Phantom King Online 〜蛮族たちのクソゲー内戦記〜 作:北の倶利伽羅
「火力が足りねえ」
「強欲ですねぇ」
畜生狩りを始めて3日。最初は爆速ランナーの高速体当たりだけで狩れていたが、HPを上げたり攻撃に合わせてガードを打ったりして対策をしてくる奴が出始めた。全く腹立たしい限りだ。大人しく死んでくれないものか。
「とは言ったものの…火力ってどうやって上げればいいんだ?」
午前3時を過ぎたので、ログアウトしてベッドに寝転がるも眠気が湧いてこない。頭に浮かぶのはクソゲーのことばかりだ。あのゲームには精神汚染効果でもあるのだろうか。ありそうだな。
「しゃーない…タルトに相談するか…」
一度外に回り、タルトの部屋のドアを砕いて突入。氷点下の空気を部屋に流し込むと、流石に目が覚めたらしくベッドから起き上がってきた。
「おうまだ起きてるか?」
「すみません今寝てたんですよぉ」
「…?もう起きただろ?」
「もしかして会話というものができないのですかぁ?」
「流石にこんな時間に蘇生委員呼び出すのは気が引けるんだが…」
「暴力しか出来ない悲しい化け物の発言ですねぇ」
よくわからんが馬鹿にされた気がする。だが今は喧嘩ではなく相談がしたいので、怒りを抑えて説明をした。
「なるほど…いくつか手段がありますねぇ」
提案されたのは以下の3つの方法である。
① 武器を持つ
② 使用するスキルを変える
③ 脚を増やす
「①は無理だな…何か持つと加速が鈍る」
「加速体当たり戦法を使うなら現在のスキル以上に火力を上げる方法が無いので②も無理ですねぇ」
「となると残るは…」
睡眠学習で授業を越え、形而上神学による物体の生成とかいうよくわからん事をやる部活を終えればゲームの時間である。部活の実験で融合した合成マグロを食って腹を満たし、VR機器をセットする。そしてログインすると、タルトの横に異形が居た。
「あっ来ましたねぇ」
「おっドラゴン中田氏オッスオッス」
「2人とも元気だな〜!」
この人(?)はドラゴン中田氏。身体部位を増設しまくってドラゴンみたいな姿になってる狂人であり、俺が知る限り最も人間からかけ離れた姿の人物である。身体の制御に思考リソースの大部分を注ぎ込んでいるため戦闘は強くないが、その類稀なる身体制御能力により畜生共からも一定の敬意を払われている稀有な存在だ。
「ドラゴン氏を呼んだってことは…」
「今日は2人の身体改良をしよう!」
「やっぱりな」
そう、このゲームで唯一「身体改造屋」という職業を行っているのがこの人なのである。ただポーションを塗るだけの仕事と侮るなかれ、依頼人の相談に乗り身体の構成を設計、正確な位置にポーションを塗布する技術は唯一無二である。
「それで依頼料は大丈夫かい?」
「ここ数日の人狩りで稼いだので大丈夫ですよぉ」
「ならばヨシ!」
よくねえよ。他人から奪った金だぞ…と思ったがよく考えたらこのゲームは収奪で経済が回っている末法の世なので口をつぐむ。というか俺も人から奪った金しか使ってない。
「それでベル君は何か改造の方針とかはあるのかい?」
「とにかく脚を増やしたいな…制御可能な範囲で」
「ヨシ来た!ではタルト君の方だが…」
「ミサイル落下後にドロップアイテムを拾うのに適した姿がいいですねぇ」
こちらの方針を聞きながらも、手(?)は既に土魔法で簡易的な模型を造り2人分の設計を開始している。ところどころ口出しをすること数回、30分程度で図面が完成。図面に従い各所にポーションを塗り、改造が施されていく。そしてついに、新たなボディが完成した。
「これでどうだい!?」
「お〜ええやん!上から見ると花みたいに見えるのがいいな」
「言うほど見えますかねぇ…?」
タルトのアホが何か口答えをしているが性能試験を始める。タルトに盾を構えさせ、何回か蹴り付けてスキルを発動。
「【爆速ランナー】…ッ!?」
直後、身体が殺人的な加速を見せ高度限界まで一瞬のうちに到達。その直後、ウインドウが浮かんできた。
『アクティブスキル:【弾道ミサイル】を習得しました!
習得条件:秒速2kmを超える速度まで加速する』
なんだこれ。スキルの名前をタップすると、詳細が出てきた。
『アクティブスキル:【弾道ミサイル】
効果:秒速2km以上の速度で体当たりした際、周囲に速度に応じた大きさの爆発を起こす』
「マジかよ!?」
控えめに言って最高のスキルを獲得した。その喜びのままに高度限界から爆速ランナーで再加速、重力加速度とスキルの力で秒速6kmもの速度で都市跡地に着弾。廃墟の群れは、砂場へとレベルアップした。のちに「第一回PKOミサイル事件」と呼ばれる出来事である。