長篇ドラゴンクエストⅢ ASTEL・SAGA 作:ちこちろん
その後も鍵が掛かった鉄製の大扉が続いた。扉を開ける度に襲い掛かってくる魔物の群れ。
外で遭遇した毒々ゾンビを筆頭に、甘い息を吐いて此方が睡魔に抗っている隙を突いて襲い掛かる、巨大な角を持つ魔羊〈ビッグホーン〉。麻痺を起こす鱗粉を撒き散らす〈痺れ揚羽〉に
───そして。
「あーーっ! またコイツらかいっ!」
シェリルが発狂せんばかりに叫ぶ相手は、真紅の甲冑騎士の群れ。しかし中身はがらんどう。〈
しかもこの甲冑騎士、呪文が行使できる。
先手を取ったキラーアーマーは、左手に持つ盾を構えた。聞き取れない声で唱える呪文は、団体の身の守りの力を下げる呪文ルカナン。一行に青い光が纏わりつく。
別の個体がシェリルに斬りかかる。しかし彼女はひらりと避けた。
ダーマで仕立てて貰った
だがこのキラーアーマーは時折、ひやりと背筋が凍るような強烈な一撃を繰り出すから油断ならない。
スレイがすかさず団体の身の守りを高める呪文スクルトを唱えて、先程のルカナンの効果を打ち消すと、素早く腰からドラゴンテイルを抜き放ち、敵の足元を
「マァム、魔封じの杖を!」
「はぁいっ!」
アステルの声にマァムは嬉々として応え、魔封じの杖を振りかざす。
立ち上がれないキラーアーマーに、杖の先端の骸骨が吐き出した紫の霧が襲い掛かり、呪文を封じ込めた。
敵が体勢を立て直すその前に、アステル、タイガ、シェリルは飛び掛かった。
「……なあなあ。アステルの魔物避けの呪文でどうにかならんか?」
宝石拾いはマァムに任せて、甲冑ばかり叩き過ぎて痺れてきた手をふりふりとさせながら、シェリルはアステルに提案する。アステルも
アステルの身体から発せられた白い光は頼りなく、直ぐ様消えた。
「……だめ。ここでは効果ないみたい」
塔の中に充満する邪悪な気配がトヘロスの光を抑え込み、邪魔をする。アステルは眉を八の字にして、
「取り敢えず進むしかないだろ。幸い塔の造り自体は単純そうだからな」
既に大量の魔物に遭遇し、対応するも切りが無い。まるでこの魔物達を封じ込める為にこの塔は存在しているかのような、そんな錯覚すら覚える。
三つ目の大扉を開き、襲い掛かる魔物を蹴散らして、ようやく二階へと上がる階段に辿り着けたものの、隣り合わせにある四つの階段は、それぞれ別の空間へと続いているようだ。
この部屋は何故か魔物の侵入がない。
「ここで少し休憩しない?」
アステルの提案に一同賛成し、腰を下ろした。まずは疲労回復に苦い薬草を噛み締めた後、塔に入る前に事前に用意したアステル特性の
そう。スーの村で捌いて貰った
栄養価の高い肉を摂取する為、背に腹はかえられない。
勿論手羽先や鱗は取り除いてもらい、食べられる部分のみを頂いた。
アステルはあの姿を思い出さず、心を無にして調理した。鶏肉に似ていると言っていたから、取り敢えずは焼き料理にしてみた。黒胡椒で味付けし、見た目も良くして食べてみたら、臭みは全くなくあっさりとしており………意外と美味しかった。
「ワニの肉侮れへんな。それにあの革も。流通に乗せたら、案外儲かるかもしれん」
「シェリル……今はその名前は出さないで」
鰐の可能性を真剣に考えるシェリルだったが、アステルとスレイの渋い顔に、「ゴメンゴメン」と笑って謝る。
意外な事にシェリルは、スーの食文化に傾倒しつつある。タイガとマァムは元々平気な上に、此方も好物になりそうな雰囲気だ。
旅をする上では、偏見なくなんでも食べれるようになるのは重要な事だが。
食事を終えたアステルは立ち上がり、二階へと続く四つの階段に視線を遣った。
「……〈山彦の笛〉は無事かな……?」
「悟りの書のように、山彦の笛は神聖な力を秘めている。魔族や魔物が容易に触れたり、壊したり出来るものじゃない。きっと無事な筈だ」
アステルの呟きを拾ったスレイがそう答えると、彼は
「これ……」
黄金の土台に青玉が填まった、簡素ながらも美しい指輪は〈祈りの指輪〉。
指に嵌めて祈ると理力を回復させる効果を持つ指輪。使い過ぎると壊れてしまうが、壊れない限りはいつまでも使える。
以前ダーマにて、命名神マリナンの巫女姫ナンナがスレイに渡した品だ。
「結構な頻度で
「え、でも、これはナンナ様がスレイの為に……」
「オレとお前とじゃ理力の量が違う。気にせずに使え」
後ろめたさでアステルは使う気になれなかったが、スレイは使うまで許さないとばかりに、アステルをじっと見下ろし続ける。
アステルは諦めたように溜め息を吐いて指輪を嵌め、手を合わせて祈った。
(どうか壊れませんように……っ!)
ぽうっと指輪に填まっている青玉が淡く輝いた。
こんな祈りでも指輪はアステルの消費した理力を回復させ、かつ、壊れなかった。
(……もしかしてこの指輪の名前の由来って、こういう事なのかも)
壊れない事を祈りながら使うから《祈りの指輪》。
心内で一人納得しつつ、アステルは指輪を外そうとしたが。
「返さなくていい。オレには必要ないから、お前がそのまま嵌めておけ」
「え、ちょっ、スレイ?!」
慌てふためくアステルを置いて、スレイは四つの階段の方へと足を運んだ。
途中、シェリルがすれ違い様にスレイにぼそりと囁く。
「うまい事《
くふふと嗤うシェリルに、スレイは目を据わらせて「今のお前、カンダタそっくりだぞ」と言うと、シェリルはうげっと