或る刀の一生   作:kiramaru

8 / 8
エピローグ

「~♪~♪~♪」

雪走は鼻歌まじりに一人歩く

彼らと過ごした最期の数日の中で、すっかり覚えた“あの歌”だ

彼女の足元は乳白色に輝く石畳となっており、左右に石灯籠が立ち並ぶ一本の道となっている

この道が何処へ繋がっているのかはわからなかったが、彼女の勘は「まっすぐ進めばいい」と告げていた

 

どれくらい道を進んだのだろうか

気がつくと、雪走の目の前に 一人の子どもが現れた

歳の頃は五、六歳程だろうか

黄色のレインコートを身にまとい、フードを目深に被った少年だ

「あなたは…」

少年は雪走を見つめると、ふわりと微笑んだ

「迎えに来たよ」

その言葉を聞いた雪走は彼と視線を合わせるようにしゃがみ、微笑みを返した

「ありがとうございます。そして、申し訳ありません。私一人わがままを通し、この世にしがみついてしまいました」

頭を下げる雪走に、少年は「そんなことないよ」と笑う

「さァ、僕の手を」

まっすぐ差し出された小さな手

雪走は頷くと、迷いなくその手をとった

すると石灯籠と道がその場から消え、瞬く間に美しい青空と海岸が二人の目の前に現れた

 

穏やかな波が寄せては返す中、二人は手を繋いで歩く

「あなたは、幸せでしたの?」

「もちろん!キミは?」

「言うまでもありませんわ」

波打ち際を歩く二人の声色は明るい

「やっぱり、心配?」

他愛もない会話の中で不意に問いかけられた声に、雪走は「少し」と答える

「あんな姿を見た後なんて、普通だったら成仏できません。ですが…主様は未来へと向かうべきお方ですから。死んだ刀の未練など不要です。それに…」

「それに?」

「私は、主様達を信じていますから!」

雪走の笑顔は自信に満ちている

それを見た彼も、「そっか!」と言って笑った

 

いつの間にか景色は変わり、二人の目の前に大きな桜の木が現れる

その根元に座っていた一人の少女がこちらに気付き、手を振りながら駆け寄ってきた

「あなたが、ゾロの仲間の人?」

少女は雪走を見上げながら尋ねる

少し青みがかった黒髪の少女は、どこかで見覚えがあるような、だがそれとは確かに違う顔立ちをしていた

「まさか、彼女が…」

「うん、そうだよ」

少年の言葉に、雪走の心臓は急にドキドキと高鳴った

「えっ!あっ、その!ご、ご挨拶はなんて言えば…!」

「そんな緊張しなくても大丈夫!」

ワタワタと緊張する雪走を不思議そうに見つめる少女

雪走はなんとか深呼吸をすると、目の前の少女に微笑んだ

 

 

 

「ええ、私は雪走。あなたの親友に振るわれた刀ですわ」




『或る刀の一生』これにて完結となります。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。