長篇ドラゴンクエストⅢ ASTEL・SAGA 作:ちこちろん
踊り子
ロマリア城を出た後、アステル達は今後の計画を立てる為に、近くの食堂で早めのお昼を取ることにした。
早めとあって食堂は客が少なかった。出された料理を脇にやってスレイは〈妖精の地図〉をテーブルの中心に置く。
「地図上ではイシスはロマリアから海を越えて南にある砂漠の王国だ。だが、定期船は出ていない。だから大陸の東側をぐるりと大廻りしなければならない」
スレイは地図上のロマリアからすうっと東に指を滑らせ橋印を渡り、ロマリアとイシスの中間地点の街印で指を止めた。
「……アッサラーム?」
アステルは地鶏の生姜焼サンドイッチ片手に、地図に記されている街の名を読み上げた。
「海路を使った貿易が盛んなのがポルトガなら、陸路を使った交易が盛んなのがアッサラームや。アッサラームはロマリア、イシス、あと更に東側にある香辛料の名産地バハラタのほぼ中間地点にある街やからな」
はむっとサンドイッチを頬張るシェリル。
「バハラタなら俺も行った事あるぞ。あそこの〈黒胡椒〉を使った肉料理が、また絶品なんだ」
ロマリアの地鶏も格別だけどな。とタイガもその地鶏がたっぷり挟まっているサンドイッチを口に入れた。
「アッサラームでまず、砂漠を越える為の準備と馬車か駱駝を手配する必要がある。あの砂漠は歩いて越えられるような、生易しいものじゃないからな」
そこまで語って、スレイは大皿に盛られたサンドイッチに手を伸ばした。
マァムは先程から無心でサンドイッチをリスのように素早く食べている。
「イシスに向かう
「いやんっ!!」
六切れめに手を伸ばそうとしたマァムの手を、ぺちんっとシェリルが叩いた。
「……そや。マァム、アッサラームはあんたの大好きな躍りで有名な街なんやで」
「躍りぃ!? どんな? どんな?」
いじけたのも束の間、マァムは身を乗り出し、嬉々としてシェリルに詰め寄る。
「ベリーダンスや」
* * * * * *
アステル達はその日のうちにアッサラームに向けて出発した。
山々が続いたカザーブやノアニールと違い、かの地への道のりは行商が頻繁に利用しているお陰か、藪を掻き分けて進むような事もなく歩きやすい。平坦で見通しも良く、わざわざ脇道の森に入りさえしなければ迷う事もない。
しかし人の行き来が多いその分、血に飢えた獰猛な魔物の強襲は後を絶たない。
地面に突いていた前肢を持ち上げ、凶悪な顔つきの巨大な猿型魔物……〈暴れ猿〉は両手で胸を叩き高らかに鳴り響かせて、此方を威嚇し掴みかからんと突進してきた。
タイガはそれを高く真上に飛んでかわし、落ちる重力のまま大猿の脳天を踏みつけ、拳を突き下ろす。仕留めた猿が消える前にその体を土台に倒立し、開脚蹴りを迫ってきた二匹の暴れ猿達にお見舞いした。
「うわっ!!」
長い前肢と背中をつなぐ飛膜でムササビのように滑空しながら、オレンジ色の猫の魔物〈キャットフライ〉がその鋭い爪でシェリルの腕を切り裂く。
「シェリルぅ~~! ベホぉ……」
「フシャオッ!!!」
マァムが治癒呪文を唱えようとしたそれより早く、キャットフライはおかしな鳴き声をあげ尻尾を左右に激しく動かす。
「イミぃ~~……って、またぁ~~!!!」
呪文が発動せず、マァムは地団駄を踏む。呪術封印呪文マホトーン。この猫の魔物はこの呪文を得意としていた。
「シェリル! ……ホイミ!」
マホトーンが効かなかったアステルが代わりにシェリルの傷を癒す。しかし次の瞬間、別のキャットフライがマホトーンを唱え、今度はアステルの呪文が封じられた。
