歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

41 / 126
雷神の槌

 

 

 

 アフリカ、ビクトリア湖の近くにあるマスドライバーをめぐり、連合とザフトが再び戦火を交えようとしていた。

 ビクトリア基地には、連合を迎え撃つためにジブラルタルから派遣されたバルトフェルド隊の姿があった。

 連合にビクトリア奪還の動きがあることはジブラルタルのザフトも把握している。

 プラントがオーブに攻撃する姿勢を見せたことで、その動きが早まっていた。

 理由など分かりきっている。

 ビクトリアのマスドライバーを奪還することで、ザフトのオーブ攻撃の理由を無くそうと言うのだろう。

 しかし、ザフトもビクトリアのマスドライバーを明け渡すわけにはいかない。

 連合を地球に閉じ込めなければいけないのだ。

 戦場が宇宙に移れば、国力で勝る連合に押され本国まで戦火が及んでしまうだろう。

 そんな未来を回避するためにアラスカやパナマで犠牲を払いながらも戦い続けてきた。

 そんなジブラルタルの地上軍からすれば、本国が決定したオーブ攻撃は愚策でしかなかった。

 むしろ、オーブの行動を認めて、引き換えに有利な条件を引き出す事に集中すべきだと考えていた。

 こうなってしまっては仕方がない。

 カーペンタリアの部隊が、オーブのマスドライバー破壊を速やかに終わらせて連合との交渉を再開してくれる事に期待するしかない。

 オーブのマスドライバーが破壊され、ビクトリアも守りきれば、戦後もプラントが存続できる未来が見えるはずだ。

 そのためにアラスカやパナマに部隊を派遣している間もジブラルタルを伺っている連合軍に対する備えとして残していたバルトフェルド隊をビクトリア防衛に当てたのだ。

 

 

 ドイツの地でアークエンジェルと戦った時、新たにやたらと支援が上手い戦闘機が配備されていた。

 アラスカでの戦いでは、2機目のバルキリーが確認されている。

 アークエンジェルの戦力は、着実に増強されていることが分かっている。

 この戦場でアークエンジェルと相まみえるかは分からない。

 だが、バルトフェルド隊も成長の歩みを止めてはいない。

 次は勝つのだと、努力を積み重ねていた。

 イザークがジン・アサルトシュラウドの部隊を率いている。

 ディアッカが率いるのは、ディン・ディープアームズ達だ。

 イザーク達は、バルトフェルド隊の中で分隊の指揮を任されるまでに成長していた。

 ジブラルタル基地からの信頼も厚く、貴重な追加兵装のアサルトシュラウドやディープアームズも回されている。

 バルトフェルド本人が率いるバクゥ部隊と連携する事で対峙する連合軍に大きな損害を与えていた。

 3つの部隊が有機的に連携し、自軍を切り裂いていくバルトフェルド隊は、連合から『トライデント』と呼ばれ、恐れられていた。

 

 

 そんなビクトリアに連合が侵攻を開始した。

 その中にはアークエンジェルの姿もある。

 アークエンジェルとバルトフェルド隊は、アフリカの地で三度ぶつかろうとしていた。

 

 戦場において、モビルスーツ同士の激しい戦闘が行われている。

 その中でも一際速く激しい戦闘を行なっているのは、やはりアークエンジェルとバルトフェルド隊だった。

 アフリカの地で始まった両者の因縁は、アフリカの地で決着を着けようとしていた。

 

「やっぱり手強い。

 それでも、負けられない!」

 

「キラ!焦るなよ。

 俺たちの役目は、敵を倒すことじゃない」

 

「分かってます。

 味方がマスドライバーを制圧するまでバルトフェルド隊を自由にはさせない!」

 

 キラ達は、それぞれが特性の異なる機体を率いて、互いの長所を活かして連携してくるバルトフェルド達に苦戦していた。

 ムウも、ソードダンスでモビルスーツ達の戦闘の中に果敢に飛び込んでいく。

 トールは、そんなムウを後ろから支援している。

 フレイもフルアーマーバルキリーの装甲と推力に任せて戦場を飛び回り、ミサイルをばら撒くことでバルトフェルド隊の連携を崩そうとしていた。

 

 それでもバルトフェルド隊は崩れない。

 3つの部隊の一角が乱れても、残りの部隊が必ずフォローに動き、立て直していく。

 まるで一つの意志で動いているかのように柔軟に対処されてしまっていた。

 

「ヘリオポリスから続いてきたアークエンジェルとの因縁、ここで終わらせる!」

 

「イザーク、焦るなよ!」

 

「二人とも、分かっているな!

