歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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強奪、あるいは混迷の予兆

 

 

 

 戦争から2年がたち、各国は技術開発を行い、次世代のモビルスーツを量産、配備していた。

 戦争が終わっても、ザフト脱走兵によるテロへの警戒やジャンク屋の宇宙海賊化、低調とは言えブルーコスモスもテロを行なっている。

 多数の火種が残っており、軍備の増強、兵器の更新を怠るわけにはいかなかったのだ。

 

 統合政府は、プラントを含めた殆どの国が出資していた深宇宙探索開発機構DSSDの業務を引き継いで、人類の宇宙移民を主導する組織であり、各国の内政や外交に口出しする事は出来ない。

 統合軍も、各国から戦力を提供されている形のため、あくまで宇宙における治安維持が主任務である。

 各国が自国を守るために軍を維持する事が必要なのは戦後も変わっていない。

 

 

 旧連合においては、アクタイオン・インダストリーが開発した『ウィンダム』が採用されている。

 優秀な基本性能に加えて、高い拡張性がある、量産機としては理想的な兵器だった。

 また、ハイ・ローミックスのハイの部分には緊急展開能力の高いVMSサンダーボルトが配備されている。

 国力と人的資源が豊富な旧連合らしい王道な兵器体系を選択したと言える。

 

 

 オーブは前大戦時にザフトに国を焼かれたが、戦後、世界から支援を受けて目覚ましい復興を遂げていた。

 モルゲンレーテがアズラエル財閥と技術提携して、オーブ独自のモビルスーツ『ムラサメ』を開発、配備された。

 オーブは小国であり、国力の関係から数は揃えられない。

 また、島嶼国家であるため、緊急展開能力と空戦能力を持つVMSが国防のために要求される性能に合致していたため、同時期に開発されていた『アカツキ』が未完成な事もありトライアルにてムラサメが勝ち残って採用されていた。

 

 

 では、プラントはどうなのか?

 戦前、戦中の行いや戦後に大量の脱走兵を出した事から世界からの目が厳しく、再軍備の目処は立っていない。

 懲罰部隊として送り出した元地上軍を中心とした者達が戻って来ればザフトを再建できるのか?

 そんな簡単な事ではない。

 戦争犯罪者として追及された強硬派が大量にザフトを脱走しているが、整備員や司令部勤務などで直接戦闘に関わらなかった者達の中にも強硬派や隠れザラ派が多数いると思われる。

 前大戦は、穏健派のクーデターによって終結した。

 切り札のジェネシスもアスランによって破壊されている。

 言わば、味方の裏切りによって敗北したと考えている者達も多いのだ。

 自分達の過ちを公表して、教育による啓蒙を行っているが、選民思想に凝り固まった者達の考えを変えることは簡単ではない。

 そんな状況で再軍備などすれば、ザラ派のテロリストに兵器を横流しするなどの不祥事を起こす可能性が非常に高い。

 モビルスーツを量産、配備することは当面ないだろうと思われている。

 それでも、技術的に世界から取り残されないために研究、開発は継続していた。

 そんなプラントのモビルスーツ設計思想はオーブのものに近いと言えた。

 プラントの経営権が出資者である理事国にある以上、人口、国力の面で配備できる数は、おのずと少なくなる。

 パイロットもコーディネーターで構成されていることから、能力も全ての面で平均的に高い傾向がある。

 プラントでは、少ない数であらゆる任務を遂行するためにマルチロール機が求められた。

 それが、ZGMF-1000『ザク』である。

 大戦時のストライクと同様に兵装換装システムにより機体の特性を変える事が出来る。

 ザフトが解体されている今、この機体は技術実証機として少数生産に留まっている。

 

 プラントは、現状ではモビルスーツを量産できない。

 つまり、そのリソースを新型の研究開発に注ぎ込めるとも言える。

 セカンドシリーズと呼ばれる最新技術実証機が開発されていた。

 事件は、そんなプラントで起きる事になる。

 

 

 

 戦後、ザフトが解体されたプラントの防衛は、旧理事国が行なっている。

 しかし、元敵国であった国の防衛を自国より優先するはずもない。

 精鋭と言われるような部隊は、当然自国の防衛に当てている。

 プラントの防衛には、2線級の部隊を当てていた。

 装備も旧式の物が多く、戦力に不安を覚えたプラント評議会はPMCと契約していた。

 