「ごめん! 私も呪文封じられ……」
叫ぶアステルの背後からヒュンッと刃のブーメランが飛び、キャットフライ達を切り裂く。戻ってきたブーメランを難なく掴み取り腰に差すと、今度はドラゴンテイルとアサシンダガーを手に暴れ猿相手に戦うタイガの元へ援護に向かうスレイ。
その速さ、手際の良さに、呆然とするシェリルとアステル。
「相っ変わらず鮮やかやなぁ~~」
「うん……って、私達も援護!」
「ぅお~~うっ!」
マァムがチェーンクロスを手に掲げた。
強暴で小賢しい魔物達に初めは苦戦していた彼女らだったが、何度か戦っているうちに対処法に気づく。
そうなれば勝利は此方のもの。
旅立って二週間近く経ち、アッサラームに着く頃には、タイガ、スレイに頼らなくとも自分達の力で魔物達を打ち負かせるようになっていた。
* * * * * * *
───商業都市アッサラーム。イシス寄りのこの街の建築様式は、ロマリアのそれとは違い、日干し煉瓦と呼ばれる肌色の煉瓦で建てられた屋根のない四角い家が殆どだった。緑は少なく、街の地面は乾燥した砂地が占めている。
砂漠地帯で貴重とされる水はアッサラームでは売買が禁止されている為、街中央にある地下から汲み上げられている水は誰でも自由に汲み取る事ができる。
そして交易拠点だけあり店は多く、食料品から武具衣類、宝飾品、工芸品や嗜好品までありとあらゆる様々な物が売り買いされていた。
ここはどこの国家にも属さない、独自の法が支配する独立した都市である。
その法さえ犯さなければ、大抵の商売取引は許される。そんな街である。
「……だからってね? こんなにぼったくりや、あくどい客引きが横行するのもね」
スレイの買い出しについて行ったアステルは、繁華街を歩きながら、ぶつぶつと文句を言う。
先程店主に「アナタトモダチ!」とおかしな片言で店に引っ張られたと思ったら、薬草一個をなんと百二十八ゴールド(適正価格八ゴールド)で売りつけられそうになったのだ。買うまで店から出さない勢いだったが、助けに入ったスレイの一睨みで事なきを得た。
立ち去ろうとする二人に店員は粘り強く「ならば!!」と、取り出したのは体を隠す布地が殆どない紫色の女性水着。
「〈あぶない水着〉ね!! きっとそのお嬢さんに似合う事間違いないよ! お兄さん! 彼女に買って着せてあげるね! 今なら七万八千ゴールド……」
スレイは凍り付くような眼差しで店員を黙らせ、真っ赤な顔でぱくぱくと口を閉口させてるアステルの手を引いて店を出た。
「……だから離れるなと言ったんだ。宿屋で待ってても良かったんだぞ」
半分呆れ顔で言うスレイに、アステルはうっと呻く。
「だって、みんな馬車の手配とか色々動いてるのに私だけ宿屋にいるのも……」
シェリルはイシス行のキャラバンがないか、商人ギルドの詰め所に向かった。
その詰め所がベリーダンスが見られるという劇場に近い事からマァムも付いて行き、タイガも二人の護衛という事で付いて行った。
「だったら、アステルもシェリル達に付いて行けば良かっただろ? あちらは表通りでまだ比較的に安全だし、何よりタイガがいるからな。余計なのも簡単には近寄らないだろ」
自分も男だが、彼のような虫除けにはなれないとスレイは自覚している。
『春』も売り物にしているここでは、可愛らしく騙しやすそうな娘のアステルは勿論の事、認めたくはないが自分もこの女顔のせいで、その手の奴等の売り物になると斡旋業者にターゲットにされやすいのだ。
