歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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約束

 

 

 

 ガイア迎撃のために出撃したインパルスとノルン。

 しかし、折悪く天候が崩れ、雨足が強まっていた。

 

「お姉ちゃん、この雨じゃ視界不良でウルズ達はあまり役に立てないよ」

 

「分かってるわ。

 メイリンは、周辺の索敵をお願い。

 他の機体が近付いて来ないか警戒して。

 シン、悪いけど私達は支援に回らせてもらうわよ!」

 

「了解、俺が前に出る!」

 

 インパルスを加速させてガイアと接敵。

 そのまま戦闘に入る。

 ガイアは地上での機動性が高い機体だ。

 小回りの効かないソードやブラストでは抜かれるかもしれない。

 後方には護衛対象の闇ラクスがいるだけではない。

 一般人がいる町があるのだ。

 ガイア達の部隊は、非人道的な作戦を何度も行なってきた。

 ここから先に進ませないために機動性の高いフォース・シルエットで出撃していたが、それでも地形適性の一致から特性を完全に発揮できるガイアを抑える事は難しい。

 しかも相手はインパルスとの戦闘よりも先に進む事を優先しているようだ。

 何とかガイアの侵攻を止めようと前に出て妨害を行うが、4足故の獣のような敏捷性で攻撃を躱されてしまう。

 

 後方からルナマリアが援護射撃を行なってくれているから何とか進路を変更させることが出来ているが気を抜けばすぐに突破されてしまうだろう。

 メイリンが索敵してくれているからガイアのみに集中する事が出来ている。

 ここまでサポートされてガイア一機に苦戦している。

 エースだと認めてくれた仲間達の信頼に応えられない自分に怒りすら感じていた。

 それでも苛立ちや焦りから集中を乱さないように心を鎮める。

 闇ラクスの護衛を抜きにしても、ガイアを通してしまえば多くの一般人が犠牲になってしまう。

 この力は守るために、理不尽に奪おうとする者達に向けると決めたのだから。

 

「くそ〜、絶対にここから先には行かせない!」

 

 シンはインパルスを更に加速させて飛び込んでいく。

 幾多の実戦の中で磨かれてきたその動きは、トップエースと言われる領域に足を踏み入れ始めていた。

 

 そんなシンの動きに思うように前に進めなくなったガイアのパイロットであるステラがイラついていた。

 

「白いの、邪魔をするな!」

 

 私はただ家族の下に行きたいだけなのに!

 インパルスを振り切り、目的地へ向かおうと立ち回る。

 しかし、インパルスを引き剥がす事が出来ない。

 何度も前に立ち塞がれて、進路を変えざるを得なくなる。

 このままでは埒が開かない。

 苛立ちのままにガイアを突っ込ませる。

 強引に道を切り開こうと言うのだ。

 

「強引に突破するつもりなのか?

 舐めるな!動きが雑になってるぞ!」

 

 インパルスとガイアが交錯し、インパルスのビームサーベルがガイアの装甲を削り取る。

 それでもガイアは止まらなかった。

 損傷した部分から火花を散らしながらも先へと進んでいく。

 

「ダメージを受けてもお構いなしかよ!

 何を考えてるんだ?あいつは」

 

 まるで帰還を考えてないかのようなガイアの行動に動揺するも、自分にも譲れないものがあると思い出し追撃をかける。

 

「しつこい!」

 

 ダメージを受けた事で、これ以上は逃げきれないと判断したのかインパルスに格闘戦を仕掛けてきた。

 だが、焦りと苛立ちで動きが雑になっている上に損傷までしてしまったガイアで心の動揺を抑えて冷静さを保っていたシンの操るインパルスに勝つ事は出来なかった。

 カウンターのビームサーベルで切り裂かれ、ビームライフルによる追撃を受けた事で更にダメージを負い、地上に墜落し、動きを止めた。

 

 ガイアはピクリとも動いていないが、擬態である可能性もある。

 油断して不用意に近付いたところを逆襲される可能性も否定できない。

 シンは警戒しながらゆっくりとガイアに近付く。

 近付いた事でインパルスのメインカメラがガイアの状態をより詳細に映し出した。

 ビームサーベルで切り裂かれた事でコックピットが露出していて、その奥にパイロットの姿が見えた。

 

 今まで散々民間人を巻き込むような作戦を行ってきた部隊の一人。

 いったいどんなパイロットが乗っていたのだろう?

 映像を更に拡大してみる。

 そこにはパイロットスーツすら着ていない少女が意識を失っているのかぐったりしている姿があった。

 そして、シンはその少女に見覚えがあった。

 ディオキアで出会ったステラと言う名の少女だった。

 

「そんな!どうしてあの子が・・・」

 

 思いもしなかった存在がガイアに乗っていた。

 その衝撃でシンは呆然としてしまった。

 

 

 撃墜され、意識を失ったステラは捕虜としてミネルバに運び込まれ、拘束された。

 捕虜を収容するための部屋へと連行されて行くステラにシンが声を掛ける。

 

「ステラ、俺だよ、シンだ!

 どうして君がガイアなんかに・・・」

 

 けれどステラはそんなシンを鋭く睨みつける。

 

「誰だ!お前は」

 

「えっ?!」

 

 どうやらステラはシンを覚えていないようだ。

 連行されていくステラの後ろ姿をなにも言えずに見送ることしか出来なかった。

 

 

 ガイアのパイロットがミネルバに拘束されたと聞いたリベリオンの上層部は喝采を上げた。

 ガイアが所属していた部隊『ピースメーカー隊』は、多くの非道な作戦を実行していた。

 そんな部隊のパイロットを捕虜にしたのだ。

 リベリオンのミネルバに対する信頼は更に高まっていた。

 

 リベリオンは、ガイアのパイロットを戦争犯罪者として裁判にかけるつもりだった。

 事実、ガイアのパイロットも民間人を巻き込む戦闘どころか民間人を狙った作戦すら行っていた。

 その罪を明らかにする事でこの戦いの正義はリベリオンにあると世界に示すつもりだったのだ。

 しかし、パイロットが子供と言っていい年頃の少女だと知って困惑する。

 

 シンやルナマリアと言った例もある。

 子供ながらに戦いの道を選ぶ事も、エースパイロットと言っていい程の実力を持つ事もあるだろう。

 だが、彼らがこれまで行ってきた非道な作戦の数々。

 子供が、まして年頃の少女が進んで行うだろうか?

