歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
「OSのフィッティングですか?」
「ええ、あなたが書き換えたストライクのOSは、既存のOSと違いすぎてソキウス少尉でも性能を引き出せないのよ」
「まぁ、僕が使うために組んだ、間に合わせのプログラムですから」
「だから、状況が落ち着いたらソキウス少尉に合うようにOSの調整をしてほしいのよ」
「いいんですか?ストライクに乗れって言われると思ってました」
「ソキウス少尉が居なければ、そうしていたかもしれないわね」
キラはマリューからの依頼に驚いていた。
ストライクを動かした以上戦力として当てにされると思っていたからだ。
同時にコーディネーターでありながら彼女達からこれ程の信頼を得ているソキウス少尉に興味を抱いた。
アークエンジェル艦内に警報が鳴り響く。
マリューにもブリッジから通信が入る。
「艦長、敵さんがお出ましだ!早くブリッジへ」
「わかりました、大尉のモビルアーマーは?」
「駄目だ、まだ出られん」
「では、大尉にはCICをお願いします」
「それと敵の中にイージスを確認した、イレブンにストライクで出てもらうか?」
「もうGを投入してきたというの!?
ソキウス少尉はなんと?」
「慣れない機体で出る方が危険だと言ってジンで待機している」
「わかりました、ソキウス少尉の判断に任せます」
通信を終えたマリューがキラ達に向き直りこの戦闘を乗り切ったら協力要請に対する答えを聞くと言いブリッジへと向かって行った。
「大丈夫かな、この船?
ソキウスさんも新型使わないって言ってたし」
ミリィが不安の声を上げる。
キラはソキウスの判断が正しいと思っていた。
ストライクのOSはなんとか動かせると言った間に合わせの状態で、しかも自分に合わせて調整しているため他の人では使いづらいはず。
友人達の視線を感じる、ストライクに乗ってほしいと考えているのだろう。
ソキウス少尉がコーディネーターとは言え相手も同じコーディネーター。
更に新型機も投入していると言う。
自分達が乗るこの艦を守り切れるのかと。
キラは葛藤していた。
自分ならストライクをそれなりに動かせる。
この状態で戦わないのは卑怯なんじゃないか。
敵の攻撃が始まったのか爆発音と衝撃で艦が揺れている。
キラは格納庫に向かって駆け出した。
なんで自分達のために戦ってくれないんだ?そんな視線を向けてくる友人達と一緒にいることに耐えられなくなったのだ。
イレブンは苦戦していた。
自分が乗るジンではイージスに有効打を与えられない。
何故か目の前のイージスは積極的にアークエンジェルを落とそうとしていないので対処出来ているが。
イレブンがイージスを抑えるのに掛かり切りになっているため他のモビルスーツがアークエンジェルに攻撃を仕掛ける。
重爆撃装備で好き放題撃ちまくっているためコロニーの損害が増え続けている。
イレブンは顔を歪めてしまうが、ジンでイージスを抑えているだけでも驚異的活躍なのだ。
そんな時にアークエンジェルからストライクが出撃してきた。
「あの馬鹿、なんで出てきた!」
追い詰められつつある状況で、ストライクの出撃に助かったと感じてしまった自分の不甲斐なさからイレブンは毒付いてしまう。
アスランもまたストライクに気づいていた。
「ミゲル、連合のジンを頼む!俺はストライクを抑える」
僚機に鹵獲ジンを任せてストライクに向かう。
ストライクのパイロットを確かめるために。
イージスがストライクに向かったおかげで余裕が出来たイレブンはミゲルが乗るジンを撃墜する。
いかに黄昏の魔弾の異名を持つミゲルと言えど、イージスをジンで抑えるようなエースを相手にノーマルのジンでは長く持たなかった。
