Phantom King Online 〜蛮族たちのクソゲー内戦記〜   作:北の倶利伽羅

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多少みさいるな女性

「おいィ悪徳ギルド『ベルト』のベルだなァ?ちょっとツラ貸せやァ」

「オ゛ォ゛ン゛!?ナンパなら三途の川の向こうでやってろやカス」

「いえいえナンパではなくてですねェ…」

 

ミサイル事件を起こしてから2日。あの後タルトの奴とギルドを結成したり、何故か俺に対してミサイルの件の謝罪と賠償を求めてくる気狂い共を返り討ちにしたりしていたら変な奴に目をつけられた。

 

「テメェが起こした今回の騒動でウチの商品がだいぶやられちまってなァ」

「はぇ〜酷い事する奴もいるんやな!頑張ってクレメンス!」

「その代金と言ってはなんですが主要ギルド会議に来て欲しいんですよねェ」

「クソッ流石になあなあには出来ないか…」

 

ちなみに目の前に居る燭台のような形をした二つ首の異形はインキャケンティウス3世。このゲームにおける最大ギルド、第四次十字軍の教皇(ギルドリーダー)である。要は拝金主義者のカス。あと右の首と左の首で口調が違う。

 

「まぁ会議に参加するなら謝礼として2万ゴールドやるぜェ」

「んで会議の場所ってのは何処だ?待たせちゃ悪いしとっとと行こうぜ」

「ベルさんのこういう所は非常にありがたいですねェ」

 

貨幣経済どころか自然経済が導入されているかすら怪しいこの世界だが、金はあるに越したことはない。少なくともコイツら相手の交渉ならば、金がモノを言うのだ。

 


 

廃墟を通り山を越えると、真新しい建築物が立ち並ぶ一角に辿り着く。ここは第四次十字軍が廃墟の上に建てた都市であり、拠点である。

 

「会議場はいつも通り人間銀行の2階だぞォ」

「マジ?あのクソ豪華な?」

 

人間銀行。原始人よりも野蛮な連中だらけのこのゲームにおいて、唯一近現代的な制度を有する機関である。実態は第四次十字軍の人員を金銭等の対価に応じて派遣するという派遣会社であり、愛用者も多い。

 

「毎回思うがこんな豪華な建築物建てて大丈夫なんか?襲撃とか」

「大丈夫ですよォ…しっかりと報復を致しますのでェ」

 

第四次十字軍の強さの根源は、人口の半数近くを占めるという構成員の数である。第四次十字軍に喧嘩を売ったが最後、人海戦術でひたすらリスキルされ続けてゲームをやめたプレイヤーも少なくない。アレは結構腹が立つ。つまりはコイツらも害悪集団の一つであるわけだ。いつか殺す。

 

「てか主要ギルド会議って事はあのカルトも居るのか…?」

「まァ呼んだからなァ…あっ着いたぜェ」

 

大きな扉が開かれ、様々な異形がこちらを見つめる。その中に一際丸っこい影を見つけてしまい、大きなため息を吐いてしまった。

 

「やっぱ居るのかよ爆破カルト…」

「ほう久しいなベルよ、それではあの見事な浄化を教えてほしいのだが」

 

コイツはPKO内で蔓延しているカルト宗教、爆蓮教の教祖(ギルドリーダー)のアルフレッド・ノーヘル。爆蓮教は「爆発に神は宿る」という教義を持ち、浄化と称してその辺のプレイヤー等を爆破しているイカれた連中である。俺はこの前のミサイル事件で見事な爆発を見せてしまったことで、そのやり方を教えろと迫るコイツらにストーキングされているのだ。

 

「まァまァとりあえずは会議を始めましょうかァ…ベルさんはタルトさんの横に移動してくださいィ」

「こっちですよぉ」

 

よく見たらタルトの奴も会議場のスクリーン近くに居る。行方不明になったと思ったら、先に誘拐されていたらしい。その横に移動すると、会議が始まった。

 

「それでは会議を始め…る前にこの会議の新たなメンバーを紹介するぜェ」

「どうも俺がベルだ、因みにミサイルの件については一切謝罪や賠償を行う気は無いのでよろしく」

「タルトですよぉ…ミサイルの件は全く予告なく行われたので私も被害者ですねぇ」

「ふざけんなよボケがー!」

「PKOから出ていけー!」

 

どうやら随分と歓迎されているらしい。タルトに盾を構えるようアイコンタクトをした。普通に無視されたが。

 

「まァまァ…ここはお任せ下さいィ」

 

教皇が指を鳴らすと、後ろの方から矢が数本飛びヤジを飛ばした奴らに突き刺さった。ドロップアイテムはスタッフらしき連中が素早く回収していく。

 

「テメェ等もあまり関係ない事で騒ぐなよォ…」

 

なるほど、言論統制もしっかりと行われているらしい。司会をしながら後ろ手で金銭を要求してきた教皇に手榴弾を投げつけつつ、このゲームの民度の低さを憂いた。

 


 

