歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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バトル・オブ・南京1

 

 

 

 リベリオン本隊が南京まで進出し、デストロイの攻撃で焼け出された住民達の保護にあたる。

 彼らが目の当たりにした南京の光景は酷いものだった。

 都市部の6割以上が破壊され、廃墟と瓦礫の山にされている。

 大量破壊兵器の使用は確認されていないのにも関わらず、僅かな時間でこれ程の破壊をもたらすとは、いったいどのような兵器が用いられたのか。

 調査の結果、現地の住民達の証言から巨大なモビルアーマーの情報が得られた。

 これは、偵察機の映像に映っていた朧げな影とも一致している。

 敵の新兵器は、巨大モビルアーマーである事がほぼ確定した。

 詳細な性能などは依然不明だが、短時間でこれ程の破壊をもたらす兵器は脅威以外の何物でもない。

 

 何としてもここで撃破しなければ。

 

 リベリオンと東アジア共和国との前線は長大だ。

 こんな兵器に神出鬼没の動きをされては被害ばかりが拡大するだろう。

 リベリオンを立ち上げた非理事国同盟は、中小国の集まりであるためリベリオンの一般兵の練度はさほど高いものではなかった。

 奇跡の歌声を持つ闇ラクスと敵部隊に対応できるオズマ隊がいる本隊にしか止められない。

 これは、闇ラクスを囮とした誘引作戦でもあったのだ。

 

 南京の郊外に難民キャンプを設営し、住民を都市部から避難させながら敵の襲来に備える。

 この戦いが、東アジアとの戦いにおける天王山になる。

 その場にいる全員がそう認識していた。

 

 

 ついにピースメーカー隊による南京への侵攻が再開された。

 デストロイを中心に、今度こそ全てを破壊するとでも言うかのように前回の襲来で破壊を免れた区画に向かっている。

 その動きを掴んだリベリオンが部隊を出撃させ、迎撃を行う。

 

 先行したヅダ部隊がこれ以上、都市部に近づけるものかと攻撃を仕掛けた。

 一般兵とは言え、本隊に配属されている彼らは、それなりの腕を持っていた。

 敵わぬまでも、オズマ隊が到着するまで少しでも敵の足を止めようとしたのだ。

 しかし、彼らの勇気は蛮勇になってしまう。

 

 デストロイから多数のビームが放たれ、群がってきたヅダ達を貫いて爆発させていく。

 戦闘が始まってすぐに10機近いヅダが落とされてしまった。

 

「予想はしていたが、なんという火力だ。

 やはり、奴らはオズマ隊に任せるしかないようだな」

 

 デストロイを前面に押し出しているが、敵はそれだけではない。

 リベリオンの本隊を叩くために東アジア共和国の正規軍も参戦している。

 前線では、すでにヅダとウィンダムが戦闘を開始していた。

 南京がビームの飛び交う戦場へと姿を変える。

 

「オズマ隊はまだか?」

 

「すでに向かっています」

 

「艦長、パラスアテナを前に出してください」

 

「闇ラクス様、危険です!」

 

「今更ですよ。

 相手がどれほど強くても、やるべき事は変わりません。

 危険は覚悟の上です」

 

 闇ラクスの歌声は、確かに敵の闘争心を奪い戦闘不能にする事が出来る。

 しかし、ローレライ・システムの出力の関係で効果範囲はそれほど広くない。

 だから闇ラクスは前線に出て、戦場の真ん中で歌ってきたのだ。

 敵が強いからと怯みはしない。

 

「あの巨大兵器を止めるために私は歌います。

 シンを・・・オズマ隊を信じましょう」

 

「闇ラクス様・・・分かりました。

 パラスアテナ、前進!」

 

「了解」

 

「ローレライ・システム起動

 サウンド・ウェーブ発射準備完了!」

 

 準備が終わり、パラスアテナの特設ステージに立つ闇ラクスにブリッジクルーの視線が集まる。

 

「私達のライブを始めましょう」

 

 一度息を吐き、闇ラクスが真剣な目で戦場を見据える。

 

「私の歌を聴きなさい!」

 

 そして、戦場に歌が流れ始める。

 

