或る刀の一生   作:kiramaru

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初陣

「……さァ、新入り達(・・・・)を試すいい機会だ」

物陰で雪走を構えるゾロは、そう言って不敵に笑う

彼とその仲間達が偉大なる航路(グランドライン)に入って最初に上陸した島は、賞金稼ぎの巣であった

目算で百人はいる賞金稼ぎ達を相手に、ゾロは建物の高低差を上手く使って戦っていた

 

「まずは…“雪走”からだ」

ゾロが雪走を振るうと、真冬の如き美しい刃が瞬時に敵をなぎ払う

「軽い……!いい刀だ…」

((いい刀……と、当然です…!))

雪走は照れくさそうに頬を赤らめる

その身は久しく感じていなかった戦いの空気に高揚していたが、何よりその切れ味に関心するゾロの言葉に、彼の黒檀の瞳に、彼女は引き込まれていた

((おいおい、何お嬢様ばっかり見てんだよ!俺ちゃんを忘れてもらっちゃ困るっての!!))

自分も目立ちたいのか、鬼徹は敵の振りかぶった石斧を真っ二つにする

「石オノが斬れた…!!」

((鬼徹、あなたは…))

((へへっ、別にいいだろー?))

呆れる雪走に鬼徹はへらっと笑って舌を出す

「何て斬れ味だ…主人の斬りてェ時にだけ斬れるのが名刀ってもんだが、なるほど…コイツは問題児だ…!!でもまあ、まだおれが使いこなせてねェってことか」

ゾロは鬼徹の斬れ味に驚きながらも、冷静に己を客観しする

それを見た雪走は袖に隠した口元を小さく上げた

 

((どう?あなたの新しい主は))

((ええ、悪くありませんわ))

“後輩”達の活躍を楽しげに眺める和道の問いかけに、雪走は答える

((あっはははは!やっぱ戦いはいいねェ!!))

やはり久方ぶりの戦場に心踊らせる鬼徹と、それを((はしゃぐのも大概にしなさい))と窘める雪走

和道はというと、そんな二人を眺めながら楽しげに微笑むだけ

((それだけ主を信頼している様ですわね))と雪走は目を細めて伺い見る

ゾロに妖刀の鬼徹を振るう事に対する戸惑いはなく、一振り一振りを客観視できる主の姿に、雪走の瞳は笑みを浮かべていた

 

外した梯子を踏み台に一気に跳躍し、向かいの建物にいた敵を見据える

ゾロの跳躍力は一般人のそれとは比較にならないほどで、余りにも生き生きと戦う姿は野生の獣のよう

((今、「獣みたい」って思ったでしょ))

((え?))

口にはしていなかった思考を読まれたような和道の言葉に、雪走はおもわず彼女の方を向いた

((まあ、ゾロは小さい頃から鍛えてるからね。これでも“東の海(イーストブルー)”じゃ“魔獣”なんて呼ばれてたんだよねー))

((“魔獣”とは、また物騒な…))

((あいつの強さを恐れる人や、快く思わない人は少なくなかったからね。あと、その強さに惹かれちゃう人もね))

和道はその異名すらも愛しいとばかりに微笑みながら主を見つめ、雪走もその視線を追う

妖しげな煌めきを纏う刀身を、まるで己の腕の如く自在に扱う身体能力は、常人のそれとは異なるもの

持ち主に悲運な死をもたらす妖刀を扱うことにおくびもないのは、彼自身の気の強さか、それとも過信ともいえる傲慢さか

それとも鬼徹自身が彼に期待し、ある程度従事しているからか

 

((……いずれにせよ、これから大変な日々を送ることになるでしょうね))

おもわず溢れた言葉に、和道は笑った

((あはは!かもねー。でも、きっと楽しいよ))

“先輩”としての余裕を笑顔にのせる彼女に、雪走も小さく笑った

 




次回、一気にエニエスロビーのあのシーンまで飛びます。
間のこぼれ話をこんど番外編として出したいです。

追記
考えた結果、こぼれ話も含めての本編にすることにしました。
なので、エニエスロビーはちょっと先になります。

再追記 2022/10/15
こぼれ話の執筆が行き詰まってしまい、最初の予定通りエニエスロビーまで一気に飛びます。
言ってることがコロコロ変わってしまい、本当にすみません!  
最新話は今日の22時公開予定です。
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