途中司会の手元が爆発するなどのインシデントもあったが、会議は無事終了。雑談タイムとなった。

 

「という事であの浄化について教えて欲しいのだが」

「ノータイムで来やがったなコイツ」

 

そして当然やってくるカルト教祖。

 

「まァまァお待ちください…手数料を頂ければ契約書の作成くらいは行いますよォ」

「お前『敵』ゆんか!?」

「利益に関わる『契約』なら俺等の得意分野だからなァ…少しくらいは手ェ貸すぜェ?」

 

なるほど一理ある。コイツを巻き込めば、「他の奴に広めるな」等の条件を付けた契約も出来るという事だ。

 

「しゃーねえ、結ぶぞその契約」

「感謝するぞベルよ」

 


 

契約書の製造には10分ほどかかった。書かれた内容をまとめると以下の通りである。

① ベルはアルフレッド・ノーヘルに大規模な爆発の手段を教える

② アルフレッド・ノーヘルがその内容を他者に伝えることを禁じる

③ アルフレッド・ノーヘルはベルに情報料として励起収縮爆弾20個を支払う

④ この契約書の代金としてベルは1万コイン、アルフレッド・ノーヘルは青色爆薬10kgを支払う

 

「これでいいですかァ?」

「まぁこんなもんだろ」

「こちらも異存ない」

「ところでどうやって教えるんだァ?」

「実演すっか…おいタルト!盾構えろ!」

「了解しましたぁ」

 

アルフレッドを両腕で持ち上げ、盾を蹴り付け跳躍。しかしスピードが乗らずすぐ落ちる。カルト教祖が重いのだ。

 

「重ッ!オイどうすんだコレ実演の前に墜落するぞ!」

「それはすまない…SPポーションなら何本かあるから飲むか?」

「あと2回爆速ランナー打ったらくれ」

 


 

四苦八苦しながら10分もかけて高度限界に到達。非常にしんどかった。そして来た道を戻っていく。

 

「ハァハァ…お前…地上に降りたらダイエットしろよ…」

「拙僧は身体に爆弾を巻きつけているからこんなに重いのであって体型は標準的だ」

「ならその爆弾を捨ててこいよ…てかこのゲーム標準以外の体型も顔も無いだろ」

「…まぁそれはともかくどこに着弾する気だ?このままでは第四次十字軍の本拠地に突っ込んでしまうが」

「そのつもりだが?」

「気狂いか?」

 

狂気が保証されてるタイプの神を崇めてる奴にキ○ガイ呼ばわりされるとは。仕方がないので道理を説いてやることにする。

 

「いいか?アイツらは金銭欲で苦しんでいる衆生だ 救済(爆破)してやった方がいいだろ」

「確かに一理あるな」

 

やったぜ。やっぱり人を救おうなんて本気で考えてるような奴は騙しやすくていい。

 

「そろそろ着弾するな…オイもう【弾道ミサイル】習得しただろ?あとは1人で行ってこい」

 

そう言って友達になりたくないタイプのボール(カルト教祖)を蹴り付ける。しかし何故か脚にしがみつかれ引き剥がせない。

 

「ンだオイ!?流行らせコラ!」

「ベル…気づいていないのか?貴殿も心の底では救済を望んでいることに」

 

無駄に澄んだ奴の眼に俺の顔が映る。ああ…そうか…俺は心のどこかで…

せめて我々の死が、大戦の嚆矢とならん事を。あとこの件が俺のせいになりませんように。真摯な祈りと共に、2人分のミサイルが人間銀行に着弾した。

 


 

「まさか一瞬で講和するとは思わないじゃん」

 

第四次十字軍と爆蓮教は、これを機に全面戦争に突入するという俺の予想に反して速攻で和平を締結。講和条件の一つにSSS級戦犯である俺の処刑というものがあったため、こうして捕縛されてしまったわけだ。

 

「今回の爆破は半分くらいカルト教祖のせいだろ」

「自分にも半分くらいの責任があると感じられるようになったんですかァ だいぶ成長しましたねェ」

「…? 何言ってんだもう半分の責任はあんな壊し甲斐のある豪華な建物を建てたお前らのだぞ」

「…平和のためにとっとと殺すべきだなァ」

「俺だって平和は大好きだよ」

 

ただ平和だけだと栄養分が偏るというか、梅干しだけ食ってる気分になるから戦争っていう白米が欲しいんだよね。

 

「…では改めて!今回戦犯のベルに対する処刑を開始する!」

「ヨシ来い!あっもう少し上で切ってくれると助k」

 

喋ってる途中の人間相手に容赦のない斬首。流石第四次十字軍の処刑人、見事な太刀筋である。

 

「おっ結構飛ぶな」

「うっせーぞベルカス!口開けんな!空気抵抗で減速する!」

「もっとバカみたいに口開けろや!もう少し減速しろ!」

「そもそも首だけで喋るな頭極道かよ」

 

そして首は9と書かれたパネルを貫通。ギャン中共の歓声と罵声が響く。こうして本日の斬首ダーツは始まった。6万負けた。

 

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