歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
その宙域にユニウスセブン破砕任務に参加する部隊が集結していた。
だが、その数は明らかに少なかった。
トゥルーザフトなどのテロリスト達の妨害が予想される中、この規模の部隊で地球を守ることが出来るのか不安を抱いてしまう。
作戦参加の為に赴いたミネルバもそんな不安を感じていた。
「集まった戦力はこれだけか?
傭兵やPMCの集まりも悪いみたいだな」
「最近、トゥルーザフトや宇宙海賊が各地で騒ぎを起こしていたのは、このユニウス落としに戦力を集中させない為の囮だったのでしょう。
PMCも別任務に就いていて、こちらに向かえない部隊が多いみたいですね」
「逆に言えば、トゥルーザフトも各地に戦力を分散させているはずだ。
妨害の戦力もそう多くはないと思いたいが」
「そうですね。
あまり多くの部隊を投入すれば、流石に統合軍も気付くでしょうから、妨害部隊の規模もそれほど大きくはないと思います」
「朗報もない訳ではないしな。
最近、名が売れ始めたファントムペインも参加しているそうだ」
「凄腕のパイロットが二人もいるんでしたか?
なんでも、あのサーペントテールの叢雲劾にも匹敵するとか。
傭兵としては新参者ですから、元ザフトのエースパイロットだったんじゃないかと言われてますね」
「そうだな。
戦争犯罪に問われなかった者達もザフト解体で民間に流れて傭兵になった者も多い。
戦後、腕の良い傭兵が増えたのは事実だ」
「何にせよ、腕の立つ味方がいるのはいい事です。
ルーキー達にもいい刺激になるでしょうし」
統合軍と合流し、ユニウスセブンに向かう中で思った以上に戦力が集まらない事にシン達は苛立ちを感じていた。
「ちくしょう!
集まったのはこれだけかよ。
みんな、地球がどうなってもいいって言うのか!」
「シン、落ち着きなさいよ。
どうでもいいなんて思ってないわ」
「そうだぞ、トゥルーザフトや海賊対処で各地に散ってるって話だったろ。
地球が見捨てられた訳じゃない」
「でも、大丈夫かな?
この戦力でメテオブレイカーを守らなきゃいけないんだよ」
「大丈夫、メイリン。
ノルンの全力を引き出せば、私達は無敵よ!
それに、今回はあのファントムペインも参加するそうじゃない。
スーパーエース級と言われる二人のパイロット。
どれ程のものか楽しみね」
「ホント呑気だな。
今回は時間がないんだ。
妨害部隊を殲滅して安全を確保してからなんて悠長な事はしてられない。
妨害を跳ね除けながらメテオブレイカーを設置しなきゃいけないんだぞ」
「わかってるわよ、難しいミッションなのは。
でも、悲観しててもしょうがないでしょ!」
ファングには地球出身者が多い。
ユニウスセブンがこのまま落ちれば、地球に壊滅的な被害が出てしまう。
彼らは、そんな不安と戦っていた。
ルナマリア達も彼らの前で不用意な事は言えなかった。
だから、せめて場の雰囲気を軽くしようと明るく振る舞っていたのだった。
彼女達だって地球を守ると言う重圧を感じていないはずがなかった。
仲間達と話す事で不安に思ってるのは自分だけじゃないと感じる事ができた。
そうする事で戦場に到着するまでに心を整えていった。
ファントムペイン母艦ガーディー・ルー
ネオ達もまた、集まった戦力に不安を感じていた。
「ネオ隊長、この戦力で大丈夫でしょうか?」
「厳しいかもしれんな。
統合軍の練度は高くはない。
ファングのオズマ隊がいるのがせめてもの救いだな」
「オズマ隊ですか?」
「ああ、オズマ・リーはなかなかのやり手だ。
あの男が指揮する部隊なら戦力として計算できるだろう」
「隊長がそれほど評価するのなら頼りになりそうですね」
「それでも、今回の作戦は難しいものになるだろう。
アレックス、君も機体の準備は万全にしておきたまえ」
「了解です」
戦闘準備を進めながらネオ・ロアノークは、自分達とオズマ隊の働きが作戦の成否を左右すると確信していた。
今回、集まった統合軍や傭兵達の中でエースとして働けるのは自分達しかいない。
なにより、ネオの感がそう告げていた。
ユニウスセブンでは激しい戦闘になると。
「やれやれ、目立つ事を覚悟でプロヴィデンスを持ってくるべきだったかもしれんな」