 今回の作戦はアークエンジェルやストライクの撃破じゃない」

 

「分かってますよ!

 マスドライバーの爆破処置が終わるまで連合を釘付けにする、でしょ?」

 

「・・・別に、落としてしまっても構わないでしょう?」

 

「イザーク、君のその強気な所は皆も気に入っている。

 作戦の目的を忘れてないなら、構わないさ」

 

 

 

 モビルスーツ同士による派手な戦いが続いていく裏で、もう一つの戦いが行われていた。

 ザフトの戦力では、長くビクトリアを維持できない。

 それが分かっているザフトは、ビクトリアのマスドライバーを自爆させようとしていた。

 ぎりぎりまで行わなかったのは、マスドライバーがザフトやプラントにとっても重要な物だったからだ。

 連合の侵攻を受けた事で、ようやくマスドライバーへの破壊工作の許可が下りた。

 だが、連合もその動きを予測して、特殊部隊を派遣していた。

 マスドライバーの破壊を阻止するために妨害を行いつつ、施設の制圧を進めていく。

 マスドライバー周辺では、生身の兵士同士の戦いが行われていた。

 

 連合の特殊部隊は、長い年月を掛けて蓄積してきたノウハウを有している。

 ザフトは、作られたばかりの若い組織だ。

 もともとが民兵組織であったため、そう言ったノウハウを持っていなかった。

 コーディネーター特有の高い能力で対抗していたものの、徐々に制圧されていき破壊工作の継続が困難になっていった。

 遂にマスドライバーの破壊を不可能と判断、施設を放棄して撤退の決断をしようとしていた。

 

 

 その時、軌道上のザフト艦隊から多数のポットが投下された。

 大気圏を降下してくる多数のポットに地上軍も困惑していた。

 援軍を送ると言う連絡は受けていない。

 それにタイミングも遅かった。

 マスドライバーの破壊が不可能になった今、多少の援軍では意味がないからだ。

 

 地上軍が連絡を受けていないのも当たり前だった。

 ポットの中身はモビルスーツではなかったのだから。

 ポットの外殻がパージされ、中身が露わになる。

 そこにはモビルスーツの代わりにぎっしりと対地攻撃ミサイルが詰め込まれていた。

 モビルスーツの大気圏降下用ポットを改造した、軌道上からの攻撃を可能にする宙対地軌道爆撃システム『トールハンマー』だった。

 ビクトリアの陥落が避けられないと判断した宇宙軍が、マスドライバーを破壊するために使用したのだ。

 ビクトリア上空に到達したポットから次々にミサイルが発射される。

 地上にミサイルの雨が降り注いできた。

 

 ニュートロンジャマーの影響で精密な誘導など出来ない。

 そんな状況で軌道爆撃なんてものを行ったのだ。

 マスドライバーだけを狙うなど出来るはずがない。

 低い命中率を数で補っている。

 そのミサイルは、ビクトリア周辺で戦っていた連合とザフトの部隊にも降り注いでいく。

 

 

「なんて事だ!

 宇宙の連中、マスドライバーを破壊するために味方ごと撃つというのか!」

 

「撃ち落とせ!

 もう連合とやり合ってる場合じゃない。

 仲間を守るんだ!」

 

「グレイトだぜ!

 まさか、こんな射撃ゲームをする事になるとはねぇ」

 

「軽口を言ってる場合か!

 命が掛かってるんだぞ!」

 

「二人とも口より手を動かせ!

