ルッキング!アットミー!!   作:はひろ

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10 選抜レース!

 

それから数ヵ月が過ぎ、選抜レースの時期になった

 

スカウト?なかったし、逆スカウトするような運命的出会いをする新米トレーナーもいなかった

 

ホクトちゃんは早々にスカウトされてチームに入っていたが、コウちゃんと私は縁がなかった

 

まあ、新人さん捕まえれればいいかなぁ

 

教官からもスカウトされると思うぞ、普通に走ればと言われているので大丈夫だろう

 

そんなわけで、今、ゲートの中にいる

 

コースは芝1600m、右回り、晴、良バ場と理想的なマイルでのコンディション

 

阪神競馬場かな?外回りのコースで、序盤に少し登った後、ゆったりとした下りから、一気に降った後、残り200で今度は逆に登りが待っている中々に心臓に悪そうなコース

 

阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞の舞台ではあるけど、私には縁が遠いかもしれない

 

そういうコースを経験できるのはある意味で幸運かな?とは思う

 

他に走る娘は8人

 

9頭立てのレースでどの枠が有利かとかわからないまま大外枠に入れられた私を応援してくれているのはホクトちゃんとコウ

 

ちゃんだけだった

 

いや、先輩方数名がまばらになって私を見ているのはわかるが、遠すぎてどんな感情を向けられているのか分からない

 

 

 

そちらの方に気を取られていたのかいつの間にかゲートが開いていた

 

 

 

ほんの0,数秒だったが、目に見えて出遅れている事を理解したときには脚が動いていた

 

流石ウマ娘、そう思ったのもつかの間緩やかな坂を登り終える

 

先団に3人、後は固まっているがミドルペースと言えるレース展開を後ろから少しずつ追い上げながら考える

 

追込はできる限りしたくないし負荷もかけたくないが、レースに勝たなければトレーナーが付くかわからない

 

ならもう早めにしかけるしかないのかな?

 

第一コーナーを通り過ぎた段階で脚を速める

 

少し降っている影響か、いつもよりも加速が速い気がする

 

大きなカーブの中程まで来ただろうか?ようやく中団の最後尾を捉える

 

そしてそのまま抜き去り、中団の半ばまで来て残り600mになり一気に降っていくところまで来た

 

驚いたような視線や、純粋な闘志を燃やしたような視線、ペース配分を間違えてはいないかと嘲るような視線と様々な視線が送られてくるが、気にしている余裕がなくなってきた

 

これ、一気に負荷をかける訳じゃないから膝には来ないけど、心臓に来る

 

思考が段々出来なくなってくるが、それでも足を動かす

 

大丈夫、このコースなら差しでも不利じゃない

 

直線に入りスパートをかける

 

流れていく景色がいつもよりボヤける

 

いつの間にか下り切っていたのか、膝に負荷がかかったと思ったら、加速が鈍くなる

 

酸素を求め呼吸が荒くなるのを感じる

 

 

 

ラスト100mだろうか?半ばまで来たところで、ふと横を見る

 

目が合った

 

同じ苦しみを味わっているのに、隣にいた彼女は顔を歪めながら、闘志を燃やし、脚を速めている

 

絶対に勝つんだという意志が全身から伝わってくる

 

 

 

その中で、私を見た

 

 

 

勝つ為ならば横を見る行為すらロスになる

 

そのことをわかっているのか、そもそも意図してこちらを見たのかもわからない

 

 

 

だけど、私を見た

 

 

 

彼女が勝利するために、勝たなければ行けない相手として、私だけを見た

 

 

 

自然と口元が緩み、思考がクリアになる

 

重くなっていた脚も軽くなる

 

脚の回転が上がり隣にいた娘を半身程離す

 

 

 

ちらりとまた隣の娘を見る

 

 

 

歯を食いしばり、目を瞑って、手足を動かすことだけに力を入れているその姿は、美しいとまで感じた

 

 

 

永遠にその姿を見たかった

 

 

 

だけど、既にゴール前

 

 

 

ゴールテープを切る感覚があった

 

 

 

小さな歓声が上がる

 

…勝ったのだろう

 

横を見るが誰も喜んでおらず、私を皆が見ていた

 

少しずつスピードを落とし、流しに入る

 

心臓が落ち着いたところで歩きながら目を閉じる

 

そして、あの、坂道を登っていきゴールまでの映像を焼き付ける

 

ああ、良かった

 

立ち止まり、空を見上げ、余韻に浸る

 

満足感のあるレース

 

そう思えるほど、充実していたレースだった




新しい職場はいい人ばかりですけど仕事多くて全然時間取れないです…
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