長篇ドラゴンクエストⅢ ASTEL・SAGA 作:ちこちろん
「嘘でしょ……」
ガルダの塔、中庭の別棟にある長い、長い階段を登った先に広がる光景にアステルは愕然とする。
今いる場と先に見える対岸を結ぶ一本のロープ。その長さ恐らく約五
「嘘でしょ……」
ロープは『ここを渡れ』と言わんばかりに存在を強調していた。
「べっ、別の道があるかも──「ない」
無情に断言された。
がっしりと肩を掴まれたアステルは青褪め、さながら油切れしたからくり人形の様にギギギッと振り返る。そこには縄を持ったスレイがいた。
「諦めろ」
そう言って、アステルの胴に縄を回してしっかりと縛り、そして近くの柱に巻き付けた。
「………なんで、綱渡り?」
「精神力を試されてるのかもな」
震える声で誰ともなしに問うアステルに、苦笑気味にタイガが答えた。
「でもロープは頑丈そうだし、安定感はそこそこあるぞ。横風の心配もなさそうだ。アステルなら十分いけるさ。マァムだって、ほら」
と、タイガが指さしたのは、既に渡り終え、向こう岸で笑顔で手を振るマァムだった。
「マァム、いつの間に……」
シェリルがここにいたのなら。きっとアステルと一緒にごねてくれただろう。
今この時だけ。この難を逃れたシェリルを羨ましく思った。
「スレイ。生命綱は俺がみてようか?」
「平気だ。先に渡ってくれ。到着直前の方が気が緩み安いからな。そっちの補助を頼む」
スレイの言葉にタイガが頷くと、不安げな顔のアステルを勇気付ける様に頭を撫でる。
「さっきの結界のお陰か、ここには魔物の気配はしない。安心して渡りきる事に集中するんだ」
そうしてタイガはロープを渡り始めた。
(だからなんでそんな軽々といけるの!?)
「……薄々感じてはいたが、おまえ高い場所が苦手なのか?」
溜め息交じりのスレイの言葉に、アステルはびくりとし、そして肩を縮こませた。
「苦手、というか……。旅を始める前はそうでもなかったんだよ?」
訓練の岩登りも木登りだって普通に出来ていた。お城やナジミの塔までの高さなら全然問題なかった。だからアステルも自分が高さに弱いなんて思ってもみなかったのだ。
しかし。シャンパーニの塔の未知の高さに突入した頃から、感覚がおかしくなった。不意に落ちたり、落とされたりした辺りから、怯え体が
ダーマまでの道程の中にも難易度高めの岩登りがあった。恐怖を押し隠し、乗り切ったつもりだったが、背後の青年の目は誤魔化せなかったらしい。
(それになにより綱渡りなんて、想定外過ぎるしっ!)
肩越しに振り返り、青い大きな瞳を潤ませ、こちらを見上げてくるアステルにスレイはぐっと言葉を詰まらせる。
「スレイ? ………わっわっ!」
スレイの手が両肩に掛かり、そのままぐりんっと前を向かせられる。ロープの下、遠い地面を見た瞬間、眩暈に襲われそうになる。
「下を向くなっ!」
「はいっ!」
怒鳴られ、背筋が思わず伸びる。
「前を向いて、マァムの能天気なまぬけづらでも見てろ。緊張してるのが馬鹿馬鹿しくなるぞ」
「ま、」
あちら側でマァムが腕を振り回して、なにやら言い返している。まさか今の囁くような悪口が聞こえたのだろうか?
