歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
ミネルバは、その後も各地を転戦し、多大な戦果を上げていった。
ガルナハンでは、東アジアが設置したローエングリンゲートをインパルスの特性を利用して奇襲を行い撃破に成功。
その際、捕虜となった東アジア共和国軍の兵士を現地住民が復讐心のままに私刑にしようとしたが、シン達がこれを止めて正式な裁判を受けさせた
現地において圧政や非人道的な作戦が取られていたため、戦争犯罪者として裁かれる。
現地の法で裁かれるため、東アジアは復讐裁判だと非難していた。
だが、彼らが犯罪を犯したのは明白な事実であり、明らかな証拠もある。
東アジアは、こちらの主張を一切受け入れなかったが、こう言うことは形式が大事なのだ。
こうしておけば東アジア以外の国から責められることはない。
戦場で東アジアの部隊にガイア達が確認されたため、モビルスーツを筆頭に兵器の世界シェアで大西洋、ユーラシアに水を開けられている東アジアがプラントの技術情報を奪取するために派遣した特殊部隊なのではないかとも推測された。
もちろん、確たる証拠はないので東アジアが雇った外部の傭兵という可能性も否定できない。
しかし、東アジア側に立ち、非理事国同盟に大きな損害を与えている事に変わりはなかった。
ミネルバは、各地での目覚ましい戦果に加えて、自軍に大きな損害を与えている敵精鋭部隊を抑える事が可能な戦力を持つ部隊としてリベリオン上層部にも注目され、闇ラクスの護衛を任されるまでの信頼を獲得していた。
ミネルバの活躍により、非理事国同盟の反転攻勢の準備が整いつつある裏で、ファントムペインもまたネームレスとの暗闘を繰り広げていた。
そして、ついにネームレスの痕跡を掴む事に成功した。
「ネオ隊長、アレックス君
ネームレスに関する有力な情報を掴みました。
ロドニアにある非合法ラボにネームレスが関わっているみたいです」
「非合法ラボですか?」
自身の出生からその類いの施設に嫌悪感を持つネオの声が低くなる。
隣で聞いているアレックスの背筋が冷たくなるほどだ。
「ええ、ライトマン博士のブースデッドマンとは別のアプローチによる強化人間の研究を行っていたようですね。
頭の痛い事にネームレスは、ジブリール君の名前を隠れ蓑にしているんですよ」
「ジブリールと言うと、理事からブルーコスモスの盟主の座を引き継いだ・・・」
「ええ、そのジブリール君です」
戦後、アズラエルは大西洋連邦の国防産業理事としての激務に加え、ファントムペイン設立の支援やネームレスの調査などに忙殺されブルーコスモスの盟主の座を維持できなかった。
もともとジブリールが持つ政治力は侮れないものがあった。
それに加えてプラントへの温情ある処置がブルーコスモス過激派の不満を高めていた。
アズラエルにとってジブリールの貴族趣味は鼻につくものだが、上流階級でもあるロゴス幹部にとっては慣れ親しんだものだ。
合理性や効率を重んじるアズラエルより、社交界での付き合いも深い。
その上、弁も立つとなれば彼らからの受けはアズラエルよりも良かった。
さすがのアズラエルもロゴス幹部の意向を完全には無視できなかった。
「表向き存在しないラボなのにジブリール君の名前を使って更に奥に潜む。
いかにもネームレスらしいじゃないですか。
逆に言えば、これほど徹底して自分達の存在を隠してまで関わりを維持している施設です」
「奴らにとって重要な情報があると?」
「十分に期待できますよ。
今回のミッションは情報の奪取です。
ラボに侵入し、その機密情報を抜き取って来てください」
「了解しました。
必ず情報を手に入れてきます。
吉報をお待ちください」
「期待してますよ。
この2年でようやく掴んだ奴らの尻尾ですから」
ファントムペインが次のミッションに向けて移動を開始する。
某所
「ファントムペインがそちらに向かった。
準備は出来ているな?」
「もちろんです。
ラボの警備にはアフリカ最強の傭兵と言われる男を雇いました」
「・・・あの男か」
