歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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デブリの中の戦闘2

 

 

 

 デブリの中をモビルスーツのスラスターの光が飛び交う。

 互いが放つビームが漆黒の宇宙を切り裂いていく。

 ミネルバが機雷の罠を破った後、彼らの戦闘速度は上がっていた。

 

「見てろよ、俺だってやれる!」

 

 罠を破った事でミネルバのモビルスーツ隊の戦意は高まっていた。

 インパルスの動きは、更に速く、激しくなっている。

 ガイアのようにデブリを足場にして方向転換し、より複雑な三次元機動を行うようになっていた。

 戦闘が始まった頃にあった機動のぎこちなさが消えている。

 シンは、初めての実戦での緊張とデブリ帯と言う難しい戦場ゆえに上手くいかない苛立ちから本来の実力を発揮できないでいた。

 オズマがフォローしていた事とガイア達が積極的に攻めて来なかったため撃墜される事は無かったが、ガイアの独特な機動に一方的に翻弄されていたのはその為だった。

 戦意が回復し、緊張が解けた事でインパルスがその性能を発揮しつつあった。

 

 相手の動きが変わった事はガイアのパイロット、ステラも感じていた。

 

「なんだ、お前は!」

 

 先程までは脅威を感じなかった相手からプレッシャーを感じるようになった。

 まだ焦るような段階ではない。

 第1手が破られたとは言え、想定されていた事態に過ぎない。

 作戦は続いているのだ。

 それでも、相手モビルスーツの動きが良くなってきた事に警戒心を抱く。

 次の手は、自分がこのモビルスーツを抑える事が前提になる。

 どこまで動きが良くなるかで作戦の成否も変わってきてしまうのだ。

 

「負けない。

 私がラースを守る!」

 

 ステラがガイアのスラスターを吹かして機体を加速させていく。

 インパルスとガイアの戦いは、更に激しさを増していく。

 

 それに釣られるようにカオスとアビスの戦闘も激しくなる。

 先程までの様子を見るような戦いとは打って変わって、気を抜けば直ぐに堕とされる。

 そう感じる程、攻撃の圧が強まっている。

 

 

「やはり、そう簡単には行かないか」

 

 策が失敗した事で動揺してくれないかと期待したが、そう上手くは行かなかった。

 相手は、機雷がダメならモビルスーツ戦で勝てば良いとばかりにギアを上げてきた。

 シンやルナマリア、メイリンの士気が回復して、緊張による固さも解消された事で対応できている。

 オズマ自身がアビスの対応に集中する必要に迫られた事で二人のフォローが難しくなっているので、彼らがガイアとカオスに対抗できている事は幸いであった。

 

 

 だが、そんな彼らの奮闘を嘲笑うかのように悲報とも言うべき通信が入る。

 

「新たな専用機を確認!」

 

「ダガー達と連携されて離脱できない!

 隊長、助けてください!」

 

 戦闘開始から数的優位を取るためにダガー達を狙っていたゲイル達。

 ダガー達は、デブリを巧みに盾にしながら戦闘を行っていたため、なかなか堕とせなかった。

 だが、ヅダが性能で優っていたため時間の問題だと思っていた。

 事実、ダガーは逃げ回るのに精一杯の様子で反撃もあまり無かった。

 隊長達が新型相手にしている中で旧式機に時間を掛ける訳には行かないと機体を加速させてダガーを追いかけていた。

 それが相手の狙いだとは知らずに。

 

 ゲイル達は、いつの間にかオズマ達から引き離されていた。

 そこにラースのペイルライダーが襲いかかった。

 分断し、各個撃破する。

 当初、オズマ達がしようとしていた事を逆にされようとしていた。

 

「悪く思うなよ。

 弱い者から狙うのは戦場の定石だ。

 だから、お前達もダガー隊を狙ったのだろう?」

 

 ペイルライダーが驚異的な加速で接近し、戦闘が開始される。

 ダガー隊もそれに合わせて動きが変わる。

 ゲイル達の退路を断ち、離脱を阻止するように立ち回り始めた。

 

「デブリ帯でこれ程の速度を出すなんて。

 この動き、間違いない。

 奴は撃墜王《エース》だ!」

 

 デブリと言う障害物を避けながら通常のモビルスーツを遥かに超える速度で接近する機体にゲイルが恐れ慄いている。

 旧式機のダガーを相手にするのとは訳が違う。

 自分達に専用機に乗ったエースを相手に出来る程の腕はない。

 

「ゲイル、とにかく隊長達と連携が取れる位置まで下がるぞ!