ジンを撃破した後、ストライクの援護に向かうと戦闘もせずイージスと向かい合っていた。
疑問に思い通信を繋げてみると・・・
「キラ!ザフトに来い、お前が地球軍にいる理由がどこにある?」
「僕は地球軍じゃない、でもあの艦には友達が乗ってるんだ!」
どうやらイージスのパイロットはキラの知り合いのようだ。
あまりに予想外の事態に、さすがのイレブンも動きを止めてしまう。
その時たび重なる戦闘で損傷していたコロニーが遂に崩壊を始めた。
キラ達は崩壊に巻き込まれ宇宙に投げ出されていく。
キラは、ストライクのコックピット内でヘリオポリスだった残骸が漂っている光景を見て呆然としていた。
自分達が住む人工の大地が、こんなにもあっさりと崩れるとは考えてもいなかった。
「ス・・イク・・・ストライク、聞こえるか?」
アークエンジェルからの通信が繋がったことで我に帰り帰還を始める。
その途中で推進部が壊れた脱出艇を見つけて持ち帰る。
この脱出艇について一悶着あったが時間を取られることを嫌ったマリューによって受け入れが決まる。
脱出艇の中にいる少女がキラに大きな影響をもたらすのだが、今はまだ誰も知らない。
ヘリオポリス脱出艇
カガリ・ユラのライブ中に起きたザフトの襲撃。
コロニー内で突如起きた戦闘に住民はパニックを起こし逃げまどいながらシェルターに避難した。
ザフトのモビルスーツは民間人が居る商業区でもお構いなしに戦闘を行い、治安維持の為に配備されている都市警備隊を民間人を巻きぞえにして壊滅させていく。
避難途中で容赦なく自分達を攻撃するザフトの様子を見てきたため、シェルターに入ってからも続く爆発音と衝撃に怯え続けている。
「どうしてザフトが攻撃してくるんだ」
「うちは中立で安全じゃなかったの?」
「政府は何をしているんだ!話が上手すぎると思ったんだ!」
避難した住民達は不安と恐怖から口々に不平を言い始め、シェルター内の雰囲気はますます悪化していく。
「怖いよパパ」
「大丈夫だよ、きっと軍が守ってくれる」
抱き合い不安と恐怖に耐えている親子を見ながらミーア・キャンベルは自分の無力を嘆いていた。
プラントから来たミーアにとって、ザフトが中立国の民間人に対して容赦なく攻撃している光景は衝撃だった。
地球に知人がいて連絡を取り合っている友人から、ザフトの作戦で地球の一般人にも大きな被害が出ているとは聞いていた。
伝え聞いただけの情報だったそれが急激に色を帯びていく。
目の前で行われた暴挙にザフトや評議会が掲げる正義に対する疑念が浮かんでくる。
避難民達がそのストレスで声を荒げている中を歌声が流れる。
穏やかで透き通った歌声が皆を落ち着かせる。
「歌?」
「この声、カガリ?」
「ああ、そうだ・・・カガリだよ」
座り込んでいる避難民達の中で立ち上がり、凛とした姿で歌うカガリがいた。
「きれい」
その姿に先程まで不安で泣いていた子供も見惚れている。
突然アラームが鳴り響きこれまでとは違った衝撃が襲う。
ヘリオポリスが崩壊を始め、脱出艇がバージされたのだ。
モニターには、推進部の故障を意味するエラーが表示されている。
ミーアは、避難民達が再びパニックになると思った。
しかし、歌は途切れる事なく続いている。
オーブの救援艦隊が到着する前に軌道を外れてしまえば、酸素が切れて全員死んでしまう。
そんな状況でも希望を捨てず歌い続けるカガリの姿に、避難民達も最後まで助けを信じようと祈り始める。
ミーアは圧倒されていた。
自身もプラントで歌手として細々と活動しているからこそ、カガリとの格の違いを理解してしまったのだ。
「敵わないなぁ」
そう呟くミーアはどこか悔しげで、しかし自分が尊敬するカガリはこんなにも凄い歌手なんだと嬉しそうでもあった。
間もなくストライクの手によってアークエンジェルに保護されることになる。