歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
キラは、ストライクのOSの調整を終えて友人達の所に帰ってきた。
ある程度満足する出来になり、これ以上は実際に動かしてみないと改善点が分からないからだ。
整備員達から休むのもパイロットの仕事だと言われた為、仮眠を取る事にした。
「キラ、よく寝てるな」
「疲れてるのよ、キラ大変だったし」
「大変だったか」
「どうしたのよ、カズイ」
「キラだってあのモビルスーツの事知らなかっただろ。
それでも戦闘中にOS書き換えて動かせてしまう」
「キラを疑ってるの?」
「もちろんそうじゃない。
だけど、ザフトって皆そう言う事が出来るコーディネーターばっかりなんだ。
そんなのと戦って、本当に勝てるのかな?地球軍は」
またザフトと戦う事になった時の事を考えて不安になる学生達。
そこにカガリがミーアを連れて声を掛ける。
「そんな事はないよ」
「あっ、カガリ様」
「カガリでいい。
父がオーブの代表をしてるだけで、私が偉いわけじゃないんだ」
「カガリさ・・・んは、なんでここに?」
「ミーアがプラント市民だから、避難民達の中には居づらくてな」
「そっか、皆ザフトに襲われたばかりだから」
「ミーアさんは関係ないのに」
「関係なくないです。私、何も知らずにザフトを応援してた。
戦争は、悲しい事だと思ってただけで、知ろうとしてなかった」
「今はまだ、受け止めきれてないだけだよ。
時間が必要なんだ」
「それでカガリさん、さっきそんな事ないって言ってたのは?」
「ああ、コーディネーターだからって何でも出来る訳じゃないってことだ」
「そうなんですか?」
「キラにOSの調整を頼んだって事は、ソキウス少尉にそのスキルがないって事だろ」
「あっ、確かにそうね」
「たとえ双子でも同じ事が出来るとは限らないさ。
知り合いに双子のコーディネーターがいるけど、本人達は同じだと思ってるけど全然性格が違うんだ」
「へぇ、そうなんですか」
カガリは、ヘリオポリスの学生達の所に来て良かったと思っていた。
避難民達の感情を考えるとミーアを近くに置いておくのは、お互いにとって良くないだろうと連れ出したのだ。
ここに来たのは、同じコーディネーターのキラの近くなら安心出来るかと思ったからだが、学生達は予想以上にミーアを気遣ってくれた。
ザフトとミーアを別として扱い、気持ちが沈んでるミーアの為に話題を変えようとしてくれた。
ミーアも、ここでなら笑顔を見せてくれるかも知れない。
そう思い、学生達に話題を振りミーアを会話に巻き込んでいく。
キラが目を覚まし、カガリがいる事に驚いたが直ぐに受け入れた。
ミーアについても気にした様子もなく、そこにいるのが当然のように接している。
この素直にあるがままを受け入れるキラの性質が、コーディネーターでありながらナチュラルの学生達と親友と言えるほどの関係を築かせたのだろう。
「へぇ、ミーアさんって、プラントで歌手として活動してるんだ」
「まだデビューもしてませんけど、小さな芸能事務所に所属しているんです」
「普段は、どんなお仕事してるの?」
「実は、歌声がラクス・クラインそっくりって言われてるんです。
それでラジオでたまに披露すると、リスナー達から本人が歌ってるみたいだって好評なんですよ」
「凄いじゃない!
ミーアさん可愛いし、本人が歌ってるみたいって言われるって事は、声もキレイで歌も上手いって事でしょ。
デビューしたら人気出そうだよね」
「ありがとうございます。
ミーアとして歌を出すのが今の夢なんです」
「きっと出来るよ、応援するわ!」
「うーん、プラントだと難しいんじゃない?
歌姫ラクス・クラインがいるわけだし。
ラクス以外のアイドルの話も聞かないし。
プラントトップの娘を歌姫として売り出す為に、同年代のアイドルとか忖度で潰されてるって噂だぜ」
ミリアリアは、ミーアの顔が悲しみで曇っている事に気付き、ジト目になる。
「トール楽しい?わざわざ遠回しな言葉を使って、お前の夢は叶わないんだって伝えるの」
ミリアリアの言葉でトールもミーアの様子に気付き、慌てて謝る。
「ごめん、ミーア。俺、そんなつもりじゃなくて」
「いいんです。やっぱりそう言う事あるのかな?
