歌姫カガリのマクロス風SEED世界 作:ソロモンは燃えている
月本部から出撃した統合軍は、トゥルーザフトの艦隊と接敵、交戦を開始したが想定外の苦戦を強いられることになった。
無人機の戦闘アルゴリズムがアップデートされて、統合軍が想定していたものを遥かに上回る性能を発揮していたからだ。
個々の性能だけでなく、戦術的な動きにも対応されてしまう。
無人機が開けた穴にトゥルーザフトのモビルスーツ部隊が突入し傷口を広げて出血を強いてくる。
序盤から苦しい戦況に立たされていた。
トゥルーザフトは、中央にライトマンの無人艦隊を配置し、両翼に有人艦隊が展開。
左翼の艦隊から出撃したモビルスーツ部隊の指揮はハイネ・ヴェステンフルスが取っていた。
ハイネは、前線に展開した無人機が統合軍の前衛部隊を圧倒している光景を見て満足げな笑みを浮かべている。
「凄いものじゃないか。
さすがライトマン博士。
これこそコーディネーターが新人類である証だ!」
これ程の性能を誇る無人機を開発したクリス・ライトマンがコーディネーターであると言う事実がハイネに優越感を感じさせる。
人は自らの物差しでしか世界を測れない。
ライトマンが自分がコーディネーターであることに価値を見出していないなど想像すらしていないだろう。
そんなハイネが部下に通信を繋げる。
「無人機によって敵の陣形はボロボロだ。
全機、突入して敵を落とせ!」
「了解!
フォーメーションはどうしますか?」
「必要ない。
俺達は群れなきゃ何もできないナチュラルとは違うだろ。
奴らの陣形は乱されていて、数に任せたゴリ押しも出来ない。
なら、俺達に負けはない。
違うか?」
「その通りです。
よし、各機、ナチュラルに鉄槌を下しにいくぞ!」
トゥルーザフトのモビルスーツ部隊が前線へと突入していく。
その姿をハイネは冷めた目で見ていた。
ふん、こんな簡単な事すら教えられなければ分からないとは。
大した遺伝子を持たない低レベルコーディネーターなどこんなものか。
まあ、あの程度でもナチュラル共よりはマシ。
奴等を同胞として導いてやるのも選ばれた者である俺の使命と言ったところか。
栄光あるコーディネーターの未来のために使ってやるとしよう。
ハイネもグフ・イグナイテッドを駆り、前線へと突入していく。
右翼からは偽アスランのREイージスとニコル・レプリカのブラックライダーが出撃していた。
「各機、前進して無人機と共に敵を撃破せよ!」
偽アスランの号令に従い、右翼のモビルスーツ部隊も前線に投入される。
「アスラン、いいんですか?
無人機の動きは、こちらの想定以上です。
このまま切り込めば、押し切ってしまうかもしれませんよ?」
「ニコル、統合軍の底力を甘く見るな。
各地に散っていたユーラシア連邦を中核とした部隊や元ザフトの懲罰部隊も程なく参戦する。
なにより、あのアークエンジェルがいるんだ。
そう簡単にはいかないさ」
右翼でもモビルスーツ部隊が戦闘を開始し、統合軍は防戦一方になってしまう。
中央艦隊でライトマンが戦況の推移を見ていた。
「どうやら、序盤はこちらが主導権を握れたようですね。
左翼のハイネ君が少し張り切りすぎてるみたいですが、まあ問題ないでしょう。
問題は、」
ライトマンの視線が敵艦隊の一角に展開しているアークエンジェルを映すモニターに向けられる。
「月本部からの拉致には失敗しましたが、これで置いていくという選択肢は取れない。
そこに乗っているのでしょう?
プランのためにも撃沈するわけにはいきませんね」
カガリとラクスの身柄を押さえるためにアークエンジェルを拿捕する作戦を組み立てていく。
統合軍は、当初の予想を遥かに上回る無人機の性能に苦戦し、防戦一方にさせられていた。
しかし、そこは数と連携で戦い抜いてきた統合軍。
無人機によって散らされ、トゥルーザフトのモビルスーツ部隊に切り込まれたことで出血を強いられている前線に予備戦力を送り、敵の撃破ではなく味方の救援を優先する戦いを展開。
そうすることで乱された防衛線を再構築しようとしていた。
もちろん、それを黙って見逃してくれるはずもなく無人機が縦横無尽に暴れ回り、トゥルーザフトが的確に嫌なポイントを突いてくる。
コーディネーター至上主義に染まり、自身の優秀さに酔いしれることが出来るくらいには高い実力があると言える。
だが、かつてモビルスーツが猛威を振るっていた時、自軍にモビルスーツがない状況でも戦い続けた経験を持つ統合軍が粘り強く防衛線を維持する。
特にアークエンジェルのモビルスーツ部隊の活躍は目覚ましく、前線で多くの命を救っていた。
その中でも一際目を引く活躍をしているのが、トールのモンスターだった。
「前大戦の時と引けを取らない程の動きと戦術的な連携か。
でも、俺もあの時とは違うぜ!」
モンスターが大量のミサイルとビームを前線にばら撒く。
デタラメに弾幕を張っているのではない。
その一つ一つに意味があった。
「スタンドアローンでこれ程の動きをするなんてすげぇな。
でも、やっぱり無人機であることには変わりない」
無人機がトールの攻撃をことごとく回避していく。
パイロットの制約を受けない無人機にとって大抵の攻撃は回避できる。
回避と言う最高の選択が出来てしまうからこそ、他の選択肢を選ぶことはない。
ダメージを覚悟で戦果を拡大させるといったリスクを取ることがないのだ。
結果、トールの攻撃は撃墜こそないものの多くの味方の窮地を救うことに成功していた。
「何度も死なせたくないと手を伸ばした!