 プラントで警備を行なっているPMCの中にシン・アスカの姿があった。

 彼は元オーブ国民で、前大戦時にザフトに家族を殺されている。

 そんな過去からプラントの警備に就くのには不満があった。

 もちろん、世界情勢の勉強はしている。

 直接的な復讐対象は、逃げ出してテロリストや宇宙海賊になったザラ派を中心とした強硬派である事は理解している。

 それでも、かつて彼らを支持していたプラントのコーディネーターには複雑な感情を抱いてしまう。

 彼らまで復讐対象にしてしまえば、プラント国民の皆殺しを望む事になる。

 彼も、そこまでは狂えなかった。

 なぜなら、

 

「何、顰めっ面してるのよ、シン」

 

「ルナか。

 別にそんな顔はしてない」

 

「してたじゃない。

 まあ、気持ちは分かるわよ。

 プラントの警備なんて気が乗らないわよね」

 

 話しかけて来たのは、同じPMCに所属しているルナマリア・ホークであった。

 

「でも、私達の復讐相手は逃げた強硬派達って決めたじゃない。

 気に入らなくても、仕事として割り切りないと」

 

「分かってるよ」

 

 PMCの訓練施設で出会った当初は、仲が悪かった。

 プラント全てを憎んでいたシンにとって、プラントから来たルナマリア達を受け入れる事は出来なかったのだ。

 訓練中に何度もぶつかり合った。

 その過程で、ルナマリア達が開戦後にプラントに移住した者達で、強硬派によって家族が酷い目に合わされたと知った。

 自分と同じ、強硬派達の被害者だった。

 ルナマリア達も、シンがザフトに目の前で家族を殺されたのだと知った。

 いつしか、共に戦い、復讐を成し遂げようと誓い合う仲間になっていた。

 

 シンは、復讐する対象を逃走した強硬派に定めていた。

 復讐と言う目的を共有する事が出来る仲間の存在のお陰で、漠然とプラント全体を憎んでいたシンが明確な復讐対象を見据える事が出来るようになっていた。

 家族の事について、自分の中で区切りを付けるための戦いにする事が出来ていた。

 復讐に囚われて、ただ漠然と敵であるものと戦い続けるような未来は訪れないだろう。

 

 

 

 プラントの工廠でセカンドシリーズが完成した。

 もちろん軍事機密を守るために秘密裏に開発が行われていた。

 世界の目が厳しく、プラントが軍事兵器の研究開発を行うこと事態が気に入らないと言う勢力も存在する。

 そう言う意味でも、大っぴらに発表する事は出来なかった。

 現在は、完成した機体の各種性能試験を行なっている。

 その性能は、セカンドシリーズと呼ぶに相応しい、開発者達を満足させるものだった。

 

 その工廠に侵入する者達がいた。

 彼らは音もなく忍び寄り、技術者や警備員達を排除していく。

 技術者はともかく、警備員達はコーディネーターである。

 それも軍事機密を守るために配備された者達だ。

 そんな彼らを瞬く間に排除してしまった事から、侵入者達の戦闘力がとんでもなく高いことが伺える。

 彼らは、そのまま工廠内にあった新型モビルスーツに搭乗して奪ってしまった。

 新型モビルスーツが奪取され、勝手に動き出した事で事態は発覚、警報が鳴り響く。

 しかし、同時に駐留軍が停泊している港湾も事前に仕掛けられていた爆弾が爆発して混乱が広がっていた。

 駐留軍は後手に回り、部隊を向かわせるも奪取されたモビルスーツ『ガイア』『カオス』『アビス』に返り討ちに合い、そのままミラージュコロイドで隠れていた母艦への帰還を許してしまう。

 

 ここに至って、プラントは決断を下す。

 契約していたPMCに新型モビルスーツを奪取したテロリスト達の討伐及びモビルスーツの奪還を依頼。

 その特性から別の場所で試験が行われていた『インパルス』も供与された。

 

 依頼を受けたPMC、シンが所属する部隊『ファング』が正体不明の強奪部隊を追撃する事になった。

 

「なんで、俺たちが?

 プラント駐留軍の仕事だろ!」

 

「軍と言っても練度は知れている。

 規模が大きい代わりに動き出しも遅い。

 こう言う事態では、俺たちみたいな精鋭が動かなきゃな」

 

 ファングの母艦『ミネルバ』にインパルスが積み込まれ、出航していく。

 この事件を切っ掛けにして、地球圏に混迷をもたらす大きな戦いに発展していく事をまだ誰も知らない。

 テロリストか宇宙海賊による強奪事件。

 この時はまだ、そう思われていた。

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