歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
宇宙に光が疾る。
ユニウスセブン破砕のために近づいた統合軍は、何者かに攻撃されていた。
それは予測された事態。
彼らは戸惑う事なく作戦行動に移る。
艦隊からメテオブレイカーが射出される。
本来ならある程度つゆ払いしてからが望ましい。
だが、今はそんな猶予はない。
一刻も早くユニウスセブンに取り付かれなければならないのだから。
破砕作業を担当するモビルスーツ達がメテオブレイカーと共にユニウスセブンへと向かった。
彼らを無事にユニウスセブンへ届けるために護衛部隊が敵の迎撃に当たる。
その中にはミネルバとガーディー・ルーの姿もあった。
ミネルバから出撃したシン達もメテオブレイカーを守るためにテロリストと戦闘を開始した。
相手が使うモビルスーツは、ゲイツを主力にジンやシグーも見受けられる。
やはり、ザフトの脱走兵が中核となっているトゥルーザフトだったようだ。
彼らはパトリック・ザラの信奉者であり、かつて強硬派として戦っていた者達だ。
オーブを焼いた者達が属する派閥でもあった。
彼らが今、地球に牙を剥いている。
誰に憚ることなく彼らと戦える。
それは、シンが待ち続けていた復讐の機会だった。
「うおおおぉぉぉ!」
ブラスト・シルエットで出撃したシンが、その長大な射程を持つケルベロスで接近する敵を迎撃し始める。
だが、トゥルーザフトのモビルスーツ達は散開して回避していく。
インパルスの砲火は悉く空を切っていた。
最も新しい機体でもゲイツと言う旧式機であるにも関わらず、インパルスの砲撃をものともせずに距離を詰めてくる。
シンの腕が悪いのか?
そうではない。
訓練生時代にはトップの成績を取っていたのだ。
確かに近接格闘の方が得意だが射撃も苦手な訳ではなかった。
「躱された!」
「ふっ、動揺しているな。
各地で統合軍を陽動している者達とは違う。
我らは、この作戦の為に選ばれた精鋭。
一人一人がエースクラスの腕を持っているのだ!」
距離を詰めてきたトゥルーザフトが襲い掛かろうとしていた。
「シン、任せて。
メイリン!」
「うん、みんな行って!」
ホーク姉妹が駆るノルンから無人機達が放たれる。
有人機では不可能な高機動によって相手を翻弄する事が可能な機体。
今回は、動きを阻害する障害物はない。
完全に性能を発揮できる無人機によって相手を圧倒できると信じていた。
だが、その予想は覆されてしまった。
「自立攻撃兵器か。
確かに速い。
だが、そんな単純な動きでは!」
「なんで!?
こっちの方が速いのに!」
無人機達で攻撃を仕掛けるがトゥルーザフトのパイロット達に冷静に対処されてしまった。
撃墜はおろか、損傷を与える事すら難しい状況。
前大戦で猛威を振るった自立攻撃端末。
メビウス・ゼロのガンバレルやプロヴィデンスのドラグーン。
これらは、特殊な空間認識能力の保持者にしか扱えなかった。
しかし、技術の進歩によって空間認識能力を持たない者でも使えるようにした改良型が開発された。
それでも極一部のパイロット用にしか生産されていない。
使える事と使いこなす事は違う。
ムウ・ラ・フラガやラウ・ル・クルーゼが使ったからこそ脅威的な戦果を叩き出したと言える。
メイリン・ホークには確かに適性がある。
しかし、圧倒的な経験不足から無人機達の動きに戦術的な奥深さはなかった。
エースクラスなら対応されてしまう程度の動きだったのだ。
トゥルーザフトのパイロット達の技量の高さだけではなく、メテオブレイカーによるユニウスセブン破砕が目的の為、防衛側の動きが制限されている事もあり、苦しい戦いを強いられていた。
