歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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エクステンデッドの意思

 

 

 

 宇宙にモビルスーツが光跡を描く。

 シンがキラと、ルナマリア達がムウと切り結んでいる宙域でステラ達、エクステンデッドも2機のサンダーボルト相手に鍔迫り合いを演じていた。

 

「ちっ、手強い。

 ステラ、右から回り込め!

 アウルは左からだ!」

 

「うん!」

 

「了解!」

 

「互いに援護できる距離を保つんだ。

 いいな?」

 

「分かってるよ。

 こいつら相手に孤立したら持たない」

 

 彼らが相手にしているのは、イレブンとフレイのエレメントだった。

 彼らの機体『サンダーボルト』は、エース用の高級量産機だ。

 さらにパイロットの適性に合わせた専用パックを装備することで専用機化している。

 その性能は、ワンオフの機体にも劣るものではなかった。

 パイロットも連合のトップエースと名高い二人だ。

 ステラ達が苦戦するのも無理はない。

 

 ガイアは地上で、アビスは海中であってこそ真価を発揮する機体。

 地形適性から最も性能を発揮できるカオスを中心に連携しながら戦うことで均衡を生み出していた。

 身体を改造されたことで常人を遥かに超えた性能を持つエクステンデッドでありながら3対2で互角である現状に忸怩たる思いもある。

 それ以上にこの戦場で戦う選択をして良かったと思っていた。

 自分達がいない状態でこんな相手と戦うことになっていたら闇ラクスを守り切れなかっただろう。

 

 彼らは、自らの意思でリベリオンへの参加を決めていた。

 生命を維持するための『ゆりかご』は、母艦ジョン・ドゥの投降によって確保された。

 戦場で行ってきた戦争犯罪も、彼らを道具として使っていたロゴスの罪が公にされたことで追及の声も小さくなっている。

 それでも彼らは戦場に戻ることを選択した。

 過去の罪を償うためか?

 それもある。

 だが、それ以上に闇ラクスを守りたいと思ったからだ。

 闇ラクスの歌のお陰でゆりかごで眠っても記憶を失うことなく継続させられる。

 記憶を継続できるからこそ失う恐怖を自覚できたのだ。

 彼らにとって闇ラクスは救いであり、その恐怖を優しく包み込んでくれる母のような存在でもあった。

 

 

 出撃前

 

「ステラ、本当に戦うのか?

 戦わせるために助けたんじゃないのに」

 

 シンは、ステラが戦うことに反対だった。

 生命の維持に必要なゆりかごは確保した。

 闇ラクスの歌があれば記憶の継続もできる。

 なら、暖かくて優しい場所にいて欲しい。

 そう望んでいた。

 

「分かってる、シン

 でも、自分で選んだの。

 闇ラクスを守りたい。

 シンも同じでしょ?」

 

 ステラがまっすぐにシンの目を見つめる。

 そこに迷いはなかった。

 命令を聞くように調整され、生命維持のために反抗も許されなかった時とは違う。

 ようやく持てた自分の意思を否定しないで欲しい。

 自分の想いを否定しないで欲しいと願い、闇ラクスの歌に救われたシンだから、そんな思いが分かってしまう。

 結局、それ以上は何も言えなかった。

 

「分かった。

 もう言わない。

 俺がステラも守れるくらい強くなればいいんだ」

 

「私もシンを守るよ。

 闇ラクスだけじゃない。

 シンのことも大切だから」

 

「そ、そっか!

 俺もステラが大切だぞ」

 

「うん、ありがとう。

 じゃあ、行くね」

 

 そう言って、ステラはガイアへと向かった。

 

「俺も行くか」

 

 ステラを見送った後、シンもインパルスへと向かう。

 戦場で守りたいものが増えた。

 ステラの実力は良く知っている。

 ガイアの性能も相まってそう簡単には死にはしないと信じているが戦場の残酷さも知っているのだ。

 誰にも負けない!

 そんな思いを強くしていた。

 

 

 スティングとアウルが遠くから二人の様子を見守っていた。

 

「ステラには帰る場所が出来たみたいだな」

 

「・・・そうだね」

 

「不満か?」

 

「あのシンって奴は認めてるよ。

 ステラのためにあれだけ身体を張ったんだ。

 ただ、まとわりついてきて鬱陶しいと思ってた奴でも離れると寂しいものなんだなって」

 

「やれやれ、ステラが兄離れしたのに妹離れ出来ない奴がいたとは」

 

「そんなんじゃない!」

 

「アウル、分かっているな?」

 

 アウルをからかい、笑みを浮かべていたスティングが表情を引き締めて真剣な声を出す。

 

「分かってるよ、スティング」

 

 アウルもその意図を察して、真剣に応える。

 

「ステラは必ず無事に帰す」

 

「いざという時は僕達が盾になる、だろ?」

 

 スティング達は、エクステンデッドとして未来への希望など持てないまま生きてきた。

 そんな中でステラが帰りたいと思う居場所を得たのだ。

 それは、彼らにとって救いだった。

 大切な妹がようやく得た温かく、優しい場所。

 それを守るためなら自分の命を使うことに躊躇いなどない。

 

 そんな決意を固める二人に声が掛かる。

 

「何バカなこと言ってるのよ!

 ステラちゃんにとって、あんた達も大切な存在でしょ!