プンスコ怒ってるマァムが可愛くて、おかしくて。アステルは吹き出した。
そんな彼女にスレイも表情を和らげる。
「深呼吸。……もう一度。ゆっくり、大きく」
言われた通り、何度か深呼吸をする。その間、低く落ち着いた声でスレイは言葉を続けた。
「おまえは落ちない。もしもの時はオレがちゃんと引っ張り上げる。先に行ったタイガだって一緒に手助けする。……絶対大丈夫だ」
と。丁度向こう側へと渡りきったタイガが、こちらを振り返り、手を振った。
「……うん」
「縦揺れに合わせて歩く事を心掛けろ」
「うん」
「足元は見ず、あちらにいるマァムとタイガだけを見ろ」
「うん」
「手は頭より上だ。……行け」
そっと肩から手が離れ、声で背中を押される。足が自然と一歩、前に出た。
しかし不思議とそれに驚きも怖さも感じなかった。
* * * * * *
───もう三歩、あと二歩、一歩……。
ぐいっと、腕を引っ張られ体が浮く。
ハッとしてアステルが目を上げると、そこにはタイガの笑顔があった。
「お疲れさん」
地面へと下ろされ、素早く縄が解かれた。ペタンと腰を着いた途端、身体中から汗が吹き出し、震え始める。
「アステルぅ~……大丈夫?」
屈んでこちらを覗き込むマァムの顔を見た途端、アステルは安心して涙が溢れそうになるが、震える頭にポンッと手を置かれ、その手が誰のかわかると涙が引っ込んだ。
「ズルい………」
恨めしげに言われて、スレイは眉を顰める。
「何が」
「早くないっ!? 私必死でここまで来たのに、着くの早くないっ!?」
「鍛え方が違う」
八つ当たり気味に突っかかるアステルに対し、冷静を装っていなすスレイにタイガは笑いを堪えていた。
気が気でないと言った様子でスレイがアステルを見守っていた事。
到着後彼女が腰を抜かした瞬間、手の中にあった縄があちら側で素早く巻き取られ(摩擦でやけどするかと思ったぞ)、ロープの上を疾走して来た事。
全てちゃんと見ていたので。
小休憩を挟み、気を取り直した一行は下への階段を降りた。薄暗い部屋は《旅の扉》が発する淡い青い光で染まっていた。
「シェリルに下で待っててもらって正解だったなぁ」
「うん」
タイガの言葉にアステルは頷く。
旅の扉を問題なく潜り抜けた先は十字路の一端だった。左右中央の路の先には登り階段がある。スレイが
「恐らくは塔の中心部分なんだろうな」
自作の見取り図、中央空白部分をペンで書き記しながら、スレイは言う。
十字は全能神のシンボルだ。更に十字の中央に大きな聖方陣が刻まれているのをみても、ここは塔の中心部のような場所なのかもしれない。
左右の階段の三階にそれぞれ宝箱が一つあり、その中には〈小さなメダル〉もあって、マァムが目を輝かせていた。
「タイガ、なにか探しているのか?」
「え、あ~、……」
キョロキョロと辺りを見回すタイガに、スレイが首を傾げると、タイガは
「いやな? この塔は一体何階まであるのかなってな」
「タイガは何階まで登った事があるんだ?」
「三階までだ。ただ思ってた以上に、ここは入り組んでいたんでな。さっきの十字路だってスレイの魔法がなけりゃ、場所の把握のしようがない」
「途中で旅の扉があるからな」
再び十字路の空間に戻り、最後の一角にある階段を登ると、そこは先程とは違った造りになっていた。更に階段を見つけては登り、そしてついに四階階へ。先程より小さな十字を象った部屋だ。
奥に階段が見えるが、それよりも手前中央に存在する銀色に強く輝く雫型の何かに視線が向いた。
「あれ……って」
「銀色のぉスぅライム~?」
体は動かさず、二つの目玉と笑ってるような真っ赤な口がズズズッとこちら側に移動するように現れた。
タイガとスレイがほぼ同時に地面を蹴った。
タイガの素早く繰り出された拳を、銀色スライムは彼の腕の上を這ってすり抜ける。次にスレイが手にした毒針を銀色スライムの口めがけて繰り出すが、スライムは瞬時に口と目玉を移動させ、銀色の体で弾く。刺さってはいない。弾いている。甲高く金属音が鳴り響く。
(つ、強い! スライムなのに強いっ!)