「ええ、かなり気難しい男ですが腕は確かですよ」
「ふむ、ある意味、都合がいいか・・・」
「なにか?」
「いや、こちらの事だ。
では、そちらは予定通り進めてくれ」
「了解です」
ファントムペインの襲撃は、ネームレスにとって予定通りの事態。
あえて情報を流した事でこちらの庭に誘い出したのだ。
ネオ達を万全な状態で迎え撃とうとしていた。
アレックスのブラックセイバーを中心としたファントムペインのモビルスーツ隊がラボに襲撃を仕掛ける。
辺りに警報が鳴り響き、すぐに施設から警備部隊が迎撃のために出撃してくる。
両者の間で激しい戦闘が開始される。
だが、その中にネオの機体の姿はない。
彼は、ラボへと侵入するために別行動を取っている。
アレックス達の攻撃は、敵の注意を引き、ネオのラボへの侵入を成功させるための陽動だった。
ネオが情報を入手し、脱出に成功すれば、戦闘は彼の離脱を援護するフェーズに入る。
その時のために敵部隊にある程度の打撃を与えておくつもりだった。
しかし、アレックスは思わぬ苦戦を強いられていた。
敵部隊の主力はウィンダムだった。
ロード・ジブリールの名前が使われているだけあって、連合系列の機体が配備されていた。
ファントムペインの機体もウィンダムを特殊部隊用にカスタムした物を使っている。
機体性能の差はほとんど存在しない。
秘匿された施設の防衛のために大規模な戦力を置くことは出来なかったのか、数の差もそれ程ではない。
それだけであればアレックスがいるファントムペインが苦戦する事はなかった。
しかし、敵部隊の中に専用機持ちがいた。
ラースが使っていたペイルライダーと同系統の機体。
ブルーライダーを与えられたアフリカ最強の傭兵、スカーフェイスがアレックスの前に立ちはだかる。
アレックスも機体に描かれた疵のある顔のパーソナルマークを確認し、相手が名高いスカーフェイスだと知った。
相手から感じるプレッシャーに手強い存在だと、アフリカ最強と呼ばれているのは伊達ではないと理解していた。
隊長がいない今、俺しかこいつの相手は出来ない。
そんな確信を持って、機体を突っ込ませる。
スカーフェイスもまた、アレックスの実力を感じ取っていた。
互いの最高戦力である自分達の勝敗がこの戦いその物の結果を左右する。
そう確信していたが故に初手から全開でいく。
アレックスがブラックセイバーを高速で接近させ激しい連撃に持ち込もうとするが、スカーフェイスのブルーライダーが攻撃を上手く受け流し、離脱されてしまった。
それでもアレックスの動きは止まらない。
初手で決まるような容易い相手ではない事は分かっていた。
激しい攻撃で相手を圧倒するのがアレックスのスタイルだ。
ブラックセイバーの特性を活かすために高速を維持して空を飛び回る。
時にビームを撃ち、時にビームサーベルで接近戦を仕掛ける。
しかし、スカーフェイスも只者ではなかった。
ライダー系の機体は速度に優れている。
跳躍などの運動性能やスラスターの出力に優れた特性を持つ。
そんなブルーライダーを手足のように操り、アレックスの攻撃に対処し、反撃すら行なっている。
周囲とは一線を画する速度でぶつかり合うアレックスとスカーフェイス。
戦う前から互いに相手が実力者だと感じ取っていた。
それでも、これ程とは思っていなかった。
「くっ、スカーフェイス
傭兵にこれ程の実力者がいたなんて」
アレックスは、スカーフェイスを相手にやりにくさを感じていた。
単純に実力が高いだけではない。
自分のような高速で動き回るタイプを相手にするのに慣れているように感じた。
スカーフェイスの射撃によって動きが制限され、取れるコースが限定されてしまう。
だから、どれほど速く動いても、アクロバティックな機動を行っても有利な位置取りが出来ないのだ。
焦らず、冷静に獲物を追い詰める狩人のような攻めを見せるスカーフェイスにアレックスの背筋が冷たくなる。
速度を緩める訳にはいかない。
相手の手が届く速度領域まで減速してしまったら、もう逃げられなくなる。
なら、速度を上げるしかない!