統合軍の練度は高くはなく、護衛部隊の被害が拡大しつつある。
メテオブレイカーに被害が出るのも時間の問題だった。
もちろん、優勢に戦えているパイロットもいる。
オズマなど、一部の歴戦のパイロットは、その技量で巧みに戦っていた。
そして、ファントムペインのパイロット、ネオとアレックスは更に別格の強さを見せつけていた。
アレックスがブラックセイバーを駆り、トゥルーザフトのモビルスーツ隊に斬り込んでいく。
キラのホワイトセイバーと同型機ではあるが、その機体特性はアレックス用に調整された物だ。
キラが得意とするのは高速機動戦闘。
常に動き続け、次々とポジションを変えていく。
多数を相手に戦い続けた事で形作られた回避を主軸にした戦闘法だ。
アレックスの適性は突撃強襲戦闘。
高速で距離を詰め、激しい攻撃で相手を圧倒する。
攻撃から次の攻撃までのタイムラグが極端に少ないからこそ出来る戦いだ。
そんなアレックスを後ろからネオがエグザスパック装備のサンダーボルトで援護している。
ネオは、奇しくもムウと同じ機体を使っていた。
4機のドラグーンを展開し、アレックスの突撃をサポートしていく。
並の腕ではアレックスの動きについていけない。
連携が成立している事がネオの非凡さを示していた。
二人のトップエースによる連携攻撃に、流石のトゥルーザフトのパイロット達も対応できずに次々と落とされていく。
「凄い、これが前大戦を経験したパイロットか・・・」
「ドラグーンの動き、私のとは全然違う」
「私たち、天狗になってたみたいね」
自分達が苦戦した相手を圧倒するその技量に思わず見惚れてしまう。
ただ強いだけではない、自分達が目指すべきお手本のように感じていたのだ。
それだけ、彼らの適性は似ていた。
シンはアレックスの動きに、ホーク姉妹はネオのドラグーンを使った戦闘の巧みさにそれぞれ衝撃を受けていた。
彼らの活躍に味方の士気も上がっている。
戦力に不安を感じていた者達も、彼らがいればこの作戦も上手くいくのではないかと希望を持てた。
実際にメテオブレイカーの被害をゼロには出来なかったが、なんとかユニウスセブンに取り付き作業を開始する事にも成功していた。
このままではユニウス落としを阻止されてしまうかもしれない。
トゥルーザフトも黙って座視してはいない。
戦場で最大の脅威となっているファントムペインに対応するために切り札を投入した。
アレックス達に接近する機体。
それは、REイージスとグフ・イグナイテッドだった。
REイージスはともかく、グフはプラントで試作されたモビルスーツの一つだ。
それは、プラントの一部がトゥルーザフトと繋がっている事を示していた。
「俺は黒いのをやる。
ハイネ、お前はドラグーンを使うやつを抑えてくれ」
「了解、任せろ!」
偽アスランとハイネ・ヴェステンフルスがアレックス達に襲い掛かる。
偽アスランとアレックスの交戦が始まる。
偽アスランも統合軍との戦いでトップエースとしての力を示していた。
すぐに戦いは激しさを増していく。
偽アスランもまたアレックスと同じタイプのパイロットだった。
互いに激しい攻撃で相手を圧倒する事を旨とする。
二人は本能的に理解していた。
受けに回れば押し切られる。
より速く、より鋭い攻撃を繰り出していく。
常人では理解できないほどの激しい攻防が繰り広げられている。
彼らの実力は拮抗し、一瞬でも気を抜けば即撃墜されるような戦闘にも関わらず膠着状態に陥っていた。
「くっ、偽物がこれ程の腕を持つなんて。
いったい何者なんだ?
