことになるな」

 

「それでも、やると言うのですか!」

 

「アフリカで彼らが見せた連携を覚えているな?」

 

「・・・ええ、忘れられませんよ」

 

「彼らの信頼関係は素晴らしいものだった。

 だが我々の間にある信頼は、それに劣るものかな?」

 

「!・・いいえ、必ず信頼に応えて見せます!

 バクゥ達がミスっても、フォローするので心配しないでください」

 

「ふっ、言うようになったな。

 では、当てにさせてもらおうか」

 

 そう言って、今まで距離を保って全体の指揮を取っていたラゴゥを前に出す。

 

「皆、聞いていたな!

 戦闘速度を上げていくぞ!

 遅れるなよ」

 

「了解!

 イザーク達の世話にはなりませんよ」

 

 キラ達は、バルトフェルド達の動きが変わった事で1段階ギアを上げた事に気付いた。

 今までより攻撃から次の攻撃までのインターバルが短くなっている。

 攻撃密度が高くなるという事は、それだけ互いのフォローのタイミングがシビアになるという事だ。

 リスクを背負って自分達を撃墜しようとしているのだ。

 

「キラ!ここを凌げば俺たちの勝ちだ。

 周りの部隊からの援護が届くようになるまで粘るんだ」

 

「了解!イレブンさんの背中は必ず守ります!」

 

 キラ達も戦闘速度を上げていく。

 これから先は、ミスをした方が致命的な隙を晒す事になる。

 モビルスーツ達が周辺の部隊とは明らかに違う速さで戦っている。

 にも係わらず、互いに完璧に連携しているのだ。

 イザーク達も高度を下げて攻撃している。

 頻繁に飛び交うバクゥとストライク達に援護のタイミングもシビアになっている。

 それでも、正確に狙い撃つ。

 仲間との信頼では負けていないと示すように。

 

 

 アークエンジェルでも、バルトフェルド隊が勝負を決めに来たことを理解していた。

 

「ハンス少佐達に続いて、イレブン中尉達も乱戦になっています!」

 

「これほど戦闘速度が速くなるとミサイルでの支援も出来ないな。

 一つ間違えれば味方を誤射してしまう」

 

「アークエンジェルは周りの友軍の援護に回る。

 周辺のザフトを蹴散らして、一刻も早く戦場での優位を確立します!」

 

 アークエンジェルも動き出す。

 乱戦で援護が出来ないなら、周りで友軍を抑えている部隊を攻撃して優位を保てる時間を削ろうと言うのだ。

 

 レセップスもアークエンジェルの動きを阻止しようとするが、単艦での性能はアークエンジェルの方が優れている。

 完全には阻止できないだろう。

 それでも必死に抵抗していく。

 バルトフェルド達が戦える時間を少しでも長くするために。

 仲間を信頼し、命を懸けて戦っているのはモビルスーツのパイロットだけではないのだ。

 

 ザフト優位な時間は終わりに近づいている。

 それでも戦闘は激しさを増すばかりだった。

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