突然始まった戦闘。二人と一匹の物凄い速さで繰り広げられる攻防に、アステルとマァムは呆気に取られ、見ている事しか出来ない。
……ヒュンっ! と、銀色スライムは二人の攻撃を
「こいつが〈メタルスライム〉だっ!」
タイガが叫ぶ。
「絶対に仕留めるんだっ!!」
毒針を持ち直しながら、スレイもまた叫んだ。
「「逃がすなっ!!」」
「え、え、!?」
目の色が完全に変わってる二人に一瞬怯えるも、アステルは素直に剣を抜く。銀色のスライム……メタルスライムは地面を這うように移動する。その速さは普通のスライムと比べ物にならない。
「わっ!?」
メタルスライムが飛び上がった瞬間が目に追えなかった。メタルスライムはにたりと笑い……いや、元々笑ってはいるが。不思議な音、違う、声か? を発した。
メタルスライムの体がオレンジ色に輝きを発し、その輝きは尖った頭の上に集積し、火の玉へと変化し、アステル目掛けて放たれた。
(まさか、
「───
アステルも慌てて火球を放つ。二つの火の玉はぶつかり、相殺される。爆発し、上がった煙がメタルスライムの姿を隠す。
階段に向かってザザザッという這う音は聞こえたが、アステルには反応仕切れない。
「ダメ……!」
逃げられる。そう思った。が。
「ほっほ~いっ!」
気の抜けた掛け声と共に放たれたマァムの小石が、ゴスっ! という、鈍い音をたててメタルスライムに当たった。
特に狙ったわけではない。マァムは煙に向かって適当に投げたのだ。
ちなみに小石はそこらに落ちているただの小石ではなくて、倒した魔物が変化したそれなりに固い宝石。更にメタルスライムは逃げ切れたと安堵し、硬質な体を柔らかな本来のスライムの姿へと戻した瞬間の出来事だった。
煙が晴れ、地面に伏したメタルスライムの姿が現れる。そしてメタルスライムは細かく弾けて銀色の光の粒へと変化し、アステル達の上に降り注いだ。
「やっ!?」
「動くなっ!」
正体不明の粒を
───
「な、なに……? 今の」
突然流れ込んできた力の
アステルはなんとはなしにそれを振るってみる。瞳を見開き、次いで本格的な型を繰り出す。
明らかに速く、強く、鋭く、正確に剣が扱えてる自分に気が付いた。
「それがメタルスライムを倒した時の効果だ」
目を丸くしたままのアステルにタイガが笑みを浮かべて近寄った。
「……原理は不明だが。メタルスライムを倒したその時に現れる光の粒子を浴びると、潜在能力の開花と身体能力の底上げが成されるんだ」と、スレイ。
「強さを求める者がメタルスライムの虜になるのが、理解できたか?」
「うん。……スレイとタイガが豹変したのもわかるかも」
「マジヤバな人だったぁ」
アステルの言葉尻の刺とマァムの非難の声に、スレイは目を反らし、タイガはハハッと笑って
「まあ、武の道を極める者としては、こればっかりに頼って強くなっても、いつかは壁にぶち当たるんだろうがな」
「うん」
タイガの云わんとする事はアステルにもなんとなく理解出来る。知識や技術の基礎があってこその成長だ。
「アステル、新しい呪文も幾つか思い浮かんだんじゃないのか?」と、スレイ。
「え、これもやっぱりそうなの!?」
自分の身に実際に起こった現象だったが、こんなにも一気に呪文が閃く事は生まれて初めてだったので半信半疑だった。
今の今まで、
「でも、習った事のない呪文も幾つかあったけど……」
「それこそ《潜在能力の開花》だろうな。一般の魔法教本や歴史書に記されていない、限られた者にしか扱えない独特の呪文なんだろう」
(……独特の呪文……)
「………アステル。なにが起こるかわからないなら、ここでは使うなよ」
スレイの釘指しに、アステルは肩をギクリと跳ね上げた。
「わ、わかってます!」
「本当か?」
「スレイは!? タイガにマァムも何か変わった事あるの!?」
スレイの疑わしげな目から逃げるように、アステルは話題を切り替えた。
「俺は身体強化ぐらいかな」
と、タイガは拳を握りしめる。
「……オレも似たようなものだ。盗賊の技法は旅立つ前に全て叩き込まれたからな」
スレイは毒針を腰ベルトに仕舞いながら言った。
「あたしはねぇ。《くちぶえ》が吹けるようになったよぉ」
「口笛……?」
頭を傾げるアステルに、マァムは満面の笑顔で頷く。胸いっぱいに空気を吸い込み、桃色の小さな唇を窄めた。
────ピュイイイイィィィィッ!!!
