歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
誤字報告してくれる方々、ありがとうございます。
何度も見直しているんですが無くならないです。
ミネルバは、不明艦を光学映像で捉える事が出来るまでに距離を詰めていた。
もはや、いつ戦闘が始まってもおかしくない状況であった。
ミネルバ・ブリッジ
「デブリ帯か。
やっかいな所に入られたな」
「しかし、デブリ帯を迂回しようとすれば逃げられますよ」
オズマもアーサーも、不明艦の動きから狙いを察する事が出来ないほど無能ではない。
このままデブリ帯に入れば奇襲される可能性が高い。
しかし、デブリ帯を避けようとすれば大きく回り込まなければならない。
相手の目的地が不明な以上、見失えばもう一度補足することなど不可能に近い。
任務を遂行するためには、リスクを覚悟でデブリ帯に入るしかない。
主導権が向こうにある場所で戦闘を行うことを強いられているのだ。
「どうやら、ひよっこ共にはきつい初陣になりそうだな」
「生き残らせるために専用機を用意したんでしょう?
私も出来る限り援護しますよ」
「ああ、よろしく頼む」
パイロット達に出撃命令が下された。
各自の機体に向かっていく。
シンやルナマリア達も、先輩パイロットのショーンやゲイルとハンガーへと向かう。
「よう、シン。
インパルスの準備は万全か?」
「はい・・・貴方達も気にならないんですか?
俺みたいな新人に専用機なんて」
「なんだ、そんな事か。
この業界は実力しだいだ。
お前の実力や努力は認めてるよ」
「そうそう、あの隊長が認めてるんだ。
期待の新人ってね」
「ゲイルさん、ショーンさん・・・」
「ゲイルでいい。
実戦では、少しの躊躇が死に繋がる」
「俺もショーンでいいよ。
戦場で敬語はなしにしようぜ」
「わかったよ」
「それでいい。
それに、ヅダはいい機体だ。
ウィンダムにも負けちゃいない」
「軍に制式採用されなかったのは、性能で負けたからじゃない。
ファクトリーが非主流派企業の連合体だからだ。
ヅダは、政治に負けたんだよ」
「まあ、強奪された相手の新型機が出てきたら、さすがに専用機持ちの隊長やお前らに頼るけどな」
「任せてくれ、あいつらには負けない!
だから、あんたらも死なないでくれよ」
「当たり前だろ。
こんな所で死ぬ気はないよ。
この作戦が終わったら結婚するんだからな」
「そうなんですか?」
「ああ、ショーンは、故郷に美人の幼馴染がいるんだ。
こいつには勿体ない婚約者だ」
「へぇ〜、そうなんだ。
どんな人か興味があるわね。
でも、もうハンガーに着くわ。
この話は戦闘の後で聞かせてもらうわよ」
パイロット達は、各自の機体のコックピットに入り、出撃の指示を待つ。
ミネルバがデブリ帯へと侵入する。
ここから先は、常に奇襲を警戒しなければならない。
奇襲に対応するためにモビルスーツ隊が発進していく。
「オズマ・リー、ヅダ出るぞ!」
パーソナルカラーの黄色に染められたヅダでオズマが出撃していく。
「シン・アスカ、インパルス行きます!」
シンが癖が少なく使いやすい高機動型のフォース・シルエットのインパルスで出撃する。
「ルナマリア・ホーク」
「メイリン・ホーク」
「「ノルン、出るわよ!(出ます!)」」
ルナマリアとメイリンの姉妹は、複座型の専用機『ノルン』で出撃していく。
専用機組に続いて、ヅダでゲイルとショーンも出撃していく。
モビルスーツ隊に周辺を警戒させながら、ミネルバは更に不明艦との距離を詰めていく。
モビルスーツ隊を展開しつつデブリ帯に侵入してきたミネルバをデブリに隠れながら監視している存在がいる。
ジョン・ドゥから出撃したラース達だった。
「やはり、そうとう警戒しているな。
ネズミが罠に掛かった所で仕掛けるぞ!」
「「「了解!」」」
ミネルバがデブリ帯に入ってしばらくした頃、唐突に戦闘は開始された。
何の反応もなかった空間から多数のミサイルが飛来してきた。
ジョン・ドゥから時限装置を設定されて射出されていたのだ。
「ミサイル多数!左舷側から接近してきます!」
「CIWSによる対空迎撃開始!
