歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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歌姫は戦場で歌う

 

 

 ザフトのナスカ級に頭を抑えられ、後方からはローラシア級が迫っている。

 会敵まで後わずか、アークエンジェルは急ピッチで戦闘準備を行なっている。

 

「フラガ大尉が発進後、そのまま慣性飛行に移行、前方のナスカ級に奇襲を掛ける。モビルスーツ隊は、それまでアークエンジェルの護衛を」

 

「ストライクには機動力のあるエールを装備しろ!ヤマト、敵の撃墜は考えるな、とにかく動き回って敵を引きつけてくれれば良い」

 

「ソキウス少尉は、アークエンジェルと連携して敵モビルスーツの撹乱を」

 

「「「了解!」」」

 

 最初にフラガ機が発進する。

 そのまま慣性飛行に移行するため速度は出ない。

 エンジンを吹かせば見つかってしまうため、敵艦を射程に捕らえるまではこのまま進むしかない。

 もどかしく思うが仲間を信じて、はやる心を抑える。

 

 そしてアークエンジェルがエンジンを吹かす。

 これでザフトに存在を知られる事になる。

 2隻のザフト艦は、すぐに距離を詰めてきた。

 同時に4機のモビルスーツも出撃する。

 それは全てG兵器だった。

 

「予想はしていたけど、もう4機のG全てを投入してくるなんて」

 

「艦長、向こうに民間人を保護する意志は無さそうです」

 

「そうね、予定通りモビルスーツ隊を発進させて。

 カガリさん、お願いするわ」

 

 モビルスーツを出撃させた後、通信士となったミリアリアがマイクをカガリに渡す。

 

「ザフトよ、私の歌を聴けーーーー!」

 

 

 ヴェサリウス・ブリッジ

 

「敵艦からモビルスーツ2機の発進を確認」

 

「モビルアーマーは出ているか?」

 

「いいえ、出撃は確認出来ません」

 

「まだ出られんと言うことか」

 

 クルーゼは、ムウのゼロが出てこないことに違和感を覚えるが、ガンバレルを全て破壊するなどかなりの痛手を与えていたことを思い出し、そう結論する。

 

「ザフトよ、私の歌を聴けーーーー!」

 

 そんな叫びと共に歌が流れ始める。

 

「どうした!なんだこの歌は?」

 

「わかりません、足付きから全周波数で流されています」

 

「戦場で歌だと、何を考えている!」

 

 クルーゼは、その歌がカガリ・ユラのものだと即座に理解した。

 そう言えばヘリオポリスでライブをしていたと思い出し、自分の計画の最大の障害となっている少女に退場してもらおうと考えた。

 ここで彼女が死ねば、新たな憎しみが生まれる。

 

「我々を撹乱してアルテミスに逃げ込もうと言うのだろう。

 モビルスーツ隊に攻撃を続行するよう指示を出せ!」

 

「了解」

 

 歌で一瞬戦いが止まったものの、再び攻勢をかけてくるザフトにキラは怒りを感じていた。

 

「どうして、民間人が、カガリがいるのに!」

 

 前方から接近してくるイージスを抑えるため、ストライクで駆ける。

 イージスからビームが放たれるが、殺すつもりは無いのか照準が甘い。

 アークエンジェルの民間人は無視するくせに、僕の命は取りたくないと言うアスランの行動に苛立ちを感じるが、時間を稼ぐ事が任務の今は好都合だと思い直す。

 

「逃げ回っていれば、死にはしない!」

 

 ストライクを加速させビームを躱しながら、キラも牽制程度にビームを撃ち返していく。

 

 イレブンは、さらに過酷な戦場にいた。

 3機のG、デュエル、バスター、ブリッツを相手にジンで時間を稼がなければいけないのだ。

 アークエンジェルと連携を取りながら3機のGを撹乱していく。

 イレブンのジンはブースターを強化し、機動性を高める改造が施されている。

 苦戦する味方の所に一刻も早く赴くためである。

 その特性を活かし、デュエルに接近し近接戦闘に持ち込む事でバスターの射線からデュエルを盾にするように立ち回る。

 デュエル、バスターのパイロットもイレブンの狙いを理解し、挟み込むように動くが、イレブンの操縦技術によって翻弄される。

 如何に赤服を許されたエリートであっても、経験の少なさからくる駆け引きの拙さがイレブンを救っていた。

 実際、パイロットのイザークとディアッカは頭に血がのぼっていた。

 

「戦場で歌だと、ふざけているのか裏切り者め!」

 

「俺たち、馬鹿にされてんのかねぇ」

 