もちろん、そんな事をすれば統合軍やネームレスから目を付けられる事になるため、出来ない事だった。
それでも、そうぼやきたくなるほど状況は厳しいと感じていた。
戦力に不安を感じながらも統合軍はユニウスセブンに向かって進んだ。
ユニウスセブンが落下阻止限界点に達するまでに破砕しなければならないのだから。
トゥルーザフト、ユニウスセブン落とし実行部隊
彼らの前で、フレアモーターを取り付けられたユニウスセブンが地球への落下軌道を取っていた。
作戦は順調に推移している。
統合軍の戦力は、上手く分散させる事が出来た。
統合軍と言っても、その実態は旧地球連合軍からほぼ変わっていない。
特に前大戦で実績を上げた大西洋連邦軍とユーラシア連邦軍の影響力が大きい。
そんな組織へ非理事国が戦力を提供する事に積極的になるはずもなかった。
そのため、統合軍の規模をそれほど大きくは出来なかったのだ。
「予定通りですね。
統合軍を掌の上で転がす、その手腕。
さすがザラ議長の御子息だ」
「いえ、私は一度道を誤ってしまいました。
私の方こそ、間違いを正す機会を与えてくれた貴方達に感謝しています」
「パトリック・ザラの血と意志を受け継いだ貴方は、我々の希望です。
コーディネーターの世界を創り上げた時、御父上も貴方を許されるでしょう」
「ありがとうございます。
では、許される為に行動する事にします。
そろそろ、落下阻止の為の部隊が来る頃でしょう。
艦隊の指揮は任せます。
私はモビルスーツで待機しています」
「ご武運を、アスラン・ザラ代表」
アスランは、愛機REイージスのコックピットに入り出撃の時を待つ。
これから時代が大きく動き出す。
いや、私が動かすのだ。
「アスラン・ザラか・・・
本物がパトリックを否定して、失敗作である俺がその意志を継ぐ事になるとは、皮肉だな」
旗艦のブリッジで話した事を思い出す。
「パトリック・ザラの血を継いでいる事など何の意味もないのだけどね。
コーディネーターにとって血の繋がりなど意味はない。
結局はスーパーコーディネーターに帰結するのだから」
戦後、しばらくして学会にある論文が発表された。
それは衝撃的な内容だった。
高レベルコーディネートを施されたコーディネーターとナチュラルの兄弟では、遺伝子の差異が大きくなり科学的に兄弟と判定されない事例が確認された。
そして、世代を重ねたコーディネーター間の遺伝子情報の差異は、他人であってもこの兄弟よりも少ないと言う事実。
コーディネーター同士では、子供をコーディネートしなければ無事に産むことが難しい。
世代が進むほど出生率が低下していく。
それらコーディネーターの種としての問題点の原因がこの論文で明らかにされたのだ。
より高い知性を獲得できる脳、より高い性能を有する肉体。
人が望むものは変わらない。
なら、コーディネートで選ばれる遺伝子も変わらない。
それは選択ですらないだろう。
そうやって世代を重ねていけば、必然として近づいていく。
理想のコーディネートと遺伝子発現率を実現させたスーパーコーディネーターへと。
全ての個体が同一の遺伝子を持つ、クローンのような存在のみで成り立つ種族。
コーディネーターが進む先にある究極の世界。
パトリック・ザラがスーパーコーディネーター計画を知った時、血を後世に繋げると言う生物の根源すらコーディネーターにとっては無意味だと理解した。
故に彼は、自らの後継者にスーパーコーディネーターを望んだ。
多くの高レベルコーディネートを施された子供達。
その中で最も理想に近かった一人を息子にして、アスラン・ザラと言う名を与えたのだ。
今、トゥルーザフトでアスラン・ザラを名乗る男は、失敗作としてパトリック・ザラに捨てられた者。
遺伝子的には、本物のアスラン・ザラと殆ど同じ。
だから背格好も声も似ている。
簡単な整形で成り代われてしまう程に。
そんな過去を持つ彼が望む未来とは、どんなものなのか?
そして、出撃の時が来る。
ユニウスセブン落下を阻止する為の部隊が近づいて来た。
その部隊には、かつてアスラン・ザラだったアレックス・ディノがいる。
因縁が二人を導いたのか?
新旧のアスラン・ザラが戦場で出会おうとしていた。