迎撃用ミサイル『ディスパール』発射!」
相手がデブリ帯を戦場に選んだのだ。
アーサーにとって、奇襲は既に想定されていたため、冷静に迎撃行動に移る。
次の手が打たれる事も理解していた。
「モビルスーツ隊、敵の攻撃が来る!
対モビルスーツ戦闘開始!」
アーサーの指示で警戒していた所に、右舷側からモビルスーツによる攻撃が来た。
カオス達、3機の新型を2機のダークダガーが後方から援護する形で接近してきている。
「インパルスとノルンは、俺と共に新型に当たる。
ゲイル達は、後方のダガーを狙え!」
「「「「「了解!」」」」」
こうしてモビルスーツ同士による戦闘が開始された。
専用機同士による3対3。
量産機同士による2対2に別れる形になった。
それは、オズマ達にとって理想的な展開だった。
彼らの任務は奪取された新型の奪還、あるいは破壊だ。
相手は奪取されたばかりの新型だ。
腕は確かだが、機体に対する習熟度はまだ未熟なはず。
オズマは歴戦のパイロットであり、シン達に与えられた専用機も相手に劣らぬ高性能機だ。
そんな自分達がカオス達を抑えている間にゲイル達がダガー隊を堕とせばいい。
そうなれば、戦況は5対3になる。
数で優位に立つ事が出来る。
破壊ではなく、鹵獲と言う最高の結果も不可能では無くなるのだ。
改造されている様だが、ダガーは前大戦で開発された旧式機だ。
対してゲイル達が乗るヅダは、ザクやウィンダムと同世代の新型機。
性能では勝っている。
ゲイル達の腕も悪くない。
彼らがダガーを堕とすまでは、カオス達を無理に追い詰める必要はない。
オズマは、そう思っていた。
しかし、敵も大した戦力を置いていないとは言えプラントから最新鋭機を奪取した部隊。
そう簡単な戦闘にはならなかった。
ダガー達は、デブリを巧みに使いながらヅダに対処して見せた。
周辺を漂うデブリはダガー達の盾になるだけでなく、ヅダの特徴である加速力を発揮できない障害物としても機能していたため、旧式機を相手に思わぬ苦戦を強いられていた。
専用機同士の戦いも膠着状態に陥っていた。
シンのインパルスは、ガイアと戦っていた。
ガイアは、バクゥと同じ4足の形態を取る事が出来るが、それは地上戦を想定した陸戦用の機能だ。
宇宙戦では凡庸な機体でしかない。
高機動を誇るフォース・シルエットなら地形適正の差で有利になる筈だった。
だが、ガイアはデブリを足場にする事でまるで地上を走り回る獣のように宇宙を駆けていた。
周囲に漂うデブリや岩を蹴る事で加速しているのだ。
その本能のままに動いている様な変則的な機動を取るガイアを実戦経験のないシンは捉えられなかった。
「ちくしょう、当たらない!」
シンの攻撃は空を切り、距離を詰めてきたガイアの反撃に晒されてしまう。
なんとか回避してビームライフルを向けるが、デブリを足場に縦横無尽に跳び回るガイアをロックする事が出来ない。
シンは、ガイアを相手に苦戦して周りを見る余裕がなくなっていた。
ルナマリアとメイリンのホーク姉妹もカオスを相手に苦戦していた。
二人もシンと同様に実戦経験がないが、苦戦の理由はそれだけではない。
彼女達の専用機、ノルンの機体特性もデブリ帯と相性が良いとは言えないものだったからだ。
ノルンのパイロットは、ルナマリアだ。
機体での戦闘は彼女が行なっている。
では、メイリンは何故乗っているのか?