事務所の人にも歌は上手いって認められてるけど、デビューの話は全然来なくて」
「きっと大丈夫よ、ミーアさん。
小さな事務所って言ってたから、なかなかチャンスが回ってこないだけだって」
不用意な言葉で傷ついたミーアを必死に慰める。
少ししか話してないけど、それでもミーアはいい子だと分かっているから、悲しませたままにはしたくない。
楽しい思い出にしたいから、学生組は、なんて事のない話題で盛り上がっていく。
そこに艦長達が訪れる。
「キラ君に話があるのだけど、いいかしら?」
「どうしたんですか?」
「アルテミスへのサイレントランが読まれてたみたいでな」
キラ達は、ザフトがアルテミス手前で頭を抑えて挟み撃ちをしようとしている状況を聞かされた。
「どうするんですか?」
「それを今から考えるんだ」
「あなたにもブリッジに来てもらいたいのよ」
「僕が・・・」
「一緒に戦う仲間なんだ、作戦はしっかり共有しておかないとな」
「ちょっと待ってください、キラはもう戦わなくていいんじゃなかったんですか!」
「なんだ、まだ彼らに話してなかったのか」
「はい、なんとなくタイミングが合わなくて。
大丈夫だよ皆、カガリや皆を守りたいから自分で決めたんだ」
「キラ・・・」
ヘリオポリスの学生達はキラの様子に戸惑っていた。
あの気が弱くて大人しかったキラが、別人のような漢らしい顔で自分達を守ると言っている。
「ミーアさん、あなたにも少し話があるから着いてきてくれないかしら」
「はい、わかりました」
そう言って艦長達はキラとミーアを伴ってブリッジへと向かう。
彼らが去った後、学生達は一様に沈黙している。
「ねぇ、このままでいいのかな?」
「そうだな、守られてばっかじゃ友達なんて名乗れないよな」
「艦長に言って艦の手伝いをさせてもらおう、カレッジで学んだ事が活かせるかもしれない」
「ちょっとサイ、皆もどうしちゃったのよ!」
「ごめん、フレイ。私たちもあなたの事、とやかく言う資格なかったの」
「ヘリオポリス内で戦ってた時、俺たちもキラになんで戦ってくれないんだって視線を向けてしまってた」
キラだけを戦わせたりしない、そんな決意をした学生達
それは若さゆえの潔癖さからくる、青臭いものかも知れない。
それでもカガリは、彼らの心を尊いと思った。
強くなりたい、そんな想いが前へと進む力になる事を知っていたから。
少しでも彼らの力になりたい、そう思いカガリも同行を申し出る。
「私も行こう。私の立場では、地球軍の仕事を手伝う訳には行かないけど、私が歌えば状況は変わるかも知れない」
「カガリさん、何を考えているの?」
「私はオーブの代表の娘だ。
身柄を抑えればオーブに対する最高の交渉材料になる」
「そんな、カガリさん!」
「私の身柄と引き換えに、他の人達の安全を保障してくれるかも知れない」
「それだとカガリさんの身が・・・」
「大切な交渉材料だ、それなりに扱ってくれるさ。
それにキラが示した覚悟に応えたいのは、お前たちだけじゃない」
そう言ってカガリと学生達は、艦長達を追いかけていった。
見送るフレイには、彼らの背中が遠く感じていた。
艦長達を追いかけてしばらく進むとミーアの声が聞こえてきた。
「いやです!皆を見捨てて私だけ生き残れって言うんですか!」
ミーアの只ならぬ声に学生達は思わず足を止める。
「そうならない様に全力を尽くす、だが戦場に絶対はない。
俺とイレブンがやられて全滅が避けられない状況になったら、君はストライクに乗ってザフトに投降するんだ」
「格納庫の近くに部屋を用意します。
その時はキラ君が迎えに来るわ」
「キラは、嬢ちゃんを人質にして戦わされていた。
そう言う事にすれば、二人とも保護してくれるだろ」
「マリューさん、僕はザフトには行きません。
ミーアを渡した後、最後までアークエンジェルを守ります」
「私もいやです!そんな風に生き残っても全然嬉しくない」
「それでも、全滅するよりはあなた一人でも生き残って欲しい。
軍は民間人を守るためにいる。
そんな私たちの自己満足に付き合ってほしいのよ」
ミーアは涙で顔をくしゃくしゃにして崩れ落ちている。
マリューは、兵士に彼女を部屋に案内させる。
ミーアが離れた後、カガリ達が出ていき自分達の意思を伝える。
キラは友人に考え直すよう説得しようとするが、自分達の決意を否定しないで欲しいと真剣な表情で言われて、何も言えなくなる。
「カガリさん、本当にいいの?」
「ああ、ザフトからの申し出があれば受けて構わない」
「あなたも守るべき民間人なのだけど・・・」
「私はオーブの国家元首の娘だ。
その時点で只の民間人ではない。
政治的に利用されようと、多くの人命が助かるのなら、お父様も許してくれるさ」
「わかりました。戦闘になれば全周波数で歌を流します」
「希望の歌姫の歌がBGMか。
なんだか不可能を可能に出来そうだな」
こうして、学生達はブリッジで勤務する事に、カガリはザフトに自分の存在を教えるために歌う事となった。