 このままじゃ、こっちが各個撃破されちまう」

 

「だが、相手がそれを許すか?」

 

「それでも、やらなきゃやられるだろう。

 ダガーを振り切って隊長達と合流するんだ!」

 

 ゲイルとショーンは、直ぐに機体を味方のいる方向に進ませる。

 そこに、やはりダガーからの妨害が入った。

 それは、離脱を阻止する嫌がらせのような攻撃だった。

 だが、背後から敵エースが迫っている状況では非常に厄介な事態だ。

 

 ヅダならダガーと正面から戦えば勝てる。

 離脱を阻止する目的がある以上、これまでのように逃げ回る事はしないだろう。

 しかし、ダガーを落とす前に敵エースに後ろから撃たれてしまう。

 相手は専用機を与えられるほどではない。

 それでも、そう簡単に堕とせるような腕ではない事はこれまでの戦闘で理解している。

 然りとて、ダガーの火力はヅダを堕とす事が出来る程度には高い。

 攻撃を無視して強引に突破する事も不可能だった。

 

 ダガーの妨害を速度を落とす事なく切り抜けて離脱する。

 エースと言われる者にも難しい事だろう。

 分の悪い賭けなのは理解している。

 それでも、生き残るためにやらねばならない。

 

 ゲイルとショーンの死地からの脱出が始まった。

 互いの背中を守りながらダガーの攻撃を振り払おうと機体を動かす。

 しかし、ダガー達を振り切る事は出来なかった。

 彼らは、モビルスーツ強奪と言う大胆な作戦に選ばれたパイロット達だ。

 エース程でなくとも確かな腕を持っていた。

 遂にペイルライダーに追いつかれてしまった。

 そこから先は一方的な戦闘だった。

 

 戦力差は2対3

 相手の2機は旧式機だが救いにはならない。

 正直、専用機に乗ったエースだけが相手でも2機掛かりでどれだけ粘れるか分からない。

 その上で手強いパイロットが乗ったダガーが2機。

 ゲイル達の機体は、次々と損傷箇所が増えていく。

 戦闘不能となり堕とされるのも時間の問題だった。

 

 

「ゲイル、ショーン!

 くそっ、邪魔をするな!」

 

 仲間の窮地を知ったシンが救援に向おうとするがガイアに邪魔をされて向かうことが出来ない。

 

「白いの、ラースの邪魔はさせない」

 

 インパルスとガイアが激しく切り結び、ビームを撃ち合う。

 互いにセカンドステージの高性能機であるため簡単には勝負が付かない。

 それがシンの焦りを更に加速させる。

 

 

 オズマも援護に向かえずにいた。

 アビスの性能に手を焼いていた事もあるが、それよりもアビスがシンやルナマリア達へと攻撃する素振りを見せるている。

 ゲイル達の援護に向かえば、今度はこちらが数的不利になる。

 シン達は、焦りから操縦が雑になりつつある。

 デブリの中での戦闘の為、ミネルバからの援護も期待できない。

 オズマの中にすら焦りが生まれていた。

 

 

 ルナマリア達も焦りに駆られながら必死に戦っていた。

 

「このままじゃ、ショーンさんたちが。

 どうしよう、お姉ちゃん」

 

 メイリンが無人戦闘機を操りながら姉のルナマリアを伺う。

 

「分かってる、今考えてるのよ!」

 

 不利な戦況で焦っている中でもルナマリアには考える余裕があった。

 専用機達の中でノルンだけはカオスを相手にやや優勢に戦えていたからだ。

 それはメイリンの無人戦闘機による援護があっての事だ。

 だからこそ考える。

 オズマもシンも動けない。

 事態を好転させる事が出来るのは自分達だけだと理解していた。

 

 ノルンの無人戦闘機とカオスの機動兵装ポッドは似たような特性の兵器だ。

 単体の戦闘能力では無人戦闘機が勝るがデブリで性能を発揮しきれていない。

 だが、機動兵装ポッドは二つ。

 数では勝っている。

 無人戦闘機を一機援護に向かわせるか?