何度も命が手から溢れていった!
それでも、俺は諦めない。
俺がいる限り、そう簡単に仲間の命を奪えると思うなよ!」
トールが咆哮を上げる。
派手な戦闘には向いていない。
そんな彼が直向きに続けてきた戦い。
敵を倒すためではない、目の前で失われつつある味方の命を救うために引き金を引く。
仲間の命が危険に晒されている時に無力なままでいたくない。
そんな想いを胸に進み続けてきたトールの力は、無人機によって振り下ろされようとしている死神の鎌すら怯ませることに成功していた。
そうして稼いだ時間が戦況に変化をもたらす。
集結していた味方部隊が参戦した。
ユーラシアの部隊がカナード率いるゲシュペンスト隊を先頭にトゥルーザフトの左翼に当たる。
「アークエンジェルの部隊か。
確かに優秀だな。
だが、最強はこの俺、カナード・パルスだ!
それをこの戦場で証明してやる!」
スーパーハイペリオンを駆り、前線へと突入していくカナード。
そんなカナードに追随する機体が一つ。
「カナード、無茶はしないでくださいよ!」
その機体の名はドレッドノート。
パイロットの名はプレア・レヴェリー。
ゲシュペンスト隊の隊長カナードとエレメントを組む相棒にして、かつてマルキオ導師に従いニュートロンジャマーキャンセラーをめぐる暗闘の中でカナードと争っていた少年。
その正体は、グリマルディ戦線で壊滅したメビウス・ゼロ部隊の兵士のクローンであった。
しかし、彼のクローニングは不完全であり、クルーゼと同じ症状を発症していた。
残り少ない命を燃やし、生きた証を残そうとして身を投じた戦いの中でカナードと分かり合い和解。
その後、クルーゼの治療データを用いて健康な身体を取り戻す事に成功した。
寿命の問題が解決し、苦痛から解放されたことで焦りが消え、冷静になったプレアは、マルキオ導師の命令がおかしい事に気付く。
世界の平和のためにと言いながら、特定の勢力に核の力を渡そうとしていたのだ。
原発を復活させて、エネルギー問題を解決するためと言っていたが、オーブの太陽光発電パネルによってエネルギー危機は終息に向かっていた。
リスクを考えれば、核動力機であるドレッドノートを破棄して、データを封印するほうが平和に繋がるはずだ。
マルキオ導師の目的に疑問を抱き、何かを成したいと言う自分の渇望を利用されていたのではないかと思ったプレアは、導師と袂を分かちカナードと行動を共にする事になる。
「無理無理、隊長が無茶をしないわけないだろ」
「プレア君、諦めが肝心だよ」
ゲシュペンスト隊の小隊長達から茶々が入る。
ゲシュペンスト隊は戦後、規模を拡張され10機で編成されている。
もともとカナードの部下だった二人が小隊長となっていた。
では、カナードが部隊全体の指揮を取っているかと言うとそんな事はなかった。
カナードは単体最強戦力と言われるほど突き抜けた実力者であるが故に小隊長達ですら着いていけず、連携が成立しなかった。
だから、遊撃戦力として自由に動くことが常だったのだ。
そんなカナードに着いていける実力のあるプレアだからエレメントを組んでいるのだが、暴走しがちなカナードのフォローに追われることにもなっていた。
カナードって思ったより最強厨だったんですよね。
仲間として認められているのは嬉しいですが、カナードのお守りを押し付けられているように感じて釈然としないです。
プレアが思っている通り、カナードは最強である事に拘っている。
それは、アルテミス司令ジェラード・ガルシアのせいだと言えた。
かつて、スーパーコーディネーターの成功体を殺し、自分こそがスーパーコーディネーターであることを証明すると話していたカナードに対し、ガルシアが呆れた様子で諭した事が原因だ。
そのスーパーコーディネーターは、テロで行方不明なのだろう?
生きているかも分からない。
生きていたとしても、学者とかになっていたらどうするつもりだ?
何の訓練も受けてない素人に勝って満足なのか?
うるさい!
じゃあ、どうしろと言うんだ!?
お前が世界最強になればいい。
そのスーパーコーディネーターが生きていて、自らを最強だと自負するなら必ずお前の前に立つだろう。
現れなければ、そいつがお前を最強だと認めたってことだ。
まずはユーラシア最強を目指せ。
そう言ってガルシアはカナードに軍に入るよう勧めた。
カナードの力を利用するためだったのかもしれない。
あるいは、不確かな復讐に身を焦がすカナードを哀れに思っての気まぐれだったのか。
だが、その言葉はカナードの心に新たな炎を灯していた。
くっくっくっ、世界最強の男か。
確かに俺に相応しい称号だな。
こうして、カナードはガルシアの後ろ盾を得て軍に入ることになった。
厨二病と呼ばれる不治の病を発症したカナード。
黒歴史として悶える未来が来るのか?
それは誰にも分からない。
カナードが戦場を駆ける。
プレアと言う信頼できる相棒に背中を任せ、自らが最強だと示すために。
「はっはっはっ!
スーパーコーディネーターだろうが無人機だろうが俺の前に立ち塞がるなら完膚なきまでに叩きのめしてやる!」
「はぁ、分かりました。
援護しますから、存分に暴れてください」
プレアの胃薬生活はまだまだ続きそうだ。
ガルシア司令がまともなのでカナードの性格もちょっと変わってしまいました。
最強厨なカナード君と振り回されるプレア君の図。