Phantom King Online 〜蛮族たちのクソゲー内戦記〜 作:北の倶利伽羅
「よーっす」
「あっ部長だ」
「死んでなかったんスか」
「今部長の初七日法要やってるんで邪魔しないでくれます?」
「ヨシお前らそこに並べ、遺影撮ってやるよ」
クソみたいな経験をした翌日。部室のドアを開くと俺の葬儀が行われていた。ちゃんと化学部の伝統を守って遺影を冷蔵庫に入れてるのが腹立つ。
「それで?なんで勝手に葬式やってんだ?」
「死んでる人に葬式やるかどうか聞けないじゃないスか」
「うーん一理ある…が何で俺が死んだと?」
「タルト先輩が『あのアホはパイナップルを喉に詰まらせて死にましたよぉ』って言ってた」
「なるほど…じゃあ遺影差し替えてくれ、アイツの葬式やるぞ」
「えっあの人死んだんですか」
「今から死ぬ」
化学部からクソゲー研究会までの距離は大体5km程度である。要は隣同士の関係であり、ジャンプ一回で簡単に襲撃できる。この学校は防犯体制をもう少し考えた方がいいのではないか。学校の未来を憂いつつ屋根を割って突入。
「ようタルト!唐突で悪いけどデカい箱あるか?お前の棺にするんだが」
「うわっびっくりしましたぁ…というか私のこと殺そうとしてますよねぇ???」
「香典は1人あたり100万円に設定するから安心しろ」
「全く安心できる要素がありませんねぇ…ヨシ今ですよぉ!」
その言葉の直後、いつの間にか背後に忍び寄っていたクソゲー研究会の部員共に押し倒された。無理矢理振り解いてやろうと思ったが、人間を血煙にすると片付けが面倒なのでやめた。蘇生委員にも怒られる。
「先輩安心してください…殺すわけではありません…ただPKOをもう一度プレイしてもらうだけです」
「やはりヤバい(確信)ヤメロー!シニタクナーイ!」
哀叫拓也並に首を振るなどの抵抗も虚しく、VR機器を取り付けられ約15時間ぶりに異形集団の世界へと送られた。
「は〜クソが…それで今日は何をするんだ?」
「殺人ですよぉ」
「は???」
「殺人ですよぉ」
「なんで???」
「そっちの方が楽なのでぇ」
どうやらこのゲームではモンスター(動物のうち、見た目が悍ましくない奴の総称)を狩るよりも、他プレイヤーを狩る方が経験値効率がいいらしい。*1この世の終わりみたいなシステムである。
「というか何でこの辺廃墟しか無いんだ?普通初期スポーン地点って街の中だろ」
「最初はそうだったんですがねぇ…半日も持たずにこうなりましたぁ」
「やっぱNPCとか建物が復活しないとかいう設定は無理があるよな…」
これのせいでストーリーとかイベントが消滅したとかいう噂もある。*2正直NPCがいくら死のうがどうでもいいが、異形共にどんなストーリーを提供するつもりだったのかは運営に問いたい。
異形のカス共を狩ること約2時間。最初は増やした腕や脚で殴る蹴る等の原始的な戦闘を行っていたが、
「タルト!盾頼む!」
「了解ですよぉ!」
タルトが構えた盾*3に向かって跳躍。何回かトランポリンして充分に加速した所で、こちらのスキルを使う。
「【爆速ランナー】!」
このスキルの効果は、「スキル発動後の2秒間に脚を前後に動かした回数に応じて加速する」というものである。そしてこちらは、18本もの脚を生やしているのだ。
「オラっ正義ィ!」
「えっ誰だy」
重力+スキル+正義の力で、秒速500mまで加速。哀れな的は、TDN衝突ダメージで死に至った。
「あっやべ」
そして減速に失敗した俺も地面に突っ込み死亡。1分後には復活し腕や脚で殴る蹴る等の戦闘が始まった。
一方PKOは、香川県民であろうと1週間もプレイすればカンスト、Lv100に到達できる。これはほとんどの異形がLv100に到達している上に、上手くすればLv1でもLv100のプレイヤーを殺して一気に経験値を稼げるからである。ちなみにモンスターはせいぜいLv80程度が最高であり、経験値的には一切旨味がない。こうして「モンスター狩るより異形狩った方がいいな」と新参に学習させ、立派な対人戦士を作り出しているのがこのゲームである。滅べ
「拓也?今追手が来ていて、目の前は崖です。空中ブリッジ3000m、できるか?」
「ウッス!腕と脚のポーションを20本以上、30本以下?キメれば行けまっす!」
といった具合に
最終的にはほとんどの建造物が破壊され、NPCは殺されたためストーリーやイベントは永遠にお蔵入りとなった。
【化学部】
化物哲学を操るサイコ集団。学園の食料生産を一手に担っている。
【クソゲー研究会】
学園の私設軍部隊の一つ。クソゲー研究の傍ら世界各地の電子機器に侵入している。