 いや、ダメだ!

 いくらメイリンでも遠く離れた場所と自機の周辺で別々の戦闘が出来るほどじゃない。

 それにデブリで性能を発揮できない戦闘機一機では大した援護にならない。

 でも、3機全てを向かわせればカオスに対抗できなくなる。

 

 カオスの機体特性を考える。

 2機の機動兵装ポッドを巧みに使って、こちらの無人戦闘機を上手く牽制している。

 確か、機動兵装ポッドは本体の加速用ブースターの役割もある。

 ポッドを展開している間は機動性が落ちると言う事。

 なら、ポッドさえ潰してしまえば防戦くらい出来るはず。

 

「メイリン、多少戦闘機が壊れても構わないから全力機動でポッドを堕として」

 

「ええ!お姉ちゃん、どう言う事?」

 

「ショーンさん達を助けるためよ。

 私を信じて!」

 

「う、うん、分かったよ。

 ごめんね、みんな」

 

 メイリンが無人戦闘機達にデブリの中で高速機動させる。

 

「なんだ!戦闘機どもの動きが急に!」

 

 カオスのパイロット、スティング・オークレーも急激な動きの変化に対応できなかった。

 戦闘機達は、デブリにぶつかり損傷しながらもポッドの撃墜に成功した。

 だが、その代償は大きかった。

 

 デブリとの衝突で3機の内2機がかなりのダメージを負っていた。

 いつ不具合が出て動きを止めるかも分からない状態だ。

 そう長く戦闘を続けられない。

 

「メイリン、戦闘機を全部ショーンさん達の援護に向かわせて!」

 

「大丈夫なの?お姉ちゃん」

 

「ポッドがない今のあいつになら負けないわよ」

 

 ルナマリア自身、厳しい戦いなのは理解していた。

 ポッドがないカオスが凡庸ならば、無人戦闘機がないノルンもまた凡庸なのだ。

 だが、戦闘機は損傷している。

 この上、カオスを倒してからでは救援は間に合わない。

 戦闘機が故障してしまう前に助けに行かなければならないのだ。

 

「メイリン、とにかく相手のダガーを狙って」

 

「うん、みんな、行って!」

 

 姉の言葉にメイリンも覚悟を決めたのか、強い意志を感じさせる声で戦闘機に指示を出す。

 戦闘機達がショーン達の離脱を援護するために向かう。

 

「おっと、向こうに行かせる訳には・・!」

 

 スティングがカオス本体で戦闘機を堕とそうとするが、

 

「あんたの相手は私よ!」

 

 ノルンがカオスを攻め立てる。

 スティングも戦闘機への攻撃を諦めてノルンに対処せざるを得なかった。

 

 

 ゲイルとショーンは、ラースの苛烈な攻撃に晒されて機体のダメージは限界を向かえつつあった。

 なんとか撃墜だけは免れているような状態であったが、それもこれ以上は持たない所まで来ていた。

 そんな中でほんの一瞬だがショーンの集中力が途切れてしまった。

 ぎりぎりまで追い詰められた状況でその隙は致命的だった。

 ショーンの機体にとどめを刺すための攻撃が迫る。

 ショーンの脳裏に故郷に残してきた婚約者の顔が過ぎる。

 機体をビームが貫こうとした瞬間、割り込む機体が一つ。

 

「お前には婚約者がいるだろ。

 必ず、生きて帰れ・・よ」

 

 盾となり、代わりにビームを受けた機体が爆散する。

 

