歌姫カガリのマクロス風SEED世界   作:ソロモンは燃えている

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まだ見ぬ明日へ

 

 

 

 月の統合軍本部では、迫り来るトゥルーザフトを迎え撃つ準備が進められていた。

 偵察部隊が犠牲を払いながら得た情報から、やはり前大戦で猛威を振るった無人機『ゴースト』の存在が確認されている。

 アークエンジェルの報告と合わせれば、クリス・ライトマンが戦後、火星で力を蓄えていたことは明白だった。

 同時に統合軍本部は、ライトマンが合流したトゥルーザフトをそこまで脅威ではないと認識していた。

 トゥルーザフトの中核は強硬派、つまりザフトの一部でしかない。

 宇宙海賊化したジャンク屋を取り込んではいるが、それでも正面から統合軍と戦える規模ではなかった。

 故に今までは、宇宙各地に散らばりゲリラ戦を展開していたのだ。

 ライトマンの無人機で足りない数を補えると考えたからこそ戦力を集中させて月本部に向かう決断を下したのだろう。

 だが、彼らが頼りとする無人機も中枢となる巨大モビルアーマーを撃破すれば停止すると言う弱点こそなくなったようだが代わりに発揮できる性能は大幅に弱体化しているという報告を受けていた。

 統合軍のモビルスーツも次世代の物に更新され、その性能差は確実に縮まっている。

 前大戦ほど苦戦することはないと判断していた。

 

 そんな中、アークエンジェルも迎撃艦隊に組み込まれることが決定。

 そこでカガリ達の処遇をどうするかが問題となる。

 リベリオンとの戦いでは、闇ラクスのコード・ローレライに対抗するためという理由があったために例外として認められたが、民間人である彼女達を乗せたまま戦場に行くわけにはいかないからだ。

 火星でもカガリ達が狙われていたことから、安全のために月本部に滞在してもらうべく、アークエンジェルから降りて居住区画に向かっていた。

 

「ごめんなさいね、カガリさん、ラクスさん。

 こちらの都合で振り回してしまって」

 

「いや、気にしないでくれ。

 マリュー艦長には世話になっているからな」

 

「そうですよ。

 私達は、月でゆっくり待っているだけですから。

 戦場に出られるマリューさん達と比べれば大したことありません」

 

「本当は、一度オーブやプラントに帰らせてあげたかったんだけど・・・」

 

「私達の命が狙われていることは承知している。

 下手に動けば、そこを狙われるかもしれない」

 

「この状況で私達のために戦力を割いて欲しいとは言えませんから」

 

 本当に、この娘達は聞き分けが良すぎるわ。

 彼女達くらいの歳の時、私はどうしていたかしら?

 闇ラクスも彼女達に認められるくらいの何かを背負って歌っていた。

 若い子達ばかりが先に行ってしまう。

 大人として情けないばかりね。

 せめて、トゥルーザフトとの戦いくらいは私達で何とかしなければいけないわ。

 

 カガリ達の案内をしていたマリューがそんな事を考えていた時、赤い光の点がマリューの身体を捉えていた。

 反射的にホルスターから銃を抜き、身体を投げ出しながら殺気を向けられた先に撃ち返す。

 二つの銃声はほぼ同じタイミングで響いた。

 マリューを狙っていた銃弾は標的を捉えることなく壁に穴を穿つ。

 逆にマリューが放った弾丸は、通気口の奥にいた襲撃者を貫いていた。

 通気口の蓋が外れ、ザフトのノーマルスーツを着た男の死体が見えた。

 

「マリュー艦長!

 大丈夫か?」

 

「ええ、大丈夫よ。

 それより、これは・・・コーディネーターの特殊部隊?

 トゥルーザフトのようね」

 

「月本部に侵入してくるなんて。

 私達を狙ってきたのでしょうか?」

 

「真っ先に私を狙ってきた以上、貴女達の命が目的ではないと思うけど」

 

 そこで、基地にアラートが鳴り響く。

 

「これは!?」

 

「どうやら、さっきの襲撃が失敗したから強襲に切り替えたみたいね。

 アークエンジェルに戻るわよ!」

 

「えっ、でも」

 

「連中の狙いは貴女達を生きたまま攫うことよ!

 奴らに捕まったらどんな目に合うか分からないわ!」

 

 マリューに連れられてカガリ達はアークエンジェルに戻った。

 結局、侵入してきた特殊部隊は基地の守備隊と激しい銃撃戦の末に全滅した。

 ミラージュコロイドを用いて付近に隠れていた艦も発見されて撤退していった。

 

 

 アークエンジェル

 

「いやー、凄いですね、艦長

 コーディネーターの特殊部隊を返り討ちにするなんて」

 

 事の次第を聞いたアズラエルがマリューの能力を褒め称える。

 

「白兵戦は得意なので」

 

 相手はコーディネーターの特殊部隊ですよ。

 得意なんてレベルじゃないでしょうに。

 

「やっぱりアークエンジェルは面白いですね。

 それにしてもお手柄ですよ。

 カガリさん達の誘拐を阻止してくれたのですから。

 おかげで奴らの狙いがはっきりしました」

 

「理事!奴らの狙いとは!?」

 

「火星ではカガリさん達を殺そうとしたのに今回は生かしたまま連れて行こうとした。

 何か奴らにとって利用価値が出てきたってことです」

 