常に笑顔のタイガだが、その笑顔に余裕と底知れない迫力を感じる。その上あの筋骨隆々で立っ端もある体格。カンダタもそうだ。あの格好はともかくとして……羨ましいと、スレイは思う。
「でも、それじゃスレイが一人になっちゃうから……それってなんかやだなって思ったんだもん」
呟きが耳に入り、隣を見下ろすと地面を見るふくれっ面のアステルがいた。その表情、子供っぽい発想に触れた途端笑いが込み上げてきた。
「……なにがおかしいの? スレイ」
ジト目で見上げるアステルにますます笑いが込み上げてくるものだから、スレイは咳払いをして目線を空に遣った。
「そこの素敵なお兄さんと、可愛らしいお嬢さん」
アステルとスレイは声のした方に目線をやると、そこには豊満な胸をごく矮小な赤い胸当てで隠し、際どいスリットの入った赤のドレープスカートを纏った艶かしい美女が立っていた。胸当てとへその際を飾る天然石が太陽の光を浴びて煌めく。
綺麗だが裸のようなその姿にアステルは頬を染めた。妖艶な笑みを浮かべアステルとスレイに近付き、手に持つチラシの一枚をスレイに手渡す。
「旅人さんね? 今夜あたし達のステージがあるから、良かったら見に来てね。そちらのお嬢さんもご一緒に是非」
女性は芳しい薔薇の香を残して立ち去って行った。スレイとアステルはチラシを見、目を合わせた。
* * * * * *
「───あっ、やっぱり」
買い出しを終え宿屋に戻ると、ベッドに突っ伏すマァムと椅子に腰掛けテーブルに突っ伏すシェリルがいた。
「おかえり」
もうひとつのベッドに腰掛けたタイガが困った笑みを浮かべていた。
「マァム。今夜は劇場でダンス見ながら晩ごはんにしようね?」
食事も出来るらしいから、とベッドのマァムの頭を撫でるとがばっと起きあがった彼女の目は輝いていた。
「で、シェリルの方は……」とアステル。
「キャラバンが捕まらなかったか?」
スレイの言葉にシェリルはぐりんっと顔を二人に向ける。
「一日違いやったぁ! 次イシス行きのキャラバンは二週間後やってぇ~~っ!!」
「だったら、馬車を借りるしかないな……いくらかかる?」
「保証金含めて三千ゴールド……!」
「………痛いな」
スレイがそうぽつりと漏らすと、シェリルはわ~んっと嘆いた。
しかも行きだけで良いのだ。帰りは瞬間移動呪文ルーラか、同じ効果のあるキメラの翼がある。
しかし借りたとなると、ちゃんと返しに行かなければならない。
馬車を連れてキメラの翼は使えないし、ルーラでも今のアステルの技量ではさすがに無理だ。金も手間もかかる。
しかし。
「二週間も待ってられないし……こればっかりは仕方ないよ」
「うう~~っ! 悔しい~~~っ!!」
机に額を擦りつけるシェリルの頭を、アステルはポンポンと叩いて宥めた。
日が暮れ商店が多く並ぶ繁華街が静かになる代わりに、劇場や酒場などの歓楽街が賑やかになり始める。
アステル達は宿を出て、劇場へと足を運んだ。アッサラーム名物ベリーダンスは人気が高く、劇場は込み合っていた。アステル達はなんとかテーブル席を確保し、料理を頼む。
食べるの大好きなマァムが運ばれた料理そっちのけで、色んな劇団のベリーダンスをテーブルの下でタップを踏み、体を揺らしながら眺めていた。
「皆さま長らくお待たせしました!! 当劇場のスター、モッカーナ劇団ビビアンとレナの踊りをどうぞ御堪能あれ!!」
アナウンスに劇場内が熱く沸き上がる。
「あっ……!」
アステルが食事の手を止め、思わず声を上げた。
昼間チラシを渡してきた女性と彼女の色違いの青のドレスを纏ったマァムぐらいの年頃の踊り子が、ステージに立った。