それに、この感覚は・・・」
「スーパーコーディネーターに近いはずの俺と互角とは、こいつも只者じゃないな。
何より・・・」
「「相手の存在を感じている?」」
自分がどんな存在か自覚している偽アスランにとって、この感覚は相手の正体を推測できるものだった。
(アスラン・ザラは、ジェネシス破壊の為に自爆して死んでいる。
なら、こいつは俺と同じ存在。
俺以外にも生き残っていたのか)
パトリック・ザラの後継者として造られた者同士が互いの存在を感じながら戦い続ける。
ハイネのグフもネオとの戦闘に突入していた。
ネオが操るドラグーンの攻撃をかい潜り、反撃すら行なっている。
偽アスランと共にトゥルーザフトの切り札として扱われているのは伊達ではなかった。
もちろん、ハイネにも余裕がある訳ではない。
ネオを抑えるのは、ハイネを持ってしてもギリギリだった。
それだけネオの操るドラグーンは脅威だった。
「やるじゃないか。
群れなきゃ何も出来ないナチュラルどもとは違うようだな」
ハイネは、コーディネーター至上主義思想に染まっていた。
前大戦後に戦争犯罪で裁かれそうになった為にザフトを脱走したのだ。
罪を許され、裁かれる事がなければプラントに忠誠を誓っていたかもしれない。
だが、それは他国との信頼関係などどうでもいいと切り捨てた世界の話。
ハイネにとって自分を裁こうとした今のプラントは、誇りを捨てた許されざる裏切り者達が支配する国。
トゥルーザフトの行動がコーディネーターに対する感情をどれほど悪化させるのかも理解していなかった。
だが、別の世界ではフェイスに任命された程の実力者だ。
ネオと互角に戦い、足止めに成功していた。
アレックスとネオ、戦況を変えうる二人を抑えられた事で統合軍は再び劣勢に立たされた。
メテオブレイカーにも被害が出始める。
シン達も、メテオブレイカーを守ろうと必死に戦っているが相手の技量が高く、なかなか上手くいかない。
「どうしてこんな事をするんだ!」
シンが苛立ちのままに叫ぶ。
するとオープン回線から答えが返ってきた。
「アスラン・ザラが言っていただろう!
パトリック・ザラが選んだ道こそ、我らコーディネーターにとって唯一、正しき道だったと」
「そんな、お前達の勝手な理屈で!」
「世界とは勝手なものだ!
撃たれた者の想いなどどうでもいいと踏み躙る。
撃った者達と笑い合う世界を望めと言うのか!
娘の墓標、落として焼かねば世界は変わらん!」
「!!」
シンは、衝撃を受けた。
相手は自分と同じ理由で戦っていた。
動揺で動きが乱れたからかインパルスが被弾し、ダメージを負ってしまう。
「もらったぞ!」
手負のインパルスにとどめを刺そうとゲイツが襲い掛かる。
「させない!」
シンを守ろうとノルンがカットに入る。
動きを読めば対応できるとは言え、簡単に出来る訳ではない。
無人機への対応のため、インパルスにとどめを刺せなかった。
「シン、ミネルバに戻って換装しなさい。
あんたの機体ならすぐに復帰できるでしょ!」
「ルナ、メイリン、ありがとう!
すぐ戻る」
その場をノルンに任せて離脱する。
ミネルバに戻れば準備していてくれたようですぐにパーツが射出された。
インパルスの機能。
それはコア・スプレンダーを核としてパーツとドッキングする事でモビルスーツになる。
つまり、一度分離して損傷したパーツを取り替えれば速やかに換装する事が出来るのだ。
シルエット換装や艦の搭載数を圧縮するなどの意味もあるが、損傷しても速やかな復帰が出来るのも大きなアドバンテージであった。
ソード・シルエットに換装し、再び戦場に向かう。
その心にもう動揺はない。
奴らと同じじゃない。
理由は同じかもしれない。
それでも、選んだ道が違う。
地球を、関係ない人達まで巻き込んで世界を壊そうとする者達とは違う。
だから、もう迷わない。
奴らを撃つのは復讐のため。
それでも、地球を守りたいという想いも確かにあるんだ!