「~♪~♪~♪」
雪走は鼻歌まじりに一人歩く
彼らと過ごした最期の数日の中で、すっかり覚えた“あの歌”だ
彼女の足元は乳白色に輝く石畳となっており、左右に石灯籠が立ち並ぶ一本の道となっている
この道が何処へ繋がっているのかはわからなかったが、彼女の勘は「まっすぐ進めばいい」と告げていた
どれくらい道を進んだのだろうか
気がつくと、雪走の目の前に 一人の子どもが現れた
歳の頃は五、六歳程だろうか
黄色のレインコートを身にまとい、フードを目深に被った少年だ
「あなたは…」
少年は雪走を見つめると、ふわりと微笑んだ
「迎えに来たよ」
その言葉を聞いた雪走は彼と視線を合わせるようにしゃがみ、微笑みを返した
「ありがとうございます。そして、申し訳ありません。私一人わがままを通し、この世にしがみついてしまいました」
頭を下げる雪走に、少年は「そんなことないよ」と笑う
「さァ、僕の手を」
まっすぐ差し出された小さな手
雪走は頷くと、迷いなくその手をとった
すると石灯籠と道がその場から消え、瞬く間に美しい青空と海岸が二人の目の前に現れた
穏やかな波が寄せては返す中、二人は手を繋いで歩く
「あなたは、幸せでしたの?」
「もちろん!キミは?」
「言うまでもありませんわ」
波打ち際を歩く二人の声色は明るい
「やっぱり、心配?」
他愛もない会話の中で不意に問いかけられた声に、雪走は「少し」と答える
「あんな姿を見た後なんて、普通だったら成仏できません。ですが…主様は未来へと向かうべきお方ですから。死んだ刀の未練など不要です。それに…」
「それに?」
「私は、主様達を信じていますから!」
雪走の笑顔は自信に満ちている
それを見た彼も、「そっか!」と言って笑った
いつの間にか景色は変わり、二人の目の前に大きな桜の木が現れる
その根元に座っていた一人の少女がこちらに気付き、手を振りながら駆け寄ってきた
「あなたが、ゾロの仲間の人?」
少女は雪走を見上げながら尋ねる
少し青みがかった黒髪の少女は、どこかで見覚えがあるような、だがそれとは確かに違う顔立ちをしていた
「まさか、彼女が…」
「うん、そうだよ」
少年の言葉に、雪走の心臓は急にドキドキと高鳴った
「えっ!あっ、その!ご、ご挨拶はなんて言えば…!」
「そんな緊張しなくても大丈夫!」
ワタワタと緊張する雪走を不思議そうに見つめる少女
雪走はなんとか深呼吸をすると、目の前の少女に微笑んだ
「ええ、私は雪走。あなたの親友に振るわれた刀ですわ」
『或る刀の一生』これにて完結となります。
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