 その歌声は、前線で戦うリベリオンの兵士達に届き、その士気を引き上げていく。

 自分達には奇跡の歌姫がいるのだと。

 

 当然、デストロイへと向かうシン達の機体にも届いていた。

 

「ライブが始まったな。

 シン、ステラが乗っていると思われる巨大兵器はお前に任せる。

 俺達はカオスとアビス、敵の隊長機を抑えるぞ」

 

「「「了解!」」」

 

 オズマの指示を受け、シン、ルナマリア、ショーンが機体の速度を上げる。

 

 

 ステラが乗るデストロイは、順調に前進していた。

 ヅダを落とし、周辺の建物に破壊を撒き散らしながら進んでいく。

 目の前の都市部を破壊し尽くせば、その先にあるのは難民キャンプだ。

 このまま侵攻を許せば、再び多くの生命が奪われてしまうだろう。

 

 そんな事は許さないとビームが飛来する。

 デストロイの陽電子リフレクターに弾かれたが、自分に攻撃を当てた存在にステラは警戒を向ける。

 攻撃が来た先にはインパルスが飛んでいた。

 シン達が戦場に到着したのだ。

 

「あれは、ラースの邪魔する白い奴!」

 

 デストロイから反撃のビームが放たれる。

 無数のビームがインパルスに迫るが、フォース・シルエットの機動性とシンの操縦技術によって躱していく。

 

「ステラ!もう止めるんだ!」

 

「ちょこまかと鬱陶しい!」

 

 シンが必死に呼びかけるが、記憶を調整されたステラは止まらない。

 全方位に攻撃できるモビルアーマー形態から前方に攻撃を集中させる事が出来るモビルスーツ形態に変形したのだ。

 一機を相手にするなら、火力を集中できるモビルスーツのほうが向いている。

 

「モビルスーツに変形した!?」

 

 変形したデストロイから更に濃密なビームの雨が降りそそぐ。

 

「くそっ、負けてたまるかーーー!」

 

 シンが必死の操縦で回避に成功したが、これでは近づく事も容易ではない。

 遠距離からのビームはリフレクターによって弾かれてしまう。

 仲間の助けが欲しいところだが彼らも苦しい戦いで手が離せない。

 オズマ達とラース達が3対3で鎬を削っているからだ。

 その戦いにおいて最も活躍しているのはメイリンが操る無人戦闘機達だった。

 ウルズが、ベルザンディーが、スクルドが縦横無尽に空を駆けて相手を翻弄していく。

 カオスの機動兵装ポッドは、大気圏内で飛行するための装備でもあるため、他の機体と連携するためにそうそう使えない。

 その差がノルンのアドバンテージになっていた。

 腕が立つとは言え、量産機が含まれているオズマ隊が互角に戦えているのはメイリンの力によるものだった。

 

「あれは、モビルスーツにもなれたのか!」

 

 同じ戦域で戦っているのだから、デストロイの動向も見えている。

 シンがその脅威的な火力に襲われているのに、目の前の3機を抑えることで精一杯で援護に向かえないことに忸怩たる思いを抱えていた。

 

 そんな時に、彼らを勇気付けるかのように歌声が流れてきた。

 前線にパラスアテナが進出して、歌がこの戦域にも届くようになったのだ。

 耐えていれば勝てる。

 オズマ達ですら、それ程に信頼をしていた。

 

 

「闇ラクスの歌か・・・」

 

 その歌がやっかいなのは、ラースも否定は出来ない。

 それでも、これは想定内の事態。

 闇ラクスは、歌を届けるためにすぐ近くにいるのだ。

 

「確かにやっかいだが弱点が無いわけでもない。

 効き始めるまで時間がかかるのもその一つ」

 

 ステラにパラスアテナを狙うよう命令を出す。

 

「デストロイを相手にたった1機でどこまで耐えられるかな?」

 

 当然、他の機体に救援など行かせない。

 戦いは、更に激しさを増していく。

 

 

 デストロイの動きが変わった?!

 

 明らかに後方にいるパラスアテナを、闇ラクスを狙い始めた。

 

 そんな事、させるか!