伴奏が始りステップを踏み出すと、ステージを見ていたマァムの様子が変わった。体を動かすのを止め、食い入るように彼女達の踊りを見詰める。
踊りは力強く情熱的で艶やか。衣装の裾を巧みに揺らし、回る。足の爪先から手の指先、全身を使った微妙で多彩な表現は観客を圧倒した。
赤と青の乱舞。飛び散る汗も飾りのように彼女達をきらきらと輝かせる。
「凄い……綺麗」
頬に手を当てうっとりとするアステル。
「あの二人の踊りは別格やな……」
ついさっきまで暗かったシェリルも笑みを浮かべて、ワイングラスを傾けた。
「───つまんねえもん見せてんじゃねぇよ!」
「もっと腰振れよっ! 腰ぃぃっ!!」
「脱げぇ~~っ!!」
いきなり罵声が飛び、シェリルは飲んでいたワインを吹き出す。
アステル達観客はぎょっとして声のした方を見ると、前列のテーブルに腰掛けた五人のゴロツキ達が下卑た声で笑っていた。
「なんやあいつら……」
口を拭いつつシェリルは顔を顰めた。
青の衣装を纏った踊り子は僅かに躊躇いをみせるが、赤の踊り子は気にする素振りも見せず踊りを続ける。
そんな彼女らを男達は揶揄し続ける。
しかし、それでも演奏を続ける楽団と舞い続ける踊り子達。
それに歯噛みした男の一人が立ち上ると、赤の踊り子の手首を乱暴に掴み、無理矢理ステージから引摺り下ろそうとした。楽団は思わず演奏を止めて腰を浮かし、青の踊り子は悲鳴を上げた。
赤の踊り子は鋭く男を睨み付けたが、男の方はニヤリとして更に彼女を顔間近に引き寄せる。
「こっち来て酌しろや」
「なにしてんだ!? あんた達! あんたらの仕事は熱狂的なファンや酔っ払いから踊り子を守る事だろう!!」
アフロヘアにタキシード姿の中年男性が慌てて飛び出したが、ゴロツキの一人にはね除けられた。
「団長!!」
青の踊り子が叫ぶ。
「わりぃな。これも仕事なんでな」
ニヤリと笑う男に団長と呼ばれた中年男性は青ざめる。
「まさか、あんたら既に他の劇団の嫌がらせの依頼を受けて……!?」
「おら! モッカーナ劇団の踊りはこれで終いだ!!」
「次の劇団呼んでこいや!!」
ゴロツキが嬉々と叫んだ……その時。
「───イッテエエエエエ!?」
マァムがテーブル席から跳躍し、空中で体を捻りながら舞い降り、チェーンクロスで赤の踊り子を捕らえたゴロツキを打った。
「マァム!?」
アステルが叫ぶ。
「このアマ! なにしやがる!!」
ゴロツキがマァムに叫んだが、マァムは澄まし顔でステージに立ち、観客に一礼する。楽団達に手を差し伸ばし、音楽を乞う。
マァムがタップを踏み、手を打ち鳴らす。楽団は慌てて音楽を奏で始めた。躍動感のある、心沸き立つそんな音楽を。
そして舞い始めた。
それは先程、踊り子達が舞っていたベリーダンス。ゴロツキは呆気に取られたが、やがて顔を真っ赤にし、「このやろう!!」とマァムに掴みかかる。が、それは華麗に避けられた。音楽に合わせ、さながら闘牛相手にするマタドールのように。
挑発するような笑みを浮かべ、手にあるチェーンクロスを打ち鳴らす。ゴロツキ達は一斉にマァムに襲いかかった。マァムはターンしながら鋭くチェーンクロスをしならせた。
円を描くように綺麗に吹っ飛ぶゴロツキ達。
観客達は興奮し歓声を上げた。
マァムは赤と青の踊り子を見た。二人は頷き、三人で踊り始める。ステージに赤と桃と青の華が舞う。
「もう勘弁ならねぇ!!」
ゴロツキが刃物を持ち出す。その手首を大きな手が掴み捻った。振り返ると図体のいい男が背後にいつの間にか立っていて、ニッコリと笑う。
