Phantom King Online 〜蛮族たちのクソゲー内戦記〜   作:北の倶利伽羅

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したいよ席交渉

「お前等よく集まったなァ」

 

第四次十字軍の教皇(ギルドリーダー)、インキャケンティウス3世が声を張り上げる。ここはとある廃墟群、元は王都と呼ばれていたらしい場所である。今日は主要ギルドの幹部がコイツに呼び出され、この場所に集められているのだ。ちなみに椅子はない。椅子に座れるようなマトモな体型をしている奴が居ないからだ。

 

「皆様お手元に2000ゴールドと資料は行き渡りましたかァ?それでは説明を始めますゥ」

「一つ質問いいか?俺の隣の奴が大人しくしている理由について説明を頼む」

 

そう、よりにもよって俺の隣に座って(?)いるのはあの悪名高き爆蓮教の教祖(ギルドリーダー)、アルフレッド・ノーヘルである。コイツは『爆蓮教・第四次十字軍不可侵条約』により第四次十字軍領での爆発が禁じられているが、それ以外の場所での爆発は認められている。つまりいつ自爆してもおかしくない。

 

「あ〜それはなァ…このプレゼンを邪魔しない代わりに終了後に自爆でこの辺一帯の奴らを殺g…浄化していいという契約を結んだからだァ」

「ふざけんなこの拝金主義者〜!」

「俺らの許可もとれやカス!」

「その分の代金は払うと言ったじゃないですかァ…皆さんには後から1万ゴールド支払いますよォ」

 

命をなんだと思ってるんだ。しかしこのゲームにおいて命の価値とはせいぜい4000〜5000ゴールド前後であり、相場の倍を出してくれる奴には強く出られないので全員黙った。

 

「そんな事言ってプレゼン終わる前にトンズラされる心配は無いのか〜?ここの民度から考えると何人か居そうなんだが〜!」

 

後ろの方から質問の声が上がる。まぁこのゲームの民度を考えればそういう奴が居てもおかしくない。具体的には俺とか。地面を蹴ってインキャケンティウス3世にキックすると見せかけ、そのまま爆速ランナーで直進加速すれば自爆発動前に爆発の範囲から逃げられるのではないかと考えている。

 

「あァそれなら大丈夫だぜェ…誰か逃げる奴が居たらその時点で自爆していいという許可も出してるしそうなったら連帯責任でお前等への後払い報酬も無しだァ」

 

クソが。後の事を考えなければ逃亡も選択肢に入るが、ここにいるギルド全部を敵に回すとなると流石にしんどい。俺はとりあえずプレゼンを大人しく聞くことにした。

 

「では手短に言いますゥ この世界は滅びますゥ」

「は?」

 

参ったな。まさかコイツが終末論を唱え出すとは。このゲームのカルト集団なんて爆蓮教だけで充分だと思うが。

 

「テメェ等も驚いたみたいだなァそれでは具体的な理由を説明するぜェ 資料の3ページを見ろよォ」

 

周りの奴らが資料を開く。爆発や発火、毒等の効果が無い事を確認してから自分の資料も開いた。

 

「えェそちらにあるのはこのゲームを制作・運営している(株)水戻しソフトの決算報告書から抜粋した表でしてェ 見てほしい項目はこちらの赤で示した部分でェ…」

「ん!?随分話のレベルが高いな…」

 

そこからは実質的に決算報告書の読み方講座であった。正直こんなクソゲーよりよっぽど将来に役立ちそうなので誰か録画してないだろうか。そう思って辺りを見回すと、第四次十字軍の構成員が『〜PKO民でもわかる決算報告書の読み方講座〜映像・テキスト込み1万ゴールド』という立札を掲げているのが見えた。こいつらの商魂の逞しさは本当にすごい。

 

「んじゃここまで(株)水戻しソフトの経営状況について説明したからなァ…ここからはこのゲームの今後について話すぜェ」

 

また専門用語が続く。とりあえず理解できたことをまとめると、

① (株)水戻しソフトは経営がヤバい

② よって不採算部門の首切りが上手い新社長が来月から就任することになった

③ 不採算の要因は多額の運用コストがかかるのにその回収ができないVRゲーム部門(つまりPKO)

④ よってほぼ間違いなく、PKOは近いうちにサ終する

という事である。非常にあり得そうな話だ。

 


 

「それではこれにて発表を終わりますゥ…ご清聴ありがとうございましたァ」

 

プレゼンが終わる。俺は拍手が鳴るまでの一瞬を突き、地を蹴って空に飛び出そうとした。しかし何故か脚が動かない。

 

「ンだコレ!?」

「すまないなベルよ、そう出ると思って麻痺の魔法陣を設置させて貰った…金縛りにも掛けたから4秒は動けないぞ」

 

横に居るノーヘルの馬鹿が仕込んだらしい。コイツの自爆はスキル発動から爆発まで5秒かかるが、爆発範囲がデカ過ぎるのでタルト不在の場合スキル発動から3秒以内に動けない時点で爆死確定となる。つまりはこの状況に持ち込まれた俺の負けだ。敗北を悟って密かにキレていると、何故かステージ上のインキャケンティウス3世が慌て始めた。

 

「それじゃあお前等…えっオイ何してんだァノーヘルゥ!?」

「何…?スピーチが終わったから自爆をしているのだが…」

「終わったと見せかけて『One more thing...(最後にもう一つ)』と言ってから重要な事を発表する予定だったんですよォ!?話しましたよねェ!?」

「えっ…」

「オイ」

「…すまぬ」

 

直後、プレゼン会場は爆炎に包まれた。

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