 裏切り者のコーディネーターを落とす事に躍起になっているのだ。

 ジンにはフェイズシフト装甲に対して有効打になる武装がないため、アークエンジェルを先に狙われると難しい対処を迫られていただろう。

 キラの説得しか頭にないアスラン、ジンを落とす事に夢中のイザークとディアッカ、この戦場で唯一冷静なのがブリッツのパイロット、ニコルだった。

 アークエンジェルを落とせば勝ちだと理解しているニコルは、ブリッツの機能、ミラージュコロイドを展開しステルス状態で接近を試みる。

 当然、ブリッツの機能はアークエンジェル側も理解している。

 レーダーからブリッツが消えた事でミラージュコロイドの展開を察知、航跡から予測される未来位置に拡散型多弾頭ミサイルを撃ち込む。

 ミラージュコロイドの弱点はフェイズシフト装甲と併用できない事。

 そのままミサイルを受ければ撃墜される為、やむ得ずミラージュコロイドを解除して防御する。

 実弾のミサイルに対してフェイズシフト装甲は高い防御力を発揮するが、それを展開するエネルギーは無限では無い。

 多弾頭ミサイルによって、ブリッツのエネルギーはかなり削られていた。

 不用意に近づいて、もう一発もらえばフェイズシフトダウンも考えなければいけない。

 アークエンジェルを1機で落とすのは難しいと理解したが、他の3人はモビルスーツを追いかけるのに夢中で、援護してくれる気は無いようだ。

 フリーダムな仲間パイロット達に、ニコルは少し泣きそうになった。

 

 その様子を見てヴェサリウスの艦長アデスは、苛立っていた。

 

「何をやっているのだ、アスラン達は」

 

「どうやらモビルスーツであの艦を落とすのは難しいようだ。

 ヴェサリウスを前に出し砲撃戦を仕掛ける。

 足付きからの援護が無くなれば、アスラン達も直にモビルスーツを落とせるだろう」

 

「はっ!」

 

 さらにヴェサリウスを接近させる。

 そうする事でついにフラガ機の射程に捕らえられた。

 クルーゼは攻撃しようとするムウの気配を感じ取り、即座に回避の指示を出す。

 

「艦首下げ、ピッチ角60!」

 

 反応が遅い操舵手に、それでもコーディネーターかと苛立ち、さらに強く指示する。

 

「何をしている、早くしろ!」

 

「は、はい!」

 

 クルーゼに怒鳴られた事で操艦を始める。

 

「艦下方より接近する熱源、敵機です!」

 

 クルーゼ以外のクルー達も状況を理解し、懸命に回避動作を行う。

 

「ちっ、気付かれたか!それでも、うおぉぉぉぉお!」

 

 ムウがゼロを操作し、ヴェサリウスを照準に捉え続けようとする。

 ガンバレルを展開し、すれ違い様に砲撃を仕掛けた。

 攻撃はヴェサリウスを捕らえたが、回避動作を行なっていたため傷は浅いようだった。

 

「浅かったか、だが離脱しないとこっちがやられるな」

 

 アークエンジェルに報告を入れる。

 

「フラガ機から入電、奇襲するも損傷は不十分!」

 

「致命傷には至らなかったか」

 

「それでも敵に損傷は与えているわ!

 アークエンジェルが前に出て砲戦を仕掛け、そのまま突破します!」

 

「フラガ機は、戻ってモビルスーツ隊の援護を!」

 

 奇襲は不完全に終わり、前方のナスカ級を突破する事は難しいかもしれない。

 ナスカ級を相手に撃ち合い、撤退させる。

 時間を掛ければ、後ろのローラシア級が加わるだろう。

 分の悪い賭けなのは理解していた。

 それでも諦めるわけにはいかない。

 

 その時、ヴェサリウスの後方からビームが襲って来た。

 

「何事だ!」

 

「後方のアルテミス、傘を閉じて砲撃してきました!」

 

「ミサイルも来ます!」

 

 傘の中で閉じこもっていると無警戒だったアルテミスからのまさかの攻撃にヴェサリウスのブリッジが動揺する。

 足付きを挟み撃ちにするつもりが、自分達がされているのだ。

 前後から同時に攻撃を受けている危機的状況に離脱せざるを得ない。

 クルーゼは、カガリを抹殺する事を諦め撤退を指示する。

 

「撤退だと、そんな事が認められるか!」

 

「ですが、アルテミスがヴェサリウスに攻撃してるんです。

 要塞の火力を背にしたまま戦闘なんて出来ませんよ」

 

「イザーク、撤退命令が出ている。

 悔しいが今度は俺たちがヴェサリウスを守る側だ」

 

「くそっ、ヴェサリウスの撤退を援護する!」

 

 頭に血が昇っていたイザークも赤服のエリート、状況を理解しアークエンジェルを牽制しながら離脱していく。

 さすがにアークエンジェルも後ろにローラシア級がいる以上、無理にヴェサリウスを追撃する事はなかった。

 アークエンジェルが入港した後、アルテミスは再び傘を展開。

 クルーゼ隊もこれ以上の戦闘は不可能と判断した。

 また、プラント本国からクルーゼにヘリオポリス崩壊に関する査問会に出頭するよう命令が来たため、ガモフをアルテミスの監視に残し、クルーゼはアスランを伴いヴェサリウスでプラントへ向かった。

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