タイガはゴロツキの体を片手で持ち上げ、ピザ職人が生地を広げるように、放り投げては回すを繰り返す。情けない悲鳴を上げるゴロツキに観客がどっと沸く。
シェリルは魔法のそろばんを音楽に合わせて打ち鳴らし、演武を披露するようにゴロツキ達を伸していく。
「この……うおっ!!?」
めげず立ち上がるゴロツキ二人を、スレイは椅子に腰掛けたまま、テーブルにあるフォークとナイフを素早く投げ、彼等を壁に貼り付けた。
「おっ……おまえらっ何モン……」
「………
演奏の締めのジャンっという音に合わせて、ゴロツキのボスらしき男がバタンッと突っ伏す。
暫くして男は盛大な
「……アステル?」
スレイは彼女に振り返る。
「あはは……戦い以外で新しい呪文が試せるなんて、思ってもみなかった」
アステルは頬を指で掻きながら笑った。
お辞儀をする手を繋いだ踊り子三人と楽団、そしてタイガとシェリル。劇場内の割れんばかりの拍手喝采は何時までも止む事はなかった。
ゴロツキ達はやって来た街の自警団に連れて行かれ、その後は何事もなかったかのように、次の劇団の催し物が始まった。
* * * * * * *
「いや~! キミ達、本当にありがとう!」
劇場裏にてモッカーナ劇団の団長、モッカーナ=ドトスはアステル達に頭を下げる。
「あたしもぉ楽しかったぁ~~!!」
マァムは大満足のいい笑顔。
「そういや、舞台で踊んのはアリアハン出て以来やからなぁ」
シェリルがマァムの頭をポンポン軽く叩く。
「あなた凄いわ! いきなりあたしやビビアン姉に合わせて踊れちゃうなんて!」
青の踊り子レナはマァムの両手を握った。
「ええ、本当に。お陰でステージを踊り通す事が出来たわ。ありがとう」
赤の踊り子ビビアンもマァムに握手を求める。
「でも、酷いお客さんでしたね」
アステルの言葉にモッカーナは頷き、溜め息を漏らす。
「ありゃあ実は、わたしらが雇った用心棒だったんですよ」
「え?」
「わたしら流れの劇団でしてね。この劇場で踊りを披露してたんですが、名誉な事にイシスの女王様の即位一周年記念の宴にビビアンとレナの踊りを御所望されたんですよ。けど、昔っからこの地でやってきた他の劇団の奴等にやっかまれちゃって、嫌がらせをされるようになって……。
それで用心棒を雇ったんですが、まさか買収されてたとは………」
「でも、団長どうするんです?明日からのイシス巡業。あいつらは旅の護衛としても雇ったってのに……」
楽器を箱にしまう楽団の一人に、モッカーナは肩を落として答える。
「……ふむ。旅人ギルドでもう一度、戦士を雇い直すしかあるまい……」
「ウチらが護衛する!!!」
シェリルが声を張り上げた。
「報酬はいらん! そん代わりにウチらをイシスまで馬車に乗せてもらえへんか!?」
「……報酬なしで引き受けてくれるってのかい?」
団長はシェリルとアステルを交互に見る。
「はい! 私達はイシスに行けさえすれば充分です。雇って貰えませんか?」
アステルも慌てて頭を下げた。マァムも一緒になって下げる。
「団長~! あたしもこの子達と行きた~い!」
レナはマァムに抱き付く。
「団長。いいんじゃないのかい? 今からまた護衛を探すのも手間だし、さっきみたいなのはもう御免だよ」と、ビビアン。
売れっ子二人の言葉に、モッカーナは口髭を弄ってうーんと暫し考え、口を開いた。
「……あんた達なら実力もさっき見たばかりだし、信用も出来そうだ。やってくれるかい?」
「「はいっ!!」」
「はぁ~~いっ!」
三人娘は踊り子二人と手を叩き喜び合った。
眠らない街アッサラームの夜は更けていく。