 非理事国連合の何処かに対して恨みがあるのか?

 それとも、何か弱みを握られていて無理矢理戦わされているのか?

 理由によって扱いは変わってくる。

 そんな中でも、ステラは尋問に対して反抗的な態度を崩さない。

 このままでは、自ら非道な行いをしていたとして裁判で厳しい結果になると思われていた。

 

 そこで情勢は再び大きく変化する。

 ステラが体調を崩し、弱り始めたのだ。

 リベリオンは、捕虜生活のストレスによるものだと思いメディカルチェックを受けさせた。

 その結果は驚くべきものだった。

 常人ではあり得ない数値が検出されたのだ。

 すぐに精密検査が行われ、更に詳細なデータが取られる。

 その結果もやはり異常な数値を示し、彼女の身体に何らかの強化処置が施されている事が明らかになった。

 

 ステラは、身体を改造された強化人間だった。

 そして、なんらかの処置をしなければ生命維持にすら支障をきたすと推測される。

 

 その事実を知らされたシンは世界の残酷さに憤りを覚えた。

 なんでステラがこんな目に遭わなくちゃいけない!

 ディオキアで出会い、触れ合った彼女は、穏やかでちょっと抜けたところもあって、とても戦いに身を置くような人じゃなかった。

 

「先生、どうにか出来ないんですか?」

 

 救いを求めて医師に問いかける。

 

「無茶を言わないでくれ。

 彼女の身体は普通じゃない。

 どんな処置を施されたのかも分からないんだ。

 下手に手を出せば悪化する恐れもある」

 

 シンに問いかけられた医師も患者を救えない事に忸怩たる思いがあるのか悔しさを滲ませる。

 

「せめて詳細なデータがあれば治療の方針も立てられるのだが」

 

 ガイアにもそんなデータは無かった。

 それは、ステラを救う術が存在しない事を示していた。

 

「ちくしょう、俺はまた守れないのか!」

 

 どんなに憤っても、シンには戦う力しかなくて、ベッドの上で苦しみ、弱っていくステラの姿を見ていることしか出来なかった。

 守ると言う誓いを果たせない無力感に苛まれる。

 せめて気晴らしになればと思って、ステラも気に入っていた闇ラクスの歌を聴かせた。

 

「何、この歌?

 聴いていると胸の中がふわふわする。

 何か大切な事を忘れているような気がする」

 

「ステラ、何か思い出せそうなのか?」

 

「分からない、でも、この歌を聴いていると何かが胸の奥から浮かんでくるような気がする」

 

 ステラが闇ラクスの歌に特別な反応を示した。

 それはシンにとって唯一の希望のように感じられた。

 それから毎日、闇ラクスの歌を聴かせている。

 ステラも戦闘時の好戦的な性格が影を潜め、普段のおっとりとした性格が表に出るようになっていた。

 

 ああ、ディオキアで出会ったステラだ。

 これが本来の彼女の性格なのだと思えた。

 

 シンがステラに毎日闇ラクスの歌を聴かせている。

 そして、ステラもその歌に特別な反応を示している事は闇ラクスの耳にも届いていた。

 

 その日、闇ラクスがミネルバを訪れた。

 闇ラクスは、リベリオンでも最重要人物だ。

 いくら護衛とは言え、一戦艦に過ぎないミネルバに突然来るような立場ではないはずだ。

 そんな闇ラクスの突然の訪れにシンも驚いていた。

 闇ラクスに対して複雑な感情を持つシンは、いつか心の整理を付けなければと思っていたがこんなにすぐに向き合って話す事になるとは思わず動揺を隠せない。

 

「なんで、あんたがここに?!」

 

「ステラさんの身体のことは聞いています。

 毎日、私の歌を聴いてくれている事も。

 少しでも苦しみを和らげて、失ったものを取り戻す助けになれないかと思って。

 彼女の前で歌ってもいいですか?」

 

 シンの雑な言葉使いを咎めもせず、ステラの前で歌う許可が欲しいと言う。

 本来、1パイロットに過ぎないシンの意向など気にする必要のない立場の人物だ。

 それなのにシンとステラの間にある絆を尊重してくれている。

 こんな人だから、一人一人を大切にする歌を歌えるんだろうな。

 ステラのために歌いたい。

 そんな闇ラクスの気持ちを素直に信じられた。

 彼女に任せよう。

 俺なんかより、よっぽどステラの力になってくれる。

 そう思いながらも、闇ラクスに頼る事しか出来ない自分の情けなさからぶっきらぼうな態度になってしまう。

 

「俺が許可するような事じゃない。

 あんたは、遠慮する必要がある立場の人じゃないでしょう?

 それに、ステラも喜ぶと思う」

 

 そう言って、ステラの病室へと案内するために背を向ける。

 闇ラクスは、その背中に悲しげな視線を送っていた。






 シンがガイアのパイロットの正体を知りました。
 ステラも闇ラクスの歌を聴く事で穏やかな心を取り戻しています。
 そして、ついに闇ラクス本人とシンの接触。
 種死編のメインヒロインがようやく本格的に登場です。
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