「ゲ、ゲイルーーーーーー!」

 

 仲間に庇われ、救われた命。

 だが、そんな感傷に囚われる時間もなく死の危機が降りかかる。

 残りはお前だけだと言うかのようにラースの攻撃が再びショーンに迫る。

 ゲイルの献身は、ショーンの命を僅かに引き延ばしただけに終わるのか。

 

 そこに救いの手が届いた。

 高速で突入してきた3機の戦闘機がダークダガーを爆散させる。

 

「何!?」

 

 ラースが突然の乱入に気を取られた隙にショーンは距離を取る。

 

 戦闘機達は止まらない。

 その驚異的な機動力を見せつけながら、残ったダークダガーに襲い掛かり撃墜してしまった。

 そこで限界を迎えた1機が脱落した。

 ショーンの離脱を援護する為にペイルライダーと戦闘している内に更に1機が撃墜され、ショーンと共に戻ってきた戦闘機は1機のみだった。

 

「止むを得ん。

 ミネルバが援護できる位置まで下がるんだ!」

 

 数の上では4対4だが相手は全て専用機。

 こちらは量産機もいる上、ノルンも万全ではない。

 ミネルバに攻撃されるリスクはあるが母艦の直ぐ側で戦うしかない。

 そう判断したオズマの指示でシン達はミネルバまで下がっていく。

 

 母艦とその周りで防御を堅めるモビルスーツ達を見ながらラースも決断していた。

 

「ここまでだな。

 削りきれなかったが奴らはもう前には出てこないだろう。

 追加のトラップも仕掛け終えた」

 

 あの状況から1機しか堕とせず、こちらのダガーを2機とも堕とされた事に屈辱を感じないではなかった。

 だが、任務は奪ったモビルスーツを持ち帰る事。

 母艦の援護がある状態で亀のように防御を堅めた相手に無理攻めするような愚か者になるつもりはない。

 ラース達は、母艦のジョン・ドゥへと帰還して行った。

 

 

「やれやれ、引き際も見事ですね」

 

 そんな彼らの動きにアーサーは感嘆の声を漏らす。

 

「奴らが逃げますよ!

 追いかけないんですか?」

 

 ブリッジクルーの問いかけに困った顔で答える。

 

「あれだけの相手ですよ。

 単純に逃げるだけのはずがないでしょう?」

 

「また、何か罠があると?」

 

「あると想定すべきでしょうね。

 慎重に進まざるを得ません」

 

 その後、ミネルバの前にパージされた燃料タンクと思しき物が流れてきたが、ビームで撃ち抜いた事で大爆発を起こした。

 どうやら、爆薬を仕込んで簡易のトラップにしていたようだ。

 他にも時限式のミサイルや機雷を見事に嫌な位置で仕掛けられていた。

 それらを回避しながらデブリ帯を抜けた時には、強奪犯の母艦は探知範囲外に出てしまっていた。

 

「今回のミッションは失敗だな。

 まあ、こんな事もあるさ」

 

「ちくしょう!ゲイルが!」

 

「落ち着け、シン。

 俺たちはPMC、傭兵みたいなもんだ。

 仲間が死ぬ事もある」

 

「それは分かってるけど、助けられなかった」

 

「メイリン、貴女のせいしゃないわ。

 私がもっと早く決断できていれば・・・」

 

「二人とも、そう気にしないでくれ。

 少なくとも俺はお前達に助けられたんだ。

 ゲイルにもな」

 

「「ショーンさん・・・」」

 

「あいつの想いに応える為にも、俺は生きて帰る。

 最後まで絶対に諦めない。

 それが俺たちの生き方なんだよ」

 

 戦場に散った仲間を偲びながら、残った者達は前を向く。

 戦場に立った以上、相手を撃つなら自分や仲間が撃たれる事も覚悟しなければならない。

 シン達の初陣は苦いものになってしまった。

 だけど辛さを分かち合い、支えてくれる仲間がいる。

 これを糧に成長していくだろう。

 その機会、新たな危機は直ぐそこまで迫っていた。

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