高く響いた音色は狭い空間を反響し、いつまでも鳴り響く。鳴り響く。
「………だからなんなんだ」
と、スレイが白け顔で突っ込み、先に進もうと前を向く。マァムがむぅっ! と、頬を膨らませ、アステルが微苦笑を浮かべてそんな彼女を宥めていた………その時。
「ちょっと待て」
と、タイガが真顔で皆の動きを制した。
「タイガ?」
名を呼んで、アステルもハッとした。
────ガッシャァァァアンッ!!!
すぐ側の大きな窓硝子が割れて、二匹の大きな鷲が蝶の群れを従えて飛び込んできた。
〈
「これって……まさか」
炎からマァムを抱き締めるようにして庇いながら、口を引くつかせるアステル。
「さっきの口笛は魔物を呼び寄せるもの……なのか?」と、額から一筋の汗を垂らして苦笑いのタイガ。
「どぉぉぉおだぁ~っ!!」
「『どうだ』じゃないっ!!」
ドヤ顔で胸を張るマァムを、スレイが怒鳴る。
刃のブーメランを取り出し、苛立ちのままに眼前の敵にぶつけた。
* * * * * *
色々とあったが、遂に五階まで辿り着いた。そして。
今広がる光景にアステルは絶望し、がくりと膝を着いた。タイガもスレイも流石にかける言葉が見つからない。
「アステルぅ~……」
項垂れるアステルの頭を慰めるように、マァムが撫でる。
二階と同じ様な光景がここ五階にも広がっていた。いや、二階よりも対岸までの距離が遠く長い。二倍以上はあるのではなかろうか。しかも時折吹く突風が、ロープを情容赦なく激しく揺らしている。
「賢者って……なんだろうね?」
遠くを見る目でポツリと漏らしたアステルの言葉に、タイガとスレイはやはり返す言葉が出ない。賢者となるには軽業師のような素質が必要なのだろうか。
スレイは口に手を当てて、考える。
(……さて。どうするか)
自分とタイガ、マァムはなんとか大丈夫だろう。問題はアステルだ。
能力的に渡れない事はないと思うが、恐怖の方が勝っている今の状態では無理だろうし、この高さを渡れというのは流石に酷だ。
ロープの先の対岸の外観を、盗賊の技法〈鷹の目〉を使い、
〈鷹の目〉を解き、黄金に輝く瞳が落ち着いた琥珀色へと戻ると、スレイは仲間達に向き直った。
「パーティーを分散しよう。タイガとマァムで先に進んでくれ。タイガ、渡った先に何があるか確認して教えてくれ」
「わかった」
「……マァム。今回はふざけずに真面目にやれよ」
スレイの言葉にぶーっと膨れるマァムの頭を、タイガがポンポン叩いて宥める。
「ごめんなさい……」
しょぼくれるアステルの頭をタイガはがしがしっと、掻き撫でた。
「気にするな。こういう時こそ、仲間で助け合って乗り越えればいい」
「アステルのぉ分までぇガンバるからねぇ!!」
にっこり微笑むマァムにアステルは涙ぐんで頷いた。
始めにマァムが渡る。
トントンと、体を解すようにその場で小さく跳ねる。風とロープが静まったタイミングをみて、躊躇わず駆け出した。
視線は前に、前傾姿勢で左右の腕を後方へ伸ばし、ロープの上を一気に駆け抜ける。あと少しの所で突風が吹くその気配を逸早く察知すると、ロープを跳躍台の如く、勢い良く踏み、大きく跳躍する。身体を丸め空中で三回転して向こう岸へと見事着地。
それと同時に突風が吹き、大きくロープを揺らした。
