歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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リアルが忙しくなって、なかなか執筆が進まない。
そして、原作沿いではなくなったこともあって時間が掛かりそうです。


無人機の襲来

 

 

 

 火星

 

 植民都市を統括する行政府において、執務を行なっている男に秘書が声をかける。

 

「もうすぐ、かの船が到着しますね」

 

「どうでも良い。

 どうせ、ここには入れないのだ」

 

「よろしいのですか?」

 

「もう決めた事だろう。

 我らは地球とは別の道を行く。

 奴らの愚かな争いに巻き込まれたくはない」

 

「では、予定通りに」

 

 秘書が下がった後、一人となった部屋に独白が流れる。

 

「そうだ、我らが本当に苦しい時に愚かな戦争を引き起こしたプラントも、それを許した無能な理事国も頼らない」

 

 火星は、連合とプラントの戦争において割を食った勢力であった。

 クライシスによって地球の経済は壊滅的な打撃を受けてしまった。

 その上で全地球規模の大戦争が行われたのだ。

 火星に十分な物資を輸送するなど出来る事ではなかった。

 日々、減っていく酸素や食糧を見ながら不安を必死に抑えて生き残るための努力を続けてきた。

 火星の開拓は、その過酷な環境から当然コーディネーターが中心になって行われている。

 プラントとも交流があり、秘密裏に技術協力もしていた。

 火星がなんとか自給自足の態勢を構築できたのは、プラントの技術を吸収できた事も一因である。

 だからと言って、親プラントではない。

 火星の苦境は、プラントがクライシスを起こし、戦争を始めたのが原因だからだ。

 

 男は、かつて一族と呼ばれる組織のトップに立ち、マティアスと名乗っていた。

 あるジャンク屋を中心とした一派との争いによって組織は壊滅してしまった。

 だが、その結末に不満などはない。

 一族は、世界の裏で暗躍している秘密結社のような存在だった。

 望む未来のために活動していた。

 そこに嘘はない。

 

 しかし、その組織の本質は違っていた。

 はるか昔から世界を裏から操って来た組織の存在を隠すためのフロント組織の一つに過ぎない。

 陰謀論を唱える者達を満足させるためのダミーの一つ。

 それが一族だった。

 

 もちろん、上手くすれば自分達の望む未来を築ける。

 それくらいの旨みはあった。

 逆に言えば、組織の末端に過ぎない自分には、その程度の裁量しかなかったと言える。

 あの組織の全貌どころか中枢に近い者とすら接触できないでいたのだ。

 

 組織は今も地球圏で暗躍しているだろう。

 洗脳を解除できる歌姫達の出現で組織の予定は狂ってしまった。

 だが、そのまま大人しくしているとは思えない。

 再び世界を手中に収めようと躍起になっているはず。

 奴らの注意が地球に向いている今、火星が独自の道を行くチャンスなのだ。

 統合政府などに参加して首輪を着けられるなど認められる訳がない。

 今回の歌姫の派遣は、統合政府による我らを懐柔するための一手だろう。

 そんな物に乗るわけには行かないのだ。

 

 そして、今の火星には危険な隣人がいる。

 幸い、その隣人の執着は歌姫達に向いているらしい。

 ならば、喰らい合わせればいい。

 こちらに被害が来ないように立ち回る。

 それが火星の選択なのだから。

 

 

 火星研究所

 

 戦後、プラントを脱出したライトマンは研究を続けていた。

 不安定な人間をCPUにする事を諦め、完全なAIによる無人機を開発していたのだ。

 無人機特有の圧倒的機動性は健在だが、戦術的な動きは稚拙なものになってしまった。

 技術は、一朝一夕では進歩しない。

 まだ、AIの性能が十分ではなかった。

 それでも、ある程度満足する性能に仕上がっていた。

 

 かつてとは違い、ジャッジメントのような中継装置の必要がなくなった。

 中枢を落とされれば停止してしまう欠点がなくなったのだ。

 パターン化してしまったとは言え、人間が乗っていては不可能な機動を行える。

 そんな無人機達の軍団が動き出そうとしていた。

 

「ふむ、上手く歌姫達を火星に誘い出してくれたようですね。

 ここで彼女達を排除して、ネオ・デスティニープランの開始を告げる狼煙としましょう」

 

 ライトマンが視線を向けるスクリーンには、火星の大気圏に降下してくるアークエンジェルとワルキューレの姿が映されていた。

 

 

 

 アークエンジェルは、火星へ降下していた。

 

「降下完了。

 システム、オールグリーン」

 

「ワルキューレも問題なく降下できたみたいね」

 

「ええ、ワルキューレからも異常なしと連絡が来ました」

 

「では、予定通り火星の植民都市に向かいます」

 

「了解!

 進路、火星植民都市『マルスシティ』へ。

 ワルキューレをエスコートします」

 

 アークエンジェルは、ワルキューレを伴い、進路をマルスシティへと向けた。

 

 最初の数時間は、初めて見る火星の風景にクルー達は心を躍らせていたが、どこまでも続く赤い砂と岩の景色に飽きて普段通りに戻っていた。

 

 火星には大気がほとんどない。

 ドーム型の植民都市以外は、人の住める環境ではなかった。

 地球圏のスペースコロニーで蓄積されたアーコロジー技術によって、初めて火星で人類が生存可能になったのだ。

 人類が植民したとは言え、それは僅かな領域に過ぎなかった。

 

 そんな植民都市に向かう中でアークエンジェルが異常に気付いた。

 

「これは・・・そんな!」

 

「どうした、チャンドラ軍曹」

 

「周辺一帯の電波障害を確認!