相手が対処し切れない速さで押し切る!
アレックスは、スロットルを全開にして更に踏み込んでいく。
そんなアレックスの機動にスカーフェイスも舌を巻いていた。
「手強いな。
あれ程の高速機動、僅かなミスでも致命的な隙を晒してしまう事が分からないはずもないだろう。
それは、こちらも同じだがな」
アレックスが踏み込んできた事で、スカーフェイスも更にギリギリの対処を強いられている。
僅かなミスが命取りになるのは、スカーフェイスも同じなのだ。
戦闘は極限の領域に入っていた。
限界まで集中を研ぎ澄ます。
僅かでも集中が乱れた方が負ける。
そんな神経の削り合いのような戦いが続いていく。
アレックスとスカーフェイスが死闘を演じていた頃、ネオはラボへの侵入を果たしていた。
無事にサーバールームへ到達し、端末から極秘データへのアクセスを試みる。
その手際は見事なもので、次々とセキュリティーを解除していく。
ザフトの機密情報にアクセスして、ジェネシスやNジャマー・キャンセラーの情報を盗み出したのは伊達ではない。
ついに極秘ファイルへのアクセスに成功した。
すぐにその内容を確認していく。
それは、エクステンデッドと呼ばれる強化人間の詳細。
もうそれだけで世界を揺るがす情報だが、今回の目的はこれではない。
持ち込んだ記憶媒体にそのデータをダウンロードしながら、更に深層へと侵入していく。
それはジャンク領域にひっそりと隠されていた。
周りのファイルと同じ、ジャンク情報に見えるよう偽装されたデータ。
その中に記された情報は、ざっと目を通しただけでもとんでもない価値があると理解できた。
すぐにこのデータもダウンロードする。
これで、このラボに侵入した目的は果たした。
後は、このデータを持って脱出するだけ。
ネオは、見つからないよう慎重に出口に向けて進み始めた。
その姿を隠しカメラで捉えて監視している者がいた。
「どうやら、目当ての情報を無事に見つける事が出来たようですね。
脱出のタイミングに合わせてフェーズ2に移行する。
コード・ローレライ発動せよ」
男に指示された事で施設内の警備員達の動きに変化があった。
巡回中の警備員が呼び戻されたり、ルート変更が指示されたりしていた。
その結果、ネオの脱出ルート上に警備員がいなくなり、無事に脱出する事に成功した。
そのまま味方との合流地点に到達し、用意されていた自身の機体へと搭乗する。
このままアレックスと合流し、警備部隊を牽制しながら離脱する。
如何にスカーフェイスが凄腕であろうとネオとアレックスの2人を相手には敵わない。
これでミッション・コンプリートになるはずだった。
スカーフェイスも2人目の実力者であるネオが現れ、離脱を開始したことで戦闘は終わりだと思っていた。
ネオの機体の動きから相当な実力者だと判断していた。
そんな2人を相手に出来ると思うほどスカーフェイスは愚かではない。
このまま戦闘を継続されては全滅するのはこちらだ。
相手が引くと言うなら邪魔する理由はない。
生き残っているウィンダムのパイロット達も追撃は藪蛇だと理解していた。
自分達はラボの警備が仕事だ。
襲撃者を撤退させたのだから、義務は果たした。
これ以上、自分達の命を危険に晒す意思はなかった。
しかし、事態は急変し、状況は更に混迷を深めていくことになる。
ようやくあの人が登場しました。
バレバレだと思いますが、一応正体はまだ不明という事でw