それは、ノルンに搭載されたあるシステムのためだった。
ミネルバから射出される小型の無人戦闘機『ウルズ』『ベルザンディー』『スクルド』を制御する機能。
そう、前大戦末期に使われたゴーストと同じシステムだ。
彼女達の父親は、そのシステムの中枢に使われる程の適性があった。
そして、メイリンは、本来の時空ではハッキングしてザフトの機密情報にアクセスできる程の情報処理能力を持つ。
メイリンが3機の無人戦闘機をコントロールしていた。
訓練では、有人機では不可能な動きが可能な無人戦闘機で多大な戦果を上げており、単独のパイロットとしては成績トップだったシンを差し置いて複座の専用機が与えられた理由だった。
その戦闘力から実戦経験のない訓練生だったにも関わらず紅の姉妹《スカーレット・シスターズ》と言う二つ名で呼ばれる程だった。
そんな彼女達も今回はデブリが邪魔になり、無人機特有の高機動を発揮できなかった。
カオスの持つドラグーンシステムの発展兵器『機動兵装ポッド』は無人戦闘機より小回りが効き、デブリ帯において障害物越しに射撃できる有用な兵器だった。
無人戦闘機が本来の性能を発揮できず、本体のノルンによる攻撃もデブリを盾にされてカオスに届かない。
上手くいかない戦闘にルナマリア達の心は苛立っていた。
オズマは、アビスの相手をしながら戦闘開始から感じている違和感の正体を探っていた。
オズマ専用ヅダは、彼のために特別なチューンが施されている。
それでも機体性能はアビスには一歩及ばない。
その差をパイロットとしての腕と経験で見事に埋めていた。
アビスとの戦闘を膠着状態に持ち込み、他の2機も苦戦はしているが直ぐに撃墜されるような状況ではない。
後は、ゲイルとショーンがダガーを堕として戻ってくるのを待つだけ。
こちらにとって都合が良い展開のはずだ。
その時、オズマの背中に冷たいものが走る。
戦闘開始から感じていた違和感の正体に気付いた。
こちらにとって都合が良い。
本当にそうか?
ここは、相手が選んだ戦場。
主導権は相手にある。
こうもあっさり、こちらの思惑通りに事が運ぶだろうか?
向こうにとっての勝利条件は、俺たちの殲滅ではない。
逃げ切る事だ。
その為に必要な事は、こちらの母艦であるミネルバを攻撃して足を止める事。
それなのに敵モビルスーツ隊は、積極的に攻撃を仕掛けてミネルバを狙うような行動を取っていない。
時折り、時限装置を設定したミサイルが左右からミネルバを狙って放たれるが迎撃用の兵装で十分対応できている。
デブリ帯に引き込んだ相手にしては攻撃が緩すぎる。
ミネルバ艦長アーサーもオズマと同じ違和感を感じていた。
そこから相手の狙いを察して新たな指示を出す。
「艦前方にトリスタン照準!」
「この距離では、まだ当たりませんよ」
「狙いは敵艦じゃない。
とにかく前方に向かって撃て!」
「了解!」
アーサーの指示で、2連装高エネルギー収束火線砲『トリスタン』のビームが放たれる。
その火線上で無数の爆発が起きた。
「こっ、これは!」
「ええ、機雷ですよ。
左右からのミサイルとモビルスーツで注意を引きつけて、デブリに紛れて設置した機雷でミネルバを損傷させ足を止める事を狙ったんです」
デブリ帯に入った相手の狙いは、ミサイルやモビルスーツによる奇襲ではなかった。
それを囮にした機雷こそが本命。
デブリに紛れて機雷の探知はほぼ不可能だった。
そして、相手のミサイルやモビルスーツの攻撃が側面からだった事から狙いを看破したアーサー。
その非常に高度な戦術のやり取りにブリッジのクルー達は驚愕していた。
自分達は、確かに恐るべき敵を相手にしている。
だが、この艦長は、その罠を食い破ったのだ。
勝てる!
ビームで進路上の機雷は除去した。
今度は自分達が追い詰める番だ。
ブリッジクルーは、そう確信していた。
ミネルバのビームで誘爆していく機雷の姿を見たオズマは納得していた。
「なるほど、機雷が本命か。
通りで攻撃の圧が低かったわけだ」
「隊長!
相手の罠は、ミネルバが食い破ってくれた。
後は、俺達がこいつらを倒せばミッションコンプリートですよね!」
「罠が不発に終わって、相手も動揺してるはず。
逃がさないわよ!」
「うん、お姉ちゃん。
ウルズ、ベルザンディー、スクルド、行くよ!」
ミネルバが相手の罠を見破り、無効化した姿は、苦戦して苛立っていたシン達の戦意を回復させていた。
戦闘宙域後方
「ほう、機雷を見破ったか。
あの艦の艦長は優秀だな」
後方で戦闘に参加していなかったラースが罠を見破り、無効化したミネルバを賞賛していた。
その声に自らの策が破られた事に対する苛立ちは無かった。
「モビルスーツ隊は、予定通り動いている。
そろそろ頃合いだな。
次の手に移行する」
座して動かなかったラースのペイルライダーが遂に動き出す。
彼の策は、まだ終わりではなかった。