 

 シンが決死の思いでデストロイに向かっていく。

 だが、デストロイの火力は凄まじく、何度も離脱を余儀なくされる。

 インパルス1機では、デストロイの足を完全には止めることが出来なかった。

 少しずつパラスアテナへと近づいている。

 射程に捉えられれば、パラスアテナは確実に破壊されてしまうだろう。

 それは、闇ラクスの死を意味する。

 

 闇ラクスは、シンが守ると誓った女性だ。

 その彼女が同じく守ると約束したステラに殺される。

 そんな結末は認めない!

 

「させるかーーーー!」

 

 これまで以上にインパルスを踏み込ませる。

 迎撃のビームに晒されるが躱しながら飛び込んでいく。

 ビームの熱が装甲の表面を焼いている。

 それ程にギリギリの回避だった。

 

 神業じみた操縦でデストロイの懐に飛び込むことに成功し、ビームサーベルで胸部装甲を削り取る。

 切り裂かれた装甲の奥、コックピットに座るステラの姿が見えた。

 やはり、パイロットはステラだった。

 シンの中にラースへの怒りが湧き上がる。

 

 あの野郎、やっぱり口先だけだったか!

 

 その怒りで、ほんの僅かに集中が乱れていたのか。

 次の瞬間、機体に衝撃が走る。

 インパルスの右腕が撃ち抜かれていた。

 

「なに!どこから?」

 

 デストロイの手が空中を飛んでいた。

 よく見れば、その指先が砲門になっている。

 デストロイのハンドパーツは、自律攻撃兵器だった。

 インパルスがビームを掻い潜っている時に射出されていた。

 インパルスの動きが速すぎて、迎撃が間に合わずに懐に入られてしまった。

 それが、怒りによって僅かに動きが鈍った離脱中のインパルスを捉えたのだ。

 

 追撃のビームが放たれる。

 何とか機体を捻らせ、直撃は避けるが残った左腕も破壊されてしまった。

 これでインパルスは攻撃手段を失った。

 

 そんなシンの前でデストロイが砲撃態勢をとる。

 照準はパラスアテナに向けられている。

 ついに射程に捉えられてしまったのだ。

 

「ステラ、やめろーーーー!」

 

 インパルスに止める手立てはない。

 このまま無慈悲に闇ラクスが殺されてしまうのを見ている事しか出来ない。

 また、俺は守れないのか!

 そんな絶望がシンを襲う。

 

 砲門から光が漏れ、発射寸前になった時。

 別の方角から強力なビームがデストロイを襲う。

 リフレクターによって弾かれはしたものの、その威力から僅かに態勢を崩されていた。

 そこに続く、多数のミサイル。

 ステラは、やむを得ずパラスアテナへの砲撃を止めて、その場を離脱する。

 

「ミネルバ!?」

 

 パラスアテナの窮地を救ったのはミネルバだった。

 

「シン、シルエットを射出する!

 急いで換装するんだ」

 

「ありがとう、助かった」

 

 シンのインパルスは、分離して損傷したパーツを捨て、新たなパーツに換装した事で再び戦闘力を取り戻した。

 

「よし、これでまた戦える」

 

「シン、パラスアテナの守りは俺達に任せろ」

 

「艦長!?」

 

「心配しなくても、給料分の仕事はするさ。

 オズマ隊の任務は、闇ラクスの護衛だからな」

 

 艦長アーサーの宣言通り、ミネルバがパラスアテナを守るように展開する。

 2隻の同型艦が同じ戦場で並んで戦っている。

 まるで前大戦時のアークエンジェルとドミニオンのようだ。

 ファクトリーが伝説にまでなった不沈艦アークエンジェルに対抗すべく開発した女神級とも呼ばれるパラスアテナ級。

 そのネームシップ、パラスアテナはリベリオンの旗艦となった。

 2番艦であるミネルバは、ファングが購入し、オズマ隊で運用されていた。

 別々の道を歩んでいた2隻が、ここで再び交わったのだ。

 

「了解、任せました!」

 

 頼りになる仲間に後ろを任せて、デストロイに向き直る。

 ステラを助けろとみんなが背中を押してくれる。

 なら、それに応えないと。

 

「俺は、ミネルバのエースだからな」

 

 ステラを救う戦いの第2ラウンドが始まった。







この世界のミネルバは、ネームシップではありません。
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