 連合も迎撃に専念するようだ。

 歌姫はいないが休戦だな」

 

 

 バルトフェルドが言ったように、連合もこの攻撃がマスドライバーの破壊のためだと分かっている。

 ザフトの地上部隊にもミサイルが降り注いでいるため、味方ごと撃とうとしているのだと理解した。

 地上部隊にはもう、こちらを攻撃する余裕も意志もないだろうと判断し、全部隊にミサイル迎撃に集中するように命令を出した。

 前線で戦っていた部隊は、言われるまでもなくザフトへの攻撃を止めてミサイルの迎撃を行っていた。

 たとえ敵でも、地上軍は変わったのだと認めていた。

 そんな者達が味方であるはずの宇宙軍に撃たれているのだ。

 マスドライバーを守ると言う理由もある。

 地上軍への攻撃は止まっていた。

 

「ここまできて、マスドライバーを壊させるわけにはいかない!」

 

「宇宙の連中も無茶するねぇ。

 守り切れないとなったら、味方ごと撃つなんて」

 

 キラ達もすべての武器を空に向けて迎撃に加わる。

 

「好きにはさせない!」

 

 フレイのフルアーマーバルキリーから多数のミサイルが放たれる。

 残っていたミサイルをすべて撃ち出したのだ。

 上空で多数の爆発が起こる。

 その結果を確認する暇もなくモビルスーツになり、ビームライフルで迎撃を続ける。

 

 連合もザフトも関係なく、すべての兵士が空から降る脅威から味方を守ろうと戦っていた。

 それでも、投下されたミサイルの数は凄まじいものだった。

 周囲一帯ごとマスドライバーを破壊しようと用意されたミサイルの数は、両軍の迎撃能力の限界を超えていた。

 迎撃しきれなかったミサイルが、次々に地上に着弾して爆発し、その度に両軍に被害が出ていく。

 

「くそ!

 これ以上、仲間をやらせるかぁー!」

 

「イザーク、無茶だ!」

 

 仲間や部下を守るために、デュエルがブースターを吹かして上空から降り注ぐミサイルの雨に飛び込んでいく。

 責任感の強いイザークは、誰よりも前に出てミサイルの迎撃を行う。

 評議会でザラ派に属する自分の母が、この攻撃の決定に関わっているかもしれない。

 そんな思いがあったのかもしれない。

 仲間を守るための盾になり、何度ミサイルに当たっても怯む事なく迎撃し続けている。

 フェイズシフト装甲も無限ではない。

 やがてデュエルのエネルギーは限界を迎えた。

 フェイズシフトダウンでデュエルの装甲は灰色になる。

 そんなデュエルに無数のミサイルが迫る。

 

「イザーーークーーーー!!」

 

 ディアッカの目の前でフェイズシフトダウンしたデュエルが爆発に包まれる。

 イザークが無茶を始めた時から、こうなる事は予測できていた。

 それでも動く事は出来なかった。

 ディアッカもバスターで仲間や部下を守るために迎撃していたのだから。

 デュエルよりもミサイルの迎撃に向いているバスターが持ち場を離れれば仲間の被害が増大してしまう。

 爆発の中からボロボロのデュエルが地上に落下していくの見ても、何も出来ずに空に向けて引き金を引き続けることしか出来ないでいた。

 

「くそーーーー!」

 

 あの高度から地上に叩きつけられれば、中のイザークが生きていたとしても生存は難しいだろう。

 イザークの行為を無駄にはしない。

 バルトフェルド隊は、全力でミサイルを迎撃しながら味方の撤退を支援していった。

 地上軍は多くの犠牲を出しながらも、ミサイルの攻撃範囲から離脱する事に成功し、そのままジブラルタルに撤退していった。

 

 

 軌道上から投下されたミサイルの迎撃を終えた後に残されたのは、破壊された両軍の兵器の残骸だった。

 

「味方ごと撃つなんて、何が彼らをそこまでさせるんだろう」

 

 その光景を見たキラは、改めてこの戦争のおかしさを感じていた。

 

 精密誘導することが出来ない軌道上からの爆撃は、やはり精度に問題があったようだ。

 連合とザフトが協力して迎撃した事もあり、マスドライバーの被害は想定よりも軽いものだった。

 これなら直ぐに修復され復旧するだろう。

 連合は、再度の軌道爆撃に対応するため対空陣地を増設しながらマスドライバーの修理を行っていく。

 連合はビクトリア基地を奪還し、再びマスドライバーを手にする事に成功した。

 

 ビクトリア基地に入ったアークエンジェルにもたらされたのは、ザフトによる攻撃でオーブがマスドライバーと国防本部を破壊され、ウズミ代表を始め多数の死者が出たと言う一報だった。






クルーゼ隊からの脱落者はイザークになりました。
ニコルがフリーダムに乗ったので、死亡フラグがイザークに移動してしまった感じですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。