普段はpixivをホームとしていますが、今回ハーメルンで新しいシリーズを始めたいと思います。
タグにある通り、SBSのアレはガン無視しております!
パチリと両目を瞬きし、彼女は目を覚ます
薄暗い部屋の天井を見やり、ゆっくりと身を起こす
扉の前まで歩き、微動だにしない
そして堅牢な扉をスルリと通り抜け、彼女は蔵を後にした
ここは【ARM'S SHOP】
“
店主は武器…特に刀を見る目はあるがどこか守銭奴のきらいがあり、いつも妻の尻に敷かれている
そして
家宝?そう、家宝だ
彼女は人間ではなく、長い年月を生きた一振の刀に宿った自我の化身であった
【
((よっ、お嬢様))
雪走が店舗部分に入ると、一人の青年が声をかけてきた
軽くまとめた臙脂色の髪に派手な柄の着物、この店にいるもう一人の刀の化身だ
ただし彼は雪走と違い、あくまで“商品”として店におかれている刀だ
彼の名は【
雪走は声をかけてきた鬼徹に小さく会釈して挨拶をすると、店内を見回した
それなりに広い店の床には鬼徹の本体が転がり、逃げるように退店した客の背中に店主がため息をつく
その様子を見た彼女はチラリと視線を鬼徹に向けた
((あなた、また何かしましたの?))
((別にー。ただアイツがビビって逃げただけだよ。アイツ、俺ちゃんのこと知ってたみたいでな))
そう言って不貞腐れる鬼徹を横目に、雪走は「五万ベリー」と書かれた札の貼られた樽に戻される彼の本体を眺めた
三代鬼徹は【業物】の刀だ
世間一般における“名刀”の基準である位列としては下層ではあるものの、普通に売れば百万ベリーは下らない
しかし彼は使い手の選り好みが激しく、気に入らない相手はその生命を吸い尽くして死に至らしめる
故に「妖刀」として恐れられて各地を転々とし、この店で本来の価値からは遥かに低い値段を付けられて尚、新たな主人の決まらない状態が長く続いていた
((あーあ、もっと強くて根性のある奴いねェかなー。そういう奴なら、俺ちゃん喜んでついてくのにー))
天井を眺めながら鬼徹がこぼす願望を、《贅沢なこと》と雪走は苦笑した
《本当は、
雪走は喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ
自分も外に出たい、と
誰かに振るわれたい、と彼女は常々思っていた
無益な争いは好きではないが、やはり刀…武器として生まれた以上、戦いの中に身を投じたいという気持ちは持っていた
《だけど》
彼女に付加された価値がそれを許さない
雪走の位列は【良業物】、鬼徹とは一つしか違わないがそれでも売れば数百万はするだろう
そこらの輩が簡単に手に入れられる代物ではないのだ
何より雪走はこの店の“家宝”、鬼徹から「お嬢様」「箱入り娘」などと揶揄される程度には大切にされていた
あの店主が彼女を誰かに譲るというなら、それこそ天地がひっくり返るような事態だ
それでも、雪走にはどこか諦め切れない思いがあった
いつか、私を連れ出してくれる素晴らしい剣士が現れるだろうか
もしそんな人が現れたなら、その人のために生き、その人のために戦い、その人のために死にたい
あの狭い蔵の中でいつか朽ちるくらいなら、例え見知らぬ場所で文字通りこの身が朽ち果てようとも構わない
しかし、いままでそんな人間が現れた事はない
もしかしたら一生出会えないかもしれない
それでも…
そんな胸の内でせめぎ合う感情を抱えながら、雪走は本体の待つ蔵へ戻った
・雪走
一人称:私
純白の髪に月下美人が描かれた振袖を纏った儚げ系の美女。
外見年齢は20歳ぐらい
イメージ声優は能登麻美子さん
・三代鬼徹
一人称:俺ちゃん(シリアス時は俺)
ゆるいポニーテールの臙脂色の髪に
外見年齢は17歳くらい
イメージ声優は関智一さん(ウルトラマン作品のグレンファイヤーみたいなかんじ)