 簡単に生命を諦めないで!」

 

 ルナマリアが二人に食ってかかっていた。

 彼女も彼らの境遇や扱いを聞いていた。

 自分達の将来のためにザフトに志願し、身体を改造された末に戦死した父。

 ステラのために自分達を犠牲にしようとする姿が父と重なって見えたのだ。

 

「誤解させてすまない。

 俺達だって死ぬつもりはない。

 お前達に救ってもらった生命なんだ。

 大切にするさ」

 

「なら、いいけど。

 いざって時は仲間を頼りなさいよ!」

 

「仲間か?あれだけやり合って来たのに」

 

「ステラちゃんは嫌いじゃないし、あんた達にも事情があったことを知っちゃったからね」

 

「お前、良い奴だな」

 

「そ、そんなんじゃないわよ!

 一緒に戦うんだから、わだかまりは無しにしようってだけだからね!」

 

 そう言って妹のメイリンと自分達の機体へと向かう。

 そんな後ろ姿を見ながらスティング達は、

 

「いい奴らだな」

 

「そうだね、ステラが大切に思うのも分かるよ」

 

「失いたくないってのはガラじゃないが」

 

「この温かい場所にステラを帰すために生命を使うのも悪くないって思える」

 

「だが、俺達だって死にたいわけじゃない。

 ああ言われたんだ、最後まで足掻くぞ!」

 

「そうだね。

 こんな前向きな気持ちになれるなんて、ちょっと前までは思いもしなかった」

 

 生き残るために最善は尽くす。

 それでも最後は、自分達よりステラの命を選ぶんだろうな。

 そう思いながらそれぞれの機体へと向かった。

 

 

 

 ノルンへと向かったルナマリア達

 

「お姉ちゃんは、シンとステラちゃんが仲良くしてても気にならないの?

 闇ラクスが相手だとあんなに不機嫌になってたのに」

 

「・・・ステラちゃんは、ライバルにはならないから。

 あの娘は、闇ラクスを母親みたいに思ってる。

 シンに向ける視線も父親とか兄へ向けるものだもの。

 シンも彼女のことを妹みたいな存在だと思ってる」

 

「そうなんだ。

 なんで分かるの?」

 

「分かるわよ。

 私も姉だもの。

 私がメイリンに向けるのと同じ目をしてるから」

 

「さすが、お姉ちゃん!

 あっ、それだと、やっぱり闇ラクスは恋敵(ライバル)なんだね」

 

「そうね、あんなに急激に距離が縮まるとは思わなかったわ。

 彼女は戦前からのプラント市民だから、そういう対象にはならないと思ってたのに」

 

「お姉ちゃんがグズグズしてたからじゃない。

 どうして、今も積極的にアピールしないの?

 このままじゃ、闇ラクスに取られちゃうよ!」

 

「私とシンは、同じ目的《復讐》で戦ってる。

 でも、シンと違って私達には明確な復讐相手がいる。

 お父さんを改造して道具にしたクリス・ライトマン。

 あいつを見つけて地獄に送るまでは、そういう相手を作らないって決めてたの」

 

「でも、それじゃあ闇ラクスに!」

 

「いいの!

 シンと違って、私はまだ前を向けてない。

 仇を討って、区切りを付けなきゃシンときちんと向き合えないから」

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「さあ、おしゃべりはここまで。

 行くわよ!」

 

 紅の姉妹も戦場へと出撃していく。

 

 

 

 戦場で若きエース達が死闘を繰り広げている中で、オズマとショーンも自らの役割を果たそうとしていた。

 

「ショーン、俺たちは後方の支援機を牽制する!」

 

「それでは、俺達が接敵するまで相手の支援を許すことになりますよ!

 俺達も前線に加わるか支援射撃をした方がいいんじゃないてすか?」

 

「あいつらの戦いを見ろ。

 俺達の技量であのレベルの戦いに割って入っても邪魔になるだけだ」

 

 エース同士の決闘になぜ横槍が入らないのか?

 それは、高レベルで拮抗している戦いに、その水準に届いていない者が介入すれば、下手をすれば味方を落としてしまうからだ。

 故に軍の部隊は突出した個よりも連携出来る均質な集団を求める傾向がある。

 逆に言えば、エースであっても周りの仲間も全てエースなら普通に連携する。

 そうした方が強いからだ。

 

 今、この戦場はエース部隊同士の戦いになっている。

 一見、個々に戦っているように見えるが好き勝手に戦っているのではない。

 それぞれが自分のすべき事を理解して相手の連携を断つように動いている結果なのだ。

 

 オズマは優秀なパイロットだ。

 ショーンも成長している。

 それでも、彼らはこの戦闘の中に入れるほどのレベルには到達していなかった。

 

「でも、支援射撃くらいなら!」

 

「あれだけの速度で敵味方が入り乱れる乱戦だ。

 下手をすれば味方に当たる。

 あれほど的確に支援が出来る、あのパイロットの腕も普通じゃないんだ!

 だが、相手は支援砲撃型で機動性は低いはず。

 近づけば、俺達でもなんとかなる」

 

「支援機ですらエースクラスってことですか!

 なんか、部隊の質がおかしくないですか?」

 

「泣き言を言うな!

 シンやルナマリア達に加えてステラ達3人も加わった俺達の部隊も他から見ればあり得ない編成なんだ」

 

「そのあり得ない編成でようやく互角にやり合えるって!」

 

「それが統合軍の最強戦力と言われるアークエンジェルだ。

 俺達も出来ることをしに行くぞ。

 このまま、奴に支援をさせ続ければこちらが押し込まれる」

 

「了解です!」

 

 オズマ達がトールのモンスターに向かう。

 確かにモンスターは機動性の低い機体だ。

 だが、その火力は絶大でトールの的確な操縦による位置取と相まって距離を詰めるのも容易ではなかった。

 それでも、オズマ達は追い縋る。

 仲間達の戦場に敵の支援を届かせないために。

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