マァムの運動能力の高さと、そして何よりも風読みの正確さに面々は唖然とする。
「意外な才能だな……」
「…………」
思わず感嘆の息を漏らすスレイに対し、タイガは神妙な面持ちであちら側で笑顔で手を振るマァムを見詰めている。
「タイガ?」
「……さて。俺も行くかな! 二人とも気をつけてな」
呼び掛けるアステルに、いつもの朗らかな笑顔に戻ったタイガはロープへと歩を進める。
「そっちこそな」
スレイの声にもう一度振り返って笑顔で頷くと、マァムと同じ様にとはいかないが、慎重に、しかし危なげなく進んでいく。
「……鳥」
「どうかしたのか?」
突然そう漏らしたアステルに、隣にいたスレイは首を傾げた。
「さっきね。タイガがマァムを見てそう呟いてたの」
(………ん?)
綱渡りの最中、タイガはある事に気付く。思ってた以上にロープの揺れはなく、身体に感じる筈の風も弱い。ふと先にいるマァムを見ると、彼女の瞳が朱色から深紅へと変じている。
そして軽くロープに向かって差し出された手。
(やはり、君か)
タイガは目を細める。おそらくは。アステル達に気付かれぬ程度に風を操り、ロープの揺れとタイガの周辺の空気を操ってくれているのだろう。
そうか、とタイガは得心した。
この綱渡りは『平静さと集中力を試されてる』。それも間違いではないだろう。だがそれよりも重要なのは『空気……自然を操る魔法』をここで試されているのではないだろうか。
(それを無意識で熟している彼女はやはり……)
賢者の血統なのだろう。
(……そして)
人ならば恐れて然るべき高さをものともせず、まるで自分の領域のように自由に駆け、風を読んだ、あの姿はまさしく……。
(───鳥)
ふと、辺りが暗くなりタイガは目を張る。見上げると、太陽の光を受け金色に輝く、巨大で、蛇のような長い胴体、空色の
「───まさか、
そう。それは黄金の鱗の竜〈
しかし。タイガの眼帯で隠された右目は。
同じでありながら、全く違う存在を映し出す。
もっと巨大で、もっと残虐で、もっと狂暴な………
────八つ首の竜を、見た。
「タイガ!!」
マァム=ノーランの切羽詰まった叫びに我に返ったタイガは、ロープの上を駆け出す。空竜は走るタイガを狙って、口から燃え盛る火炎を吐き出す。背中が焼かれるのを感じるも、なんとかマァム=ノーランのいる足場に辿り着く。地面に転がって背中を焼く炎を消す。そんな彼の元にマァム=ノーランは駆け寄り、彼と竜との間に立ちはだかった。
「タイガっ! マァムっ!」
「待てっ! アステルっ!!」
対岸から見ていたアステルは、仲間の危機に高所の恐怖も忘れ、スレイの制止も振り切ってロープに一歩足を踏み出した。すると竜はタイガとマァム=ノーランから目を離し、アステルに見向くと、彼女に向かって飛んだ。
まるでその時、この瞬間を待っていたかのように。
竜は大きく尾を振るい、ロープを激しく弾いた。
「えっ!? わっ!? ───わっ!!」
ロープが大きく波を描き、アステルを上空へと撥ね飛ばした。そのまま彼女は下へと真っ逆さまに落ちていく。
「アステルっ!!」
スレイもまた、我を忘れ彼女を追って飛び降りてしまった。
「アステルっ!! スレイっ!!」
タイガとマァム=ノーランは慌てて下を覗き込むが、既に彼女達の姿はそこにはなかった。