 Nジャマーです!」

 

「火星でNジャマーだと!」

 

「周辺への警戒を厳に!

 第2戦闘配備発令、パイロットは各自の機体にて待機せよ!」

 

 Nジャマーが散布されていないはずの火星で、Nジャマーによる電波妨害が確認された。

 それは、なんらかの敵対勢力による攻撃の予兆を意味した。

 

「接近する機影、多数確認!

 モビルスーツと思われます!」

 

「こんな所で仕掛けて来るなんて、どこの勢力かしら?」

 

「わかりませんが、他にも兵力を伏せているかもしれません。

 護衛対象のワルキューレから、あまり離れる訳にもいきませんよ」

 

「ええ、進路このままでマルスシティに向かいます。

 通信可能距離まで近付いたら、マルスシティに状況を知らせて!

 第1戦闘配備発令!

 艦載機は、発進後迎撃行動に移れ!」

 

「了解!」

 

 近づいてくる機影が光学観測可能な距離に達した時、その正体が明らかになった。

 

「あれは!

 あの時の無人機!」

 

 そう、先の戦争終盤で確認された無人機ゴーストの群れだった。

 

「そんな!制御中枢のモビルアーマーが居ないわよ!

 何処かに隠れているのかも!」

 

「とにかく、連携して遅滞戦闘に努めるんだ!」

 

「ちっ!こんなの相手にするなんて、完全に想定外だな」

 

 現在は、戦争が終わっている。

 ワルキューレと言う民間船の護衛任務であるため、想定される脅威は海賊の襲撃などだ。

 間違っても、戦争終盤で連合軍を恐怖の底に叩き落とした無人機の群れに襲われるなどあり得ないはずだった。

 

「敵機の機種確認!

 敵は・・ヤキンで確認された無人機です!」

 

「なんですって!

 対モビルスーツ戦闘準備」

 

「周辺を索敵!

 無人機の制御中枢を探せ!」

 

 アークエンジェルは、すぐに戦闘態勢をとる。

 

「ワルキューレは、このまま進んでマルスシティに入港させます。

 アークエンジェルは、戦闘で無人機を誘引。

 ワルキューレの安全確保を優先します」

 

「マルスシティには、協力要請を出さないんですか?」

 

「まずはワルキューレを入港させるわ。

 その後、アークエンジェルに誘引した無人機を側面から攻撃してもらいます」

 

 無人機を相手に予定外の大規模戦闘が開始された。

 パイロット達は、多数の無人機が相手と言う彼我の戦力差に絶望すら感じていた。

 しかし、戦闘が始まってみると意外な事に善戦する事が出来ていた。

 2年前に比べて、パイロットの腕も機体の性能も向上している。

 だが、それだけでは覆せない性能差があったはずだ。

 その疑問の答えに行き着いたのは指揮を取っていたムウだった。

 

「そうか!制御中枢がいないからか!」

 

「どう言う事ですか?」

 

「中枢に操られてるんじゃない。

 個別に自立しているんだ。

 だから、機動がパターン化しているし、戦術にも柔軟性がない」

 

「なるほど、いくら速くてもパターン化しているなら先読みして当てられるって事ね!」

 

 そう言って、フレイが無人機を落とす。

 いくらパターン化しているとは言っても、それを理解してすぐに圧倒的な速さを誇る無人機に攻撃を当てるなど一般兵に出来る事ではない。

 天性の勘を持つフレイは、2年の間にエースと呼ばれる領域にまで成長していた。

 

 そして、パイロット達が気付いた事は、当然、アークエンジェルで戦術指揮を取っているナタルも気付く。

 

「艦長、敵の無人機はどうやらスタンドアローンのようです。

 動きは速いですが、パターン化され、戦術も単純なものしか出来ていません」

 

「それでアークエンジェルの陽動にも引っかからないのね。

 と言うことは・・」

 

「ええ、連中の狙いはワルキューレです」

 

 無人機は、戦闘開始から一貫してワルキューレを目指している。

 アークエンジェルやモビルスーツ隊の攻撃に対処はするが、あくまでもワルキューレへの接近を優先していた。

 

「これでは、ワルキューレを入港させればマルスシティに被害が出てしまうわね」

 

 無人機がワルキューレを狙い、追い続ける以上、入港すればマルスシティが戦場になってしまう。

 かつて、オーブを戦場にされ、大きな犠牲を出したカガリに受け入れられることではない。

 

「作戦を変更しましょう。

 ワルキューレで誘引した無人機を我々とマルスシティの戦力で挟み撃ちにします!」

 

「了解です!

 モビルスーツ隊で足止めしつつ、このままマルスシティに向かいます」

 

 スタンドアローン化されたことで機動、戦術共に単純になったとは言え、無人機達は有人機では不可能な動きを可能にする高性能を誇る。

 アークエンジェルの戦力だけでは対処できない。

 マルスシティの戦力を当てにするしか勝利への道はないと判断していた。

 アークエンジェル達は、一路マルスシティへと向かう。

 マルスシティ上層部が、すでに地球と袂を分つ決断を下し、アークエンジェルを拒絶するつもりである事を知らないまま。






無人機の性能は、少しダウンしてます。
それでも、エース級の腕がないと一対一で勝てませんが。
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