「まさか、コード・ローレライ?」

 

「ええ、僕たちは勘違いしていたのかもしれません。

 歌い手は闇ラクスじゃなくてもいい。

 ライトマンは、アスラン君に洗脳を施していた科学者です」

 

「では、カガリさん達を洗脳して利用するのが目的」

 

「ローレライ・システムの力ならライトマンのネオ・デスティニープランを阻止するのは難しくありません。

 ですが、逆にプランを成功させる鍵にもなり得る」

 

「洗脳して、人々の自由意志を奪うために歌わせる、ですか?」

 

「その可能性が高いですね。

 そして、ライトマンがネームレスと繋がっていることも示しています」

 

「再度の侵入もないとは言い切れません。

 これでは月本部に残しておく方が危険ですよ」

 

「私達が直接守れる分、アークエンジェルに居てもらった方が安全だわ」

 

 アークエンジェルは、カガリとラクスを乗せたまま、トゥルーザフトとの決戦に向かうことになった。

 

 

 

 

 リベリオン・サイド

 

 正義を掲げ、ロゴスの罪を追求しているリベリオンは、ライトマンとトゥルーザフトの月本部侵攻を座視することが出来なかった。

 トゥルーザフトは、人類の敵と見做されていた。

 前大戦でコーディネーター至上主義を拗らせて暴走した者達が反省もせずに更なる混沌をもたらそうとしているのだ。

 今だにプラントのコーディネーターが存続しているのは、元地上軍を中心とした懲罰部隊が統合軍としてトゥルーザフトと必死に戦っているからだった。

 自分達は奴らとは違うと示すために。

 

 そんな状況で漁夫の利を狙うような真似をすれば、リベリオンの信用は失墜してしまうだろう。

 何より、ライトマンのネオ・デスティニープランとやらはリベリオンにとっても到底受け入れられるようなものではなかった。

 リベリオンもまた、ネオ・デスティニープラン阻止に動いていた。

 

 

 ミネルバ

 

 ルナマリアは、格納庫で自らの愛機ノルンを見上げていた。

 考えるのは先日、全世界に向けて声明を発表した男のことだ。

 

「ようやく見つけたわ、ライトマン」

 

 その男こそ、彼女が探し続けてきた父親の仇だった。

 

「今回だけはシンにも譲らない。

 私の手で必ず!」

 

 そう覚悟を決めているルナマリアに近づき、声をかける人影が一つ。

 

「違うよ、お姉ちゃん。

 私達の手で、だよ」

 

「メイリン・・・」

 

 メイリンは、そのままルナマリアの横に並びノルンを見上げる。

 

「お姉ちゃんの考えてること、私には分かるよ。

 自分の復讐に付き合わせてしまったって思ってるでしょ?」

 

 確かにルナマリアの心にはそんな想いがある。

 メイリンは優しい娘だ。

 仇のライトマンならいざ知らず、戦場で多くの敵を落としてきた。

 それは、無人戦闘機ウルズ達の戦果が大きい。

 人と争うことが苦手なメイリンに手を汚させてしまったという負目があった。

 

「でもね、あんまり私を侮らないで。

 私は、私がなりたい私になったんだから。

 メイリン・ホークは、ルナマリア・ホークの妹で、共に戦う相棒で、お父さんの仇を討つ同志でもある。

 だから、一緒にライトマンを討って未来(まえ)に進もう。

 今まで私達が奪ってきた命を無駄にしないために」

 

 そう話すメイリンの横顔は、普段の幼さが影を潜め、ルナマリアが戸惑うほど大人びて見えた。

 

 メイリンが知らないうちにこんなに成長していたなんて。

 そうね、シンがあれだけ成長していく姿を近くで見てたんだから、メイリンだってなにも感じないはずないじゃない。

 置いていかれたくない。

 そう強く思う。

 シンやメイリンが眩しいほどの成長を見せている。

 そして、シン達が成長できるように優しく見守ってくれて、時に叱ってくれるオズマ隊長やトライン艦長。

 復讐のために飛び込んだ世界なのに自分でも恵まれた環境にいると思う。

 仲間として、姉として、恥ずかしい姿は見せられない。

 私だって成長してみせる!

 

「そうね、私が間違ってたわ。

 二人で仇を討ちましょう」

 

「うん!」

 

 ルナマリアの言葉にメイリンは嬉しそうに返事を返す。

 妹として愛してくれている。

 それは、とても幸せなことだが同時に不満でもあったのだ。

 守るべき対象であり、共に戦う対等な存在として見てくれていない。

 頼りにしてもらえない自分を不甲斐なく思っていた。

 大好きな姉を支えたい。

 ライトマンへの恨みや憎しみは確かにある。

 それとは別に姉に頼ってもらいたいとも思っていた。

 

 

 まだまだ幼いと思っていたメイリンが頼もしく感じる。

 二人でならもっと先に行ける。

 ルナマリアには予感があった。

 次の戦いの先に今まで見たことのない新しい景色が待っていると。

 覚悟しときなさい、ライトマン。

 未来を掴むのはお前じゃない!

 私達がお前を討つ。

 そして、私達がまだ見ぬ未来(あした)へと向かうんだ。






白兵戦ナチュラル最強と噂されてるマリューさん、この世界でもコーディネーターの特殊部隊を返り討ちにしてしまう。
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